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活動歴20年越えのエンジニアが語った、ITコミュニティーの歴史【連載:法林浩之のUNIX温故知新】

ITニュース

法林浩之@jusがお届け!

UNIXエンジニア温故知新

UNIXが生まれてから半世紀。脈々とソフトウエアの進化を支えてきた技術は、どのようにして今に至るのか? そこから学べるものとは? 日本UNIXユーザ会「jus」の法林浩之さんが、イベントレポートを中心に「UNIXの今」をお届けします!

今回からエンジニアtypeで連載を始めることになりました、日本UNIXユーザ会(jus)の法林です。

この連載では、jusの活動報告(主にイベントレポート)を通して、UNIX関連の最新情報などIT、技術に関わるさまざまな話題をお届けしていきます。

jusは1983年設立で、日本におけるITコミュニティーの草分け的な存在です。当初はUNIXに関する情報交換を行うためのコミュニティーでしたが、技術トレンドの移り変わりに応じて活動領域を広げて現在に至ります。詳しくはjusのウェブサイトをご覧ください。

「平成生まれのためのITコミュニティー歴史講座」を開催

さて、1本目の記事でご紹介するのは、2021年6月に開催したjus研究会札幌大会(コロナ禍によりオンライン実施)の模様です。タイトルや講師などの情報は以下の通りです。

タイトル:平成生まれのためのITコミュニティー歴史講座
講師:三谷公美(LOCAL)、榎真治(jus)、松澤太郎(jus)
日時: 2021年6月26日(土) 15:00-15:45
会場:オンライン(Zoom&YouTube)

今回の研究会では、ITコミュニティーの運営に長く携わってきたLOCALの三谷公美さんをお迎えし、ITコミュニティーの歴史についてご自身の体験を基に話してもらいました。

東京と北海道で経験した、ITコミュニティー活動

法林さん

三谷さんのコミュニティー活動履歴。写真は左から筆者、三谷さん、松澤さん、榎さん

三谷さんがITコミュニティーと関わり始めたのは、1990年代に東京インターネットというISPに入社したことがきっかけでした

当時の代表的なコミュニティー活動は、1996年に設立されたJavaカンファレンスです。

その頃Javaはまだ出始めの言語で、開発の現場で使われるものではなかったので、日本でJavaを広めたい人たちが集まってさまざまな普及活動をしました。

jusが主催したNetwork Users’でも共同セミナーを実施した記録があります。

Javaカンファレンスは、企業同士による業界団体ではなく個人の集まりだったという意味で、コミュニティーの先駆けと言えるでしょう。

三谷さんはその後、結婚を機に札幌に移住し、しばらくは子育てに専念していましたが、2008年に行われたオープンソースカンファレンス(OSC)北海道に参加したのを契機にコミュニティーと再び関わるようになり、以後は北海道を拠点にコミュニティー活動を行っています。

北海道での代表的な活動はLOCALです。先述したOSC北海道に参加した後、2009年にLOCALが設立されたときに三谷さんもメンバーに加わり、現在は理事を務めています。

LOCALの主な活動は、LOCAL Developer Dayをはじめとするコミュニティーイベントの実施、学生部などの部活動および学生への交通費支援、北海道内で行われる各種イベントの運営サポートなど。

このセッションの舞台となったOSC北海道もLOCALがサポート。LOCALでは、北海道に技術者文化を根付かせることを目的としています。

そして、三谷さんはLOCALを本拠地としながら、北海道の各種団体のみならず、全国規模のコミュニティーイベントにも数多く携わるようになりました。北海道の団体ではTEDxSapporoや北海道情報セキュリティ連絡会など、全国規模のイベントとしてはYAPC::Japan、LinuxCon、ISOC-JPなどです。

jusが運営に参加しているLLイベントにも関わっていますが、これは三谷さんとしては最初に北海道外のイベントに関わった事例です。関わる団体は年々増えており、今では一年中、複数のコミュニティー活動を並行して行っている状況になっています。

これらの活動を通して三谷さんが心掛けているのは、北海道と全国を「つなぐ」ことです。全国に対しては、北海道ではこんなことをしている、こんな人たちがいることを広報する働きをしており、その一方で北海道の人たちは中央の情報を欲しがっているので、全国規模のイベントで得たものを北海道に持ち帰って伝えています。

オリィ

北海道と全国を「つなぐ」

コミュニティー活動に重要なのは「きっかけ」と「継続」

このように、さまざまなコミュニティー活動を経験した三谷さんが考える、活動において重要なことは「きっかけ」と「継続」だそうです。

何かのきっかけがあったら、まず一歩踏み出してみること。継続するために重要なのは、無理をしないこと、お互いの話を聞くこと、楽しむこと。

いろいろなコミュニティーに顔を出すと、それぞれのコミュニティーでやり方が異なることが分かり、とても参考になるそうです。

オリィ

重要なのは「きっかけ」と「継続」

また、コミュニティー活動では「若手の育成」もとても重視されるポイントの一つです。そこでLOCALが学生メンバーに対して心掛けていることについて伺うと「大人たちは学生部の活動には一切口出しをせず、見守ることに専念する」そうです。

こうすることで、学生同士が自主的にコミュニケーションして活動が進んでいきます。大人の中に学生が入っていくのは難しいので、このようにしているんだとか。

おわりに

jusでは、jusの活動史を紹介する「平成生まれのためのUNIX&IT歴史講座」を継続的に開催しています。今回のセッションはその派生として企画したものですが、jusの歴史講座とは一味違う、三谷さんの活動歴に裏打ちされた、示唆に富む内容でした。

セッションの映像はYouTubeで公開されていますので、さらに詳しく内容を知りたい方はそちらをご覧ください。

プロフィール画像

法林浩之さん(@hourin

大阪大学大学院修士課程修了後、1992年、ソニーに入社。社内ネットワークの管理などを担当。同時に、日本UNIX ユーザ会の中心メンバーとして勉強会・イベントの運営に携わった。ソニー退社後、インターネット総合研究所を経て、2008年に独立。現在は、フリーランスエンジニアとしての活動と並行して、多彩なITイベントの企画・運営も行っている

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