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マネジメント未経験でCake.jpのCTOに就任。元DeNAエンジニアがスタートアップに転職して知った「ベストな成長環境」の見極め方

働き方

エンジニアとして成長したい。できれば速く、効率的に――。

そのためにふさわしい場所は大手か、スタートアップか。20代をどんな環境で過ごすべきか迷っている若手エンジニアも多いはず。

新卒でディー・エヌ・エー(以下、DeNA)に入社し、ベンチャー2社を経験後、スタートアップCake.jpのCTOに就いた新多真琴さん(以下、Twitter名「あらたま」さんと記述)もかつてはそんな悩めるエンジニアの一人だった。

だが、大手、ベンチャー、スタートアップを渡り歩いた彼女が今思うのは、「成長スピードだけでみれば、圧倒的にスタートアップの方が速い。しかし、万人におすすめできる環境ではない」ということだ。その理由はなぜなのか、話を聞いた。

新多真琴さん

Cake.jp CTO
新多真琴さん
@ar_tama
国立音楽大学卒。在学中よりプログラミングを独学で学び、面白法人カヤックやGoogleのインターンにも参加。卒業制作としてオリジナルアプリ『テンスウリズム』を制作の後、新卒でDeNAに入社する。その後はセオ商事、ロコガイドへと転職し、2021年6月にCake.jpに入社。22年1月からCTOを務める。日本もちもち協会代表。料理・音楽ユニット「All My Relations」共同主宰としても活動中。好きなもちもちは餅と団子

「32歳、これが最後のハードワーク」と腹を決めてCTOに

――あらたまさんがCake.jpに転職を決めたのはどんな理由だったのですか?

前職でよく仕事を一緒にしていた同僚がCake.jpに転職し、取締役に就任したんです。

彼から話を聞くうちに、日本各地の和洋菓子店と提携し、場所にとらわれることなく、おいしいスイーツを届けるCake.jpって面白そうと感じたことがきっかけでした。

もともと製菓業界で働く友人も身近にいて、その業界に一石を投じるようなビジネスに携われることは、間接的に友人たちの助けになるかもしれないとも思いました。

あとは、個人的に甘いものが大好きだったので(笑)

新多真琴さん

「スイーツで心の温度を上げる」というミッションのもと、自分たちが食べたい、だれかにあげたいと本気で思えるケーキ・スイーツをお届けしているケーキ通販のプラットホーム『Cake.jp』。会員数100万人、加盟店舗数1,500店舗以上、5,000種類のラインアップがある(2022年9月末現在)

――CTOになったきっかけは?

Cake.jpには10年ほどの歴史がありますが、何度かのピボットを経て2017年にやっと今の原型ができました。

それがコロナ禍の巣ごもり需要の影響で、一気にユーザーが増えたのです。

新多真琴さん

事業の方向性に確信を得るまでは、事業も組織も無理に拡大せずやってきていたのですが、巣ごもり需要増がプロダクトの可能性を確信させるきっかけとなり、「ここから一気にグロースさせよう」と社内の機運が高まりました。

そのグロースに不可欠な「エンジニアリング組織の強化」が、私へのCTO打診につながっています。

新多真琴さん

入社当初は当社の中に執行役員制度がなかったため、その制度導入の時期を挟んで、22年1月から正式にCTOに就任

――責任重大なポジションに、ためらいはありませんでしたか?

ありました。私にできるのだろうかと。なぜなら、私はここまでのキャリアでテックリードのような役割は経験しましたが、正式にマネジメントポストに就くのはCake.jpが初でしたから。

――マネジメント初経験にしてCTOとは驚きです。

私もです(笑)。ただ、マネジメントには昔から興味があって。書籍やウェビナーなどを通して勉強はしていました。

それに最近、CTOになる知人が周りに増えていて。彼らとの話を通じてCTOの仕事や役割が何となくイメージできていたのも大きかったと思います。

あと、プライベートなことを話すと、私は今年32歳になるんです。将来のことを考えると、仕事だけに没頭できるのはこれが最後のタイミングかもしれないとも感じていて。

それならば思い切ってチャレンジした方が、エンジニアという仕事への解像度がさらに上がり、仮に失敗に終わったとしても得るものはあるはずだと考えたんです。

新多真琴さん

もともと交流があったLayerXのCTO、松本(勇気)さんから「CTOに必要なのはバランス感覚だから、あらたまさんならきっと大丈夫」と背中を押してもらい、最終的に決断しました

キャリア選択の軸は「食べがいがあるか」

――「失敗しても得るものは大きい」とポジティブに捉えられたのはなぜでしょう。

性格的に新しいものが好きで、良い意味で好奇心が先走っちゃうタイプだからかもしれません(笑)

キャリアを選択する上で同じことをしていてもつまらないと思っていて。転職をするにしても、似たような規模・サービスの会社に移るのでは意味がない。それなら今の会社で頑張ればいいじゃないかと思うんです。

逆に、全く規模や環境の違う会社で働けば、きっとこれまでには得られなかった体験ができる。

そうすれば将来、何らかの形で自分に返ってくるはず。そんなふうに考えて「食べがい重視」で転職先を決めてきました。

新多真琴さん

――1回目の転職時(DeNAからセオ商事)も食べがいがあった?

はい、それこそまさに「食べがい」が決め手でした。

新卒あるあるかもしれませんが、社会人になって3年くらいたつと、社外に興味が湧いてくる時期がありますよね。

そんな折に、学生時代のアルバイト先(面白法人カヤック)でメンターを担ってくださった瀬尾さんから「会社を立ち上げるから一緒にやらないか」とお誘いがあって。

想像もしていなかった“あさっての方向”から降って湧いたチャンスに、私の“食べがいアンテナ”が立ちました。

実際、セオ商事は当時2〜3人の会社だったこともあり、入社後はエンジニアリング以外のさまざまな業務にも関われました。プロダクトを開発する前のリサーチ、UI設計、もちろんプログラミングもです。

全てがソロプレーかつ短期決戦だったので、日々新しいインプットをしてはアウトプットして開発に打ち込む日々。高速で開発サイクルを回す毎日で、DeNAとは違った成長実感を得られました。

新多真琴さん

――やはり、スタートアップは成長の機会が多そうですね。

そうですね。成長スピードという軸でみれば、圧倒的にスタートアップの勝ちだと思います。

走り続けなければ倒れてしまうスタートアップでは、常に新しい概念を学び、すぐにアウトプットし、自分の責任でサービスやプロダクトをブラッシュアップする……というサイクルを高速回転させ続ける必要があるからです。

ただ、万人におすすめできる環境かと言うとそうではありません

新多真琴さん

――なぜですか?

私の場合、DeNAで過ごした3年間がなければ今の自分はなかったと思っていて。技術からマインドまで、エンジニアとして長くやっていく上での基礎を全てたたき込んでもらいました。

これがもし初手でスタートアップを選んでいたら、5年、10年とキャリアを重ねても「ブレないエンジニアリングの土台」が手に入れられたかは、正直怪しいですね。

自力で“差分”を埋められないなら、「とりあえず大手」も賢い選択

新多真琴さん

――先ほど、あらたまさんは「食べがい」重視の転職先選びをしてきたというお話がありました。つまり、その時々で自分に必要な成長が得られる場所を選んできたのだと思うのですが、どうやって“一番おいしい環境”を選んできましたか?

さきほど、転職先を選ぶ上で同じことの再生産ばかりやっても意味がないといいましたが、実はこれは自分だけでなく、会社にとっても同じだと思っていて。

つまり、自分がジョインすることによって「新しい化学反応が起こせそう」、「自分が望む成長に対して機会がある」、そして「自分の成長が会社への価値還元につながる」これらがかないそうだなと思った場所なら良い化学反応が起こるはず。そんなふうに考えて転職を決断してきました。

新多真琴さん

――大手、スタートアップ、それぞれ得られる成長の質・スピードは違うと思いますが、それぞれに感じるメリット・デメリットは?

「この会社でこんなスキルを生かしたい、こんなことに取り組みたい」と明確なビジョンがある方なら、スタートアップは良い選択になるはずです。

ただし、スタートアップは大手のようにいろいろなものが整っているわけじゃないので、何かギャップを感じたときに、自力で気付き、その“差分”を埋められるだけの力がないと厳しいと感じます。

ある程度の「経験」やそこから生まれる「理想像」あるいは「正解」みたいなものを自分なりに持っていないと、自分の成長にとってAがいいのか、Bがいいのかと判断できないからです。

新多真琴さん

あとは、挑戦できる幅の広さという軸で、大手かスタートアップかと悩んでいるなら、それは違うかなとも思います。

――それはなぜですか?

最近は「大手=保守的でチャレンジできない」という構図もかなり崩れていますし、一社目のDeNAは大手ですが、手を挙げさえすればチャレンジさせてくれる会社でしたから。

大手ならではの恵まれた環境を活用しつつ、やりたいことに挑戦させてもらえるとなれば、20代のうちに「とりあえず大手」という考え方も賢い選択かなと思いますね。

新多真琴さん

さらに言えば、どんな環境であっても学びを見いだすことはできると思います。

ちょうど1年ほど前でしょうか、BASEのSVP of Developmentであるえふしん(藤川真一)さんから、こんなアドバイスをもらいました。

えふしんさんいわく、「たとえ1000%で相手が悪い事象であっても、一度立ち止まり、『もしかすると自分にも落ち度があったのでは』と考えてみる。そうすれば、その事象が単に『イヤな記憶』にならず、何らかの学びを見いだせる。これを続ければ、得られる経験量は段違いに変わってくるはずだ」と。

どのような環境であっても、受動的でいる限り何らかの不満は出てくるし、思うようにいかないことはあるでしょう。逆に、能動的な自分であればどのような場所でも成長の糸口はつかめるはず

大手かスタートアップかと二者択一で考えるのではなく、どちらが今の自分に向いているのか、自分はその場所で何を学びたいのかを考える先に、自分らしいキャリアやエンジニアとしての成長が待っているのではないでしょうか。

新多真琴さん

文/夏野かおる 撮影/桑原美樹 企画・取材・編集/玉城智子(編集部)

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