キャリア Vol.54

和田卓人、倉貫義人、萩本順三「会社に頼れない時代」の技術屋が知るべき6つのこと

「退屈な作業のくり返し」が創意工夫を生み出すチャンスに

IT業界に身を転じた後、当面は「いわゆる閑職に追いやられていた」と話す萩本氏。だが、その期間が後の糧となる
IT業界に身を転じた後、当面は「いわゆる閑職に追いやられていた」と話す萩本氏。だが、その期間が後の糧となる

27歳で初めてこの業界に入った萩本氏は保守中心のプロジェクトに配属されたが、その後「マシン室」と呼ばれる開発現場でも働くように。「当時はアセンブラすら分からない状態だった」(萩本氏)ため、スキル不足という壁に直面した。

「だから、とにかく分からないことがあると先輩や上司に質問するわけですが、周囲は迷惑だったと思います(笑)。プログラムの捨てられたゴミ箱をあさったり、”逆アセンブラ”してC言語を覚えたりと、ホントに必死になって学んだ時期でしたね」

こうした下積みの期間を過ごした萩本氏だが、日々同じことをくり返す中で、想像以上にスキルアップができることにも気付いた。

「保守のプロジェクトを『退屈だ』と『(キャリア形成上)意味がない』と感じる人もいると思いますが、わたしはいろんな創意工夫をすることで、いわゆる閑職にいてもスキルを高めることができると思っています。わたしの場合だと、空き仕事に知らない言語や技術を学ぶだけでなく、ITをビジネスに活かすヒントについてもじっくり考える時間を持つことができましたからね」

この「空き時間活用術」に象徴されている、「未来について考えるクセ」が、その後の萩本氏を形作ることになったという。具体的には、以下の行動習慣だ。

【Advice 5】
複数の言語・手法を学んだら、共通項から原理原則を理解しよう

膨大にある開発言語や手法を手当たり次第に学ぶことより、いくつかの共通項が見つける方が身になる
From Dennis from Atlanta
膨大にある開発言語や手法を手当たり次第に学ぶことより、いくつかの共通項が見つける方が身になる

COBOLとわずかな簡易言語だけでエンジニアとしてのキャリアを始めた萩本氏だが、常に学ぶことを自らに課す貪欲な姿勢を持つことで、やがてCやC++、C#、Javaなど、現在も主流となる開発言語を習得していく。

ただ、これらの言語を「流行だから」と覚え続けてきたわけではない。萩本氏が学ぶ際に注目してきたのは、異なる言語間に共通する関数やコーディングメソッドだ。

「言語は違っても、コードの中で同じような関数やメソッドが使われていることに気付くと、プログラミングの原則のようなものを理解できるようになっていきます。これは開発プロセスについても同じことが言えます。一見、別々な要素から類似点を見いだして、抽象化・パターン化する思考回路を持つことで、流行が移り変わっても次へのブレイクスルーにたどり着きやすくなるのです」

この習慣を継続していくことで、どんなビジネスも「ロジカルさ」、「プロセス」、「モデル」、「プロジェクト進行」の4つが成功のカギになると理解できるようになったと萩本氏は言う。

オブジェクト指向の伝道師として、また現在推進する「匠Method」の考案者として業界内で一目置かれるようになれたのは、こうしたパターン化思考のクセづけがあったからともいえる。

「ちなみにこの4つの要素について、仕事を通じて学べる職種ってSE以外あまりないと思うのです。ですから、どんな苦境であったとしても、ほかの仕事ではなかなか身に付けられない普遍的な経験を積んでいると考えることも、若手SEにとっては大きなプラスになると思います」

【Advice 6】
「目先の仕事」と「未来の仕事」を分けて考える習慣をつけよう

「未来のSI」を創るのは若手の役割だと萩本氏。だが一方で目先を疎かにする危険性も示唆
「未来のSI」を創るのは若手の役割だと萩本氏。だが一方で目先を疎かにする危険性も示唆

そうエールを送る萩本氏も、現在のSI業界が迎えている転換期を乗り切るのは難しいと認める。

「最も大きな課題は、従来型のSIプロジェクトではビジネスを企画する側とシステムを開発する側との間に大きな溝があったこと。現在は、開発サイドも企画側へ加わり、一体となってプロジェクトを進めるのが求められています。すると、これまでのようにSI企業が大量の人月を投じるのは非効率になっていく。今後、どんな解決策や手段が必要かを、若手は危機感を持って考えていかなければなりません」

しかし、「先輩たちのやり方はおかしい!」、「だから自分はやらない」とそっぽを向くのも間違いだ、と付け加える。

「仕事には、『今、求められる仕事』と『将来、求められるかもしれない仕事』の2つがあります。特に若いうちは、まず目先の仕事から学ぶ、という姿勢も絶対的に必要です。だから、今担当しているプロジェクトを一生懸命にやりつつも、会社や配属プロジェクトの常識を疑い続けることが肝心なのです」

会社の常識を疑うとは、つまり「顧客は何を喜ぶのか、という視点で考え続けること」だと萩本氏。抽象化のクセづけとこの視点があれば、開発プロセスの変化や技術トレンドの変化にも、即応できるSEになれると力説する。

「自分自身を振り返っても、新しい技術、新しい技術と前へ前へ進んでいる時より、単純なくり返し作業の中で創意工夫をしていくと、いつのまにか自分が求めていた分析力や創造力、問題解決力がアップしていた経験があります。脳が活性化されていくような感じですね」

近い将来に廃れてしまうかもしれないと感じながら、与えられたプログラミングや開発手法を実践していくのは、一見、ムダな努力と思えるかもしれない。が、やや遅れてキャリアをスタートさせた萩本氏が自身の経験を通して得た確信は、

「変わり続ける流行を追いかけて消耗するより、普遍の理(ことわり)を見つけた人の方が、プロとして長生きできる」

ということ。揺れるSI業界の中で次へのステップを模索している若手SEにとっては、心強いアドバイスの一つではないだろうか。

取材・文/浦野孝嗣 撮影/小林 正、赤松洋太

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