*『CIEL(シエル)』とは、フランス語で「空」を意味するJALグループのハイブリッドクラウド基盤の愛称。JALグループが運航する航空機の運航管理から機体の整備、旅客サービスなど、JALグループのビジネスのあらゆる場面で利用されているシステムの土台になっている。
一便の航空機を飛ばすのに、500以上のシステムが連携!JALを支えるシステム開発の舞台裏
【PR】 働き方
約7000万便*。これはコロナ前の2019年の世界のフライト数だ。
一日あたり約19万便が世界の空を飛び交っているわけだが、航空機一便を飛ばすために、一体どのくらいの種類のシステムが存在しているかご存じだろうか?
国内大手の航空会社、JALのケースにおいて、その数は実に500以上にのぼるという。
これらのシステムは、どのように「連携」され、安全・安心な空の旅が実現されているのだろうか。
今回は、その「連携」を支えているJALインフォテックのエンジニア2名にインタビュー。知られざる航空機システムの裏側に迫った。
500以上のシステムに運航情報を届ける、「血液」の役目
予約システム、ダイヤ関連システム、路線収支システム……など、航空機を飛ばすためにはさまざまなシステムが関係しているが、その中心にあるのが「●●●便」と示される運航情報(航空機の離陸・着陸に関わる情報)だ。
その運航情報を、各種システムへデータ提供するには専用のシステムが必要になる。
「身体の隅々に流れていく血液のようなシステムです」と例えるのは、エンジニアの成澤美耶さんだ。
「私たちの部署では、運航に関わる全ての情報を集約して、私自身は必要なシステムに対してデータを連携するというシステムを担当しています」
縁の下の力持ちーーそんな言葉が当てはまるポジションだが、その仕事スタイルも裏方ならではの特徴がある。
「自分たちでプロジェクトを抱えているわけではなく、社内のあらゆる部門で稼働しているプロジェクトに、“情報提供元”として参加する仕事が多いですね。
いろいろなプロジェクトに呼ばれては『このデータは連携できます』『このデータはうちにないので連携が難しいです』と話を進めていくイメージです」
航空機は、運航スケジュールを中心に、システムも人も回っていく。極端な例として、もし航空機の予約を取る時にシステムが運航情報を呼び出せないと予約ができなくなる。
「あって当たり前の情報」なだけに、その業務の範囲は広く、他の部署と関わる機会も多い。そのため、運航情報を必要とする部署の仕事をイメージし、コミュニケーションをとりながら理解していくことが重要だという。
「仕事の特徴としては、多くの部署の基盤となる情報に関連したシステムを扱っている点にあります。
例えば、システムでリプレースが発生する場合。『この部署のシステムは日中に使用されるケースがほとんどだから、夜間作業が最適だろう』など、そのシステムに運航情報が円滑に接続されるように、業務影響の無い作業時間を考えたり。
連携先が運航情報をどのように扱っているのか、なぜ必要なのか、関連システムに情報を取りに行った上で、考えながら仕事を進める必要があります」
自担当のものではないシステム、しかも数百も存在するシステムのユーザー状況を考えながら業務に取り組むことは、簡単ではない。成澤さんはどのように業務理解を深めたのだろうか。
「入社2年目の頃に、JALの予約・発券システムを海外のベンダーに切り替える『SAKURAプロジェクト』に参加しました。メディアで記事になっているように、50年使い続けた基幹系システムの全面刷新にJALが初めて挑んだプロジェクトです。
私たちが担当しているシステムは、予約・発券の中心システムではないのですが、システムが呼び出した時に、運航スケジュールが表示されないと、航空機の予約は取れませんので、緊張感はすごくありました。このプロジェクトに参加したおかげで、自分の担当するシステムの立ち位置、重要性、影響の大きさを理解できましたし、関連するシステムも多く、とても勉強になりました」
航空機を飛ばす上で、なくてはならない運航情報。それを届けるシステムは、いたるところに張り巡らされている。そのシステムを扱うエンジニアも、その使われ方にアンテナを張り、視野を広く持つことが求められる。
「万が一、システムでトラブルが発生した時、どれくらいの便数に影響があるのか、どの業務にどのくらいの影響が出るのか、という話になるんです。
トラブルが発生すれば、そこはもう1分1秒を争う世界。なので、JALを利用するお客さまやJALのスタッフが利用するシステムを直接的に開発しているわけではないものの、データを連携するシステムを担当する自分たちの方でもある程度は把握していないと、初動が遅れます。
業務で用いる技術の難易度は高くはありませんが、その分、自分が扱っているデータについて、深く考え、ユーザーの思考や行動を先手を打って考える力が問われますね」
業務の範囲が広い分、日々の刺激も大きい。シビアな運航スケジュールに携わる仕事のやりがいについて、成澤さんは次のように語ってくれた。
「ユーザーとして航空機に乗った時に、時刻通りに安全かつ安心に運航しているのを体感すると、仕事のやりがいを感じます。
普段、扱っているシステムの性質上、業務がどのように進んで、情報の出力につながっているか分かるんですよね。例えば、このシステムが動いているから、次は掲示板にこの情報が出るだろうなというように。
JALの運航をシステム面で支えるという実感を得られるのがこの仕事のやりがいです」
伝統や慣習に縛られず、安定性と新技術を両立
成澤さんが携わる運航情報を含め、一便の航空機を飛ばすために必要となる全システムには、それを支えるインフラの基盤がある。その基盤の企画・開発を担っているのが、小幡雅彦さんだ。
「プライベートクラウドとパブリッククラウド、その基盤部分を全て私の部署で担当しています」
小幡さんは、06年に新卒で入社して以来、一貫してJALのインフラ周りに関わってきた。入社後は、JALが自社で開発したメインフレーム製システムの、OS、メモリ、ストレージなどの基盤の管理を担当。
その後、17年に、インフラ基盤をクラウド化する『ハイブリッドクラウド基盤構築プロジェクト』が発足。そのプロジェクトの中で、小幡さんはプライベートクラウド領域のプロジェクトマネジャーを務めた。
物理的なシステムをクラウド化するにあたり、乗り越えなければいけない主なハードルは二つ。「一つ目が、サーバーの仮想化。二つ目が、仮想化したサーバーのクラウド化」があると小幡さんは話す。
「私がジョインしたのは、ほとんどのサーバーの仮想化が完了した頃でした。そのため、ゼロからのクラウド化よりは幾分か楽にスタートを切れたかなと思います」
とはいえ、サーバーは仮想化されていても、ネットワークは従来型の構成であったり、運用面でも複数の共通基盤の管理がバラバラで、個別にExcelの申請書を出さないとリソースが揃わないという状態でした。クラウド化という点では、ブラッシュアップする必要がある点が多くありました」
また別の問題として、物理ホストに紐づいてしまう外部ストレージを使っているような、どうしてもクラウドに適合できないシステムも存在していたという。
「そういったシステムは特別な領域として受け入れつつ、『JALとしてのクラウドはこうだ』というポリシーを策定し、それに適合できない形式のシステムの新規構築は禁止するなどの工夫をしてクラウド化を進めていきました。
アーキテクチャ以外の観点では、これまで別の組織であったサーバー基盤担当グループとネットワーク担当グループを統合して、統合基盤グループを作りました。今私が所属するハイブリッドクラウド基盤部の前身です」
基盤は全てのシステムの土台となるため、多くの部署との連携が必要だ。クラウド化のプロジェクトにおいても、ミーティングで一つ一つの課題を潰しながら、着実にその歩みを進めた。その結果、18年にJALのハイブリットクラウド基盤『CIEL(シエル)』*のVersion1.0が完成した。
「CIELはそのコンセプトとして、初版で完成ではなく、段階的に進化していくクラウド基盤、と定義しています。初版は作り終えましたが、その間にも世の中の技術はどんどん進化しているんですよね。なので、自分たちでも積極的に“この次に来る”技術トレンドは何なのか。その際、システムをどのように改善していくかは常に考えておかなければいけません。
実際、アプリケーションを開発している部門から『最近話題になっているこの技術を使ってみたい』とリクエストが届きます。簡単ではありませんが、最新技術をウォッチして適宜取り入れられるのは、楽しい部分でもあります」
最新技術のキャッチアップにおいては、ベンダー主催の勉強会やカンファレンスなどのイベントに、国内外問わずに参加したり、他の企業のインフラチームと情報交換することも頻繁に行なっている。
「JALと聞くと老舗の巨大組織=新しい挑戦がしづらい、とイメージされる方も多いかもしれませんが、中に入ると全く異なる印象を持つと思います。特にJALインフォテックは、新しい技術や方法論を敬遠せず、柔軟かつスピーディーに受け入れていこうといった風土が醸成されているので、総勢1000人近くいるエンジニアたちは技術に貪欲。現場レベルではどんどん試す文化です。
実際、『この最新技術やツールを早く使えるようにしてほしい』とインフラ部門の私がせっつかれることもしばしばです(笑)」
インフラエンジニアとしてJALインフォテックで働くやりがいもこうした「社内のアプリチームからの要望をキャッチアップしつつ、JAL全体のインフラとしてのあり方を考えていくこと」にあると小幡さんはこうも加える。
「新規サービス開発と異なり、サービスインなどに達成感を抱くシーンは少ないのですが、ゲストが使い始めて、基盤が安定的にリソースを提供している姿を見ると、うれしくなります。
インフラが障害を起こすと、全てのシステムが使えなくなって、最悪の場合は航空機の運航を止めてしまうこともありますからね。特に機能は随時アップデートしつつも、安定的にシステムを運用できていることには誇りを感じます」
JAL以外の新しいポートフォリオにも挑戦
ビジネスイノベーション事業本部 ビジネスソリューション事業部
ソリューション営業部 企画グループ長
髙田淳一さん
航空機システムを支えるエンジニアの仕事が、成澤と小幡の話から理解していただけたのではないでしょうか。2人が話した通り、私たちの主要なクライアントはJALです。これからもJALのシステムを支える立場であることに変わりはないのですが、当社を含むJALグループ全体では現在「新しい挑戦」がスタートしています。
それは非航空領域の事業拡大です。コロナの影響で航空需要が落ち込んだ経験を踏まえ、JALグループ全体では航空運送事業以外の収入を拡大させていくことにも真剣に取り組んでいます。
当社は以前から、自社で開発したIT資産管理ソフトウェア「PalletControl」の販売を中心に外販事業を行ってきました。最近では空港会社のバックオフィス業務を支えるソリューションサービスの提供や、ノーコード・ローコードを活用したファストシステム開発支援、JALのシステム開発や維持管理のナレッジを生かしたコンサルティング領域の商材化等、お客さまの困りごと解決に貢献できる商材開発に取り組みながら外販事業の拡大に挑戦しています。
例えば、前者のIT資産管理ソフトウェアはJALの本社移転をきっかけに自社開発した製品となりますが、1996年より一般販売を開始して以来、官公庁244団体をはじめ、さまざまな業種のお客さまのPC運用のコストダウンや効率化、セキュリティの維持などに貢献してきました。これら「非航空領域」の事業に一層注力し、今後10~20年かけて売上を最大限伸ばしながら外販事業を拡大していく計画です。
ちなみに、ファストシステム開発支援は、例えば「小規模なシステムでいいので、早く導入したい」「開発を内製化したいが任せられるIT人材がいない」といったIT活用に困っている企業の課題に対し、一緒に伴走しながら解決を目指していくようなソリューションです。
こうした支援をきっかけに、いわゆる”IT部門ではなく現業部門の人たちがアプリケーション開発を行う”「開発の民主化」を促進できますし、大規模でミッションクリティカルな開発ニーズが出てきた際も、成澤や小幡をはじめ、当社のエンジニアがシステム開発、運用業務で培ってきた技術力やナレッジ、信頼性の高さは大きな武器となるでしょう。
航空領域で築いたITの知見を大いに生かしつつ、プロパー社員とパートナーの方々を合わせた約2,000名以上の仲間と共に、新たな「非航空領域」のポートフォリオ構築に向けて果敢に挑戦し続けていきたいと思います。
>>>JALインフォテックの中途採用情報はこちら
文/中たんぺい、撮影/桑原美樹、編集/玉城智子(編集部)
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