「AI」と「エンジニアのキャリア」の関係性をどう考える? 未来予測、強みとなるスキル&求められるマインドとは
もはや耳にしない日はないと言っても過言ではないほど、われわれの生活に浸透しつつある「AI」。エンジニアであればなおのこと、その進歩の速さと存在感の大きさを感じていることだろう。
近い未来、むしろ現在であっても、AIは人間のキャリアに影響を与える存在になり得る。業界の著名人や前線で活躍する研究者・クリエーターたちは、「AIとエンジニア・クリエーターのキャリア」についてどう考えているのだろうか。過去のインタビューから探ってみよう。
目次
AIにはない「飽きや疲れ」が人間のキャリアの強みになる
AIは疲れを知らず、与えられた仕事を24時間、365日休まず忠実にこなせる。一方で人間は総じて飽きっぽく、生きていくためには休憩や睡眠が必要だ。
しかしそうした「飽き」や「疲れ」こそ人間の強みになると語るのは、博報堂DYホールディングスで執行役員 CAIOを務める森 正弥さんだ。
人間は集中力を失えば飽きるし、飽きれば仕事を放りだしてゲームに興じてしまうこともある。けれど休憩や睡眠を挟んだり、気晴らしに他のことをしたりしているうちに、新しいアイデアが生まれたり、解決策がふと浮かんだりして、別の切り口からのアプローチが可能になる。そうしてそれまで解けなかった仕事の問題が解決するといったことは、誰しも経験することです。
一見、弱点に見えるこの脆弱性こそが、過去のデータや論理の積み重ねだけでは辿り着けない非線形な発想の源泉にもなり得るわけです。ここに私は、AIには持ち得ない人間の強みを感じます。
AIが持っていない、人間ならではの強み。その強みを「最大限に活かすためにAIがある」と森さんは語った。インタビューでは、その言葉の意味を詳しく聞いた。
重要なのは理系・文系ではなく「自分は変わり続けるのだ」という気持ち
「AIを使えば大体みんなすごいことができる」世界線では、これまで理系人材が提供してきた専門的な知見や技術の需要が低くなるとされている。東大・松尾豊研究室出身で、著書『生成AIで世界はこう変わる』(SBクリエイティブ)がベストセラーになっているAI研究者の今井翔太さんも、そう予測する一人だ。
まことしやかに囁かれる理系人勢の終焉に、どう立ち向かえばいいのだろうか。
生成AI時代に必要なのは、理系だの文系だのと括るのではなく、「自分は変わり続けるのだ」という気持ちを持つことです。
僕は今、AI研究者として偉そうなことを言っていますが、この先には自動研究の流れも来ると思います。実際、つい先日、研究プロセスの大半を自動でやってくれる「AIサイエンティスト」という技術がSakana AIが開発しました。
こうした技術が進むと、今僕がやっている研究業務の大半がAIで置き換えられるかもしれない。でも僕はそれでもいいと思っています。そうなれば僕はAI研究者以外の道も検討するかもしれません。AIにできないところを集中的にやればいいし、自分が変わればいいじゃないか、と。
いつ、何が変わるかははっきりとは分かりません。ですが、すごい変化が起きてしまうことだけは確実です。「その度に自分は変わるのである」という気持ちを持ち続けることが、非常に重要だと思います。
「そもそも、大学で文系・理系を分けていること自体がおかしい」と口にする今井さん。研究室で師事した松尾豊先生に教えられた「技術以外のこと」について、編集部に明かしてくれた。
生成AIの盛り上がりで、アプリケーションのエンジニアは減少?
7月末、エンジニアを中心に拡散され話題となったはてなブログ「ITクソつまんなくなった。」。
エンジニアtypeで人気連載を持つひろゆきさんに、このブログに対して率直な意見を求めたところ「生成AIばかりが盛り上がったりすると、日本のIT産業は沈みゆくよなぁ」とのコメントが。
昨今のIT業界のAIブームの話になりますが、AIに命令を出すだけで「色々」出来ちゃうよね、、、と言われてる状況です。その「色々」がどんどん多岐に渡っていて人間がやるよりも優れたコードを素早く出すようになってきてたりします。
インフラ回りはクラウドを使って、ミドルウェアを載せて、AIがアプリケーションを書いて、グラフィックもAIに生成させる、、となるとエンジニアの職人芸は必要なくなるのですね。
現状でもクラウドのインフラであるAmazonやGoogleやマイクロソフト以外の国のインフラエンジニアは減少しています。アプリケーションのエンジニアも減少していくのが予想できるわけですね。
そう語ったひろゆきさん。記事内ではひろゆきさんの中にあるエンジニアマインドが伺えるエピソードも紹介している。果たして、ITは「クソつまんなくなった」のだろうか。自分自身の考えを整理する機会としてみてはいかがだろうか。
人間が出せる価値とは「意味不明なことをする」こと
広くモノづくりに関連する業界を見渡せば、「生成AIによって権利が脅かされる」との懸念を抱くクリエーターが増えていることを感じる。実際のところ、AIの進歩はクリエーターに何をもたらすのだろうか。
大ヒット映画『カメラを止めるな!』で監督を務めて以降、テクノロジーが進歩した未来を描いたショート動画『みらいの婚活』で話題を呼んでいる上田 慎一郎監督は、自身の考えをこう述べた。
僕としては(AIの進歩を)ポジティブに捉えています。歴史を振り返ると、技術の進化にはプラス面だけでなくマイナス面が伴うのがスタンダード。ですが、結果的にプラスになることが多いと思うんです。
古くは産業革命の時代にも「人の仕事がなくなるのでは」と言われていましたが、ただ単に失われるのではなく、機械の発展に伴って新しい仕事が生まれましたよね。だから最近のテクノロジーの進歩も、大いにプラスの面があるはずです。
例えば業務を効率化したり、人間をもっとクリエーティブにしたりすることが、AIにはできると思います。
その上で、上田監督が思う人間が出せる価値とは「意味不明なことをする」ことだという。
過去作品のレールに乗るのではなく、いかにレールから外れるかを、人間が積極的にやっていくんです。
僕の場合、映画を作るときは「構築」「破壊」「再生」の3ステップを大事にしています。
上田監督が実践する「構築」「破壊」「再生」の3ステップは、エンジニアやクリエーターとして働く上で活かされるに違いない。記事ではより具体的に解説している。
文/エンジニアtype編集部
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