日々流れてゆく膨大な情報量の中からおいしいネタを敏感に察知し、ネット界隈を賑わせてくれるWeb業界の異端児・村上福之氏。同氏独自の経験と価値観から、「キャラ立ちエンジニア」の思考回路を紐解いていく。

サーバの正しい使い方~時代はクラウドで誰でも安くサービス作れるんですよHAHAHAとかいう奴は、しまじろうと算数の勉強してくれ【村上福之】

「時代はクラウドで誰でも安くサービス作れるんですよ」とかいう奴は、しまじろうと算数の勉強してくれ。
ぶっちゃけ、クラウドってウィークリーマンションなんですよ。
最近、「クラウド=安い!」と勘違いしている人、多いです。そして、多くの身銭切ってる人からすると説明するのが面倒くさいので「あーそうですねー」って流したりします。ケースバイケースで何とも言えない世界なので、説明が面倒くさいんです。
もう一回言うと、クラウドってウィークリーマンションなんですよ。
ワンルームのウィークリーマンションって、東京でも家具付きで週2~3万円くらいで借りられるじゃないですか。月10万前後。短期的に見れば、敷金礼金も審査も賃貸契約書もないから楽で速くて安いです。でも、1年住むという話になれば、普通に賃貸契約して、面倒くさい賃貸契約を結んで、家具も買って、7~8万のワンルームマンション借りた方がずっとずっと安いです。
クラウドもそうなんですよ。
Amazonも値段が時間単位で米ドルいくらとか、ストレージ(HDD)何GBあたり0.1ドルとかナントカ言ってるじゃないですか。さくらも日割りでいくらとかナントカ言ってるじゃないですか。クリック一発でインスタンス(仮想サーバ)が増えるのはいいんですけど、長期間借りると、クソ高いんですよ。うっかり変な使い方をすると、倍以上コストが掛かります。
クラウドvs物理的サーバの良いとこ、悪いとこ

From VIA Gallery 「サーバルームに何台も置いて…なんて前時代的」という声もあったりするが、その判断の成否は状況によって変わる
確かに、何台サーバがいるのかサッパリ分からない時は、クラウドがラブリーです。
ガーっていっぱいインスタンス(仮想サーバ)を作って、状況見て、増やしたり、減らしたりすればいいや、という運用ができます。高くても落ちるよりマシです。
あと、AWSはいろんなサービスがあって、異常に高機能ですし、楽ちんです。Amazon RDSというデータベースがあるんですけど、高いんですけど、スケールが容易なうえに、バックアップが自動だったりするので、楽ちん過ぎて、脳みそが退化しそうです。
一方、クラウドでない物理的な専用サーバは、用意するまでに数日掛かる上、初期費用が数万円掛かりますし、契約は月単位なんですよ。手間ひま掛かりますが、使い方によっては長期的に見てクラウドより安いです。
あと、物理的なサーバだと分散処理のインフラエンジニアのコストが掛かるんです。その辺りが面倒なのですが、アクセス量が安定しているなら、一度作ってしまうと、物理的なサーバの方がどう考えても安いです。構成を複雑化してコストダウンすることもできる。
まぁ、何かあった時にAWSほど助けてくれませんが。
何がしたいかはっきりしないのに「クラウドですわー」とか言うな
経験的に、中規模以下の案件でアクセスがあまり多くなさそうな場合は、クラウドのサーバを使わない方が安いケースが多いです。
こんだけWebがある時代なので、過疎状態のサービスの方が多いんです。クラウドの力を発揮するのはスケールするサービスだけです。
でも、開発会社はヒマじゃないので、面倒くさい時は、小さい案件でも「手っ取り早いから」という理由だけで、クラウドを使ったりします。
面倒くさいもん。カネで楽ちんを買うんです。世の中カネです。
アクセスの規模がまったく読めない、ソーシャルゲームやナショクラのキャンペーンなどは、クラウドでガーッと作ってもらってウェルカムなんですよ。しかし、どう考えてもヒットしなさそうなサイトや、ある程度実績があって、アクセスの量が読めてしまうケースは、地道にVPSの方が安いんですよ。
「ココとココはデータセンターで、ココとココはクラウドで、ココは専用サーバで」と、いろいろ混ぜ混ぜして、振り分けることもあります。面倒くさいですけど、コストダウンを求めるなら、そういう構成もありなんです。
Dropboxなどはそうですね。ストレージはAWSのAmazon S3を使っているんですけど、フロント部分はほかの安いサーバを使っています。
昔、僕が電子書籍サービスを作った時も、フロントを国内製のVPSにして、ストレージだけAmazonにしました。理由は、VPSはコストが予測できるから。
そんなわけで、何でもかんでも「時代はAWSなんですわー」という人や、「クラウドですわー」という人は、予算がない時は、好きじゃないです。

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