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オフィス向けランチ宅配サービス『bento.jp』が平均10分のスピード配送を実現できるワケ
今回紹介するのは、オフィス向けランチ宅配サービスを社内販売する『bento.jp』を提供する株式会社ベントー・ドット・ジェーピー。注文してから届くまでわずか20分という圧倒的な配送スピードは、いかにして実現したのか。徹底して「速さ」にこだわる理由とは。
『bento.jp』とは
『bento.jp』は、2014年4月に誕生したばかりのオフィス向けランチ宅配サービス。最大の売りは、注文から弁当が届くまで20分以内という、圧倒的な配送スピードだ。
住所、氏名、メールアドレスを事前に登録しておけば、スマートフォンを数回タップするだけで、注文は完了。その手軽さから弁当版『Uber』とも称され、IT業界を中心に、SNSなどを通じて注目を集めている。
既存の宅配サービスが会議などのスケジューリングされた大人数向け顧客がターゲットだったのに対し、『bento.jp』はオフィスで働くすべての人の、普通のランチ需要を見込んでいる。
ミシュランで星を獲得したレストランで修行したシェフが作る日替わり弁当が配送料込みで800円と、価格も比較的手ごろだ。
同月10日のサービス開始直後は、初回無料のキャンペーンを実施していたこともあり、分単位で100件を超えるペースで注文が殺到。一時サービスを停止する事態にまで発展した。当初予定していた配送エリアをひとまず渋谷区の一部に制限するなど軌道修正を余儀なくされたが、一方で、サービスの需要が決して小さくないことを印象付けた。
アイデアの出発点:ECサイト運営を通じ「即日配送」の可能性を直感
『bento.jp』の運営会社ベントー・ドット・ジェーピーは、2014年1月の創業。数十人が登録しているアルバイト配達スタッフを除けば、代表取締役の小林篤昌氏と、開発担当の齊藤正浩氏の2人だけという小所帯だ。
サービスの起源は、5年ほど前にさかのぼる。小林氏は大学卒業後にWebマーケティングなどを手掛けるイトクロに入社。上海支社立ち上げにかかわり、ソーシャルゲーム事業のプロデューサー職を務めた(後にKLabに事業譲渡)。数年間働く中で日々感じていたのは、ビジネスマンの食生活の物足りなさだった。
「自分のいたソーシャルゲーム事業で言えば、開発やユーザー対応に追われてランチタイムに外に出られないといったことは日常茶飯事でした。そうなると、ランチの選択肢は良くてコンビニ、時には食べられないことだってある。もっと気軽に、しっかりしたものを食べられるようにしたいという問題意識がありました」
KLab退社後、今度は高校時代の同級生が立ち上げた誕生日ケーキのECサイト『クリックオンケーキ』にかかわることになった小林氏。ユーザーの利用の仕方を分析する中で、あらかじめ誕生日が分かっているはずなのに、直前になって駆け込みで注文する人が多いことに気が付いた。
「購入日と商品到着日の差分をとってみると、直前の購入が非常に多かったんです。ケーキは2日前の注文が必要でしたが、これなら前日、当日の注文で物が届く『即日配送』の需要が間違いなくある。漠然とではありますが、そう考えるようになりました」
選択肢の乏しいビジネスマンのランチを、即日配送の弁当宅配サービスによって改善する-。『bento.jp』のサービスのコンセプトは、こうして徐々に像を結んでいった。
開発のポイント:GPSを用いた半自動住所入力で「注文まで」も高速化
到着まで20分以内を謳う『bento.jp』の配送の仕組みはこうだ。
まず、注文が来る前から配達スタッフがいくつか弁当をもって、担当エリアにスタンバイ。注文が来ると、一番近いスタッフが自転車で指定の住所まで届ける。中層ビルが多く、一方通行の道が入り組んだ渋谷区のオフィス街に適したゲリラ的な手法と言える。
オフィスや抜け道など、新たに得られた情報をスタッフがフィードバックすることで、その速度と精度はさらに高まっていく。
スピードの追求は、「注文から届くまで」にとどまらない。「注文まで」にかかる時間を削ることにこだわったのも、『bento.jp』のサービスの特徴だ。構想当初にあったWeb対応を廃し、スマートフォンアプリ1本に特化したのは、まさにその表れ。開発担当の齊藤氏は、この「ワンタップ、ツータップで物が届く世界」に共鳴して、プロジェクトに立ち上げ時から加わった。
この「注文まで」のスピード感を実現する上で、今なお試行錯誤を続けているのが、煩雑な住所入力をいかに簡素化するかという点だ。
いくつかのアイデアを試した結果、現在は、GPSで得た位置情報を周辺の建物情報などと結びつけることで住所の候補を自動的に入力し、階層情報などのどうしても得られない部分をユーザーが手動で補う「半自動」の仕組みが採用されている。スタッフの配送オペレーション同様、こちらもユーザーの利用が進めば進むほどデータが蓄積され、精度は高まっていく。
「位置情報取得に関しては、Google MapsやFacebookなど、いくつかのAPIを使ってみましたが正確な情報が得られず、なかなかハマりませんでした。最終的に今は、FoursquareのAPIを使うことで落ち着いています」(齊藤氏)
リアルな「驚き」の体験がもたらす好循環
サービス開始直後のアクシデントを乗り越え、現在は渋谷区内で順次エリアを拡大している。配達にかかる時間は最短2分、平均で10分といい、ユーザーからのリアクションも上々のようだ。
「到着の電話を入れると、たいていの場合、『え、もう?』という風に驚かれます。スマホでタップしてから10分しか経っていないのに、もうドアの向こうにいるんですから。そうした面白さも手伝ってか、繰り返し注文していただけるリピーターの方も多いです。中には6営業日連続で注文してくれる方も出てきています」(小林氏)
一方で、「驚き」をともなう体験は、さらなる好循環をももたらしている。
「配達スタッフの仕事への満足度が高いんです。お客さまが喜ぶ様子を一番間近で目にするのが配達スタッフですから、良い仕事をしている、新しいサービスにかかわっているという実感が持てるということではないでしょうか」(齊藤氏)
見据えるのは「ファストデリバリー」の時代 物流の最適化を目指す
技術的には、起動しているアプリの位置情報を基にした人員配置のさらなる最適化も可能という。サービスエリアについては、年内をめどに都内の主要なオフィス街すべてに広げることを視野に入れており、各地の特性に応じたオペレーションで、引き続き埋もれたオフィスランチ需要を徹底して掘り返していく。
『bento.jp』がこうした徹底したスピード化の先に見据えるのは、物流の最適化だ。
「ほんの数年前は、注文したものが1週間後に届く世界に、何の不満もなかった。それが、今では注文した翌日に届くのが当たり前。1週間も後と言われたら、そんなに遅いならやめます、となる。人はどんどん便利さに慣れていくんです。注文して数時間、数十分後に物が届く時代、『ファストデリバリー』の時代が、近い将来に必ず来るはずです」(小林氏)
リアルな商習慣や人々の行動習慣の変革を目指すことを目標に置くWebサービスも少なくない中、小林氏の考えは少し違うようだ。
「リアルとかネットとかって、シンプルに言えばインターフェースの変化です。ユーザーと商品が接するまでのフローが違うので、ネット化することで必ず物流が必要とされます。そのため、的確に速く運べる物流網は、今後多くの顧客/事業に必要とされる、大きな価値になると思っています。製造~販売~宅配という工程がある中で、『bento.jp』が『製造』、『販売』はもちろんですが、『宅配』にこだわるのは、そういう理由です」
取材・文/鈴木陸夫(編集部) 撮影/竹井俊晴
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