転職Vol.317

名刺管理アプリ『Eight』100万ユーザー達成の裏側にあった、「一つの大転換」と「いくつかの小さな改善」

Sansanが提供する一般ユーザー向け名刺管理アプリの『Eight』が、昨年末に100万ユーザーを突破。世のビジネスパーソンにとって不可欠なサービスとして、その地位を着々と固めつつある。

ユーザー数100万人を突破した『Eight』
ユーザー数100万人を突破した『Eight』

この勢いの裏側には、きっと優れたグロース施策が打たれていたに違いない——。そんな仮説の下に『Eight』開発陣にインタビューを行ったところ、「最近になって大きな動きがあったという認識はない」という、そっけない答えが返ってきた。

しかし、さらに突っ込んで話を聞いていくと、ここへ来ての安定した運営を支えているのは、2013年に行った「大きな一つの転換」と、その後に続く「いくつかの小さな改善」の賜物であることが分かった。

マルチデバイスプラットフォームを捨て、開発体制を一新

(写真左から)『Eight』の開発を担当している永島次朗氏と桑田健太氏

(写真左から)『Eight』の開発を担当している永島次朗氏と桑田健太氏

2013年の「大きな転換」、つまりバージョン4.0へのアップデート以前、『Eight』のアプリエンジニアはAndroid担当の桑田健太氏ただ1人。現在iOSを担当する永島次朗氏はまだ入社しておらず、iOSの開発は外部に依託していた。

しかし、このアップデートを機に開発体制を見直した。

「それまではPhoneGapベースのマルチデバイスプラットフォームを使用し、HTML5のワンソースで開発していましたが、ワンソースの開発を辞め、iOS、Androidをそれぞれ別々に開発する体制へと移行しました。将来的に、それぞれのプラットフォームに合わせたデザインや、機能の細かなチューニングが必要となることが予想されたためです」(桑田氏)

今後の飛躍のため、既存の開発体制を刷新したという
今後の飛躍のため、既存の開発体制を刷新したという

テストや実装に掛かる時間や人的コストを考えると、効率の良いマルチデバイスプラットフォームでの開発は捨てがたかったが、日に日にそれぞれの特色を色濃くしていく両OSのUIや操作性の変化に危機感を覚え、大きな決断を下したのだった。

「『Eight』のユーザーはビジネスパーソンが中心ですから、毎日安定して使えることが必須条件。ワンソースで開発を行っていた時には、画面表示やアニメーションの滑らかさなど、パフォーマンスに課題を残し続けていました。この時の転換により、UIとパフォーマンスの両面で課題を克服できたことが、その後の伸びにつながったと思います」(桑田氏)

UIはよりシンプルなものへと刷新され、高い処理速度も実現。それまでの名刺を“ためる”アプリから、“つかう”アプリへと変貌を遂げたことで、『Eight』はその後、大幅にDL数を伸ばすことになった。

小さな改善の積み重ねの結果、アプリランキングと検索流入が上昇

こうして再スタートを切った『Eight』は、2013年中に50万ユーザーを達成。そしてiOSエンジニアの永島氏が加入する。

「入社後、手始めに提案したのが『レビュー表示機能』の改善です。アプリを起動させたタイミングでポップアップ表示するように仕様を変更しました。さらにスケールしていくためには、App StoreやGoogle Playでの評価を高めていく必要があったからです」(永島氏)

『Eight』ではそれ以前にもレビュー機能の細かいチューニングを重ねており、一定数のレビューは集まっていたが、改善の効果は歴然。それまで10位前後で推移していたアプリランキングで、初めて一桁台に躍り出た。

様々なアプリを見て、触れてヒントを掴んだと語る永島氏
様々なアプリを見て、触れてヒントを掴んだと語る永島氏

さらにこの改善はSEO面でも効果をもたらし、Google検索順位は従来の2位から1位へと上がった。現在、『Eight』のレビュー数は多い時でApp Storeだけで1000を超える。App Storeビジネスカテゴリ無料ランキング上位のアプリが2桁台の中、一際目立つ数値を残している。

またGoogle Playでも今年日本で人気を集めたアプリとして 『ベスト オブ 2014』に選出された。

その後も、初起動時のナビゲーションや撮影機能のチューニング、登録条件の緩和など、「小さな改善」をいくつも積み重ねていったと桑田氏は言う。

スピーディーな開発を実現すべく、iOSではJenkinsによる解析や単体テスト、AndroidでもRobotiumを使ったテストを導入するなど、開発体制にも細かく「改善」を加えていった。

UXの改善に終わりはない

こうした「大きな転換」と「小さな改善」の積み重ねにより、100万ユーザーを達成した『Eight』。次なる施策として、2月には以前よりユーザーからの要望が多かった、名刺データのダウンロードや全項目入力機能を備えたプレミアムサービスをリリースした。

『Eight』のたゆまぬ「改善」の積み重ねに終わりはない。今後、『Eight』に取り入れたい機能や、さらなる改善点について、桑田氏と永島氏に聞いてみた。

「現状の『Eight』では、名刺をカメラで撮影する際に、シャッターボタンを押さなければなりません。ここに認証形式を導入することで名刺をかざすだけで撮影できるよう自動化し、UXを高めることに挑戦したいと考えています。実は先日、業務外でプロトタイプでの実装には成功しているんです」(永島氏)

「Androidに関しては、マテリアルデザインに沿ったUI、多様化するデバイスにも対応しなければならない。そのためには『Eight』は今後も変わり続けないといけないと思っています」(桑田氏)

取材・文/川野優希(編集部) 撮影/赤松洋太

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