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ハードとソフト、二足のわらじを履いたエンジニアだから分かるIoTの勘どころ【30分対談Liveモイめし:大森正則×Safie森本数馬】

働き方

    『ツイキャス』を運営するモイの代表取締役で、経験豊富なエンジニア赤松洋介氏が、週替わりで旬なスタートアップのエンジニアや起業家を招いて放談する「モイめし」。『ツイキャス』連動企画として、お昼に30分の生放送&その後のフリートークも含めて記事化したコンテンツをお届けします!

    ツイキャス』を運営するモイのエンジニアがホストを務め、週替わりで旬なスタートアップのエンジニアや起業家を招いて放談する「モイめし」。今回のゲストは、クラウドホームセキュリティーのプラットフォームを開発するSafie取締役であり、エンジニアの森本数馬氏だ。

    Safieは、弊誌連載『NEOジェネ!』でも取り上げた新進気鋭のIoT分野のスタートアップ。ソニー、グリーなどでハードウエア、ソフトウエア双方のエンジニアとしての経験を積んだ森本氏は、昨年、クラウドを活用したホームセキュリティーの革新を目指して、共同創業者とともにSafieを立ち上げた。Safieの開発には、ハードウエアとソフトウエア、二足のわらじを履いたからこその強みが活かされているという。

    なお、「モイめし」は今回から、モイで働くエンジニアたちがテーマやゲストに応じて交代でホストを務める形式にリニューアル。今回は、代表取締役の赤松洋介氏とともにモイを黎明期から支えてきたインフラエンジニアの大森正則氏が森本氏に迫った。

    プロフィール画像

    Safie株式会社 共同創業者 取締役
    森本数馬氏

    2001年にソニーに入社し、半導体デバイスのセールス&マーケティング、ハードウエア・ソフトウエア開発、Google TVのソフトウエア開発などを担当。グリー、ソニーの関連会社であるモーションポートレートを経て、14年にクラウドを用いたホームセキュリティーの革新を目指し、Safieを起業した。現在はSafieのサーバー・インフラチームを統括している。

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    モイ株式会社 ディレクター
    大森正則氏

    大手電機会社、サイボウズでソフトウエア開発エンジニア、マネジャーを経験し、赤松氏が立ち上げたモイの前身であるサイドフィードに入社。ツイキャスのサービス開始から、インフラエンジニアとしてサーバー/ネットワークの運用を担当し、現在に至る

    ハードウエアとソフトウエアからソフトへとシフトしていったソニー時代

    大森 森本さんは東大で応用物理学を専攻されていたということですが、ハードウエアの設計なども大学のころから学ばれていたんですか?

    森本 いえ、応用とは言いながらもそのころは理論系、数式関係がもっぱらでした。ハードウエアをやるようになったのは完全に社会に出てからですね。

    大森 ただ、ソニーに入社された直後はマーケティング担当だったそうですね。

    森本 大学の時に半導体を研究していた関係で、半導体絡みのセールス&マーケティングの部署に配属されました。もともとエンジニアリングがやりたくて入っているので、すぐにでも出ようと思ったんですけど、「いいか悪いかは3年やってから判断しろ」と言われて、ソフトの開発などと並行しつつ3年やりました。

    大森 その後ようやく希望していた開発部門へ異動になるわけですが、ハードとソフト、両方の開発を?

    森本 もともと希望はソフトだったのですが、最初はハードウエアから。半導体部門はデバイスを売るのがメインだったので、ソフトはそんなに需要がなかったんです。そこから、ハードウエアを評価するソフトの開発、BootROM、OS、ミドルウエア……という感じで、下から順番に上がっていきました。

    大森 扱うハードは特殊なものだったんですか?

    森本 いえ、特殊というわけではないですね。当時はARM系をメインでやっていました。ARMの低スペックのコアを用いたメディア向けのチップだとか……。

    大森 じゃあ今やっているSafieに結構つながってます?

    森本 そうなんですよ。丸々つながっていて。

    大森 ソニーには11年いらして、Google TVの開発にも携わったとか?

    森本 はい。開発はアプリ層とシステム層とに分かれていて、私はシステム層のまとめ役をやっていました。Androidベースでアプリもインストールできるつくりになっていたので、セキュリティーアーキテクトとして活動したりもしていました。

    大森 ハードウエアとつながるドライバ的な部分も?

    森本 基本的にはベンダーからいただけるものなのでそのまま使いつつ、問題があればチューニングなどは自分でしていました。

    Safieがあえてハードウエアの自作に手を出さない理由

    大森 実は、自分も大学時代は電気電子工学科にいてハードをやっていたんですが、4年の研究の段階から情報工学の方に移ってしまって、人工知能などの研究をしていました。そこからはずっとソフトウエア畑。そういう背景もあって、自分としてはハードもソフトも作れるというエンジニアというのは憧れの対象なんです。やはりご自身の強みになっていますか?

    森本 そうですね。自分個人としてもそうなんですが、Safieという会社としてもそこが大きな強みの一つになっていると思っています。

    大森 カメラは専業のメーカーさんから提供を受けているということですが、御社の中でもテスト用にハードウエアを自作したりするんですか?

    森本 実はハードウエアの自作は以前検討していたのですが、採算が合わず……。現在のような製品の形になる以前には、むき出しの基盤があるだけの状態だったので、そのころは基盤にソフトを焼き込んで、もろもろ動かしたり、サーバにつなげるテストをしたりしていました。

    大森 なるほど。それでスピーディーな開発ができたわけですね。オフィスには電子工作の工具などがひと通りそろっているのですか?

    森本 以前はありましたが、今はないですね。

    大森 とすると、ウチの方があったりするのかな(笑)。弊社のサーバは2013年9月からデータセンターで運用しているのですが、それ以前はオフィス運用していたんです。だから当時の工具が今でもいろいろあります。当時はハードウエアのリセット信号をリモート制御するマイコンを自作したりもしていましたよ。

    森本 それは思いっきりハードの会社ですね(笑)

    大森 モイは現状、『ツイキャス』を運営する会社ですが、ライブ配信だけというより、ユーザーのコミュニケーションを活性化すること全般についてのサービスを提供していきたいと考えているんです。そのため、今後はライブ配信以外のところも考えていて、ハードウエアと組み合わせたところでどう開発していくのかというところには非常に興味があります。

    森本 なるほど。ただ、一方でハードに手を出してしまうと、際限がなくなってしまうところもありますよ。だからSafieでは現状、ハードウエアそのものには手を出さないようにしているんです。そこをずっとやってきたからこそ、手を出すと大変なことになるということが分かっているので(笑)

    大森 だから現時点では封印してソフトなりプラットフォームなりの開発に注力するということですね。ただ、それでもずっと経験してこられたハードが好き?

    森本 好きですね。今でも作りたい気持ちはありますし、いずれはまた。

    どこまでの機能をハードウエアに、どこからをソフトに持たせるか

    大森 『ツイキャス』と『Safie』には映像を扱うサービスという共通項がありますが、『ツイキャス』はオープンなコミュニティだからストリーミングデータを生で送っているのに対し、『Safie』では暗号化してセキュリティーに気を使っていますね。この暗号化ストリームの開発も森本さんが?

    森本 私ともう一人のエンジニアとで行っています。

    大森 独自の制御方式を採用しているとか。

    森本 はい。今までのカメラはそれ自体がサーバになっていたので、セキュリティーが怪しかったり、外からアクセスできなかったりといった課題があったのですが、『Safie』ではカメラはあくまでクライアント。ウチのサーバにつないで初めて動くようになっており、カメラの制御もストリーミングもサーバからコントロールしています。

    大森 ということは、ハード側は小型化に注力できるわけですね?

    森本 そうなんです。だからやろうと思えばもっと小型のものにも載せようと思えば載せられます。

    大森 そうするといろいろと可能性が広がりそうですね。どこまでの機能をハードウエアに、どこからをソフトウエアに持たせるかというところまで含めた設計というのは、ハードウエア設計の経験がなければできないことでしょう。

    森本 そこはやはり強みですね。

    大森 アプリに関しては当面はiPhoneだけということですか?

    森本 まずはiPhoneアプリの開発を進めていますが、3月末のローンチのタイミングではPCでも見られるようにしたいと思っています。Androidアプリも6月には出す予定です。

    大森 エンジニアがわずか3人という少人数で開発しているそうですから、相当に大変なのでは?

    森本 一部は外にお願いしないと回らない状態ですよ(笑)。もし興味のあるエンジニアの方がいたら、ぜひとも来ていただきたいですね。ハードからソフト、アプリまでできる開発環境はなかなかないですから。

    大森 両方設計できるというのは本当にいいですよ。自分も電子工作くらいは今でも趣味でやっていますが、サーバを外に出してしまってからは仕事で触る機会はないですから。ちなみにモイではインフラはほとんど私一人でやっているので、インフラエンジニアにはぜひ来ていただきたいです

    森本 今後はモイさんでもガジェット系を、ということですよね?

    大森 まだ具体的なものはないですが、いずれはやっていきたいですね。

    森本 その際はぜひ、うちのカメラとつないでもらって(笑)。

    大森 ウチのサーバに負担のない範囲内であればいいかな(笑)。Safieではサーバはクラウドで構築しているんですか?

    森本 そうですね。どこのサービスを使うかでコストが大きく変わるので、最適なやり方を今も模索中です。ここに掛かるコストがサービスのプライスに直接的に響いてきますから、結構な悩みどころです。

    大森 従量課金であれば使われれば使われるほど安くなるので、なるべく早くにサービスが広がるといいですね。

    取材・文/鈴木陸夫(編集部)

    ■「モイめし」は毎週水曜日の12時半から
    配信アカウント:https://twitter.com/moi_engineer
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