キャリアVol.426

エンジニアとしてずっと新しいモノを作り続けていくには~旬の技術者4人が語るキャリア論【キャリアごはんvol.2レポ】

【2016年の「技術と働き方」先読みワークショップ】をテーマに開催した第2回キャリアごはん

【2016年の「技術と働き方」先読みワークショップ】をテーマに開催した第2回キャリアごはん

エンジニアtypeと@typeは12月17日、「技術と働き方の未来予測」をテーマに「第2回キャリアごはん」を開催した。パネルディスカッションとワークショップの2部構成で、前半のディスカッションでは以下の4人のゲストパネラーに「エンジニアとして、新しいモノを作り続けるためにはどうすればいいのか?」を聞いた。

楽天株式会社 技術理事 吉岡弘隆氏
■株式会社トレタ CTO 最高技術責任者 増井雄一郎氏
■株式会社ソラコム Cofounder&CTO 安川健太氏
■フリーランスiOSエンジニア 堤修一氏

国内外の大企業やスタートアップ、フリーランスとさまざまな働き方をしてきた4人は、キャリアメイクの面でどのようなことを意識し、実践しているのか。ディスカッションの内容をレポートする。

報酬だけで仕事は決めない。その後のキャリアにどう影響するか

近年はBLE技術関連の開発で実績を積み上げているフリーランスのiOSエンジニア堤修一氏
近年はBLE技術関連の開発で実績を積み上げているフリーランスのiOSエンジニア堤修一氏

フリーランスの堤氏は、昨年から2015年の前半にかけて、『WHILL』や『Moff』、ウエアラブルトランシーバーの『BONX』など、iOSアプリとハードウエアをBLEでつなぐ仕事に注力。BLE技術に関する書籍も執筆した。

そして、今年後半は2年前に試みたものの頓挫していた「海外で働く」を実現すべく、自費で渡欧し、ドイツ・バンベルクを拠点に1カ月にわたって現地のスタートアップで開発に携わった。

こうして自分がやりたいと思う開発を仕事にできているのは、「キャリアの転機のような大きな変化もあるにはあるが、それよりも日々の地道な積み重ねの方が大きい」と堤氏。そのために意識しているのは、「お金だけもらえる仕事をしないこと」と言う。

「たとえそのアプリを作ることが世の中にとって意義深くても、自分でなくてもいいと思えるような仕事を受けると、自分がどういうエンジニアなのかがぼやけてしまう。その仕事が実績に変わった時にキャリアにどのように影響するかは、常に意識するようにしています」

起点となる「最初の実績」については、「会社でがむしゃらに働いていれば、それが全て自分の経験になり、多かれ少なかれ実績はできる。それを日々積み重ねていくことで、だんだんと流れが生まれるのではないか」と話した。

GitHubが履歴書になる時代。手を動かしてプレゼンスを示せ

トレタCTOの増井雄一郎氏は、オープンソースでの活動を起点にキャリアを切り開いてきた
トレタCTOの増井雄一郎氏は、オープンソースでの活動を起点にキャリアを切り開いてきた

増井氏も、トレタで現職に就くまではフリーランスで活動したり、米国で起業したりと、自分が望む多様な働き方を実現してきた。多くの場合、その起点には「オープンソースの活動があった」という。

『Titaniam』などで知られる米Appceleratorに入った際には、同社の製品がオープンソースであったために入社以前からコミットしていたこと、GitHubのスターが社員の誰よりも多かったことが技術力の保証となり、言葉の壁を超えて評価を受けることができた。

「GitHubはいまや履歴書であり、アーティストにとってのポートフォリオのような役割を果たしている」と増井氏は指摘する。

CTOとしてエンジニアを採用する側に回った今、トレタでは「GitHubのアカウントを持たず、ソースコードを公開していない候補者は、会って話したところで技術力が測れないため、書類で落とすようにしている」と言う。

一方で個人としては、1年に1度「英語で講演すること」とともに「個人プロダクトを作って広く公表すること」を自らに課している。フリーランスから会社所属へと立場を変えた今も、自ら手を動かし、イチ技術者としてのプレゼンスを示すという視点は忘れていない。

「自分の新しい体験のための転職」がもっとあっていい

海外の超大手企業を渡り歩いてきたソラコムCTOの安川健太氏は、「自分の新しい体験のための転職がもっとあっていい」と呼び掛ける
海外の超大手企業を渡り歩いてきたソラコムCTOの安川健太氏は、「自分の新しい体験のための転職がもっとあっていい」と呼び掛ける

転職、起業という道を選ぶことで自ら新境地を開いてきたのが、ソラコムCTOの安川氏だ。現職に就任するまでは、Ericsson、Amazonと海外の大手企業を渡り歩いてきた。

Ericssonのリサーチ部門にいたころから、「500億のデバイスがネットワークにつながる未来」を想定したサービスを考えたり、開発したりしていたという。その意味では、IoTプラットフォームを目指すソラコムまで一貫したテーマを扱っているといえる。

ただ、そうした未来を実現する上でカギになるであろうクラウド技術について、当時の安川氏は明るくなかった。社内の技術者に聞いても、専門外の技術について明快な答えをくれる人はいなかった。「であればむしろ“そっち側”に飛び込んでみよう」と考えたのが、異業種のAmazonへと転職したきっかけという。

一貫して海外で働いてきた安川氏は、「自分の新しい体験のために会社やポジションを変えるという転職が、日本でももっとあってもいいのではないか」と呼びかける。

もちろん、異業種に転職する上では過去の実績が実績として通用しないリスクもある。安川氏は「自分のキャリアを振り返ってアピールできそうな経験をつなぎ合わせ、チューニングするといったことは必要かもしれない」とも話していた。

今の時代、「石の上にも3年」はあり得ない

楽天・技術理事の吉岡弘隆氏は、自身の経験に照らして「目の前の仕事で結果を出すことも重要」と強調
楽天・技術理事の吉岡弘隆氏は、自身の経験に照らして「目の前の仕事で結果を出すことも重要」と強調

楽天で技術理事というポジションにある吉岡氏は、4人のパネラーの中でもエンジニアとしてのキャリアがひときわ長い。大学を卒業して入社したのは、米国に本社を持つDECの日本支社だった。

ソフトウエアエンジニアリングの世界に華やかなイメージを抱き、米国本社で働くことを希望して入社した当時の吉岡氏にとって、最初にアサインされたCOBOLのコンパイラ開発は「非常に地味で退屈なものに映った」という。

しかし、実際の開発に従事し、「頭でっかちだった」自分が技術的に未熟だったということを思い知ると、退屈に映った開発はむしろ非常に面白いものと感じられるようになった。

実践の中でエンジニアリングの「いろは」を学び、見よう見まねで技術力を向上させたことで、5年目には希望通りに本社から声が掛かるに至ったという。

「やりたいことをやるためには、目の前の仕事で結果を出すことも重要」と吉岡氏は強調する。

一方で、「現代の時間の流れにおいて『石の上にも3年』はあり得ない」とも話す吉岡氏。「増井さんが言うように、自分が興味のあるオープンソースに勝手にコミットするなど、主体的に行動することで、やりたい開発ができる立場に到達するスピードは加速するだろう」とアドバイスを送っていた。

新しいモノは「プロダクト愛」を感じるチームから生まれる

さらに話題は、新しいものを生み出せる「チーム」へと移っていった。フリーランスという立場上、さまざまなチームに入る機会がある堤氏から見ると、良いチームとそうでないチームには、差を感じるポイントがいくつかあるという。

中でも他のパネラー陣から共感を呼んでいたのが、「プロダクトへの愛を感じるチームかどうか」だ。

「例えば飲み会に行った時にプロダクトの話が一切出ないとか、作業が中途半端なのに時間が来るとすぐに帰ってしまうのを見ると、このチームでプロダクトのことを毎日考えているのはファウンダーだけなのではないか?と思ってしまう」(堤氏)

この堤氏の例に深くうなずいた安川氏は、「幸い、うちのチームはお昼に行っても飲み会に行ってもずっとプロダクトの話をしていて、そうした中から新機能のアイデアがよく生まれる。自分も楽しいし、みんなも楽しんでいるという状態が、新しいものを作る上では好ましいのでは?」と続けた。

午後3時に「お茶会」と呼ばれるメンバー同士のコミュニケーションの時間を設けているというトレタでも、「日常的な会話をしていても、自然と新機能やお客さんからのフィードバックの話に移ることが多い」(増井氏)と言い、やはり「新しいもの」はこうした他愛もない時間から生まれやすいという見解を示していた。

「行動すること」が自分の人生を明確に決める

ワークショップでは、参加者から募ったテーマについて、ゲストパネラーを交えてざっくばらんに語り合った
ワークショップでは、参加者から募ったテーマについて、ゲストパネラーを交えてざっくばらんに語り合った

パネルディスカッションの後には、それぞれのキャリアやチームのあり方などについて、参加者同士が食事をしながら相談し合うワークショップを行った。

この話し合いにはパネリストの4人も加わり、海外と日本のワークスタイルの違いや人生の目標の立て方、オープンソースへコミットする際の手順など、参加者から寄せられたさまざまな質問に回答した。

約2時間半に及んだイベントの最後、吉岡氏は「行動すること」の重要性を強調。「実際に行動することが自分の人生を明確に決める。その意味では、自分の意思でここに来ている皆さんはもっと自分を褒めていい。来年の技術トレンドなんて関係ない。他の誰でもなく自分の心の中にある何かに灯をともしてあげればいいのでは」と後輩たちを励ましていた。

取材/伊藤健吾 文/鈴木陸夫 撮影/佐藤健太(いずれも編集部)

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