アイドル応援アプリ『CHEERZ』開発チームは、エンタメの新しいエコシステムを作り出せるか?
近年、『AKB48』をはじめ『ももいろクローバーZ 』、『モーニング娘。’15』、『でんぱ組.inc』などの活躍により、アイドル市場は右肩上がりの成長を遂げている。
一方で、社会的にスポットライトを浴びていないアイドルたちも数多く存在し、そうした未来のスターたちは、地道な営業活動を続けるしかない、という現状もある。そうした未来のアイドルたちとアイドルファンの接点を作るべく、スタートしたのが『CHEERZ』だ。
このアプリの運営元は、着せ替えアプリ『CocoPPa』に携わっていた関根佑介氏がCEOを務めるフォッグ株式会社。同社第2弾のアプリとして、2014年12月にリリースしたのが『CHEERZ』になる。
ユーザーはフィードに流れてくるお気に入りのアイドルの写真を選択し、CHEERと呼ばれる応援ボタンを押し続けるシンプルなサービス。ダウンドロード数は非公開だが、2015年3月時点で総CHEER数は4200万超、まもなく5000万に届く勢いだ。
2015年3月には海外展開の本格化を目指して英語、中国語(繁体字)に対応、追ってフランス語版も検討している。さらに、リアル展開ではCHEERZ参加アイドルが原宿・竹下通りにある人気アパレルショップ『Momo』のウインドウ看板に登場するなど、アプリ内にだけ留まらない展開を見せている。
多角的なビジネス展開を見せる『CHEERZ』が目指す場所はどこなのか。開発陣に聞いたところ、アイドル市場を守り、リアルと連携しながらサービスを育んでいく姿勢が垣間見えた。
メディアプロデューサーとしてコンテンツを作り続けてきた関根氏に『CHEERZ』の企画立案について聞いてみると、「アイドル業界とは無縁の人生を歩んできた」と語った。
「私が知っていたアイドルは『ももクロ』さんなど超有名な方くらいでしたが、アイドル市場の成長性は物凄いと感じていましたね。例えば、AKB48のCDを何百枚とまとめて買っているファンの方がいたり、アイドルと握手をするためにファンが喜んでライブ会場で長蛇の列を作っていたりなどです。
一方で、好きなアイドルの画像を見るという行為だけで考えると、アイドルたちはTwitterなどのSNSに自分の画像をアップロードしています。Liveで販売すると有料なのにソーシャルだと無料。リアル産業が生むプレミアム感はアイドル本人たちのものすごい努力の上で成り立っているのだと感心しました」(関根氏)
しかし、アイドルたちがTwitterでどんなにツイートしたとしても、フォロワーが増えなければ、ファンやこれからのファンに届けることができない、という課題を関根氏は感じたという。
「そこで、アイドルとアイドルファンが集まるプラットフォームを作る事業を考えました。Twitterと同じように画像をアップロードすることができるサービスです。効率的に届けられた画像をファンが応援することで、アイドルたちそれぞれが注目を集めることができないか、と思いました」(関根氏)
現在、『CHEERZ』はCHEERを押して、応援するという手法についてビジネス特許を出願している。この点について、関根氏は「日本では余り例のないこと」だと捉えている。その背景についてこう語る。
「フォッグとしては、『CHEERZ』で膨大な利益を上げることを考えていないんです。アイドル市場の正常な広がりに起因するサービスになればいいと思っている、これが本音です。フォッグのメンバーにエンターテインメント業界出身者も多いため、そうした考えにまとまりました。
正直、『CHEERZ』は類似性の高いサービスが生まれやすいサービスです。そのため、やり方によってはファンを煽って、搾取することだって考えられます。そうすると、市場自体が荒れてしまうということにつながってしまいますよね? だからこそ、ビジネス特許を取得することで、サービスとアイドル市場を守ることを考えました」(関根氏)
2013年、関根氏はフォッグを設立するにあたりエンジニア集めに力を注いでいた。そこで、前職時代のつながりから入社したのが、宇田好宏氏だ。
「『CHEERZ』はイベントを定期的に行っていて、イベント終了が近くなるとトラフィックが急激に増加します。もしそのタイミングで障害が発生してしまうと、アイドルやファンの方に迷惑をかけてしまいますし、サービスの信頼も損なってしまうため、耐障害性や可用性が高く、スケールしやすい構成を意識してシステムを構築しています。
サーバ関連は、全てAWSのサービスを使用しており、EC2やRDS、ElastiCacheはMulti-AZ構成にしているのは当然として、メインの画像や動画の配信はCloudFrontを、リアルタイム性の求められない処理はAmazon SQSを、負荷や時間がかかる動画変換はElastic Transcoderといった具合に、利用できるサービスはフル活用しています。また、管理するサーバは最小限にすることで、プロダクトに集中できる時間を増やして、開発スピードを落とさないようにしています」(宇田氏)
UIデザインを務める木附沢正彦氏は「アイドルたちを際立たせる」UIについてシンプルさを追求したと語る。
「『CHEERZ』は写真がアプリのメインになります。いかにアイドルたちをアイドルファンに可愛く見てもらうかが鍵。そのため、UIは派手でカッコいいと言うよりも、敢えて脇役として抑えることを意識しましたね」(木附沢氏)
『CHEERZ』の主役はアイドルの写真である。フォントやバナーに関しても、派手さを削ぎ落とす考え方のもと、設計したという。一方で、CHEERする際に飛び出すハートについてだけは、特にこだわりを持ちファンの愛情を表現したかったと言う。
「普段はマージン設定を細かく指定するのが私のやり方なのですが、CHEER時に飛び出すハートに関してだけは、頭の中のイメージのみをエンジニアに伝えました。ほとんど『擬音』でしたけどね。花火のようなイメージで『グワーっときて、ギューンとして欲しい』という感じです(笑)ファンの応援しているテンションをいかに演出するのか、という点を意識して制作しました」(木附沢氏)
過去に手がけたサービスは累計4000万以上のダウンロードを記録している関根氏とエンターテイメント業界出身者、そしてベテランの技術者が知恵を出し合いながら運営している『CHEERZ』のリターン・レートは50%をゆうに超えているという。
一般的なWebサービスやソーシャルゲームと比較しても高い数値を示す『CHEERZ』に今度、どのような機能改善を行っていくのだろうか。
「将来的には読み物コンテンツを導入することも検討しています。有名アイドルと新人アイドルの対談なんておもしろそうじゃないですか?また、海外展開も積極的に行い続けます。欧米、アジアに配信されている「Tokyo Girls’ Update」と業務提携したことで、世界中に日本のアイドルの情報を届けることも可能になりました。
タイやシンガポールなどでは自撮りコンテンツが人気を博している影響もあるため、日本以上の盛り上がりが期待できます。例えば、あるアイドルが海外でライブを行った際、日本以上に動員がある、そんな現象って面白いと思いませんか?そうした可能性を日本のアイドルは秘めていると考えます」(関根氏)
『CHEERZ』に参加しているアイドルたちがCHEERされた数に応じて、フォッグはアプリで得た収入の一部を各事務所にインセンティブとして支払っているという。これは、アイドルたちが活動する際の資金を工面して欲しいというメッセージだ。
アイドルファンのCHEERは、アイドルたちの活動資金につながり、これまで行けなかった土地でのライブを実現していく。アイドル市場の新しいエコシステムが『CHEERZ』によって、誕生しようとしているのかもしれない。
取材・文・撮影/川野優希(編集部)
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