キャリアVol.149

研究者夫婦に学ぶ、共働き夫婦の育児のススメ【連載:五十嵐悠紀】

筑波大学 システム情報工学研究科 コンピュータサイエンス専攻 非数値処理アルゴリズム研究室 五十嵐 悠紀2004年度下期、2005年度下期とIPA未踏ソフトに採択された、『天才プログラマー/スーパークリエータ』。筑波大学 システム情報工学研究科 コンピュータサイエンス専攻 非数値処理アルゴリズム研究室(NPAL)に在籍し、CG/UIの研究・開発に従事する。プライベートでは二児の母でもある

前回は「イクメン研究者」京都産業大学の平井重行准教授へ、育児休暇を取ったことによる学生さんや社会へのインパクトという観点でお話を伺いましたが、後編となる今回はもう少し平井先生ご自身のプライベートにも踏み込んでみたいと思います。

>>前回の記事“ベビーカーを押して出勤するイクメン研究者が目指す「育休の一般化」”はこちら

今の自分だからできる託児所設置活動

―― 子育てで一番大変なのは何と言っても子どもの突然の病気ですよね。保育園から電話がかかってきて、慌てて迎えに行くという経験はお子さんがいらっしゃる方であれば、皆さんあることと思いますが、ご夫婦どちらが迎えに行かれるんですか?

保育園の送り迎えも、授業の時間割を調整して行っています。最悪どの曜日でも電話がかかってきたら、どちらかが迎えにいけるように、シフトを組んであります。普段の学期の期間中はスケジュールが決まるので、この職業ならではのメリットですね。

もちろん、授業の枠以外にも会議があったり、学生との打ち合わせがあったりと固定の予定だけではありませんし、我が家は共に研究者なので重要な会議や学会に参加してちょっと遠くに出ているなどもしばしばです。でも、そういった予定は夫婦でなるべく調整するようにしていますね。

託児所
by seduc.americana
託児所の併設は親の近くにいられることや同世代の子ども達とのコミュニケーションという点で子どもにもメリットがあ

―― 育児のための調整という意味では、平井先生は学会併設の託児所設置活動にも貢献していらっしゃいますよね。

我が家の子どもたちと平井家の子どもたちも、初めて会ったのは学会併設の託児所だったと記憶しています。同年代なのでとても仲良く遊んでいました。託児所設置活動に積極的に取り組まれているのはどうしてですか。

共働きや研究者同士の夫婦が多い医学の分野では比較的、学会併設託児所は多いと聞きます。

出張だと簡単に迎えに行けないため、祖父母がそばにいる環境でなければ、学会に連れて行くか、学会に行くのをあきらめるしかありません。自分の知らない土地で、子どもの預け先を探すのは非常に大変なんですよね。

だから働きやすい環境を作るためには、併設託児所を作っていかなくてはと。僕が委員をやっている学会は託児所を作ろう、と、そういう制度・動きを作るために頑張っています。

―― そういえば、東日本大震災が起きた時にも、平井先生もわたしも日本科学未来館で学会の最中でした。平井さんはまさに発表するシステムのデモをしている最中だったそうですね。わたしはこの時、長男を学会併設の託児所に預けていたのでそばにいることができましたが、自宅まで帰って来られたのも夜遅くだったため、自宅そばの保育園だったら電話はつながらないわ、で不安だったことでしょう。学会併設で託児所があるというのは、改めて大事だと思った出来事でした。

こういうのは、今まさに必要としている人が動かないと、過ぎてしまった人はそれ以外で忙しく、これから子どもを産む人はそこまで頭が回らないような気がします。

我が家は上の子が小学校に入ったので、まさにそのフェーズから抜け出ようとしているところです。しかし、これまでのベビーシッターの段取りなど頑張ってきたので、今のうちに仕組みや文化を根付いていけたら良いなぁ、と思っているところですね。最近流行りの言葉でいえば、“スタートアップ”ですかね(笑)。

イクメンのルーツは母の先見の明にあり

イクメンのルーツは母の先見の明にあり

―― 息子を持つ母親として純粋に興味があるので伺いたいのですが、平井先生のように「育児にも仕事にも関心のある大人」に育てるにはどうしたら良いのでしょうか。

ルーツは幼少期にあると思います。

母親は専業主婦だったのですが、「あなたが将来大人になるころには、わたしみたいに女性だけが家事をする世の中ではないはずだ。これからは男も家事とか育児をしないといけない」と言われて育ちました。

―― 平井先生のお母さまは世の中の動きをかなり先取りされていますね。なぜそのようにおっしゃっていたのでしょうか?

父親の反面教師的な感じですね。父親は自分の服がタンスのどこにしまってあるかほとんど知らないような典型的な仕事人間で、母親からは「お父さんみたいになったらあかん!」と言われて育ちました。

中学や高校のころは、「お弁当箱は自分で洗わなあかん。洗わへんかったら、次の日作らへんからな」と言われて、自分で洗っていました。

学生服を着て弁当箱を洗っている写真が今でも実家に残っていますよ(笑)。小学校の頃から土日の掃除機などを担当したり、母親の手伝いをしていたので、現在家事をすること自体、経験が少ないから大変、ということはないですね。

あ、ちなみに父親は自分と分野の違う技術者なのですが、その仕事への姿勢は尊敬してます。

研究者夫婦の育児、子どもはやっぱり理系に育つのか

―― 最近、わたしの息子たちはスマートフォンに興味を持ち始めてきて、アプリで遊ぶ時間も長くなっています。理系研究者を両親に持つ子どもは、理系的なことに興味を持つのでしょうか?

理科の実験
by West Point - The U.S. Military Academy
近年、日本の子どもは理科を楽しいと思う生徒が極めて少ない、いわゆる「理科離れ」が心配されている

普段からの夫婦の会話が一般的な家庭よりは理系的だろうとは思うので、それを普段から聞いて育っていることで、言葉の選び方とか、考え方とか、そういったものが知らない間に染みついているということはあるかもしれませんね。

良しあしですが、子どもの割にやけに理論的だったり。

また、会話の中に専門的な言葉も含まれるので、「それ何?」、「それどういう意味?」と子どもに聞かれることも多いです。そして聞かれたら子どもにわかりやすい説明をするよう心掛けています。

聞いてくれるからいいんですけどね。むしろ、聞かなくなったら知的好奇心が薄らいだという点で「やばいかも」と思います (笑) 。

―― 平井先生のお子さんは今年から小学生になられたんですよね。自由研究はやっぱり理系な研究テーマになるんですか?

うちの子が通う小学校では、一年生では自由研究はまだないんです。でも、自由研究がなくても工作が好きで自主的にいろいろと作っていますね。

昨日の晩も段ボールで額縁を作り、拾ってきた葉っぱを並べて、飾ったり。そこへわたしがもうちょっと凝った作り方とか、こんなテクニックもあるよ、みたいなのを少しずつ見せてあげたりしています。

例えば、子どもはボール紙とかセロテープが中心になるので、そこに紐を使ってこうやってみたら、とか、セロテープをこういった貼り方にしてみたら、という TIPS みたいなものを少しずつ教えると、すごい速さで吸収していきますね。

男性の育児に足りないのは妻を頼らない“覚悟”

―― ご夫婦お2人とも研究者としてお忙しい生活を送ってらっしゃるかと思いますが、奥さまと育児のことで揉めたりすることはないんでしょうか。

「どちらに転ぼうとも何事も経験」と研究者らしい好奇心の強さを語る平井先生
「どちらに転ぼうとも何事も経験」と研究者らしい好奇心の強さを語る平井先生

妻からよく言われるのは、育児に向かう姿勢について「わたしに比べて決意や責任感が足りへん」ということです(苦笑)。

締切に追われて仕事しなくては!という時に子どもに何かあった時、自分が何とかするのだという決意が足りない、と言われます。そこを踏まえた上での段取りをもっと考えておけと。

結局、男の人の育児休暇を取る割合が少ないのも、そこにあるのではないかと思いますね。

子どもの面倒を見るために結果的に仕事に支障が出ることも含め、何があっても最終的には自分が責任を持つ、という覚悟が男性と女性でちょっと違うような気がします。

―― “覚悟”ですか?

ええ、自分で頑張っているつもりでも、根底で妻に頼ってしまおう、というのが頭のどこかにあるんでしょうね。わたしが割と余裕がある時は自分で何とかしますが、余裕がない時は「すまん!たのむ~」と妻を頼ってしまいます。

これは自分自身の自戒の話でもあるし、一般男性の世の中の話でもありますね。もうちょっと意識を改善していけば育児休暇を取る率も変わっていくのではないでしょうか。

―― 最後に、育児休暇とられて良かったと思いますか?

思いますよ。

人生の経験で多くても数回取れるかどうか。これを経験するかしないかはすごく大きいと思います。

もともといろんな物事のチャンスには首をつっこみたがる性格なので、たとえ無茶だったとしても、そういったチャンスがあるなら経験しておかないともったいないと思ってしまうんですよね。もし失敗したとしても、それも経験です。経験は次に活きますから。チャンスがあればとにかくやってみたいんです。

(インタビュー終了)

さすが大学の先生。未知のことがあればとりあえず経験してみよう、と知的好奇心あふれるお答えでした。

今はまさにイクメンの過渡期。そのうち当たり前になるのでしょうか? いろいろと考えさせられるお話でした。

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