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夫婦別姓での結婚生活とwebサービス作り手としての生き方【Zaim閑歳孝子】

働き方

    2017年7月で6周年を迎え、700万ダウンロードも間近な日本最大級のオンライン家計簿 Zaim。そのZaimを1人で立ち上げ、今はチームの代表として活躍する閑歳孝子さんへインタビューしました。前半は人気アプリを生み出す秘訣をうかがい、後半はプライベートにせまります。

    閑歳さんは日本ではまだ珍しい事実婚による”夫婦別姓”という形での結婚生活を送っています。婚姻制度についての考え方や、閑歳さんが考えるインターネットの未来についてお話をうかがいました。

    ※この記事にあるダウンロード数などは2017年9月7日取材時点の数値です

    閑歳 孝子

    閑歳 孝子(かんさい たかこ)

    1979年、大阪生まれ東京育ち。慶應義塾大学卒業後、株式会社日経BPで記者・編集業務を4年経験。その後ITベンチャー企業のディレクターに転身し、平行してプログラミングを独学。2008年、株式会社ユーザーローカル入社。業務外の時間に個人で家計簿アプリZaimを開発し2011年リリース。2012年会社化し、代表取締役に就任

    夫と私は、たまたま籍が入っていない普通の夫婦

    ――閑歳さんはご結婚されていますが、夫婦別姓という形を選択されていますよね。その理由を教えてください。

    まず自分の苗字が珍しく、それを気に入っているので変えたくなかったんです。

    それで結婚しようという話になった時、婚姻制度について調べていくうちに、籍を入れなくても大きなデメリットはないと分かりました。

    結果、わたしたちは事実婚という形を選択。

    今となっては夫も私も会社の代表になっているので、苗字を変えるとプライベートはもちろん仕事の上でも山のように手続きが発生してしまい、今からではさらにハードルは上がってしまいます。

    私以外にも、うちの会社にはビジネスネームとプライベートの名前が違うメンバーもいますね。

    Zaim

    ――ご両親の反対はありませんでしたか?

    夫婦別姓という選択をしたことを親には驚かれましたが、そもそも親は私が結婚すること自体に驚いていたので……(笑)反対ということはなかったですね。夫側の両親はまったく何も言わずに受け入れてくれました。

    実際、夫婦で姓が別々だからといって困ったということは一度も無いです。子どもがいて夫婦別姓を取っている友人もいますが、そこまで不便ではないそうです。

    ――夫婦別姓のまま10年間の結婚生活。別れようと思えば社会的な手続きはなく別れられる状況で、ここまで長く関係を続けているのはすごいと思います。

    「結婚した」という意識はおそらく、一般的な夫婦と変わらないと思います。結婚式も普通にしましたし、お盆やお正月は両家の実家に帰ります。周りの人も普通の夫婦として接してくれるので、たまに戸籍の手続きはしていないということを忘れるくらい(笑)

    本当に「たまたま籍が入っていない」それだけですね。生活上、何かで困ったら籍を入れるかもしれませんし。

    ――婚姻関係は、考えてみれば紙切れ1枚の話でしかないですね。

    たぶん皆さんが思っているほど、籍を入れても入れなくても何も変わらないんじゃないでしょうか。税に関しても、私か夫のどちらかが扶養に入らない限り、特に優遇はないですからね。

    うちの会社のメンバーでも、私が夫婦別姓であることを知らない人もいると思います。別に隠してないので言う機会があれば言ってますが、そういう話題になること自体が少ないですね。

    夫婦共に経営者だからこそ、うまくいく面もある

    ――夫婦でどんな会話をしますか?

    うちの話題は飼っている猫の話・仕事の話・趣味の話ですね。だいたいこの3つのどれかです(笑)

    ▲2017年7月28日の閑歳さんのツイートより。猫ちゃん美人(美猫?)ですね!

    仕事の話題も多いですね。

    夫も社員を雇用するようになったので、どういう制度だとメンバーが働きやすいかというような話はお互いにできるようになりました。

    ――すごくいい関係ですね。

    VC(投資家)の夫と、社長の妻という夫婦が友人に何組かいるんですが。VCと社長の夫婦は理想的だと思いますね。妻の悩みを夫が真摯に聞けるし、妻側も的確なアドバイスを求めているパターンが多い。

    うちの夫はVCでは無いですが、立場が同じだからこそ分かり合えることがあるかもしれません。

    ――女性経営者には仕事とプライベートで、人格(キャラ)が違う人もいます。仕事はキリッとしてるのにプライベートはフワッとしているとか。閑歳さんは……

    ないですね(笑) あんまり変わらないと思います。

    ――たしかに閑歳さんはいい意味でニュートラルな人だなと思います。

    自分で会社をやるようになってから更に仕事とプライベートの垣根がなくなってきたというか。前職であるユーザーローカルに在籍していた頃はもう少し仕事とプライベートの切り分けがあったような気がするんですけど、段々それは無くなってきましたね。

    多分職人さんも、同じような感覚を持っていると思います。

    仕事とプライベートって、そんなにパキッと切り分けられるようなものでもないですし、逆に人格を切り分けていると私は疲れちゃいますね。

    「女性としての自分」は「エンジニアとしての自分」と同じように、自分の中にある要素の1つでしか無い

    Zaim

    ――Zaim立ち上げ以降、雑誌などで「成功している女社長」として取り上げられているのを何度か目にしました。あえて「女」と括られることには抵抗はありませんか?

    取り上げていただくことは有り難いですね。ただ、よく女性ならではの視点について質問を受けるんですけど、あまり面白い答えが浮かばないんですよね(笑)

    女社長という扱いを受けることは別に嫌ではないものの、うちは出産のような女性ならではのサービスを扱っているわけではないので、強みになっているかというと、必ずしもそうではないと考えています。

    「女性としての自分」は「エンジニアとしての自分」と同じように、自分の中にある要素の1つでしか無いというか。

    10年先もそれまでやったことのないことに挑戦していたい

    最後に、今後のことやアプリ市場への見解をうかがいました。

    Zaim

    ――閑歳さんは「未来のことは考えない」「先は読まない」とよく発言されています。しかし、経営者は先を読むことを求められるポジションでもあります。そのあたりの考え方を教えてください。

    この業界に入って13年になりますが、当初は今のような世界になっているとはまったく想像もできませんでした。同じように、この先10年、20年を読み解こうと思っても難しいでしょう。社会の在り様も今とはだいぶ違うと思いますし、私自身も40代、50代になっているわけです。

    ただ思うことは、10年、20年先の未来でも、それまでやったことのないことに常に挑戦していたいです。まったく同じ作業をやり続けているというのは、自分自身はあまり想像できません。

    「未来のことは考えない」というのは「どうなるかわからない状況を楽しむ」ということでもあります。Zaimを続けていく中でも組織自体が変わっていったり、組織の中で求められる役割が変化しているから面白いですし、毎日が勉強で新しい発見があるなぁと感じます。

    キーワードは「体験が変わる」「考え方が変わる」

    ――今後のアプリ市場について、どのように考えてますか?

    振り返ると、IT業界は10年スパンくらいで主要なデバイスが替わっているんですよね。

    インターネットは最初PC向けに登場し、続いてガラケー向けに普及しました。そしてガラケーに次いで、スマホ(スマートフォン)が出てきました。アプリ市場はスマホの普及と共に成長してきました。

    初代のiPhoneが発表されてから今年(2017年)で10年になります。スマホは1人1台、ほぼみんな持っているという段階にまで来ています。

    では、スマホに変わる次のデバイスは何か。まだ決定打は出ていないというのが、正直なところではないでしょうか。

    「次のデバイス」を求めてVRや音声アシスタントデバイスが花盛りですが、スマホほど老若男女が全員所有して肌身離さず使うものになるかというと、技術と活用イメージ両面でまだ時間はかかりそうと見ています。

    むしろ、ユーザー側のデバイスが何であるかを問わず、今は公共機関や施設など社会インフラ側が変容している段階です。個人のデバイスとサービスが直接結びつくことによって、注文や決済、受取などアプリ内だけにとどまらない価値提供が、飛躍的に発展していくと思います。

    ですから、いま一番身近にあるスマホですらまだまだユーザーを驚かせたり、より深い行動の変化を起こせるような体験をもっと与えられるはずと感じています。

    モノや情報、時間の使い方をもっと主体的に取捨選択できるようにする、そうした「考え方が変わる」「体験が変わる」という方向がより強化されていくと思いますし、そうしたことを実現するサービスを作っていきたいと考えています。

    ――閑歳さん、Zaimのことやプライベートのこと、たくさん聞かせていただきありがとうございました!

    ※2017年9月26日時点での取材インタビューです。
    ※こちらの記事は、『TECH::NOTE』コンテンツから転載をしております。
    >>元記事はこちら

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