ヒットプロダクトをリードしてきたスターエンジニアが答える、キャリア・組織づくりの4つの疑問【クックパッド成田×スマートニュース浜本×レクター広木】
クックパッド、スマートニュース、ミクシィ。日本有数のヒットプロダクトをリードしてきた‟スターエンジニア”たちも、華々しいキャリアの裏では数々の苦難を乗り越えてきた。そう感じさせてくれたのが、このトークセッションだ。
2018年9月10日に開催されたテックカンファレンス『BIT VALLEY 2018』内で、クックパッドCTOの成田氏、スマートニュース創業者の浜本氏、元ミクシィでサービス本部長執行役員を務めた経験を持つレクターの広木氏が、キャリア選びや組織づくりについて、若手エンジニアからの質問に答えた。
【質問1】‟スターエンジニア”の会社選びのポイントは?
広木 僕はまさにこの質問とほぼ同じ状態で、就活が終わった時、大手メーカーのラボと、上場したてのミクシィ、それからできたてほやほやのスタートアップと3社の内定をもらいました。
たくさん内定が出たときって、「そこで何を手に入れたいか」が大事なんですよね。僕は「すごい人と働いて、いろんな変化を経験したい」と思っていたので、採用試験を受けている人たちが面白そうだという基準でミクシィに決めました。
成田 私が新卒でヤフーへの入社を決めたのは、知っているサービスだったということと、当時SNSのようなサービスをやっていたからです。
僕は広木さんと同学年で同じ年なんですけど、僕たちが就職した2008年は、ミクシィもサイバーエージェントも新卒採用一期生が入社した年です。そのぐらい、世の中にはまだWebから生まれたメガベンチャーがなくて、そもそも選択肢がありませんでした。
浜本 僕はコードを書くのがすごく好きで、それをフルタイムでやりたいという一心で、無名のベンチャー企業に入りました。エンジニアは僕一人。学部生の頃からそこでアルバイトをしていたので、社長に「卒業したらうちに入りなよ」と言われて、選ぶことすらなかったですね。
広木 成田さんは、なぜヤフーを辞めたんですか。
成田 その頃、僕はRubyが好きで、Rubyを書く仕事がしたいなとずっと思っていたんです。だけど、ヤフーではRubyを使っていなかったので、定時で帰って、Rubyの勉強をする日々でした。 ちょうどそのタイミングで、クックパッドに転職した元上司に誘われました。もともと料理が好きで、週末はかならず料理をしていたし、Rubyを使える。この2つのキーワードがぴたりとハマって、小さい会社でどれぐらい力を発揮できるかチャレンジしてみようと、環境を大きく変えることにしました。
【質問2】上から突然「ねえ、この機能つくってよ」と言われるのはなぜ?
成田 非合理的な判断をしなくちゃいけない時ですね。サービスの方向性を大きく変えるとか、3年後の組織体制をどうするかとか、そういう不確実なことをどんどん判断していかなければいけない。それを地道にA/Bテストして、統計的に正しい答えが出るまで待っていたらビジネス的に遅いですから。
でもそれは現場から見ると、「なんで?」ですよね。
広木 自分がいちエンジニアだった時は、突然の方針変更とか、いきなり決まる新機能の開発計画に驚かされたのですが、段々「これこそベンチャーなんだ」という気持ちに変わっていきました。経営者は、「不確実なもの」に対する耐性や強さが問われますね。
成田 これって、すごい繊細な問題で、エンジニアにとってどれぐらい裁量があるかって、かなり重要ですよね。上から降ってきた設計をただ実装するだけって、エンジニアとしては、ちょっと嫌じゃないですか。
でもトップダウンって、とてつもなく時間をショートカットできるんです。検討に必要な1年分くらいの時間をぜんぶすっ飛ばせるので、それが正しかった場合、めちゃくちゃ優位性が上がるし、先行者利益が取れる。とはいえ現場の納得感とのバランスがすごく難しい。日々、葛藤しています。
【質問3】組織づくりで気を付けるべきことは?
浜本 僕はエンジニアとしてのスキルは多少あるんですが、組織づくりは本当に素人なので、たくさん失敗してきました。でも今思うのは、組織づくりはスキルだということ。体系的に学べば、圧倒的に上達できます。自己流でやってもいいことはありません。
グーグルが長年試行錯誤してきた組織づくりのベストプラクティスを無償公開している「re:Work」などを見て学ぶといいと思います。
成田 僕にとって、組織づくりのなかで一番大切なのは採用ですね。そこにいる人次第で、やるべきことがまったく変わってくるんです。
たとえば採用基準が低くてプログラミング初心者の人ばかりだったら、組織づくりにプログラミング教育を組み込まなきゃいけない。だけど、ある程度技術力のある人を集められれば、そのプロセスを飛ばしてサービス開発をスタートできます。どういう人を会社にいれるべきか見極められるようになると、組織づくりは格段に楽になりますね。
「悪いことをしない人」を採用するのも大事です。そうすれば性善説で組織がつくれるので、もう一歩踏み込んだリスクを取れます。
浜本 それは完全に同意ですね。僕は就業規則をつくる時点でそこを相当意識して、いろんな仕組みをつくりました。「この人は信頼できる」と心から思える人にだけ入ってもらう。それがグーグルの言う「心理的安全性」(リスクを取ることや弱さをさらけだすこともいとわない状態)をつくる一番のベースになっています。
広木 採用面接をしていると、「この人は、嘘をつくタイプだな」とか、ある程度わかってしまうようになりますよね。
たとえば、「最近、勉強したことは何ですか?」と聞いた時に、「XXに興味あります!」とは答えるのに、実際に行動が伴っていない人がよくいるんです。その時、「実際には触れていないです」と正直に言える人は素直さがあり、ポジティブに評価できるのですがそれを覆い隠して自分を美しく見せようとする人は、誠実ではないのかなとネガティブに思ってしまいます。
成田 実はクックパッドが今入っているビルって、セキュリティゲートがないんです。普通はビルの受付で記名したりすると思うんですけど、働いているフロアまでいきなり上がってこれてしまう。しかも入り口にキッチンがあって、そこには包丁がある(笑)。
そこで誰か不審者が入ってきて暴れたらどうしようっていうんですけど、そもそも暴れたい不審者なら包丁は家から持ってくるでしょ、って(笑)。むしろ人が入ってきやすいことによって、勉強会やユーザー向けのイベントがすごくやりやすくなったんですよね。人への信頼をどう見せるかって、難しいけど重要なポイントですよね。
【質問4】転職で見極めたい「最強のチーム」の条件は?
広木 最後に、みなさんはどんなチームが「最強のチーム」だと思いますか? 転職者向けにアドバイスをください。
浜本 採用面接に行った時にくまなく社内を案内してくれたり、他のエンジニアやマネジャーを連れてきて、座談会を開いてくれる会社、疑問に真摯に応えてくれる会社は、いいチームだと思います。自分が相手の会社を面接しているぐらいの気持ちで、あらゆる疑問をぶつけると良いのではないでしょうか。
成田 チームの誰に聞いても、そのサービスや事業で解決しようとしていることが同じだったら、本当に強いチームだと思いますね。
広木 僕は自分がやりたいことと、会社のやりたいことがマッチしていて、人生を自分の意志で決めていく人が集まっていることが、いいチームの条件ではないかと思います。
取材・文/石川香苗子
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