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時代に先駆けて電話サーバのクラウド化へ挑戦、“完全自前主義”の開発によって花開く

働き方

    市場の常識を変える挑戦ヒストリー!「イノベーター列伝」

    市場の常識を変えるような華々しいプロダクトやサービスが日々メディアに取り上げられる今日。その裏では、無数の挑戦や試行錯誤があったはずです。「イノベーター列伝」では、既存市場の競争軸を変える挑戦、新しい習慣を根付かせるような試み、新たなカテゴリの創出に取り組む「イノベーター」のストーリーに迫ります

    今回お話を伺ったのは、国内市場シェアNo.1(調査:ミック経済研究所)を誇るコールセンター/ビジネスフォンのクラウドサービス「BIZTEL」を提供するリンクの坂元剛氏。同事業の責任者である坂元氏は、「クラウド型の電話サービスは先駆的な事業だったので、勝算があるかどうかまったく見えていなかった」とリリース当時を振り返ります。先の見通せない事業がなぜシェア1位になれたのか。その答えは、完全自前主義のサービス開発ポリシーにありました。

    坂元 剛
    インターネットシステムに関する開発業務からキャリアをスタート。監視システムや多数のWebシステム等の構築の知見を活かして、今までだれもトライしてこなかったPBXをインターネットサーバに載せるという「BIZTEL」サービスを立ち上げ。データ通信および音声通信のソリューション提供まで幅広い経験をもとに「BIZTEL」の成長を支える。

    >>こちらの記事は『BRAND PRESS』より転載しています

    チャレンジングな事業としてのスタート

    自分自身のビジネスフィールドにIT業界を選んだきっかけは、学生時代にインターネットの黎明期を体験したことことが原因です。Webブラウザの「Mosaic」や「UNIX」というOSがリリースされ、オープンなネットワークにアクセスできるワクワク感を肌で感じていました。今ではあたりまえですが、当時は画期的な出来事でしたからね。

    ITの世界で働けば、そのようなワクワクできることにたくさん出会えるのではないか。そう考えて、エンジニアの道に進むことを決心しました。さまざまなインターネットシステムの開発経験を積みながら、その後1万台弱のホスティングサーバの監視システムの開発等も担当してきました。

    当時としては、これはかなり先進的なアイデアでした。Webサーバやメールサーバはあたりまえの時代でしたが、「電話サーバ」をクラウドで提供する会社はなかったのではないでしょうか。正直、ビジネスとしての確実性はなく、チャレンジングな要素が強かったように思います。2004年から開発を始め、2006年に正式サービスとしてリリースされました。

    最初は、現在のようなコールセンターのニーズは想定しておらず、ビジネスフォンサービスと謳っていました。今思い出すと、そのころは苦労の連続でした。最もたいへんだったのが、サービスのメリットを理解してもらうことでした。今でこそ、インターネットでサービスを提供する「クラウド」という言葉は浸透していますが、当時は言葉自体が耳慣れない時代でした。

    また、新形態のサービスだったので価格設定も非常に難しく、結局、従来と同様に自社内にサーバを設置するオンプレミス型のビジネスフォンを選ぶお客様のほうが多いという状況でした。そのため、クラウドサービスのメリットを時間をかけて説明する以外に打ち手はありませんでした。

    完全自前主義での開発が花を咲かせる

    地道にビジネスを継続するうちに、クライアントから「CTI機能を追加できないか」という要望がよく聞かれるようになりました。CTIとは「Computer Telephony Integration」の略で、その最も特徴的なのが、電話をかけてきた顧客の情報がモニタ上に表示される機能です。それを使うことで、お客様の情報を瞬時にオペレーターが確認でき、円滑で正確な対応が可能になります。

    こうした要望に応えるために、最初のBIZTELのリリースから2年経った2008年、クラウド型のコールセンターシステムも含めたサービス開発をする方向に転換しました。これが、のちの飛躍的な成長へつながるのです。

    当時は、コールセンターは高額な設備投資が必要なものであり、資本力のある企業以外は、自社で保有することは困難でした。それをクラウド化することで、低価格で導入でき、オペレーティング業務も効率化することが可能になります。そうしたメリットが徐々に受け入れられ、中小企業からの引き合いが増えました。

    さらに追い風となったのが、企業の顧客接点やコンプライアンスに対する意識の高まりです。クレーム対応を一つまちがえば、SNSでの炎上につながりかねません。そうした社会環境の変化もあってコールセンターをアウトソーシングする企業が減少傾向となり、BIZTELが国内市場でシェアNo.1を誇るまでに成長しました。

    ただ同時に、クライアントの要求度もどんどん上がりました。それでも対応できているのは、BIZTELのサービス開発を外注に頼らない「完全自前主義」で続けてきたからだと自負しています。

    メール等の仕組みと違って、電話はリアルタイムでのデータ処理が必要となり、クラウド化には特殊な技術が求められます。一朝一夕でできるものではありません。「もう一度ゼロから電話のクラウドサービスを開発して」と頼まれても、おそらく断るでしょう。そのぐらい難しいのです(笑)。サービスを開始したころはどうなるものかと不安でしたが、自前でのサービス開発をコツコツと続け、ユーザーの声に応えてきた結果、花が開いたと感じています。

    自主性を引き出すための“ゆるい”目標設定

    シェアNo.1を獲得したとはいえ、BIZTELはもっと大きく成長できるはずです。そのためには、全方位的なチームの強化が必要不可欠です。

    最初、BIZTELのチームはわたしを含めて2人しかいませんでした。それが今では協業会社も含めて60人以上の体制になり、わたしも事業部長という立場になりました。BIZTELをさらに成長させるために、今は組織マネジメントに特に力を入れています。

    ここ最近、会社と社員との関係性が変わってきていると感じています。以前のように“社員が会社に従う”という考え方はもう古いのではないでしょうか。「働いて価値を出してもらい、それに見合った対価を給与という形で評価する」という関係性であって、どちらが上とか下とかいうことではないはずです。だからわたしは、BIZTELの各チームに対しては、単純なトップダウンではなく、個人と組織を成長へ導くための自主性を引き出すマネジメントを心がけています。

    そのために目標設定工夫しています。目標には数値設定がつきものですが、だいたい前年比120%ぐらいにしています。実は、BIZTELの市場環境を考えた場合、20%増というのはそれほど達成が難しい数値ではありません。大事なのは目標を達成したその先にあります。会社から与えられた目標に満足せず、個々人が自ら成長のためにアクションを起こしてほしい。そうした自主性を引き出すために、あえて目標設定は低めにしています。

    “現場感の維持”を徹底する

    メンバーに現場仕事を任せているとはいえ、自分自身の“現場感の維持”も大切にしています。サービスの特徴やこれまでの経緯をいちばんよく知っているのは、立ち上げからかかわってきた自分です。そのわたしがクライアントの本質的なニーズ、サービスの細かな仕様、開発のたいへんさなど現場にいないとわからない情報や感覚を失ってしまっては、チームをよい方向に導けるはずがありません。

    そのために、サービス開発や営業など各チームと週に1回、1時間程度のミーティングを必ず設けています。そこでは、わたしが中心になって話すというより、メンバーが課題や悩みを抱えていないか、クライアントからどういう声が上がっているかといったことをざっくばらんに話し合うようにしています。メンバーにとっても、課題や悩みを共有する場があることで安心感にもつながるはずです。

    サービスと組織の成長をともに進めていくのは、大きな挑戦です。これからもクライアントの声を真摯に聞き、自前の技術力で着実に成長してきた“BIZTEL流のサービス開発ポリシー”を失わず、地に足をつけてイノベーションを起こしていきたいですね。

    ■会社概要:株式会社リンク

    >>こちらの記事は『BRAND PRESS』より転載しています

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