アイキャッチ

出会いと刺激は、覚悟を生む。SlushAsiaの学生IT担当者がボランティアで得たもの

スキル

    2015年4月に東京・お台場で初開催された、フィンランド発の国際的スタートアップイベント『Slush Asia』。アジアのスタートアップを世界に発信するというコンセプトの下、国内外の起業家と投資家を集めて全編英語で行われたイベントは、約3000人の来場者を熱狂させた。

    そのSlush Asiaが、今年5月13~14日、幕張メッセに戻って来る。

    『Slush Asia 2016』の詳細

    スピーカーには昨年も登壇したDeNA創業者の南場智子さんや、グロービス代表の堀義人氏、ウォンテッドリーCEOの仲暁子さんといった国内の起業家のほか、ソフトバンクグループ代表取締役副社長のニケシュ・アローラ氏やテラスカイの厚切りジェイソン氏などグローバルビジネスを知る人たちまで豪華な顔ぶれがそろった。センセーショナルだった昨年のイベントに比べても、内容はパワーアップしている。

    そして、今年のSlush Asiaでもう一つパワーアップしているのが、主に学生たちで構成されるボランティアスタッフのチームだ。

    本国フィンランドのSlushは学生が中心となって運営を行っていることもあり、発起人の一人であるアンティ・ソンニネン氏は「Slush Asiaでも今回から若い人たちで企画・運営を行うことにした」と話す。上記したスピーカーとの出演交渉なども、彼らが中心となって行っている。

    このボランティアスタッフの一員である柴田直人氏は、東京大学の工学部・電子情報工学科に通う大学4年生。主な役目は、『Slush Asia 2016』の大きな特徴となっている「マッチメイキングシステム」や、イベントアプリ開発をディレクションすることだ。

    他にも『Slush Asia 2016』開催前の5月6~8日に行われるハッカソン『Junction Asia』の企画・運営を担当するなど、Slush AsiaにまつわるIT関連の仕事すべてに携わっている。

    「2015年のSlush Asiaで南場智子さんが話していた様子をYouTubeで観て刺激を受けたこともあり、昨年スタッフとして参加していた先輩の話を聞いて『自分も運営側で参加しよう』と思いました」

    そう語る柴田氏が、2016年初頭から始まった『Slush Asia 2016』の準備を通じて得たものは、漠然と描いていた将来に対する確信だった。

    「アイデアと技術をつなげる存在になりたい」

    東京大学の工学部・電子情報工学科に通う柴田直人氏

    東京大学の工学部・電子情報工学科に通う柴田直人氏

    上で紹介した「マッチメイキングシステム」とは、Slush Asiaに参加するスタートアップと投資家を最適な形でつなげるためのシステムだ。

    2日間という短いイベント期間内で来場者に効率的な出会いを提供するべく、スタートアップは事業ドメインを、投資家は注目領域や過去の投資実績を登録しておくと、共通点を持つ者同士をシステムが自動でレコメンドするようになっている。お互いに興味を持った場合は30分のミーティングが設定され、ピッチや投資話ができるというわけだ。

    フィンランドのSlushではこのマッチメイキングシステムが好評で、両者合わせて毎回1000件近くの登録がなされるという。柴田氏は、フィンランドで開発・運用されているこのシステムをSlush Asia用にローカライズするために開発ディレクションを行ってきた。

    【異なる専門性を持つ人同士をつなげ、イノベーションを生み出す】

    実はこの仕事、柴田氏が将来「やりたい」と考えている仕事内容と見事にシンクロしている。

    柴田氏が学生生活を送る中で見つけた、なりたい将来像とは?

    柴田氏が学生生活を送る中で見つけた、なりたい将来像とは?

    大学では人工知能の研究者として知られる松尾豊氏の下で機械学習を学びながら、アルバイトで受託開発も経験してきた柴田氏は、それらを通じてある思いを抱くようになった。

    「学校やアルバイト先には、僕よりもすごい技術力を持っているギークな人たちがたくさんいます。でも、彼らの多くはビジネスにあまり興味を持っていません。一方で、面白いビジネスアイデアを持っている人は技術に疎かったりします。だから僕は、アイデアと技術をつなげる存在になりたいなと」

    両方の良さを持ち合わせた「サービスを作れるギーク」になって、新市場を見つけ、事業をやりたい――。そんな将来像を見るようになったきっかけは、大学3年次にやっていたアプリ開発やインターンにある。

    リクルートのMedia Technology Lab.から生まれたショッピングコミュニケーションアプリ『dood(デュード)』の開発を手伝ったり、『電通インターン2015』に参加する中で、自分でアイデアを考える楽しさとモノづくりの楽しさをもっと融合させるような仕事がしたいと考えるようになったのだ。

    「マッチメイキングシステムの開発と並行して行っている『Junction Asia』の企画・運営でも、どの企業のAPIを組み合わせたらハッカソン参加者に面白そうな開発をしてもらえるかを考えるのがとても楽しい。僕らがイベントの土台を作ることで、日本から世界的に注目されるようなスタートアップが生まれたらいいなと思っています」

    人の意思を行動に変えるのは環境だ

    Slush Asiaと連動したハッカソン『Junction Asia』

    アイデアと高度な技術を持つスタートアップが急成長していく様子は、現在行っているGunosy(グノシー)での開発アルバイトでも肌身に感じている。

    柴田氏にとって、Slush Asiaでのボランティアは多くのスタートアップと投資家、プログラマーらと接しながら幅広い知見を身に付ける絶好の機会。「自分も人をワクワクさせるようなモノを作りたい」という思いは、いくつもの出会いとそこで得る刺激によって日に日に増している。

    ただし、自身のベースにしていきたいと話すのはあくまでも技術への興味と造詣だ。

    「学科仲間には、ソフト、ハードを問わず本当に驚くほどの技術知識を持っている友だちがたくさんいます。そういうヤバい奴らばかりの環境にいると、僕も最低限、コンピュータサイエンスの原理原則くらいは学び続けなきゃと思わされるんです」

    最近は「スクリプト言語が発達しているし、コーディングなら誰にでもできるようになっている」と柴田氏は感じている。世界がそんな状況になっているからこそ、技術の深い部分まで理解した上でアイデアを生み出せる人にならなければ「サービスを作れるギーク」にはなれないという危機意識を持っているそうだ。

    思いと危機感を持つ人は強い。そして、人の意思をさらに強固なものにしていくのは環境である。

    学業に勤しみながらもSlush Asiaに費やしてきた半年間は、柴田氏に大きな何かをもたらしそうだ。

    取材・文・撮影/伊藤健吾(編集部)

    Xをフォローしよう

    この記事をシェア

    RELATED関連記事

    RANKING人気記事ランキング

    JOB BOARD編集部オススメ求人特集





    サイトマップ