キャリア Vol.937

組織や技術の判断基準は?苦境の乗り越え方は?ママリ・クックパッド・BASEのCTOが“現役エンジニアたちの疑問”に回答!【コネヒトーク イベントレポート】

2019年8月28日(水)、コネヒト株式会社が主催する定期イベント「コネヒトーク」が開催された。

第5回目となる今回は、「ママリ、クックパッド、BASEのCTOが語る!組織作りや技術選定について」というテーマで、ママ向けQ&Aアプリ『ママリ』を運営するコネヒト株式会社CTOの伊藤 翔さん、料理レシピ投稿・検索サービス『クックパッド』を運営するクックパッド株式会社CTOの成田 一生さん、ネットショップ作成サービス『BASE』を提供するBASE株式会社CTOの川口 将貴さんがパネルディスカッションを行った。

左から、コネヒト伊藤さん、BASE川口さん、クックパッド成田さん
左から、コネヒト伊藤さん、BASE川口さん、クックパッド成田さん

普段仕事をしている中でCTOがどのような思いで組織作りに勤しんでいるのか、技術選定をどのように行っているのか、彼らのリアルな思いや葛藤を知る機会は少ないかもしれない。そこで本記事では、若手エンジニアが気になる“CTOの仕事の裏側”の一部を紹介しよう。

CTO3人の共通の志
「悩んだときはユーザーを第一に考えよ」

――CTO就任までの流れや、打診された時の心境を教えてください。

川口:僕自身「BASEのCTOと言えばえふしんさん(藤川真一氏)」というイメージがあったので、まさか自分がCTOになるなんて想像もしていませんでした。だから3月くらいにえふしんさんから「CTOをやらないか?」と打診された時も「まだできないです」と答えていました。自分がえふしんさんの代わりになれるイメージも湧かなかったですし……。ただ、何度か話をする中で「経営じゃなくて技術やプロダクトに対してアプローチするようなCTOならやれるかな」という気持ちも湧いてきて、最終的に引き受けることになりました。「えふしんさんの次のCTO」というのは、いまだにコンプレックスなんですけどね。

コネヒトーク

伊藤:僕は前CTOにいきなり「ご飯にいこう」と言われて、珍しくすごく良いところに連れていってもらい、打診されました(笑)。突然の話だったので正直驚きましたが、ちょうど社会人10年目で次のキャリアをどうしようか考えていた時期でもあったので、5分後に「やります」と返答しました。何より僕はコネヒトの「この生活になくてはならないものをつくる」というミッションが好きで、人生を懸けるほどのやりがいがあると思ったんです。

成田:僕は話を受けた時、「やっていいんだ」とワクワクしたのを覚えています。その当時、前CTOと仕事をする中で「もし僕がCTOだったらこうするのに」と思うことがいくつかあったんです。前CTOは少し尖った部分があったので、メンバーと意見が合わないことも多くて。でも3年CTOをやった今、前CTOに対するイメージが変わりました。僕は皆が上手くいくようにサポートするような立ち回りが多いんですけど、もっと皆が成長できるように、あえて嫌がられることを選択することも必要だなと感じる場面もあって。前CTOはそういうことをやっていたんだなと最近になって気付きました。

コネヒトーク

――「CTO」と言っても、会社の規模やフェーズによって課せられるミッションが異なると思います。CTOとして、具体的にどんなことをしているのか教えてください。

川口:各マネジャーからチームの進捗や技術的な報告を受けたり、次にリリースするサービスのマネジメントをしたりしています。CTOになってからは特に採用などの、組織に関連する仕事が増えましたね。

成田:僕は1日の8割はミーティングをしています。例えば今日やっていたのは数名のリーダーと最近の業務について話したり、子会社の取締役会に参加したり、知財関連の調整をしたり……。残りの2割は今困っていることではなくて、1年後や3年後に訪れる課題のために時間を使っています。そのためにはインプットが重要なので、社内のSlackを見て回ったり、他社の経営者に話を聞いたり……。社員には「あいつ何やってるんだろう」って思われているかもしれないですね(笑)。

伊藤:うちは15名くらいの組織なので、できるだけマネージャーは置かずにフラットな組織でいたいと思っているんですよね。だから「コードを書きたい」という気持ちは抑え、コードを書く仕事はみんなに任せて、意図的に僕自身がマネジメント業務にコミットするようにしています。

コネヒトーク

――事業会社のCTOとして難しさを感じる部分はどこですか?

成田:実はクックパッドって、リリースしてからもう20年ほど経っているサービスなんですよ。既にあるものを改善するのがクックパッド本体サービスのエンジニアの仕事なので、残されている技術的なチャレンジはどれもかなり難易度が高いものしかなく、成功体験を得るのが容易ではないのは事実ですね。また、既に広く知られているサービスということもあって、新しい機能をリリースしても、CMを放映しても、新規利用者数は簡単には伸びない。エンジニアたちはそんな、成果が目に見えづらい厳しい状況の中で戦っています。だからこそ「厳しい状況の中でもチャレンジを楽しめる人が居続けたくなる場所」を作ることが僕のCTOとしての役割だと感じています。……と言っても、誰も方法を教えてくれないから大変なんですけど。

伊藤:技術的な多様性は組織が大きくなる上で必要だし、「選択できる強さ」が得られる。手段を増やす挑戦はしていきたいとは思うものの、コネヒトは「技術は手段」であることを大切にしているので、新しい技術を導入しようとすると逆にブレーキがかかってしまうこともあるんですよね。「PHPでもできるからこのままでいいじゃん」という風に。だから一メンバーが新しい技術を取り入れていいかどうかを判断するのはなかなか難しい気もしていて、僕がCTOとしてある程度方向性を示してあげなきゃいけないのかなと思います。

川口:うちはPHPを使ったサービスとして有名になってきましたが、PHPを書けないと入社できないと思われちゃうのは嫌なんですよね。何より僕がPHPを書かずに入社して、CTOになっているし(笑)。PHPを書けることはもちろんプラスではあるけど必須条件ではなくて、事業が成長するならこれまでうちがチャレンジしてこなかった技術も自由にチャレンジしてもらいたいと思っているんです。ただ、そうなると今までPHPで作った資産との兼合いもあるし……。今後組織が大きくなることを考えると言語やフレームワークの選定に悩みます。どの会社もマイクロサービスを取り入れている理由が分かりますね(笑)。

コネヒトーク

成田:開発チームごとに技術選定ができることはマイクロサービスの利点ですよね。チームではなく会社が技術選定をするのって、あらかじめ石ころが拾われた運動場でメンバーに運動をさせている感覚と似ている気がします。それって、会社としては失敗の確率は減るから良いですけど、若手が失敗から学ぶ経験も減ってしまうじゃないですか。綺麗に整った環境では、正解を学ぶことはできるかもしれないけど、悪手を学ぶことは難しい。僕は「エンジニアは過去に書いてきたクソコードの数だけ成長する」と思っているので、若手に小さな失敗をする機会を与えてあげたいんです。その点、マイクロサービスは自分たちで石ころを拾うところから始められる。マイクロサービスにはそういった強い人材を育てられる可能性を感じています。

――何かを決断しなければいけないシーンや苦境に立たされたときに、CTOとしてどんな考え方で乗り越えているのですか?

成田:僕が苦境に立たされる場合というのは、基本的に「人」に関わることが多いんですよね。共に働いていた仲間が辞めてしまうとか、メンバーと意見が合わないとか。でも実はこうした問題って、ユーザーにとっては全く問題じゃなくて。クックパッドのSREが大切にしている言葉に「1行のログの向こうには1人のユーザーがいる」というものがあるんですけど、僕が悩んでいる間にも、世界中のユーザーはクックパッドを見て今日のレシピを探している。そう考えたら止まっているわけにはいかないですよね。

川口:僕もほとんど同じです。BASEはネットショップを運営するサービスだから、僕らが立ち止まると生計が成り立たない人たちが出てくるんですよ。だから僕らはサービスを良くするためにひたすら向き合うしかない。僕が苦境に立たされたときや、難しい選択をするときの判断基準は「サービスが良くなるか」だけですね。

コネヒトーク

伊藤:僕も最終的な判断基準は「プロダクト」です。自分がいくら大変でも、ユーザーであるママたちの大変さに比べたら全然大したことない。「妊娠中や子育て中の悩みを抱えるママに対してどうアプローチするべきか」というのを見極めた上で意思決定をすることを常に心掛けています。

――CTOとして今後やっていきたいことはありますか?

成田:毎日の料理を楽しみにするというミッションがあって、世界中にユーザーがいて、料理の課題があって。僕はクックパッドという会社を、このミッションが好きで、それに貢献するのが好き、という人達が自然に集まるような場にしたいんです。エンジニアにとって「いつかはクックパッドに行きたい」と思われるようにしたいし、クックパッドに入った人には「ここにいることが誇り」って思われたい。そういう組織にすることで、良いサービスをつくり出すことに繋げていきたいですね。

コネヒトーク

川口:僕は昔からインターネットが好きで、インターネットに貢献する仕事がしたいと思っていました。その上で、自分の責任で技術選定や組織づくりができるCTOというポジションに就くことは、とても重要なことでした。今後はマイクロサービス化を進めて、インターネットに貢献できる組織にしていきたいですね。

伊藤:ママリはプレママやママが中心のサービスですけど、今後はもっと範囲を広げて“家族”を幸せにするサービスが作りたいです。テックカンパニーとして、テクノロジーの力で家族の課題を解決出来たらいいなと思っています。

こうしてCTO3名によるイベントが終了。彼らが普段どんな思いで組織やサービスづくりに望んでいるか知ることができただけでなく、「大変なときはユーザーのことを思い浮かべる」など、現場のエンジニアにも役立つ話を存分に聞くことができた。当日の様子はTwitter「#コネヒトーク」でも見ることができるので、ぜひ検索してみてほしい。


▽コネヒトーク イベントページ

コネヒトーク5th「ママリ、クックパッド、BASEのCTOが語る!組織づくりや技術選定について」

▽登壇者プロフィール

コネヒト株式会社 執行役員 CTO 伊藤 翔さん
1986年生まれ、慶應義塾大学卒。学生時代からプログラミングに興味をもち金融系のSIerに新卒入社。その後、Web系の受託会社を経験する中で、自社サービスをつくりたいと思うようになり、Supershipに入社。2017年にグループ会社であったコネヒトに出向し、「ママリ」のAPI開発や「ママリプレミアム」の立ち上げを経験。そして、リードエンジニアや開発部部長を歴任し、19年6月にCTOに就任

クックパッド株式会社 執行役 CTO 成田 一生さん
1984年生まれ。名古屋大学大学院を修了後、2008年にヤフー株式会社に新卒入社。Yahoo! メールのバックエンド開発に従事する。 10年にクックパッドに入社。サーバサイドのパフォーマンス改善や画像配信を担当ののち、インフラストラクチャー部部長や技術本部長などを務める。現在は、執行役 CTOとしてエンジニア全体を率いる

BASE株式会社 Product Dev Division 執行役員CTO 川口 将貴さん
1991年生まれ、東京都出身。大学卒業後、2013年ソーシャルゲーム開発会社に入社。サーバーサイドエンジニアとしてアバターゲームの開発に従事。その後同社の女性向けネイティブゲームの開発運用に異動しCocos2d-xを利用した開発を経験。 17年5月にBASE株式会社に入社。ショッピングアプリ「BASE」のバックエンド開発を担当し、17年9月にライブコマース機能「BASEライブ」を開発。BASE Product Divisionのテックリードを経て、19年7月にCTOに就任

取材・文/赤池沙希 撮影/河西ことみ(編集部)

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