キャリア Vol.953

無断遅刻する新人、嘘つき同僚、文句ばかりの上司――開発現場に現れたモンスター社員にどう対処する?【心理学者 杉山崇さん監修】

最近、耳にする機会が増えた「モンスター社員」という言葉――。

組織のルールを無視して身勝手に振舞う後輩、感情を抑えず周りの人にあたり散らす上司。ウソばっかりつく同僚に、人の手柄を横取りしようとする先輩……。職場にさまざまなトラブルをもたらす“モンスター社員”の存在に、困ったことがあるエンジニアも多いのでは?

心理学的に正しいモンスター社員の取扱説明書』(双葉社)の著者であり、心理学者の杉山崇さんは「モンスター社員が近年増加していると言われる背景には、あらゆる業界で深刻化する“人手不足”が関係している」と話す。それは一体どういうことなのだろうか?

エンジニアtype読者から寄せられた悩みに回答してもらうかたちで、モンスター社員とは何か、そして彼/彼女たちにどう対処すべきなのか、杉山先生に教えてもらった。

プロフィール画像
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心理学者・神奈川大学教授 杉山 崇さん神奈川大学教授、大学院人間科学研究科委員長。心理学相談センター所長。法政大学大学院講師。心理職歴25年の臨床心理士。精神科、学校、企業などであらゆる年代のあらゆる悩みに応じてきた。うつ病と対人関係の研究で有名で、厚生労働省の政策に協力する委員でもあり、一級キャリア・コンサルティング技能士として指導的役割も担う。NHK等のTV番組出演をはじめ、各メディアにおける心理解説でも活躍。多数の自著も刊行。近著は『心理学的に正しいモンスター社員の取扱説明書』(双葉社)
公式ホームページ


そもそも、「モンスター社員」って誰のこと?

はじめに、「モンスター社員」の定義をはっきりさせておきたい。ただ単に仕事ができない人と、モンスター社員の違いは何なのか。杉山さんは、モンスター社員を次のように定義する。

モンスター社員とは?

偏った人付き合いや仕事のスタイルで職場に不利益を与え、繰り返し(3回以上)同じ注意や指摘をしても直らない人

ポイントは、客観的に見て「職場に不利益を与えている」にもかかわらず、それを複数回指摘されても態度・行動を全く改めようとしないというところだ。また、実際そのような人物は、近年増加傾向にあるのだろうか。

杉山 崇さん

昔から、どの職場にもモンスター社員は存在していたと言えます。ただ、かつての日本企業であれば、バックヤードの仕事を任せるなど、比較的コミュニケーションが不要な業務にそういった人を配属することができた。ある意味、うまく隔離することができていたのです。

しかし、最近はどの業界も人手不足が顕著。モンスター社員といえども、彼らを悠長に隔離している余裕がありません。また、十分な教育体制を整えられず、人材育成に手がまわらない職場も増えていますから、モンスター化を助長してしまっている部分もあると思います。

あなたの会社にもいるかも?
4大モンスター社員

モンスター社員

あらゆる職場でその存在が“顕著なもの”になりつつあるモンスター社員。杉山先生によれば、代表的なタイプは4つに分類できるという。

■依存系モンスター
人に甘えて、仕事から逃げようとするところが特徴。「仕事をしたら負け(損)」だと考えている。そのため、他人に自分の仕事を押し付けてくる。やらなければいけないことを放っておいて、周囲を困らせる。周囲がしっかりタスク管理をする仕組みをつくってしまえば、組織への不利益は軽減する傾向にある。

■承認欲求系モンスター
承認欲求が激しく、「自分を見てほしい」という強い願望。そのため、根も葉もない噂などを自ら流し、職場の人間関係をかき回すことがある。話題の中心にいたがるタイプで、女性に多く見られる。自分に注目を集めたいだけなので、普段から話を聞いてあげれば暴れない。周囲の割り切りも重要。

■頑固系モンスター
自尊心が強く、コミュニケーション能力や、人の気持ちを察する力が著しく低いタイプで、男性に多い傾向。頑固さゆえに得意分野では良い成績を残しているケースも多く、中には実績を買われて管理職になっている人も少なくない。「反論されること」が大嫌いで人の話を聞き入れず、自分の意見に固執する。周囲の人には忍耐力が必要。

■自己愛系モンスター
自己愛が強く、自分のことを「無能な人間たちを導く存在」だと考えている。男性に多く、自分の考え方や仕事の進め方などを他者にも強要してしまう。部下の心身を壊すクラッシャー上司にもこのタイプが多い。自分の言うことを部下や周囲の人が受け入れてくれて当たり前と思っているので、とても厄介。一対一で戦うと疲弊するので、会社の相談窓口や、被害者仲間を見つけて対処するのがよい。

無断欠勤、ミスの隠蔽……
モンスター社員への対処法は?

エンジニアtype読者に聞き取り調査を実施してみると、「我が社のモンスター社員」に関する暴露情報が続々と寄せられた。そこで、代表的な事例を3つ編集部でピックアップ。杉山先生に適切な対処法を教えてもらった。

<暴露1>勤怠自由過ぎエンジニア

29歳/WEB系エンジニア

同じ開発チームの後輩がよく無断で遅刻や欠勤を繰り返します。朝会社に来ないので心配して連絡すると「今日は気分が乗らないからリモートで働きます」と事後報告。

会社に来る日もやたら遅刻が多いので、「連絡くらいしろ」と何度も注意しましたが姿勢は変わらず、自分勝手な勤怠を続けています。任せた仕事を全くやらないというわけではないので、どう扱えばいいのか困っています。

杉山 崇さん

依存、自己愛などの複数タイプが掛け合わさったタイプのモンスターですね。自分の行動がなぜダメだと言われるのかが分からない(自分は正しいと思っている)タイプは、あらゆる世代の中でも20代世代に比較的多くいます。

「仕事はしなくてはいけないもの」という自覚はあるのですが、「必要なことだけやればいいんでしょ?」と考えてしまう。心の中で周囲の人を「無駄なことをしている」と見下してしまうことがある人です。

杉山 崇さん

こうしたタイプの人の意識そのものを変えようとするのは、かなり骨の折れる作業です。あなたと彼の一対一の対話ではなく、「絶対に守ってほしいルール」は組織全体で決めて、皆で伝えるようにしましょう。

また、ルールづくりの場に、本人を参加させるのがお勧め。先輩たちが勝手に決めたルールには従わない可能性がありますが、自分が決めたものであれば守る可能性が高いです。また、就業規則に関わるものであれば、外部から社労士などを招いてディスカッションしてみてもよいでしょう。専門家の知恵を借りるのも一つの手です。

<暴露2>嘘つきエンジニア

30歳/SE

自分が教育担当をしている新卒2年目の男性エンジニアが、やたらと嘘をつきます。客先でやってしまったミスは絶対隠して報告しないし、業務進捗も遅れているのに「順調です」と嘘をつく。

隠していても後々になって発覚することも多いので、その度に叱るのですが、相変わらず嘘をついて隠そうとします。もう、染み付いてしまった癖なのかもしれないなと思うのですが、業務上の大きなトラブルを招くリスクが大きく、育て方に戸惑うばかりです。

杉山 崇さん

失敗して怒られるのが嫌だ、ミスがばれたら評価が下がるのでは?といった「恐怖」からついてしまうウソであれば、「そんなことをする必要はない」「ウソをつく方が損をするよ」と伝えてあげれば済みます。

ただ、ここで問題となるのは、ウソをつく行為に全く罪悪感抱いておらず、「怒られたくない」という動機さえない場合です。彼がどちらのタイプなのかは、現場でしっかり見極めなければいけません。

杉山 崇さん

もしも彼が罪悪感なく嘘をつくタイプなら、人から怒られたり指摘されたりするくらいでは直りません。呼吸するように嘘をついているので、彼自身も変われないのです。なので、彼を叩き直そうとするより、「嘘をついても無駄」という管理体制をつくってしまう方が簡単だと思います。

必ず誰かの監視下に置く、一人で仕事を完結させないWチェック体制を敷くなど、環境の方を変えましょう。

<暴露3>愚痴り放題エンジニア

27歳/社内SE

私の上司は、会社の経営方針や職場の労働環境などにとにかく難癖をつけてばかりいます。「こんなやり方だからうちの会社はダメなんだ」、「営業あがりのしょぼい経営陣しかいないから、いつまでたっても会社が良くならない」など、文句をずっと言っています。

時には、「部下もダメなやつ、バカなやつばっかりだ」と愚痴ってきたりして、人格否定で部下を精神的に追い詰めてきます。管理職なんだから自分も何かしろよ! と思いますが、自ら改善策などは出していないようです。本当に近づきたくない。

杉山 崇さん

承認欲求系モンスターの典型です。他者をバカにすることで「自分はすごい」と周りに思わせたり、自分自身で「自分のすごさ」を再確認したりしようとします。このタイプは、会議などでも他の人のアイデアや意見を評論するのみで、自分からは何もしません。でも、権力には弱く、自分の上司にはいい顔をしたりします。

杉山 崇さん

鬱陶しいとは思いますが、正面から「あなたの態度はおかしい」と反論しても、余計に暴れてしまうだけ。

自信のなさの裏返しで周囲の文句を言っている可能性があるので、コンプレックスを刺激してしまう可能性があります。権威に弱いところがあるので、対処は「上司の上司」に任せましょう。あとは、「はいはい」と文句を聞き流しておけばいいと思います。

職場に不利益を与え、混乱させるモンスター社員たち。ただ、どんなに困った人であっても、会社にいる以上は付き合っていかなければいけないもの。自分の立場やメンタルヘルスを守るためにも、適切な対処法を心得ておきたい。

取材・文/上野 真理子


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