キャリア Vol.980

「自分だったら何ができるか?」を常駐タスクに。災害時、エンジニアができるボランティア【連載:澤円】

【連載】澤円が解説!エンジニア キャリア New Wave

日々新たな技術が生まれるのと同じように、エンジニアの働き方やキャリア形成のあり方も刷新され、新たな潮流が出来つつある。しかし、トレンドをキャッチアップし、多様化する選択肢の中から自分の進むべき道を決めるのは難しい。そこで本連載では、外資系テクノロジー企業勤務/圓窓代表・澤円氏が、エンジニアとして“楽しい未来”を築いていくための秘訣をTech分野のニュースとともにお届けしていきます

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株式会社圓窓 代表取締役 澤 円(@madoka510)立教大学経済学部卒。生命保険のIT子会社勤務を経て、1997年、外資系大手テクノロジー企業に転職、現在に至る。プレゼンテーションに関する講演多数。琉球大学客員教授。数多くのベンチャー企業の顧問を務める。
著書:『外資系エリートのシンプルな伝え方』(中経出版)/『伝説マネジャーの 世界№1プレゼン術』(ダイヤモンド社)/『あたりまえを疑え。―自己実現できる働き方のヒントー』(セブン&アイ出版)※11月末発売予定
Voicyアカウント:澤円の深夜の福音ラジオ メルマガ:澤円の「自分バージョンアップ術」 オンラインサロン:自分コンテンツ化 プロジェクトルーム


皆さんこんにちは、澤です。

ここ最近、自然災害の規模がどんどん大きくなっていますよね。特に、今年は台風の被害が各地で大きく、この記事をお読み下さっている方の中にも、被害にあわれたり、何かしらのダメージが今でも残っている方もいるかもしれません。心よりお見舞い申し上げます。

ネットが浸透する前であれば、災害時に「何が起きているのか」はニュースや新聞の報道に依存せざるを得ませんでした。しかし、今ならSNSなどによって瞬時に情報収集を行うことができ、被災地のサポートに必要なアクションを選べるようになりました。ネットやSNSを活用すれば、ボランティアの募集も災害支援の募金も容易に行えます。テクノロジーの進化によって、災害発生時の対応の質が上がっているのは間違いない事実でしょう。

そんな中、「自分のエンジニアとしてのスキルを活かして何かできないか」とお考えになった方もいるのではないでしょうか。

エンジニアならではの貢献方法は、確かにあります。

電力サイトをクラウド化。「パクえさん」の活躍事例

実際に、私のチームメンバーの一人が、2018年9月の北海道胆振東部地震の際に、ホームページのクラウド化という形で活躍をしました。吉田雄哉さん(@yuya_lush)という人で、業界では「パクえ」という通り名で知られています。「パクえ」というのは「パブリッククラウド エバンジェリスト」の略で、彼はまさにクラウドコンピューティングの伝道師として、大活躍中。ちなみに、“え”がひらがなになっているのには検索で引っかかりやすいというメリットがあるそうです。

当時、地震が北海道を襲った後、道内で過去に例を見ないような停電が発生。どのような状態なのかを確認しようと、とてもたくさんの人が情報を求めて北海道電力のWebサイトにアクセスし、結果的にWebサイトは全く機能しなくなってしまいました。パクえさんは実家が北海道ということもあり、停電の具合がかなり気になっていたそうです。そして、Webサイトがダウンしているのを見て、プロの勘で「これはキャパシティー不足ではないか」と思い、北海道電力の知り合いにすぐに連絡。お手伝いすることを申し出ました。

クラウドへの移行というのは、通常のビジネスプロセスでは「運用は大丈夫なのか」「データが外にあるなんて」「セキュリティーが」などというノイズが上がりやすいのですが、このような非常事態のときには「すぐに利用できる」というメリットが大きくなります。即決でクラウドへの移行が決まり、早速作業に取り掛かることになりました。

作業そのものは、パクえさんのスキルが遺憾なく発揮され、素晴らしいスピードで進みました。彼自身が手を動かすだけではなく、現地の人たちに必要に応じてアドバイスをするなどして、構築のノウハウが残るような工夫もしたそうです。結果として、多くの人に停電の状況を伝えるられる環境が、2日掛からず完成しました。

当時の様子は、こちらに詳しく書かれています。

北海道胆振東部地震の際にホームページのクラウド化を敢行、その成功を受け全社 IT 戦略もクラウドファーストへとシフト

これは、まさにエンジニアとしてのスキルを生かしたボランティア活動の一つです。自社の製品やサービスのセールスをするのではなく、そのときに解決しなくてはならない課題と徹底的に向かい合い、テクノロジーで解決できる部分を探るのが、災害時におけるエンジニアの役目ではないでしょうか。「これがきっかけで売れるといいな」という期待はとりあえず横に置いておいて、とにかく問題解決を最重要にできるかどうかが、本物のエンジニアのボランティア活動です。

では、そのときに自身のマネジャーにはどのようにコミュニケーションすればいいのでしょうか。

「何ができるか?」を常に考えて、とにかく行動

私は、「本気でやるならマネジャーへの報告なんて後回しでOK」と考えています。本人が「解決したい」と強く思っている課題に対して、マネジャーが何かをとやかく言う権利はありませんから。

北海道胆振東部地震の際は、割と早い段階でパクえさんから連絡をもらいましたが、説明は一切求めずに「とにかく正しいと思ったことをやってください」とだけ伝えました。もちろん、コンプライアンスやセキュリティーの問題はマネジャーとして気にしなくてはなりませんが、緊急時には「まずは仲間を信頼してやってもらう」というのも大事なことではないかと思います。悪意を持ってこういった災害を利用するのはもってのほかですが、そこは普段からマネジャーとして見極めておけばいいわけですし、もし何かの問題があればその解決を手伝うのもマネジャーの仕事です。

ちなみに、私が尊敬するエンジニアでありマネジャーの及川卓也さんも、東日本大震災の際にはいち早く『Hack for Japan』を立ち上げました。大震災の状態を知れば知るほど、「エンジニアとして何かできることがあるはずだ」と思ったそうです。そして、会社という枠組みを軽々と飛び越えて、志を同じくする仲間たちと「技術とコミュニティーで社会課題を解決する」というチャレンジを続けています。

一人では難しいことも、仲間を募ればできる。そのときにリーダーシップを発揮してエンジニアの可能性を引き出すのは、マネジメント能力のある人の役割です。「自分はエンジニアとして手を動かすタイプではないけれど、技術は分かるし人のマネジメントは得意かも」と思っている方は、「チームをつくる」という形でボランティアを始めることもできます。そして、さまざまなアイデアを引き出しながら、チームとして課題解決に取り組む。チームができれば、さらに大きな貢献も可能になるでしょう。

日本では、エンジニアがいまだに「作業員」として扱われてしまう傾向があります。全てのエンジニアに当てはまるわけではないですが、「エンジニアリソースがSIベンダーに集中している」という現状から、作業員的な働き方になってしまうのは残念ながら自然な流れです。もし、そんな働き方に疑問を持っているなら、有事の際に自分の能力を生かすチャレンジをしてみてはいかがでしょうか。実際にできなくても、まずは「何かできることはないか」「もし自分がやるならどうするか」と妄想するだけでもOKです。

一番の敵は「無関心でいる」こと。

自分の活躍の場を自分で見つけることができないエンジニアは、これからの時代どんどん厳しい立場になります。普段から「何かが起きたとき、自分は何ができるのか」を考えるプロセスを自分の脳内に常駐タスクとして走らせておきましょう。そうすれば、本当に災害などが起きたときに「一歩目を踏み出す」ことができるようになります。それがきっと、エンジニアの皆さんの大きな成長のきっかけになるはずです。


▼澤円氏 最新書籍『あたりまえを疑え。 自己実現できる働き方のヒント』(セブン&アイ出版)

あたりまえを疑え。 自己実現できる働き方のヒント

セブン&アイ出版さんから、私の三冊目となる本が発売されました。「あたりまえを疑え。自己実現できる働き方のヒント」というタイトルです。

本連載の重要なテーマの一つでもある「働き方」を徹底的に掘り下げてみました。
ぜひお手に取ってみて下さいね。

>>詳細はこちら

>>要約はこちら 澤円さんが教える働き方のヒント『あたりまえを疑え。』

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