「“イキイキ働く”近道は『チーム』を主体的に選ぶこと」ーーエンジニアに伝えたい、“成長できる環境”の選び方
終身雇用が崩壊し、キャリアプランを自分自身で選択する時代に差し掛かった昨今、IT業界を中心に仕事のコミュニティーが多様化し始めている。エンジニアの中にも社内の仕事にとらわれず、副業で他社のプロジェクトに携わったり、プライベートの仲間と協力してプロダクトを作ったりと、自由な働き方をしている人が目立つようになってきた。
フリーランスやパラレルワーカー同士のチームづくりをサポートするプラットフォーム『Teamlancer(チームランサー)』を運営する株式会社エンファクトリーの藤生朋子さん、中村修治さんは、「今、『仕事』にまつわるさまざまな形の“チーム”が誕生し始めている」と話す。エンジニアがこれからイキイキと働くためには、「チームの選び方」が大切になるというが、一体どういうことなのだろう。2人に話を伺った。
時代や開発手法の変化によって、「新しいチーム」への興味が高まっている
藤生:労働人口の減少や、終身雇用も崩壊しつつあり、「自分で仕事を見つけて働く」という意識が高まってきていますよね。そうした背景からここ数年でフリーランスとして働いている人の割合が増えているとともに、昨年ごろから大手企業が副業を解禁し始めたことで、パラレルワーカーのボリュームもどんどん増えてきています。
企業側も「終身雇用を守り切れない」と明言している以上、社員個人に自立してもらわなければいけません。そのため、社会全体で自由な働き方を尊重したり、受け入れたりする流れができ始めています。
結果、仕事にまつわる“チーム”が多様化しています。社内のメンバーだけが集まって仕事を行うという従来の形に留まらず、外部のパートナーさんと協力してプロジェクトを立ち上げたり、フリーランス同士が集まってプロダクト作りに励むなど、さまざまな働き方が顕在化してきているのです。
中村:さらに僕らエンジニアの立場でいうと、ここ10年くらいで開発手法がウォーターフォールからアジャイルに変わってきており、エンジニア自身が「チームビルディング」を意識する機会が増えていると思うんです。
数年前までエンジニアに対してコミュニケーションスキルが高くないイメージを持っている方も多かったと思いますが、今やチームで仕事を進めていくというスキルが高まってきています。そうした背景から、フリーランスやパラレルワーカーとして、“新しいチームに属する選択肢”に興味を持つ人が多くなってきているのではないでしょうか。
すでに副業などで外部の会社を個人的に手伝ったり、プライベートのつながりでチームを組んでプロジェクトを動かしている、なんて人も珍しくありませんよね。
「どのチームを選ぶか」でスキルアップの方向性が変わる
中村:エンジニアは今市場価値が非常に高いですから、会社員、副業、フリーランスなど、どのような働き方であっても仕事には困らないはずです。ただ、どういった働き方を選択するのかによって得られる経験やスキルは大きく変わります。ですから、やはり「自分が何をしたいのか、何を得たいのか」という観点で働き方を選ぶことが、仕事を通じてやりがいを得る上でも重要になるのではないでしょうか。
例えば企業で正社員として働く場合は、個人で仕事を受けるよりも規模の大きな案件に関われる可能性が高い。また、特定のサービスに深く携わることができますし、意思決定の現場でしか得られない知見も多いはずです。あとは、パートナーさんたちを束ねる力やマネジメント力など、開発以外の力を身に付けることもできるでしょう。
藤生:エンファクトリーのエンジニアチームでも何人かのパートナーさんにお手伝いいただいていますが、中村はフロント開発をしつつ、パートナーさんたちをディレクションする立場も担っています。今後フリーランスやパラレルワーカーの人口が増えるということは、そういった方々を統括するポジションの重要性も高まるということ。マネジメントやディレクションなどのスキルアップにチャレンジしたい方は「会社員」として、フリーランスや開発会社など異なるバックグラウンドの人たちをまとめる経験を積むのが適しているかもしれませんね。
一方で、フリーランスやパラレルワーカーとして働く場合は自分の意思で仕事を選ぶことができますから、新しい技術にチャレンジしたり、特定の業界における開発の手法を経験できるメリットがあります。
また、最近はフリーランスやパラレルワーカー同士でチームを組んでプロジェクト単位の仕事を請け負う方も増えてきています。そうした仕事に挑戦することで、社内案件とはまた違ったチームの空気を味わうことができるのではないでしょうか。
藤生:社内チームであれば、同じビジョンのもと集った同僚たちと、長期的な目線で施策を考えたり、サービスの経過やユーザーの評価を追ったりすることができますよね。また、マネジメントに携わり、部下や仲間の成長を間近で感じることができるのもこのポジションならでは。
一方社外でチームを組む場合、人は職場ではなく“プロジェクト”に集まりますから、本質をとらえた話がしやすい傾向にあります。社内案件の場合は「建前上こうしておいた方がいい」なんてやり取りも起こりがちですから。あとは、さまざまなバックグラウンドを持った方々が集まることで、幅広い考え方や知識を吸収できるのも大きな魅力です。
ただ、個人同士のチームでプロジェクト単位の仕事を請け負う場合、「一体誰が納期や予算の管理をするのか?」と戸惑うケースは多いようです。ディレクションスキルやリーダーシップは、どのような働き方を選択するにせよ今後重要になるのかもしれませんね。
今は「自分がイキイキできる場所」が見つけやすい時代
中村:エンジニアのコミュニティーでは勉強会やイベントが活発に行われていますから、そういった場に参加していろいろな方とディスカッションを重ねてみるのがおすすめです。多様な考えに触れることができますし、マネジャークラスの知見も直接学ぶことができますから。
勉強会に参加せずとも調べれば出てくることはたくさんあるかもしれませんが、やっぱりネットで見る二次情報と現場で聞く一次情報では正確性も熱量も変わってきます。そういった場に参加するだけでも少しずつ自分自身がアップデートされていくんだと思います。
藤生:定期的な勉強会や、ディスカッションでつながったコミュニティーもある意味一つの“チーム”と言えそうですね。同じ会社で長く働いていたり、ずっとフリーランスだったりすると、新しい学びや気付きの機会がなくなってしまいます。どんな働き方を選択するにせよ、さまざまなチームに積極的に参加して、そこで得た知見や技術を会社や個人の仕事に生かす。新たな発見をまた他のチームでディスカッションする……といったサイクルができれば成長にもつながりやすく、すごく素敵ですよね。
中村:働き方改革の一環で副業・兼業に関するガイドラインを発表するなど政府の後押しもあり、これからますます仕事や働き方の多様性が広がっていくでしょう。「チャレンジしてみたいこと」がある人にとって、挑戦しやすい環境であることは間違いありません。ぜひいろいろな働き方に挑戦してみたり、今とは違うチームに属してみたりしながら、「最も自分がイキイキできる場所」を見つけてみてください。
取材・文/キャべトンコ 撮影/赤松洋太
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