アイキャッチ

「からあげエンジニア」ささたつ氏が語る、おいしいからあげとエンジニアチームの上手な作り方【30分対談Liveモイめし】

働き方

    『ツイキャス』を運営するモイの代表取締役で、経験豊富なエンジニア赤松洋介氏が、週替わりで旬なスタートアップのエンジニアや起業家を招いて放談する「モイめし」。『ツイキャス』連動企画として、お昼に30分の生放送&その後のフリートークも含めて記事化したコンテンツをお届けします!

    ツイキャス』を運営するモイの代表取締役で、経験豊富なエンジニア赤松洋介氏が、週替わりで旬なスタートアップのエンジニアや起業家を招いて放談する「モイめし」。今回のゲストは、株式会社ヒトメディアの佐々木達也(ささたつ)氏だ。

    アドウェイズ、クックパッド、Lang-8とさまざまな会社を渡り歩いてきた「からあげエンジニア」ことささたつ氏が、おいしいからあげとエンジニアチームの作り方を語った。

    プロフィール画像

    株式会社ヒトメディア
    佐々木達也(ささたつ)氏(@sasata299

    1983年生まれ。筑波大学大学院修了。2007年、アドウェイズに入社し、広告事業のシステム開発を担当。その後、クックパッドで大規模データ解析や新規事業『やさい便』、Lang-8で双方向言語添削サービスの開発に携わる。14年7月よりヒトメディアにて教育系の新規事業の開発に従事。「からあげエンジニア」と呼ばれることも。著書に『NoSQLデータベースファーストガイド』、『Hadoopファーストガイド』など

    おいしさのコツは「タレに卵白」「空気に触れさせながら揚げること」

    赤松 ささたつさんは「からあげエンジニア」と呼ばれていますが、からあげは食べるより揚げるのが好きだとか?

    佐々木 そうなんです。食べるのが好きと思われているんですけど、実際は作るのがメイン。もともとクックパッドの社内イベントで出していたら「おいしい」と言われて、調子にのって作っていたらからあげの人みたいになってました。

    赤松 からあげをおいしく作るコツって何なんですか?

    佐々木 僕の場合はタレにつけ込むときに卵白を入れるところと、揚げているときに何回か空気に触れさせるところですね。数秒間上げてまた油に戻すということを2、3回は繰り返してます。そうすると外がカリッと、中はジュワッとする。参考にしておいしいからあげを作ってください(笑)。

    赤松 つくレポに載っていそうな本格的な情報ですね(笑)。それはさておきキャリアについて伺いたいんですが、そもそもプログラミングはいつごろから?

    佐々木 もともと大学は情報系ではなかったんですよ。金属の研究をしていて。昔の携帯電話には柔らかいアンテナがあったじゃないですか?あれの研究を大学院までずっとやっていました。研究って、条件を変えつつ、混ぜたり引っ張ったり同じことをひたすら繰り返すんですよ。就職活動の時に、これを定年までずっとやれるんだろうかと考えて……。

    赤松 そういった繰り返しの中からダイオードとかが生まれるわけですけどね。

    佐々木 はい。もちろんそれはそれで大事なんですが。就職活動でいろいろな業界を見る中で、IT業界が一番変化が激しいなと感じたんです。自分は飽きっぽい性格なんですが、これなら飽きることなく続けられそうだということで、大学院卒業の時に初めてプログラムを触り始めました。

    赤松 それまではPCもあまり触ったことがなく?

    佐々木 ブラウザもよく分からなかったくらいです。

    コードを書く楽しさを求めてクックパッドへ

    赤松 最終的に就職先をアドウェイズに決めたのはどんな理由から?

    佐々木 当時まだ100人ちょっとで、あまり大きくない会社の方がいろいろ出来るかなと思って。社長が非常にユニークで面白い方だったのも理由の一つですね。

    赤松 そこでようやく本格的にコーディングを始めた、と。ささたつさんはRubyのコミュニティーでも名が知れていますが、最初からRubyだったんですか?

    佐々木 いえ、最初はPerlでした。

    赤松 それは幸か不幸か……Perlが最初というのは大変だったんじゃないですか?

    佐々木 広告系には多いみたいで。Perlの型のないシステムから入ったので、これがプログラミングとして当然なんだろうと思っていました。後からJavaとかを知って、こんな世界もあるのか、と。Rubyは趣味で簡単なサービスを作ったりする中で少しずつ覚えていきました。

    赤松 アドウェイズからクックパッドへと移ったのには、どういった心境の変化があったんですか?

    佐々木 アドウェイズは上海に開発センターがあって、開発のメインはそっち。日本側では上流工程をやることが多く、そろそろもっと手を動かしたいと思うようになっていました。会社に入ってからコードを書き始めたので、そのころがちょうど一番コードを書くのが楽しい時期というのもありまして。

    赤松 そこから何社か続いて今に至るわけですけれども?(笑)

    佐々木 そこからはずっとキープしているってことで(笑)。で、たまたま参加したRubyエンジニアが集まるイベントでクックパッドの人事の人と知り合って、「今度はRubyを使った仕事がやりたいんです」とか話していたら、「いい会社があるよ」と。遊びに行ったりを繰り返しているうちに、入社する流れになっていました。

    赤松 それはたまたまというより仕組まれていたんでしょう(笑)。ちょうどそのころといえば、クックパッドさんが開発言語をRubyに切り替えた時期ですよね?転職してみてどうでしたか?

    佐々木 それまでよりも圧倒的にコードを書くようになりましたね。最初はデータ解析のところがメインで、hadoopを使ったりしていました。その後は企業とコラボしてコンテストをやるto B事業、最後は野菜を定期宅配する『やさい便』というサービスを新規事業としてやっていました。立ち上げのところだったのでいろいろと大変でしたね。

    赤松 どの辺が一番大変でした?

    佐々木 品質的なところとか納期的なところなど、いろいろある中でもなんとかしてリリースに持っていくというところですかね。リソースも時間もない中、どうにかして作り上げるっていう。それでも、実際にそれを使ってくれるユーザーさんがついた時は嬉しかったですね。最初の注文を受ける時は張り付いて見ていましたもん。管理画面的なものもまだなかったので。

    赤松 分かります。私も『ツイキャス』立ち上げ直後は、本当に大丈夫か心配になって、自分で何回も配信していましたから。

    ベンチャーで味わった1人で開発することの限界

    コードを書くことにフォーカスしていた時期を経て、現在在籍しているヒトメディアでは、いかにチームの文化を作り上げるかに興味が向いているという佐々木氏(左)

    コードを書くことにフォーカスしていた時期を経て、現在在籍しているヒトメディアでは、いかにチームの文化を作り上げるかに興味が向いているという佐々木氏(左)

    赤松 しかしそういった充実した経験をしたところで今度はドベンチャーのLang-8に移るんですね。これはどういう経緯で?

    佐々木 もともと社長とはTwitterでつながっていたんですが、当時京都にいた社長が東京に出てくるタイミングで会うことになって。それまでやっていた野菜宅配事業もある意味でベンチャー的なものだったんですが、とはいってもクックパッドという大きな会社の中でお給料をもらいながらやっていたこと。実際の世の中のベンチャーとはいろいろと違うだろうし、自分がやらなければもう立ち行かなくなる、という世界も経験したいと漠然と思っていました。

    赤松 それでも当時社長1人しかいないLang-8に決めるのには勇気が必要だったのでは?

    佐々木 確かに今になってそう言われるとすごい決断だったのかもしれませんが、当時は僕の中では自然な選択でした。失敗しても死ぬことはないだろうと思っていましたし。

    赤松 Lang-8に入ってみて、実際に求めていたものは感じられました?

    佐々木 そうですね。プログラミングだけでなく、何でも自分たちでやるというのを感じることができました。ただ、それまでクックパッドでもLnag-8でも自分で手を動かすことにフォーカスしてやってきたわけですが、1年半1人で開発してみて、よくも悪くも1人でやることの限界を感じましたね。そういった経験を経て、今は考えがガラッと変わって、チームで何かをやりたいと強く思うようになりました。1人だと改善するにも何かを作るにも、どうしても時間がかかるので。

    赤松 中で人を増やす選択肢もある中で、外へ出る方を選んだわけですね。そこから現在のヒトメディアへ移った経緯は?

    佐々木 辞める時は次のことは何も決めずに辞めました。それまで転職する際はたまたまあった話に乗る形だったので、完全に無職になるのは初めて。時間もあったので、新卒の時以来といった感じでいろいろな会社の話を聞いて回りました。先ほどお話したチームとしてやるという目線で、10~20人くらいの規模でエンジニアが集まってきたけど、まとめる人がいない、といったフェーズにある会社を探していました。それを超える規模だと、だいたいまとめる人はすでにいると考えたので。

    エンジニアチームの文化を育むのはポエムと朝会?

    赤松 ヒトメディアさんでは今、実際にどんなことをしているんですか?

    佐々木 教育系のジョイントベンチャーに関わっていて、主にPMのようにして動いていますが、今までとは全然違う世界だなあと思いながらやっています。最近試しているのは、Web系企業だともはや当たり前ですが、『Qiita:Team』を導入したり、朝会をやってみたり……。

    赤松 エンジニアの朝会ですか! みんなちゃんと来ていますか?ウチだったら1人も……。

    佐々木 そこは来てくれてます(笑)。ただ、どちらの会社にもそういった文化はなかったので、そこに文化を根付かせるというところにちょっとずつチャレンジしている感じです。

    赤松 エンジニアを組織化するのはなかなか大変ですよね?ドワンゴさんなんかは体操をやったりしているようですが。

    佐々木 ああいうのもいいですね。最近は『Qiita:Team』をもっとカジュアルに使えないかと思っていて、マネーフォワードさんに教わったアイデアなんですが、みんながポエムを投稿するくらいになったら楽しいなと思って、自分が先陣を切って無理矢理書いたりしています。

    赤松 ポエムですかあ。自分の中では夜のポエム禁止令を出しているんですけど。まあ日報も所感みたいなところが一番面白いですからね。公開はされないんですか?

    佐々木 まだそこまではいかないですが、じゃあ有料で販売しますか(笑)。あと、今のチームは外注の人が多いので、その辺も含めて文化を作っていくのは本当に難しい。Slack上にTwitterチャンネルのようなものを作って、特別な理由がなくても投稿できるようにしたりとか、いろいろと試行錯誤しながらやっています。とはいえ、QiitaだSlackだといっても最終的には対面のコミュニケーションが一番大事だと思っているので、朝会をやっているのにはそういう理由もあります。

    赤松 うちはまだ小さいんで、みんなが働きやすい時間に働ければいいと思ってやっています。午前中だとどうしても効率上がらないって人もいますからねえ。

    佐々木 それもあるのでなかなか難しいと思いながら。ある程度裁量があった方がいいとも思いますし。ただ、遠隔地でも働けるというのはすごくうらやましいですね。これは完全に個人的な話ですが、将来的には地方で働くとかもぼんやりと考えていて……。

    赤松 そういう意味ではウチでは日報とか情報共有ツールが役立っていますね。ただ、それでもたまに顔を合わさないと難しいと思います。

    佐々木 赤松さんは今もバリバリとコードを書いてるんですよね?組織が大きくなるといろいろと他の仕事も増えて大変じゃないですか?

    赤松 そうですね。だから睡眠時間を削ることになるんですが、削れるうちは大丈夫かな、と。ただ、さらに会社が大きくなったら、ちゃんと組織を作っていかないと立ち行かなくなりますね。

    佐々木 今、PM的な仕事をしていて感じる難しさもそこなんです。長い目で見ると早く切り離した方がいいとは思っても、納期もあるし短期的には自分が直した方が速いので、ついつい自分でコードを触ってしまう。さらに、本能的に書きたくなってしまうというところもありますよね。エンジニアはもともと書くのが好きでなっているところがあるので。

    赤松 そこは抗えない。本当は細かい修正でもイシューを上げて、というのがいいんでしょうけどね、なかなか悩ましいです。最初からPMでいれば手を出そうって気にもならないんでしょうけど。サイボウズ時代は一切コードを書いていなかったんです。PMとして最後は40、50人のチームを仕切っていたんですが、仕様を決めて役割を決めて、スケジュールを管理して……といったことに特化していました。忙しすぎてコードを見ている暇がなかったというのもありますが、触らないでいるとそれはそれで快適なんですよ。

    キャリアを重ねたエンジニアが行き着くある傾向とは

    赤松 今後についてはどう考えているんですか?

    佐々木 将来的には、複数の会社と関わりたいと思っています。これまではヒトメディアも含めて1社にフルコミットしていますが、世の中面白い会社が多いなぁ、と。例えば技術顧問のような形でいろいろな会社と関わって、自分の知識や経験を使うことでサポートしていけたらといったことをぼんやり考えています。

    赤松 チーム運営もいいですが、せっかくいろいろと技術をお持ちなので、独自サービスをもう1回やってみたいというのはないですか?

    佐々木 選択肢の一つにはありますが、今は作るよりチームの文化を作っていくというところに興味が向いていますね。

    赤松 まあ仕組みを作るという意味ではそれもエンジニアリングですかね。

    佐々木 最近は手を動かすにしても、みんなが使えるライブラリなどに時間を使いたいと思っているんです。

    赤松 分かります、それ!ぶっちゃけエンジニアは経験を重ねていくと、サービスリリースへの道のり、特にフロントエンド周りがつらいというのが分かってしまうから、自分で作れないようになっていくんです。あれがシニアでもできる人はすごいと思いますよ。一方でライブラリはきれいに作れるので、いくら年齢を重ねても作れる。フロントは書けないけどライブラリは作り続ける。これを個人的には「ダンコガイさん化」と呼んでいるんですが(笑)。

    佐々木 それでも赤松さんはサービスを作るところにこだわりがあるわけですよね?それはどうして?

    赤松 そっちの方が面白いからです。使っている人が目に見えること、反応が見える方がいい。

    佐々木 僕もゴールとしてはサービスを作りたいと思っているんですが、その関わり方として、一番レバレッジが利くのがライブラリだと思っていて。数十人エンジニアがいて、これができないから先に進まないみたいになるところを先回りして直しておいたりとか。全体で見ると開発が進むようになるみたいなところです。

    赤松 そうですね。昔、2泊3日の開発合宿をやっていた時期があるんですが、続けていくとだんだんとサービスを作るのがつらくなってくるんです。見えないものをまったくの闇から、しかも45時間という短い時間で作るのってなかなか大変。で、最終的にどうなったかというと、合宿前にライブラリ的にブロックのようなものを作っておいて、合宿に入ってからはそれをレゴブロックのように組み合わせる。五里霧中の中から道筋を見いだすのに、ライブラリのようなものは確かに大事ですね。

    取材・文/鈴木陸夫(編集部)

    Xをフォローしよう

    この記事をシェア

    RELATED関連記事

    RANKING人気記事ランキング

    JOB BOARD編集部オススメ求人特集





    サイトマップ