本連載では、圓窓代表・澤円氏が、エンジニアとして“楽しい未来”を築いていくための秘訣をTech分野のニュースとともにお届けしていきます
2020年は何元年? 5G、スポーツVR、リモートワークなど、注目技術が盛りだくさん!【連載:澤円】
株式会社圓窓 代表取締役
澤 円(@madoka510)
立教大学経済学部卒。生命保険のIT子会社勤務を経て、1997年、外資系大手テクノロジー企業に転職、現在に至る。プレゼンテーションに関する講演多数。琉球大学客員教授。数多くのベンチャー企業の顧問を務める。
著書:『外資系エリートのシンプルな伝え方』(中経出版)/『伝説マネジャーの 世界№1プレゼン術』(ダイヤモンド社)/『あたりまえを疑え。―自己実現できる働き方のヒントー』(セブン&アイ出版)※11月末発売予定
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皆さんこんにちは、澤です。新年明けましておめでとうございます。
2019年に元号が変わり、「令和元年」を迎えました。日本人は元号が変わる=時代が変わる、という意識がとても強い国民性があり、「●●元年」という表現が大好きですよね。テクノロジー界でも、「VR元年」、「AI元年」といった言葉が頻繁に使われています。
ということで、今回はテクノロジー界で2020年に「●●元年」となりそうなものと、そのキーワードに対する考え方についてお伝えしたいと思います。
5G元年
2020年に「●●元年」に入る最有力候補は「5G」でしょう。
キャリア各社は次々に対応を表明していますし、デバイスメーカーも5G対応をうたうスマートフォンをリリースしています。5Gは「超高速」「超低遅延」「多数同時接続」という、この時代に最も求められる要素を満たした、素晴らしいインフラです。
動画コンテンツが途切れ途切れになったり、ファイルのダウンロードに長時間待たされたりした経験のある方は、「5G早く来てくれ!!」と心の底から思っているかもしれませんね。
私も、5Gにはもちろん大きな期待を寄せてはいますが、「5G元年」として大きな変化が起きるか、というといささか疑問に思っています。なぜなら、既存のインフラの浸透度合いや、5Gの持つ技術的制約を考えると、まだまだ初期段階の域を脱しないのかな……と思っているからです。
そもそも、そこまでの大容量のコンテンツを生み出すインフラも、まだ整っていないのではないでしょうか。また、インフラ整備は都市部を中心に徐々に進んでいくと思うので、日本全体に行き渡るには、ある程度の時間が必要です。
そのため、エンジニアである皆さんには「冷静に現状を見極めつつ」かつ「5Gがもたらす素敵な未来」の両面を理解する必要があると思います。特に、「5Gがもたらす素敵な未来」については、情報のアップデートが欠かせません。
今後の通信キャリア各社から発せられる情報と、さまざまな技術情報を網羅的に理解して、本当に役立つ情報を発信していきたいですね。
スポーツVR元年
東京で行われるオリンピック/パラリンピックと絡めてVR/ARの領域も熱くなりそうです。「スポーツVR元年」と銘打った商品やサービスが出てくるかもしれません。
オリンピック/パラリンピックは、普段なじみのないスポーツも脚光を浴びて、「ちょっとやってみたい!」と思う人が一時的に増えるイベントでもあります。2008年の北京オリンピックで、フェンシングの太田選手がフルーレで銀メダルを獲得したとき、フェンシング人口が一気に増加したそうです。
スター選手によってスポーツ人口が増えるのは素晴らしいことですが、道具をそろえたり体験できるクラブや道場を探したりするのは、なかなか大変。そんなときに役立つのは、テクノロジーの力による仮想体験です。場所を選ばず、かつ身体的なリスクを避けつつ、選手の視界を体験できるのは、テクノロジーの真骨頂と言えるでしょう。
また、東京オリンピック/パラリンピックでは、339もの種目が実施されるそうです。一般にはなじみのない種目も、多くの日本人の目の前で競われることになり、「こんな面白いスポーツがあったんだ!」と興味を持つ人もたくさん出てくると思います。VR/AR技術によって仮想体験を提供すれば、各スポーツ協会も「競技人口が増やせる!」と喜ぶことでしょう。
現代は、まさに「体験」が物を言う時代。テクノロジーによって「体験」を提供できれば、オリンピック/パラリンピックも一時的なお祭りではなく、日本をより多種多様なスポーツが楽しめる国にするきっかけになるかもしれません。
そのためには、スポーツとテクノロジーを橋渡しする役割を担う人が必要になります。スポーツにずっと携わっている人は、必ずしもテクノロジーに詳しいとは限りませんし、まったくもって無縁な世界で生きてきた人の方が多い印象もあります。しかし、今や世界のスポーツはテクノロジーによって進化しているのは間違いありません。
選手のパフォーマンスをデータ化して、「勝つために必要な戦術」や「確実に結果を出せるトレーニング方法」などが生み出されています。私世代だと『ロッキー4』に出てくる、ソ連のボクシング選手『ドラゴ』というキャラクターをつい思い出してしまうのですが、あの世界がまさに現実になってきているのです。
スポーツは、精神論だけで戦う時代は終わり、データを活用しつつ、マインドセットを磨いて臨むものに進化しました。スポーツをデータ化することは、「スポーツの人口を増やす」ことと「スポーツ選手のパフォーマンスを向上させる」ことを両立させる鍵となります。
エンジニアが活躍できる余地が、そこには大いにありそうですね。
リモートワーク元年
オリンピック/パラリンピックに関連して、東京エリアでは「開催期間中は出勤禁止」という企業もたくさん出てきそうです。そのため「リモートワーク元年」にもなるかもしれません。
私はリモートワークがあまりにも当然になっているので、何をいまさら……と思ってしまいがちなのですが、多くのビジネスパーソンにとってはまだ、「出勤=仕事」になっているのが現状でしょう。
台風15号の影響で、千葉県の津田沼駅では電車を待つ人々の列が2キロにわたって続いたことがありました。そして、並んでいる人へのインタビューで衝撃だったのが「電車が止まっていれば休めるのですが」というコメント。ここまで外圧に頼らないと会社に行かない選択が取れないというのは、どういうことなのか、私は理解に苦しみました。
とはいえ、これが日本の一般常識であると言われれば、私としてはコメントのしようもありません。そうなると、オリンピック/パラリンピックは、素晴らしい「外圧」になりえますね。すでに「オリンピック/パラリンピックの時期は在宅勤務」を業務命令として出している会社もあるそうです。
ここで初めて「リモートワーク」を体験する人がたくさん出てくるでしょう。テクノロジーのインフラは、すでに整いすぎるくらいに整っているはずです。あとは、会社の制度と、社員のマインドセットがどうアップデートされるのかが試されます。
目の前に部下がいないと「管理ができない」なんて言う管理職は、「とっととAIに仕事を取られてしまえ!」というのが私の持論です。また、長時間労働でしか自己アピールできない社員も、「RPAに駆逐されてしまえ!」と思ってしまいます。
ぜひ、この機会に「自分は何ができるのか」「自分はどうやって貢献できるのか」を棚卸してほしいと心から思っています。このトピックは、また別途この連載でも取り上げたいと思います。
テクノロジーの目利きができるエンジニアとして認められるには、「営利目的で、存在が曖昧なものを宣伝する」というメディアは華麗にスルーしつつ、「投資領域として有力である」ものを見極める眼力が問われます。
単なる批評家になるのではなく、「技術的な確かさを担保」しつつ「未来に貢献する要素を伝えられる」というのが、一流のエンジニアの存在意義ですね。
セブン&アイ出版さんから、私の三冊目となる本が発売されました。「あたりまえを疑え。自己実現できる働き方のヒント」というタイトルです。
本連載の重要なテーマの一つでもある「働き方」を徹底的に掘り下げてみました。
ぜひお手に取ってみて下さいね。
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