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人気企業3社が語る今欲しいエンジニアの条件「2020年以降のエンジニアに最も必要なのは“技術以外”のスキル」【BASE×DMM×SHOWROOM】

働き方

    目まぐるしく変化するIT業界において、2020年以降に求められるエンジニア像とは? そんな問いへの答えを探るため、BASE、DMM、SHOWROOMの人気IT企業3社協力のもと、「エンジニアドラフト会議」を実施!4人の新規事業立ち上げチームをつくってもらった。

    >>前編はこちら

    後編では、完成したチーム編成を掘り下げながら、各ポジションのエンジニアへのアドバイスをお届けしたい。

    エンジニアドラフト会議/BASE・DMM.com・SHOWROOM

    BASE株式会社 執行役員CTO
    川口 将貴さん(写真左)
    1991年生まれ、東京都出身。大学卒業後、2013年ソーシャルゲーム開発会社に入社。サーバーサイドエンジニアとしてアバターゲームの開発に従事。その後同社の女性向けネイティブゲームの開発運用に異動しCocos2d-xを利用した開発を経験。17年5月にBASE株式会社に入社。ショッピングアプリ『BASE』のバックエンド開発を担当し、17年9月にライブ配信機能『BASEライブ』を開発。BASE Product Divisionのテックリードを経て、19年7月に執行役員CTOに就任

    DMM.com プラットフォーム事業本部 プロダクトオーナー
    石垣 雅人さん(写真中央)
    DMMにおけるAccount(ID)、Auth、Personalinfoのバックエンド周りのプロダクトオーナーを経て、2018年7月にリードナーチャリング領域を強化するチームの立ち上げを行う。現在はネイティブアプリの立ち上げ段階のプロダクトオーナーにも従事

    SHOWROOM株式会社 CTO
    佐々木 康伸さん(写真右)
    ITベンダー企業を経て 2008年に株式会社モンスター・ラボに入社。自社の音楽配信サービスやソーシャルアプリを開発する。10年DeNAに入社後、Mobageの開発・運用や、音楽アプリGroovyの開発に携わる。13年に代表の前田裕二氏とSHOWROOMのサービス立ち上げ、15年にDeNAからSHOWROOM株式会社として独立後、CTO、バックオフィス、新規事業、HR全般を担当し、現在はプロダクト開発および、XR・メディア等、新規事業開発の責任者を務める

    フロントエンドエンジニアの価値は“技術よりバランス”で決まる?

    ——今回のエンジニアドラフト会議を通じて、各社のチーム編成は以下のようになりました。
    エンジニアドラフト会議/完成チーム
    エンジニアドラフト会議/ルール表
    ——最も人気だったのがフロントエンドエンジニアで、3巡目で全員がチームに加わりました。それだけフロントエンドエンジニアの価値は高いということでしょうか?

    川口:5年ほど前はバックエンドの延長として、バックエンドが片手間でフロントをやっている感じだったと思うんですが、現在はフロントエンドの技術だけでバックエンドを賄えてしまうんですよね。例えば当社の機能を使えば決済機能は誰でも作れるわけで、そういう意味ではフロントエンドとPM・PLだけいればサービスは作れてしまう。

    佐々木:フロントエンドは価値が高いと思います。実際、現場でも足りていないですし。

    石垣:実務経験のある人なら、なおさらですね。

    川口:これまでのフロントエンドエンジニアはUIを構築する人という印象でしたが、便利なSaaSが増えた今、彼らのスキルだけでちゃんとしたアプリケーションを作れるようになってきた。そんな時代的な潮流もあって、需要が高まっている気がします。

    エンジニアドラフト会議/川口 将貴さん
    ——では、フロントエンドエンジニアがより価値を高めていくためには、どんなスキルを磨くといいのでしょうか?

    川口:実際の採用の場面では「何を作ったことがあるか」を見ますね。あとは、Sketchを触れるなど、ジョインした瞬間からデザイナーと一緒に仕事ができるスキル、加えて一定以上のコミュニケーションスキルがあるとうれしいです。フロントだけの技術で尖るより、広くバランスの良いスキルがある人の方が価値は高いと思います。

    佐々木:デザイナーとの連携は重要視されているポイントですよね。だからこそ、コミュニケーションスキルも必要なワケで。

    石垣:フロントエンドって、デザイナーとバックエンドのハブにもなるポジションなんですよ。全体を俯瞰する能力や調整能力も求められますよね。

    事業全体を俯瞰で見れるバックエンドエンジニアは重宝される

    ——続いてバックエンドエンジニアを見ていきましょう。先程、「フロントエンドエンジニアがバックエンドも賄えるようになった」というお話がありましたが、ドラフト会議では全員がバックエンドエンジニアを指名しています。

    川口:プロトタイプを作るだけならフロントエンドのみでいいと思うんですけど、事業を立ち上げることを考えると、バックエンドも1人は欲しいですね。

    石垣:なんだかんだ必要な存在ですよね。

    ——バックエンドエンジニアが、さらに活躍の場を増やすためのアドバイスはありますか?

    石垣:AWSなどのインフラを触れることが大前提でしょうね。あとは、コミュニケーションスキルも欲しいところ。会社のデータベースに集まったデータを扱っているのがバックエンドエンジニアですから、売上などのデータ抽出時にはエンジニア以外の人とのコミュニケーションも発生します。

    佐々木:バックエンドエンジニアも、さまざまなポジションとのハブになりがちな存在です。お金や人の流れなど、事業全体を俯瞰して見ることができると重宝されますよね。そうなると、やはり一定のコミュニケーションスキルが必要になってきます。

    インフラ専門のエンジニアは方向転換を考えた方がいい?

    ——今回、I3(インフラ/レギュラースキル)以外のインフラエンジニアは指名されませんでした。

    川口:今はサービスを立ち上げるタイミングで、サーバー調達すらしないですからね。開発中は正直やることがないと思います。サービスが軌道に乗ってサーバーが止まるようになり、その対応にバックエンドが駆り出されて……みたいな状態になると事業成長が止まってしまうので、そのときは専門のインフラエンジニアを採用します。

    佐々木:Google App Engineを使えばインフラ構築しなくてもサービスが作れますし、サーバーを選ばずに事業を立ち上げられますからね。インフラエンジニアを採用するのは、リリース後に安定してからでしょうね。

    エンジニアドラフト会議/佐々木 康伸さん
    ——なるほど。今回の条件ではインフラエンジニアがすぐには活躍しづらいということですね。そうなると、他のポジションのエンジニアに比べると、インフラエンジニアが必要とされる場面は限定されてしまうのでしょうか?

    川口:今は深い知識がないバックエンドエンジニアでも一通りインフラ領域を賄えるようになってきているので、コードが書けて、新しい技術のキャッチアップをしっかりできる人でないとキツい気がします。インフラをサービスにしている企業のインフラエンジニアなら需要は高いでしょうけど、そこでもやっぱりコードは書かなきゃいけなくなると思うので。

    石垣:当社サービスの多くに、インフラ領域のみを管理するインフラエンジニアというポジションはありません。プロダクトチーム化されているので、川口さんがお話された通り、バックエンドエンジニアがインフラ領域も面倒を見ることが多いです。インフラ専門の方は、できるなら方向転換をした方がいいかもしれないですね。

    佐々木:例えば『LINE』のような大規模サービスを運用するなら、インフラエンジニアは必要です。ただ、それほどの規模のサービスは決して数が多いわけではありません。別のスキルも併せて磨く努力は必要かもしれませんね。

    新規事業立ち上げ時に、3社がPM・PLに求めるもの

    ——最後にPM・PLですが、今回、P3(PM・PL/レギュラースキル)以外は指名が入りました。レギュラースキルが残ったのはたまたまでしょうか? それとも明確な理由があって指名しなかったのでしょうか?

    川口:サービスをリリースするには熱量が必要で、PM・PLには思想があることが最重要です。「何がやりたいのか」を自分の口で言えて、それを貫く必要があります。事業責任者をないがしろにしてでも、やり抜く信念が欲しいんですよね。そういう意味で、レギュラースキルのPM・PLをアサインする理由が見当たりませんでした。

    石垣:立ち上げ時は仕様がブレることが多いので、ビジョンのある人がいないと決まらないし、サービスの思想が変わってしまうこともあり得ます。だから信念を貫けるPM・PLを据えたいというのはありますよね。

    エンジニアドラフト会議/石垣 雅人さん

    佐々木:他のPM・PLと比べると、レギュラースキルは中途半端で魅力が劣る点は否めませんでした。PM・PLにはビジョンや熱量、そしてそれを実現させるための頭の良さや知識、一言でいうと「意思決定力」が欲しい。知識がないなら馬力でカバーしてほしいので、レギュラースキルよりはポテンシャルの人材に魅力を感じました。

    石垣:ただ、サービスをグロースするタイミングではバランス感覚を持っている人がいないと終わってしまうので、レギュラースキルのPM・PLはそのタイミングでは必要な人材かもしれません。

    川口:同感です。グロースするタイミングなら安定して回してくれそうですよね。今回は新規事業の立ち上げチームだから人気がなかったですけど、レギュラースキルのPM・PLが生きる場所はたくさんあると思います。生存戦略ですね。

    ——なるほど。とはいえ、新規事業をやりたいレギュラースキルのPM・PLもいると思います。どんなアピールがあれば採用したいと思いますか?

    佐々木:やりたいことが明確にあるかどうか、だと思います。それが見えたら検討します。

    石垣:レギュラースキルがあるに越したことはないですからね。会社を利用するぐらいの気持ちで来てほしいです。

    2020年以降、エンジニアに最も必要なのは「技術以外」のスキル

    ——最後に「2020年以降、ニーズが増すエンジニア」について伺いたいです。どのようなスキルや人柄のエンジニアでしょうか?

    川口:自分の手札を増やしつつ、それを事業にどう生かせるかを考えながら技術を扱える人は魅力的だと思います。もちろん最優先すべきは自分の人生であって、楽しく仕事ができてこそなのですが、事業全体を見る視点を持って必要なスキルを身に付けてほしいですね。

    佐々木:現在は副業も解禁されて、働きやすくなっている状況じゃないですか。だから個人でやりたいことは外でやってもらって、会社では事業成長を一番に考えて動けると非常に価値が高まると思います。

    また、これまでのエンジニアは技術力さえあれば他は捨ててもいいという風潮がありましたが、これからはそれじゃダメですね。コミュニケーションスキルやビジネススキルも併せ持っていないと難しいのではないでしょうか。

    石垣:当社はこれからの10年で300事業を作ろうとしています。その中で重視しているのは「事業がどうあるべきか」を思考のトップに置いたうえで、必要な技術・スキル・仮説を考えられること。これはどんな役割のエンジニアにおいても同様です。

    私利私欲ではなく、プロダクトのフェーズや特性に合った開発ができる人は一貫性があるし、コミュニケーションも取りやすいのが事実。便利なツールが増えた今、昔と比べてエンジニアの作業量は減っているので、立ち上げたサービスをどうグロースさせるかを考えられると、より価値の高い人材になれると思います。

    企画・取材・編集:天野夏海 文:小林 香織 写真:赤松洋太 画像:川松敬規(編集部)

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