この連載では、技術・組織づくり・経営・キャリアに詳しいIT業界の専門家たちが、社外メンターとして登場。エンジニアtype読者の“上司に言えない悩み”に、複数のメンターたちが回答を寄せていきます!
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「自分の専門外の仕事って受けていいの?」20代Webエンジニアからの悩みに澤円・えふしん・DMM松本勇気が回答
仕事のこと、転職のこと、これからのキャリアのこと……
上司に相談できない悩みを持っている若手エンジニアはきっと多いはず。
最近では、リモートワークを導入する企業も増えて、「気軽にキャリア相談ができなくなっている」なんていう声も聞こえてくる。
そこでエンジニアtypeでは、『エンジニアWebメンタリング』連載をスタート。
エンジニアtypeでもお馴染みの、澤円さん、藤川真一(えふしん)さん、松本勇気さんらを公式メンターとして迎え、読者から寄せられた悩みに答えてもらう。
連載初回となる今回は、大手Webサービス企業で働くYさん(28)から寄せられた「自分の専門外の人事をどこまで受けるべきか」という悩みをピックアップ!
エンジニアtype 公式メンターズ
Yさんの質問:自分の専門外の仕事って、受けていいの?
イレギュラー対応を求められることがだんだんと常習化していき、周りの意識や社内の体制に納得いきません。この状況を改善するために、何かアドバイスいただけませんか?
「メンターズの皆さん。はじめまして、Yと申します。
私は主にWebサイトの機能追加・改善を担当しています。
社内の人手が足りないこともあり、サイトデザインやUIに関わる細かい改修のときは、自分でモックを引いたり、モックを待たずに対応せざるを得ないことが多々あります。
私としては自分の仕事の範疇を越えるイレギュラー対応の認識ですが、依頼者は回数を重ねるごとに、例外であるという意識が薄れているようです。
がんばって仕上げたのに、「デザインが良くない」なんて言われても……という感じです。
依頼者は当然、誰がどんな技術を持っていてどこまでやれるかを認識していないと思うので、仕方がないとは思いつつ、この状況をどうにか変えたいと思っています。
イレギュラー対応について周りに意識をしてもらう方法や、上手な断り方、社内への働き掛け方など、何かアドバイスをいただけたらうれしいです」(Yさん)
澤さんの回答:あなたがいない不便さを、周囲の人に体験させてみては?
最終的にダメージを負うのはYさんです。物理的に今の業務から離れてみるのもいいと思いますよ
Yさん、先回りして仕事をしているなんて、本当に素晴らしいことですし、尊敬します!
そして、自分の貢献が「正しく認識されていない」という辛さ、共感します。
依頼する側というのは、自分の思った通りに物事が進むのに慣れてくると了見が狭くなりがちです。
メールが送れることにお礼を言うことはないのに、止まると文句を言うのが一般的なユーザーのマインドですよね。
これは、サービス提供者側からすればアンフェアだと感じても仕方がないと思います。
どうしても不満に思うなら、一度「Yさんがいないことの不便さ」を体験させるのも荒療治としては必要かもしれません。
社内のルールに従って長期休暇を取ってみるとか、別の仕事にアサインしてもらって、今の業務から離れてみてはいかがでしょうか。
一番良くないのは「不満を抱えたまま仕事を続ける」という状態だと思います。最終的にダメージを負うのは自分です。
Yさんが受けたダメージに対して、「デザインがよくない」と言ってくるような人たちは責任を取ることはないでしょう。ご自身が壊れる前に「ちょっと距離を置く方法」を考えてみるのはいかがでしょうか?
えふしんさんの回答:定量評価でリスクを可視化させてみては?
自分の専門領域以外の仕事をすることで、サイトUI/UXといったアウトプットの質が下がってしまうのであれば、それは“やってはいけない仕事”なのかもしれません
やらざるを得ないとはいえ、自分の領域外のお仕事を柔軟にやられているのは素敵なことだと思います。
一方で、Yさんががんばっても、その分野のスキルが足りず成果物として不適切なのであれば、やってはいけない仕事なのかもしれません。
顧客満足が結果的に得られないのであれば、事業遂行上のリスクがある状況とも言えます。
これは、あくまでも短期的対応であるべきこと、決して顧客満足は得られていないことを前提として、このままでは良くないということをしっかり理解してもらえるように伝えてみてはいかがでしょうか?
そもそもWebサイトの成果は利用者が判断することなので、それによって得られるべき成果が失われているのであれば、依頼者にとっても目を向けなくてはいけないことから目を逸らしているとも考えられます。
アクセス解析などを利用して数字を計り、定量評価でリスクを可視化させていくなどのスキル習得をしてみてはいかがでしょうか。
松本さんの回答:「自分の仕事の範疇」という考え方は、ナンセンスなのでは?
自社サービスをつくる開発組織で『自分の仕事の範疇』というものを持っているのは不健全かも。差し込み案件が多過ぎるなら話は別ですが……
自社サービスの前提で回答させていただきますが、そもそも「自分の仕事の範疇」というものを持った開発組織が健全かで言うとそうではないと思います。
その上で、さまざまな領域の業務を横断して取り組んでいるYさんの姿勢は素晴らしいと思いますし、むしろ周辺メンバーに関してもそのような業務スタンスになる方がより良いプロダクトになるのではないかなと思います。
一方、差し込みがあり本来の改善が回らないという意味でのイレギュラーな依頼についてのお話であれば、関係者全体で共通の優先度指標を用意していくことが大切かと思います。
往々にしてその指標とは重要KPIやそれに対する改善のコストパフォーマンスなどになるわけですが、ここの指標が一致していれば、あとはタスクの優先度を整理する場に一度持っていく、そこで重要度順に並び替えてその通りに開発を進めていくということが可能になるかと思います。
この共通言語としての指標がそろっていないと、各々のメンバーはそれぞれのスタンスで重要なものをひたすら差し込むことが合理的行動になってしまうので、まずはプロダクトをより改善するための指標を明確に定め、全ての開発項目に対しその指標を意識して提案するように依頼していくと、Yさんの悩みも解消されていくのではないでしょうか。
次回のお悩みは?
次回の相談は、10年来のWebサービスの古い機能・コードの処理を担当しているTさんから寄せられた悩み。
「仕様書もなく、上司も把握していない古いシステムの改修に膨大な工数が掛かっています。効率的に行う方法はありませんか?」
澤さん、えふしんさん、松本さんの3人からの助言とは……?
>>4月13日(月)公開予定
『エンジニアWebメンタリング』では、読者の皆さまからの悩みを随時募集中!
澤円さん、えふしんさん、松本勇気さんなど、エンジニアtype公式メンターズに相談したい内容を、下記のフォームからご記入ください。
株式会社圓窓 代表取締役
澤 円さん(@madoka510)
立教大学経済学部卒。生命保険のIT子会社勤務を経て、1997年、外資系大手テクノロジー企業に転職、現在に至る。プレゼンテーションに関する講演多数。琉球大学客員教授。数多くのベンチャー企業の顧問を務める。
著書:『外資系エリートのシンプルな伝え方』(中経出版)/『伝説マネジャーの 世界№1プレゼン術』(ダイヤモンド社)/『あたりまえを疑え。―自己実現できる働き方のヒントー』(セブン&アイ出版)※11月末発売予定
Voicyアカウント:澤円の深夜の福音ラジオ メルマガ:澤円の「自分バージョンアップ術」 オンラインサロン:自分コンテンツ化 プロジェクトルーム
BASE株式会社 取締役EVP of Development
藤川真一(えふしん)さん(@fshin2000)
FA装置メーカー、Web制作のベンチャーを経て、2006年にGMOペパボへ。ショッピングモールサービスのプロデューサーのかたわら、07年からモバイル端末向けのTwitterウェブサービス型クライアント『モバツイ』の開発・運営を個人で開始。10年、想創社を設立し、12年4月まで代表取締役社長を務める。その後、想創社(version2)を設立しiPhoneアプリ『ShopCard.me』を開発。14年8月BASE株式会社のCTOに就任。19年7月から現職
合同会社DMM.com CTO
松本勇気さん(@y_matsuwitter)
1989年生まれ。東京大学工学部在学中より株式会社Labitなど複数のベンチャーにてiOS/サーバサイド開発などを担当。13年1月、Gunosyに入社。ニュース配信サービス「グノシー」「ニュースパス」などの立ち上げから規模拡大、また広告配信における機械学習アルゴリズムやアーキテクチャ設計を担当する。新規事業開発室担当として、ブロックチェーンやVR/AR技術の調査・開発に従事。18年8月まで同社の執行役員CTOおよび新規事業開発室室長を務め、同年10月、DMM.comのCTOに就任。19年5月よりDMM GAMES CTOを兼任
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