この連載では、技術・組織づくり・経営・キャリアに詳しいIT業界の専門家たちが、社外メンターとして登場。エンジニアtype読者の“上司に言えない悩み”に、複数のメンターたちが回答を寄せていきます!
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SESから自社開発の会社に転職して「年収上げたい」20代エンジニアの悩みに澤円・えふしん・DMM松本勇気が回答
今回のWebメンタリングでは、「SESで働いた経験しかなく、自分のスキルが他社で通用するのか分からない」という20代エンジニアの転職にまつわる悩みにエンジニアtype公式メンターズが回答!
今回も澤円さん、藤川真一(えふしん)さん、松本勇気さんの三人がメンタリングを担当してくれました。
エンジニアtype 公式メンターズ
Mさんの質問:SESから自社開発の会社に転職して年収を上げたい。でも、自分のスキルが通用するのか不安です。
給与アップ・スキルアップのために、自社サービス開発ができる事業会社に転職したいのですが、SESで働いた経験しかないので、そもそも採用されるのか、自分のスキルが転職先で通用するのか不安です
「メンターズの皆さんはじめまして。SESで働いているMと申します。
新卒からSES企業に5年勤めていますが、給料がほとんど上がらず、転職を考えています。
これまでは通信関連の組み込み系の開発を行ってきましたが、将来のことも考えて、次はWebサービスを運営する事業会社に行きたいと思っています。そのための勉強も半年ほど前から始めました。
ただ、自分の市場価値が全く分からないので、独学で技術を学んだところで転職ができるのか不安です。
自分の身の周りには、SESから事業会社に転職した人がほとんどおらず、どういう人なら転職できるのかイメージが湧いていないからかもしれません。
SESで働いたことしかない私が、事業会社への転職して年収アップも成功させるために大事なことは何でしょうか……?
」(Mさん)
澤さんの回答:勉強会やオンラインイベントに参加して、「外のもの差し」を手に入れてみて
自分の市場価値が分からないのは、社内の尺度しか知らないからかも。オンラインイベントなどに参加して、社外のことを知り、「外のもの差し」で自分にできること・できないことをクリアにしてみましょう
今の会社で5年お勤めになられたのですね。僕も転職したのは、最初の会社で5年目を迎えた時でした。自分に照らし合わせて「転職を考えるのに、ちょうど良い頃合いですね」と言わせてください!
さて、転職を考えている人にとって「自分の市場価値が分からない」という悩みはよく聞きますね。これはいわゆる「外のもの差し」がないからだと言えます。
社内の尺度しか知らないと、人材マーケットにおける自分の価値は算出のしようがありません。
また、外部で「どんな人が活躍をしているのか」を全く知らないと、何がアピールポイントになるのか想像できないでしょう。
ということで、僕がいつもお勧めしているのは、まず「外の空気に触れる」ことです。
いきなり転職活動を始めて面接を受けるのはハードル高いと思うのであれば、まずはオープンなイベントに参加してみるという手もあります。
新型コロナウイルスの影響でオフラインのイベントはほとんどやっていませんが、オンラインでのイベント開催は盛んです。
オンラインであれば、出掛ける必要もなく、かつイベント主催者や有名企業のエンジニアなど、第一線で活躍している人たちの生の声に触れることができるでしょう。
そして、場合によってはそういう人たちから「手伝ってほしい」という情報が発信されることもあります。
そのときは、最初はボランティアでもいいので手を挙げてみることです。自分に何ができて何ができないのかを知る機会を得ることができますよ。
また、事業会社への転職で「給料アップ」も目指したいとのこと。雇う側は「自分たちのビジネスに貢献してくれるかどうか」を最重視していますから、会社に利益をもたらしてくれる人だと思ってもらえれば、大幅に収入を上げることもできるでしょう。
まずは外に出て、自分の立ち位置を確かめ、そこからどこを目指すべきかクリアにしてみてください。Mさんが転職したいと思っているような会社でどんなスキル、マインドの人が働いているのかも見えてくるはずです。
転職活動、応援しています!
えふしんさんの回答:市場価値が分からないなら、まずは書類を出して面接を受けることが大事
目の前の給与アップだけにこだわらず、入社後の評価次第で給与を上げてくれそうな会社を選ぶのも良い選択です
市場価値というのは難しいですね。Mさんが仰っている市場価値とは、「転職先の企業が提示してくれる給与」とイコールでしょうか。
私からは、「市場価値=企業から提示される給与額」と仮定してお話ししますが、そもそもMさんは、給与はどのように決まると思われますか?
一般的に企業が転職者の方に提示する給与は、「この人であれば、これぐらい活躍してくれるであろう」という期待値で決まります。
Mさんの希望年収や過去の年収に関わらず、「この人は400万円支払うに値する仕事を任せられる人だ」と思われれば400万円が提示されるでしょう。同様に、「500万円支払うに値する仕事をしてくれる」と期待されれば、500万円を提示してくるわけです。
それを前提としたときに、ご自身の希望に叶う転職を実現するためには、同等のスキルレベルのライバル転職希望者に負けないぐらい活躍できるという評価を得ることが大切です。
そのためにも、まずは書類を出して面接を受けてみてください。
書類審査で落とされてしまうのであれば、履歴書や職務経歴書に書かれている内容では不十分ということが分かります。
例えば、OSSへの貢献を実績にした方が良いかもしれないですし、自分でサービスを作ってみて、実際にユーザーさんに使ってもらっている経験などが書けると活躍をイメージしてもらいやすいです。
また、個人的なオススメとしては、最初から給与のステップアップは望まずに、次回以降の評価で給与を上げられる会社に入ることです。
もしMさんが卓越した実力を持った方ならば、活躍を見た段階で即座に給与を上げてくるはずです。もちろん、それが全てではなく年収アップさせるべき理由を主張して、それが受け入れられれば年収アップした状態で雇ってもらうことは不可能ではありません。
全ては相手が抱く期待値で決まります。
松本さんの回答:普段から「なぜ」を意識して、業務や勉強に取り組みましょう
自社サービスを開発するエンジニアに求められるのは、エンドユーザーに必要なものを作れる人かどうかということ。会社によって差はありますが、「SESで働いた経験しかないから」といって選考で不利になることはないのでは?
自分の経験やスキルで自社開発の会社に転職できるのか、と心配しておられますが、これまでの経歴に縛られる必要はないと思いますよ。
「SES出身だから」という考え方ではなく、全ての人が「コードを書く一人のソフトウエアエンジニアであって、変わりはない」という前提に立って、キャリアをフラットに見てみるのはいかがでしょう?
その上で、転職について考えてみましょう。
給与と職責、必要とされる能力の関係は、正直会社によってもまちまちだとは思うのですが、Mさんが不安に思っているような、SES出身のエンジニアが事業会社に転職できないという事実は無いと思います。どんな会社にもさまざまな出身のエンジニアがいますし、DMMも例外ではありません。
事業会社かどうかに限らず、自社サービスを開発するエンジニアに求められるのは、「言われたものを作る人」ではなく、「エンドユーザーに必要なものを作れる人」です。
ですから、自社開発の企業への転職を可能にするには、自分で考えて動き、ものを作れるという能力が非常に重要だと思います。
では、この能力を養うにはどうすればいいのか。例えば、自分が利用する技術一つ一つについて、「この技術の特徴は何か」「なぜこのプロジェクトでこれを使うのか」など、意味・意義を丁寧に自分なりに咀嚼して利用していくことが大事です。
「なぜ」という探求心を大事にしてもらえれば、次に新たな課題に立ち向かう際、適切な技術とは何かを自分で考えることができます。
事業会社で活躍するために、一つ一つの技術や行動の理由を理解し、自分なりの意見を持って業務や学習に取り組んでいきましょう。
次回のお悩みは?
次回の相談は、アプリケーション開発をしているKさん(31)から寄せられた悩み。
「もともとは自分が希望していたアプリの開発に携わっていたのですが、新規で開発するアプリのチームでリーダーポジションを務めることになりました。正直、マネジメントよりも手を動かして開発をしたい気持ちが強いです。この気持ちにどう向き合っていけばよいでしょうか?」
次回も、澤さん、えふしんさん、松本さん、3人のメンターのフィードバックをお届けします!
『エンジニアWebメンタリング』では、読者の皆さまからの悩みを随時募集中!
澤円さん、えふしんさん、松本勇気さんなど、エンジニアtype公式メンターズに相談したい内容を、下記のフォームからご記入ください。
株式会社圓窓 代表取締役
澤 円さん(@madoka510)
立教大学経済学部卒。生命保険のIT子会社勤務を経て、1997年、外資系大手テクノロジー企業に転職、現在に至る。プレゼンテーションに関する講演多数。琉球大学客員教授。数多くのベンチャー企業の顧問を務める。
著書:『外資系エリートのシンプルな伝え方』(中経出版)/『伝説マネジャーの 世界№1プレゼン術』(ダイヤモンド社)/『あたりまえを疑え。―自己実現できる働き方のヒントー』(セブン&アイ出版)※11月末発売予定
Voicyアカウント:澤円の深夜の福音ラジオ メルマガ:澤円の「自分バージョンアップ術」 オンラインサロン:自分コンテンツ化 プロジェクトルーム
BASE株式会社 取締役EVP of Development
藤川真一(えふしん)さん(@fshin2000)
FA装置メーカー、Web制作のベンチャーを経て、2006年にGMOペパボへ。ショッピングモールサービスのプロデューサーのかたわら、07年からモバイル端末向けのTwitterウェブサービス型クライアント『モバツイ』の開発・運営を個人で開始。10年、想創社を設立し、12年4月まで代表取締役社長を務める。その後、想創社(version2)を設立しiPhoneアプリ『ShopCard.me』を開発。14年8月BASE株式会社のCTOに就任。19年7月から現職
合同会社DMM.com CTO
松本勇気さん(@y_matsuwitter)
1989年生まれ。東京大学工学部在学中より株式会社Labitなど複数のベンチャーにてiOS/サーバサイド開発などを担当。13年1月、Gunosyに入社。ニュース配信サービス「グノシー」「ニュースパス」などの立ち上げから規模拡大、また広告配信における機械学習アルゴリズムやアーキテクチャ設計を担当する。新規事業開発室担当として、ブロックチェーンやVR/AR技術の調査・開発に従事。18年8月まで同社の執行役員CTOおよび新規事業開発室室長を務め、同年10月、DMM.comのCTOに就任。19年5月よりDMM GAMES CTOを兼任
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