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「コードを書かないエンジニアになりたくない」新人マネジャーの憂鬱ーー澤円・えふしん・DMM松本勇気からの助言は?

働き方

    連載第4回目となる今回は、「マネジメントよりものづくりがしたい」30代プログラマーの悩みにエンジニアtype公式メンターズが回答します。

    メンタリングを担当してくれたのは、澤円さん、藤川真一(えふしん)さん、松本勇気さんの三人。各メンターからアドバイスをいただきました。

    エンジニアtype 公式メンターズ

    エンジニアtype 公式メンターズ

    圓窓 代表取締役 澤 円さん
    外資系大手IT企業の業務執行役員。複数のベンチャー企業で顧問も務める。キャリアのスタートはCOBOLプログラマー。「プレゼンの神」の異名を持つ

    BASE 取締役EVP of Development 藤川真一さん
    『モバツイ』開発者。想創社の創業者。BASEでCTOを経て現職。今は組織マネジメントに専念している。通称えふしん

    DMM.com CTO 松本勇気さん
    ニュース配信サービス『グノシー』などの立ち上げに参画。Gunosyの執行役員CTOおよび新規事業開発室室長を務めた後、DMM.comのCTOに就任

    Kさんの質問:マネジャーに昇進したけれど、実際は現場で開発を続けたい……!

    Kさん(31歳/男性)

    この4月に管理職のポジションを会社から打診されて引き受けたものの、これでよかったのかモヤモヤしています。

    人を育てるのは苦手だし、マネジメントの仕事に興味が持てません。本当は現場で開発を続けたいのですが、やるべきこととやりたいこと、どちらを優先したらいいのでしょうか?

    Kさんのプロフィール
    31歳男性。受託開発を行うソフトハウスでプログラマーとして勤務

    この4月に、初めてマネジャーになりました。それまでは自分が希望していたアプリの開発に携わっていたのですが、新規で開発するアプリのチームをまとめるリーダー役と、管理職業務を同時に務めることに。

    ただ、エンジニアとしてはものづくりの仕事を続けていきたい気持ちもあります。正直、人を育てるのは苦手だし、経営にも興味はないし、マネジメントよりも手を動かして開発していたい気持ちが強いのです。

    会社から「キャリアアップのためにも管理業務をやるべきだ」と説得され引き受けたものの、やっぱりまだ、やるべきことと、やりたいこと、どちらを優先すべきなのか悩んでいます……。(Kさん)

    澤さんの回答:「自分のありたい姿」と照らし合わせて、キャリアの選択をしてみましょう

    澤さん

    マネジャーの仕事に全く興味がないのであれば、Kさんにとってもチームメンバーにとっても良いことは一つもありません。「こうありたい」と思える姿に近づくための判断を、ぜひしてほしいと思います

    日本の悪しきビジネス慣習として私がよく主張しているのが、「マネジメント職が年功序列の名誉職になっていること」です。ある程度の年齢になったらマネジメント職に就くべし、というのはあまりにも乱暴な論理だと思っています。

    マネジメントに向いていない人、マネジメントをやりたくない人が組織を率いると、誰も幸せになりません。

    もしも、ご自身がマネジメントに「全く興味がない」「適性が全くないと証明できる」のであれば、今すぐにポジションを変えるか、転職することをお勧めします。Kさん自身の心身に不調をきたすかもしれませんし、チームメンバーが壊れてしまうかもしれないからです。

    その一方で、マネジメントを理解している人材は、人材マーケットの中で引く手あまたになる可能性も秘めています。

    また、エンジニア経験があって、かつマネジメント能力のある人というのは、極めて希少価値が高いと言えます。

    そう考えると、今のポジションでマネジメントを実践の中で学びまくるというのは、これからのキャリアを考えると非常に良い機会ですね。31歳という若さでマネジメントを理解することができれば、非常に魅力あるエンジニアとして評価されます。

    ご自身とゆっくりと向き合って、「自分のありたい姿」を突き詰めて考えてください。

    細かい職種とかではなく、「本当に自分はこうありたいんだ!」と思える仕事をするのが、キャリアをつくる上でとても重要だと思います。

    えふしんさんの回答:マネジャーは「エンジニアを束ねる開発職の一つ」という解釈もできるのでは?

    えふしんさん

    マネジャーはコードこそ書かないかもしれないけれど、「エンジニアを束ねる開発職の一つである」という解釈もできるのではないでしょうか?

    マネジメントがあまり楽しい仕事に感じられない現状ですね。

    エンジニアがチームで開発するメリットとして、人間一人でできることには限界があって、チームで手を合わせないとできないことを成し遂げられるというのがあります。

    一方で、「リーダーはメンバーから尊敬されないとチームはまとまらないし、良いアウトプットをつくれない」と考えると、マネジャーはコードこそ書かないかもしれないけれど、「エンジニアを束ねる開発職の一つである」という解釈もできるのではないでしょうか?

    とはいえ、確かにKさんと同じような考えで転職する方もたくさんいますし、「管理か、現場か」と悩むのはエンジニアとして分からなくもない話だと思いました。

    しかし、今担当しているアプリは、会社としてどういう位置付けで何を実現しようとしているものなのか。なぜそこでKさんがリーダーポジションを任されたのか。Kさんに期待されていることは何なのか。Kさんご自身がよく理解されていないのではないか、と感じる部分もあります。

    ただ、30代だからマネジャーを任せたわけではないでしょう。必ず、理由はあるはずです。

    Kさんがそれを言語化できないのであれば、しっかり上司と腹落ちするまで話し合ってみてください。

    やる気のないリーダーが上にいて、部下が気持ちよく働けるわけがありません。もちろん、プロジェクトだってうまくは進まないでしょう。本当にマネジメントをやる気がないなら、なるべく早く今のポジションから外れた方が良いと思います。

    そのまま進めても、Kさんにとっても嫌な思い出ばかりが膨らんでしまうでしょうし、心配です。

    松本さんの回答:「チームごとアプリ開発をする」という考え方で、リーダーポジションを楽しんでみては?

    松本さん

    「どうしてもコーディングがしたい」というわけでないなら、より大きなアプリを開発するためのスキルを、リーダーポジションで学んでみるのも一つの手。コーディングをすることにこだわるなら転職を検討してみては

    自分も元々はコーディングが好きで、マネジメントなんてやりたくないという人間でした。この考え方が変わったのは、“より大きなアプリに成長させたい”という目標を持ったことことがきっかけです。

    やはり大きなアプリというのは一人では開発・運用が回らず、多くの人と連携して一つのプロダクトを作っていくことになります。

    そうすると、人も含めてプロダクト設計だということを考える必要があり、組織設計とコーディングが表裏一体の開発作業のように見えてきました。

    もし、コーディングよりもアプリを作ることの方が楽しいというのであれば、将来を想定して、より大きなアプリを作るためのスキルをリーダーポジションからうまく学んでいくという考え方もできるのではないでしょうか。

    人を動かすのも自分の手を動かすのも、目的は「アプリを開発すること」で変わりありません。

    その意識のもとで「チームごとアプリを開発・設計していくぞ!そのためにマネジメントというスキルが必須なんだ」という発想を持ってみてください。

    ただ、万が一、本当にコーディングをすることのみが目的なのだとしたら転職も含めて動いてみてもいいと思います。

    大事なのは自分の意思でトレードオフを選択することです。どんな仕事をしてもトレードオフはありますし、業務のすべてが「やりたいことだらけ」なんてことはないはずです。

    何を重視して働いていきたいのか、今一度ご自身を見つめ直してみましょう。

    次回のお悩みは?

    次回の相談は、パッケージ開発や受託開発をするき企業でSEとして働くIさん(26)から寄せられた悩み。

    「在宅勤務がとても快適で生産性も高いのに、会社が6月から出社するスタイルに戻すと言っています。フレキシブルな働き方を会社に取り入れてもらえるように、私にできることはありますか?」

    次回のアドバイスもお楽しみに!


    『エンジニアWebメンタリング』では、読者の皆さまからの悩みを随時募集中!

    澤円さん、えふしんさん、松本勇気さんなど、エンジニアtype公式メンターズに相談したい内容を、下記のフォームからご記入ください。

    相談・質問はこちらから!

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    株式会社圓窓 代表取締役
    澤 円さん(@madoka510)

    立教大学経済学部卒。生命保険のIT子会社勤務を経て、1997年、外資系大手テクノロジー企業に転職、現在に至る。プレゼンテーションに関する講演多数。琉球大学客員教授。数多くのベンチャー企業の顧問を務める。
    著書:『外資系エリートのシンプルな伝え方』(中経出版)/『伝説マネジャーの 世界№1プレゼン術』(ダイヤモンド社)/『あたりまえを疑え。―自己実現できる働き方のヒントー』(セブン&アイ出版)※11月末発売予定
    Voicyアカウント:澤円の深夜の福音ラジオ メルマガ:澤円の「自分バージョンアップ術」 オンラインサロン:自分コンテンツ化 プロジェクトルーム

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    BASE株式会社 取締役EVP of Development
    藤川真一(えふしん)さん(@fshin2000

    FA装置メーカー、Web制作のベンチャーを経て、2006年にGMOペパボへ。ショッピングモールサービスのプロデューサーのかたわら、07年からモバイル端末向けのTwitterウェブサービス型クライアント『モバツイ』の開発・運営を個人で開始。10年、想創社を設立し、12年4月まで代表取締役社長を務める。その後、想創社(version2)を設立しiPhoneアプリ『ShopCard.me』を開発。14年8月BASE株式会社のCTOに就任。19年7月から現職

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    合同会社DMM.com CTO
    松本勇気さん(@y_matsuwitter

    1989年生まれ。東京大学工学部在学中より株式会社Labitなど複数のベンチャーにてiOS/サーバサイド開発などを担当。13年1月、Gunosyに入社。ニュース配信サービス「グノシー」「ニュースパス」などの立ち上げから規模拡大、また広告配信における機械学習アルゴリズムやアーキテクチャ設計を担当する。新規事業開発室担当として、ブロックチェーンやVR/AR技術の調査・開発に従事。18年8月まで同社の執行役員CTOおよび新規事業開発室室長を務め、同年10月、DMM.comのCTOに就任。19年5月よりDMM GAMES CTOを兼任

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