本連載では、圓窓代表・澤円氏が、エンジニアとして“楽しい未来”を築いていくための秘訣をTech分野のニュースとともにお届けしていきます
「ITの困りごと」がますます増えていくニューノーマル時代。エンジニアに求められる行動とは?【連載:澤円】
株式会社圓窓 代表取締役
澤 円(@madoka510)
立教大学経済学部卒。生命保険のIT子会社勤務を経て、1997年、外資系大手テクノロジー企業に転職、現在に至る。プレゼンテーションに関する講演多数。琉球大学客員教授。数多くのベンチャー企業の顧問を務める。
著書:『外資系エリートのシンプルな伝え方』(中経出版)/『伝説マネジャーの 世界№1プレゼン術』(ダイヤモンド社)/『あたりまえを疑え。―自己実現できる働き方のヒントー』(セブン&アイ出版) Voicyアカウント:澤円の深夜の福音ラジオ オンラインサロン:自分コンテンツ化 プロジェクトルーム
皆さんこんにちは、澤です。
コロナショックはまだまだ続いていますね。緊急事態宣言は解除されたものの、経済活動が活性化するのはもう少し先になりそうです。
また、引き続き在宅勤務・リモートワークが推奨されている企業も多いようです。
働き方改革が叫ばれてから数年、のんびりと準備をしていたら急に全員在宅ワークをしなくちゃならなくなり、IT部門はその準備に追われ、業務部門は慣れない設定に困惑し……という状況が、そこかしこで発生したのではないでしょうか。
特に、今までは全て環境設定をIT部門に依存していて、自分では何も設定をしたことがない人にとっては、在宅ワーク中に出くわすさまざまなトラブルは、非常に大きなストレスになっていることでしょう。
「知らなくて調べられない」という盲点
ボクの周囲にはITリテラシーの高い人もたくさんいますが、そうではない人もたくさんいて、「ネットワークが遅い」「メールがつながらない」「データがダウンロードできない」といったトラブルに遭遇すると、全く解決できず呆然としているようです。
エンジニアであれば、「それくらい、ネットで調べて解決できるでしょ」と思うようなことが、リテラシーが高くない人にとっては絶望的に難しいものです。
というのも「検索して調べる」という行動のためには、「その言葉を知っている」ことが必要だからです。
実は、ボク自身も「知らなくて調べられない」という体験を、自粛期間中に味わいました。
ここ2~3カ月は、ECサイトでの買い物をされた方も多いと思います。ボクもたくさんの買い物をしました。
特に「これを機会に動画の配信に力を入れよう。リモート会議でも流用できるし」と思って、撮影機材を買い集めました。
「Webカメラをミラーレス一眼にして、自由に向きが変えられる方がいいな」と思い、機材を買おうと考えていましたが、その時になって「カメラに取り付けて首が動くあの部品、名前を知らないぞ……」と気が付いたのです。
これは「雲台」というのですが、名前が分からないとダイレクトにその情報をECサイトから得ることができません。
「三脚」とか「取付台」とか、あれこれ打ち込んで検索をした結果、「雲台」という言葉にたどり着きました。
大した時間でも手間でもなかったのですが、「キーワードを知らないと、その情報にアクセスができない」という、忘れかけていた大事なことに気付けました。
おそらく、街に自由に行くことができる時期であれば、カメラ屋さんに行って「カメラを固定するネジが付いていて首がくねくね動く部品」と説明すれば、「これですね」と商品を出してくれることでしょう。
ただ、その時にも「これは雲台って言うんですよ」と教えてくれるかというと、これは店員さんによる気がします。
つまり、店員さんが「商品を渡すのがお仕事」と認識している場合には、「相手がこの言葉を知らなくても問題ない」と思っても不思議ではありませんし、買いに行った方も「手に入ればそれでOK」なので、結局名前は覚えないままになる可能性だって大いにあります。
時間と空間を人と共有しているとき、実は「知らないこと」を誰かが補っている瞬間が、絶え間なく訪れているのかもしれませんね。
空間の共有が制限され、相談したくてもできない状態へ
今回のコロナ禍により、人々は空間を共有することに大きな制限が掛かりました。
その結果として、「ちょっと人に聞く」とか「隣の人の真似をする」といった行動ができなくなり、自分で解決するか、オンラインで助けを求めるかの二択になってしまったと思います。
しかし、肝心のオンラインの環境でトラブルの助けを求めようとしても、自分の説明能力がなかったり説明するための基礎知識がなかったりで、完全に「詰んだ」状態に陥ってしまうわけです。
例えば「自宅だとオンラインの会議ですぐにフリーズしてしまう」という状況に陥った時、問題の切り分けを本人がやろうと思っても、どこから手を付けていいか分からない場合もあります。
エンジニアの方なら、まず「回線速度」を疑って回線速度測定サイトなどにアクセスしたりするでしょう。
でも、ITに詳しくない人なら、「パソコンが悪いのか?」「ボクがなんか変なキー押したのか?」「昨日アクセスしたサイト、やばいものが仕込まれてたのか……? (思い当たる節がある)」なんていう心理状態に陥るかもしれません。
そうなると、相談したくてもできなくなったりするわけです。
エンジニアは、ITでつまずいてしまう人の救世主になれる
今回のコロナ禍のような非常時には、エンジニアの人たちの技術力、知識量は大変に貴重で有用です。
その情報を分かりやすい形で発信することは、数多くの方を救うことになります。
ボクの同僚も、YouTubeを使ってリモートワークのノウハウを惜しみなく共有したりしています。
YouTubeであれば、リテラシーが高くなくても見ることができ、かつ繰り返し確認することも可能です。
オープンなプラットフォームに上げるのをためらう人もいますが、社内の情報をアップしたりするのでなければ、むしろ情報をどんどん発信させていった方が良いと思います。
IT初心者の人でも、先ほど述べたネットワーク問題を解決できるようなブログを書いている方もいます。
>>Zoomで「インターネットが不安定です」と表示される問題の解決策
これは、「Zoomで『インターネットが不安定です』と表示されたり落ちたりする問題の解決策」というタイトルになっていますが、内容は有線LAN環境の構築方法です。
しかし、タイトルに「有線LANの構築方法の紹介」と書いてしまうと、自分の目の前で起きている問題と関連付けられなくなる人が多数出てくる可能性があります。
この記事のポイントは「ユーザーの困りごと」にフォーカスしている点です。
ユーザーは、有線LANの構築の仕方を知りたいのではなく、Zoomを安定して使いたいので、そのための方法を示しているのです。
コロナ禍で、ITリテラシーが低いことに非常に強いストレスを感じている人が、日本中にいます。
非常事態宣言が解かれたからといって、何もかもが元通りになるわけもなく、リモートでの仕事量は今後も増えていく一方でしょう。
エンジニアの皆さんは、「アフターコロナ/ウィズコロナ/ニューノーマル」の時代に、ITでつまずいてしまう人たちの救世主となるポテンシャルをお持ちです。
この機会に、YouTubeやブログなどを通じて、「ITに詳しくない人」や「在宅勤務で困っている人」あるいは「遠隔授業のサポートをしている親御さんたち」に向けて情報発信をしてみてはいかがでしょうか。
セブン&アイ出版さんから、ボクの三冊目となる本が発売されました。「あたりまえを疑え。自己実現できる働き方のヒント」というタイトルです。
本連載の重要なテーマの一つでもある「働き方」を徹底的に掘り下げてみました。
ぜひお手に取ってみて下さいね。
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