この連載では、技術・組織づくり・経営・キャリアに詳しいIT業界の専門家たちが、社外メンターとして登場。エンジニアtype読者の“上司に言えない悩み”に、複数のメンターたちが回答を寄せていきます!
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「上司とのキャリア面談で話せることがない」やりたいこと迷子の20代Web系エンジニアの悩みに澤円・松本勇気・藤倉成太が回答
今回エンジニアtypeに寄せられたのは、「やりたいことが定まらず、上司とのキャリア面談で話すことがない……」という20代Webエンジニアからのお悩み。
上司との面談時間を有意義なものにするために大事なこととは、一体何なのでしょうか?
澤円さん、松本勇気さん、藤倉成太さんから回答をもらいました。
エンジニアtype 公式メンターズ
Sさんの質問:やりたいことが定まらず、上司とのキャリア面談で話すことがない……
ある程度開発経験を積んで、マネジメントのポジションにいくという“普通のキャリア”を自分が歩みたいのか分かりません。かといって、「なりたい姿」が明確なわけでもないので、近々ある上司とのキャリア面談で何を話せばいいのか分からず悩んでいます。
Sさんのプロフィール
25歳男性。新卒入社した事業会社で自社のWebサービスを開発している。入社4年目。主な開発言語はJava/PHP
メンターズの皆さんこんにちは。
私はエンジニアとして3年働き、実業務では一通りのことができるようになったと思っているところです。
実は来月、上司と定例のキャリア面談があるのですが、そこでどんな話をしたらいいか悩んでいます。なりたい姿や、やりたいことが、はっきり思い浮かばないからです。
周囲の先輩を見ていると、自分もこの先1年以内くらいでチームリーダーを任されて、それがうまくいけばマネジメント業務の方向に仕事の幅を広げていくんだろうな、ということがだいたい分かっています。
興味の方向性としてもマネジメントを経験することが嫌なわけではありません。
ただ、ある程度開発経験を経てマネジメント側に行くというキャリア自体が「普通過ぎるのではないか」という不安を感じるのです。
市場価値の高いエンジニアになるためにはもっと普通じゃないことをした方が良いのでは?と思うのですが、じゃあ何をやりたいかと言われると何も思い付きません。
上司に「やりたいことは特にない」と堂々と言うのは気まずいし、この状態でキャリア面談に臨んでもあまり有意義な解決策に辿り着かない気がして、時間を取ってくれる上司にも申し訳ない気持ちです。
こんな私が、キャリア面談までに整理しておくべきことや、そもそも何て相談したら有意義な場になるのか、皆さんのアドバイスをいただきたいです。(Sさん)
澤さんの回答:上司にどんどん甘えちゃえばいいと思います!
キャリア面談を、上司と一緒に次のキャリアを考える機会にするのはどうでしょうか? もちろん丸投げするのではなく、ヒントになることやキーワードは用意しておきましょう!
Sさんが上司の方とこれまでに行ったキャリア面談は、どんな雰囲気だったのでしょう。すべてのプランをSさんが用意していって、上司の方が吟味するやり方なのでしょうか。
僕自身、マネジャーを15年やってきて、数多くのキャリア相談に乗ってきました。あるいは、こちらから次のキャリアについてメンバーに提案することもありました。
キャリア面談というのは「次のキャリアを一緒に考える機会」にしてもいいのではないかと思います。
つまり「やりたいことが見つからないから一緒に探してほしい」と上司に相談する場にしてもいい、ということです。
少なくとも、僕自身は「やりたいことを一緒に見つけてほしい」と相談されたらうれしく思いますし、一緒に考える時間を楽しむと思います。
もちろん、上司の方に「考えてください」と丸投げしてしまうのではなく、ヒントになることやきっかけになりそうなキーワードだけは用意しておきましょう。
上司(実は僕はこの言葉があまり好きではなく、マネジャーって呼んでますけど)の仕事は、メンバーが楽しくキャリアを積んでいく手伝いをすること。
どんどん甘えちゃえばいいと思いますよ!
松本さんの回答:より広い範囲の仕事をするための改善点を見付けていきましょう
今担当しているプロダクトをより広い範囲で任せてもらうための改善点を、上司と一緒に考えていきましょう。その後、自分の磨きたいスキルの比重を決めていけばいいと思います。
今後もエンジニアとして活躍したいであろうという前提をもってお話をさせていただきますね。
「開発者としてのキャリアは、マネジメントとスペシャリストのどちらか」のように語られることも多いですが、実際はこの二つは不可分なものだと思います。
プロダクトを開発し、誰かに使っていただくというのは、一人で達成できるものではなく、組織的な取り組みです。
そうした前提から、開発者のキャリアというのは、取り組むプロダクトや課題の抽象度の高さを上げていくことではないかと考えています。
どれだけ広くプロダクトを担当し、課題を見つけて改善を進められるかが重要で、これについてはマネジメントもエンジニアリングも、双方重要です。
ですので明確なキャリアが見えずとも、今担当しているプロダクトをより広い範囲で任せてもらっていくことを突き詰める中で、自分のやりたいスキルの比重を決めていけばいいのではないでしょうか。
広く担当していくためには、例えテックリードだろうと人を動かしていかねばなりませんし、これはマネジメントそのものだと思います。
ぜひ上司の方にも、より広い範囲を任せてもらうには何が課題か、というところから自身の改善点を見付けていってはいかがでしょうか。
藤倉さんの回答:自分の欲求に正直に従ってみては?
自分の理想像を具体化し、仕事やスキルアップへのモチベーションにしてみるといいと思います。もしそれがないのであれば、会社からの期待に真剣に向き合ってみましょう!
ご自身のキャリアだけではなく、面談に向き合ってくれている上司についても配慮されていて、とても建設的なお悩みだなと思いました。
私が個人的にお勧めしたいのは、自分の欲求に正直に従うという方法です。
自分がかっこいいと思える姿、たとえば、第一線でばりばりとコードを書いているスーパーエンジニアとか、ものすごく高いお給料をもらっているマネジャーとか。憧れる将来像を、できるだけ具体的に想像することです。
市場価値が高いと言われるエンジニアの方々の中には、欲求によってモチベーションを高めて、難しい仕事への挑戦を重ねている人もいます。
仮に、その結果として市場価値が十分に高まらなかったとしても、意欲的になれることを継続していれば、仕事は充実したものになると思います。
もし仮に、今はまだ欲求すら明確に捉えられないということであれば、会社から期待されることに一生懸命向き合うという判断でもいいと思いますね。
上司の方には、「今は次のキャリアを明確には見通していないので、まずは目の前の仕事をきちんとやっていきたいです」と伝えれば、気まずいこともないでしょう。
開発に関わるものであれば、どんなものでも、いずれは将来の成長の糧になると思いますよ。
次回のお悩みは?
次回の相談は、ECサイト運営会社でPGとして活躍しているMさん(23)から寄せられた「顧客志向について学ぶべきだと上司に言われたのですが、なぜエンジニアに顧客視点が必要なのか、そしてそれを学んでどう応用すればいいのか分かりません」という悩み。
次回は、澤さん、えふしんさん、藤倉さん、3人が回答します。
『エンジニアWebメンタリング』では、読者の皆さまからの悩みを随時募集中!
澤円さん、えふしんさん、藤倉成太さんなど、エンジニアtype公式メンターズに相談したい内容を、下記のフォームからご記入ください。
株式会社圓窓 代表取締役
澤 円さん(@madoka510)
立教大学経済学部卒。生命保険のIT子会社勤務を経て、1997年、外資系大手テクノロジー企業に転職、現在に至る。プレゼンテーションに関する講演多数。琉球大学客員教授。数多くのベンチャー企業の顧問を務める。
著書:『外資系エリートのシンプルな伝え方』(中経出版)/『伝説マネジャーの 世界№1プレゼン術』(ダイヤモンド社)/『あたりまえを疑え。―自己実現できる働き方のヒントー』(セブン&アイ出版)※11月末発売予定
Voicyアカウント:澤円の深夜の福音ラジオ メルマガ:澤円の「自分バージョンアップ術」 オンラインサロン:自分コンテンツ化 プロジェクトルーム
合同会社DMM.com CTO
松本勇気さん(@y_matsuwitter)
1989年生まれ。東京大学工学部在学中より株式会社Labitなど複数のベンチャーにてiOS/サーバサイド開発などを担当。13年1月、Gunosyに入社。ニュース配信サービス「グノシー」「ニュースパス」などの立ち上げから規模拡大、また広告配信における機械学習アルゴリズムやアーキテクチャ設計を担当する。新規事業開発室担当として、ブロックチェーンやVR/AR技術の調査・開発に従事。18年8月まで同社の執行役員CTOおよび新規事業開発室室長を務め、同年10月、DMM.comのCTOに就任。19年5月よりDMM GAMES CTOを兼任
Sansan株式会社 CTO
藤倉成太さん(@sigemoto)
株式会社オージス総研に入社し、ミドルウエア製品の導入コンサルティング業務に従事。赴任先の米国・シリコンバレーで現地ベンチャー企業との共同開発事業に携わる。帰国後は開発ツールやプロセスの技術開発に従事する傍ら、金沢工業大学大学院(現・KIT虎ノ門大学院)で経営やビジネスを学び、同大学院工学研究科知的創造システム専攻を修了。2009年にSansan株式会社へ入社し、クラウド名刺管理サービス「Sansan」の開発に携わった後、開発部長に就任。16年からはプロダクトマネジャーを兼務。18年、CTOに就任し、全社の技術戦略を指揮する
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