キャリア Vol.1120

“法規制の壁”にどう立ち向かう? 自動運転のZMPで働く多国籍エンジニア集団の原動力「困っている人をロボット開発で助けたい」

株式会社ZMP 谷口 恒さん/上平倫太郎さん

今回、マスク・ド・アナライズが訪れたのは、「Robot of Everything」をミッションに掲げる株式会社ZMP。

ZMPは自動運転やロボット開発に取り組むスタートアップ企業で、2001年の創業以来「人とロボットが共存する未来」づくりに取り組んできた。

同社は、2020年7月に新たなパーソナルモビリティーとなる自動運転電動車椅子・シニアカーの『RakuRo™(ラクロ)』の量産化を発表。その他にも、コロナ禍に需要高まる宅配ロボ『DeliRo™(デリロ)』や、警備ロボ『PATORO™(パトロ)』など多種多様なロボット開発で話題を呼んでいる。

自動運転やロボット開発は国内産業において今後ますます重要なものとして位置付けられていくのは間違いないが、業界をリードする存在として注目を集める同社のエンジニアたちは、日々どんな挑戦を続けているのだろうか。

代表の谷口恒さんと、自動運転の開発を行うエンジニアの上平さんにお話を伺った。

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株式会社ZMP 代表取締役社長
谷口 恒さん制御機器メーカーなどを経て、2001年にロボット開発を手掛けるZMPを創業。08年より自動車分野へ進出し、自律走行車両を開発する。現在はさまざまな分野に向けたロボット開発や販売、公道における自動運転の開発などを進めている

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ロボテク開発部 AD技術開発ユニット ソフトウエアエンジニア 上平倫太郎さん電気通信大学 情報理工学部 知能機械工学科にてロボット工学を専攻し、同大学院では、医療機器の研究に従事。2017年に新卒でZMPに入社。現在はリーダーポジションを務める


製品作りはゴールじゃない。目指すは「Robot of Everything」

――ZMPでは、「Robot of Everything」というミッションを掲げていますよね。これはどういう意味なんでしょうか?

谷口さん(以下、敬称略):このミッションは、言葉の通り、人間とロボットが現代社会の中で共存しながら暮らしている状態を表しています。

なぜ、「Robot of Everything」を掲げている当社が、今現在自動運転に特にフォーカスしているかというと、人間が運転などの労働から開放されて人間にしかできない創造的な仕事に取り組むべきだと考えているからです。

――自動運転の事業に注力するようになったのは、いつ頃なんですか?

谷口:一人乗り超小型EVベースの自動運転技術開発用車両『RoboCar®』を2011年に販売した頃からですね。

この『RoboCar®』の発売を契機に、ZMPの事業を通して自動運転の未来にどのように貢献していきたいかが自分の中で明確になりました。

この頃、時を同じくして「Robot of Everything」という構想もしっかり出来上がっていきましたね。

株式会社ZMP 谷口 恒さん

――ZMPでは、自動運転の技術をさまざまな分野で活用していますよね。

谷口:ええ。「Robot of Everything」のミッションが示す通り、人間が操縦するあらゆる機械の自動化を目指したいと思っています。

例えば、2014年には、物流倉庫で荷物を運ぶ台車ロボットの開発を始めました。その後、物流倉庫だけでなく工場などでも弊社のロボットが使われるようになり、多くの作業が自動化できるようになっています。

今はロボットの活用は倉庫や工場などの場所に限定されていることが多いですが、将来的には日常生活にもロボットを普及させて、ロボットが人間を助けてくれる世界を私たちが提供していきたいですね。

――ZMPでは、介護や警備、運送など、さまざまな場面で活用できるロボットの開発を進めていますよね。

谷口:スタートアップでは、一企業につき一つの分野・製品でビジネスを展開させることが一般的だと思います。しかし、私たちは開発するものに対して、特定の分野を決めることはしていません。

社員一人一人の「こんな製品を作りたい」「こんな問題をなくしたい」という思いを形にすることを大切にしており、幅広い分野のエンジニアや専門家と協力し合いながら、さまざまな製品を世の中に提供しています。

しかし、ロボットづくりはあくまでも「Robot of Everything」を実現するための手段。最終的に目指しているのは人とロボットが共存する社会の実現です。

株式会社ZMP 谷口 恒さん

――ぶれないミッションがあるからこそ、さまざまなことに挑戦できるのですね。

谷口:今、私たちは自動運転やロボットに最適なインフラをどう構築していくかを社会に対して提言して、実現する段階に来ています。これは2020年8月に開催される『ZMP World 2020』で、「ロボタウン構想」として発表する予定なので楽しみにしてください。

「作りたいもの」より、「必要とされるもの」を作る

――自動運転が実社会で浸透するには、法律などの壁がまだまだあると思うのですが、いかがでしょうか?

谷口:確かに、法律に関する問題は根強いです。実際に、2018年頃には2020年に開催予定だった国際大会に向けて自動運転による無人タクシーの運行を目指していましたが、法規制などもあり実現できませんでした。

そこで公道よりも比較的許可が下りやすい空港で、自動運転バスの実証実験を進めようとしましたが、当初さまざまな事故を懸念して計画はなかなか進まず。最終的には問題をクリアできましたが、想定よりかなり時間がかかってしまいました。

ちょうどその頃、台湾から自動運転に関する講演依頼があり、良い機会だと思い現地の空港向けに自動運転バスを売り込みに行ったことがあります。

株式会社ZMP 谷口 恒さん

そこで、現地の女性スタッフにどんなことに困っているか、どういったものだったら使いたいかということを聞くと、「車椅子の方を係員が補助していて大変なので、自動運転の車椅子が欲しい」と言われました。

それを聞いても、正直なところ最初はあまり「自動運転の車椅子」の開発には乗り気ではありませんでした。なぜなら、世の中でどれだけ必要とされているのか、その時の自分にはあまり想像ができなかったからです。

その後帰国し、実家に久しぶりに帰省した時のこと、母親が父親の介護で腰を痛めていることを知りました。これが、私の中で「自動運転の車椅子」が身近な課題を解決する製品だと認識できた瞬間です。

そこからはすぐに行動を起こし、もともと開発していた宅配ロボットをベースにしながら、改めてデザインから描き起こし、『RakuRo™』のプロトタイプを誕生させました。

――それが、『RakuRo™』が誕生したきっかけだったんですね。道路や歩道の自動運転は技術的に難しいとされていますが、どうやって解決したのでしょうか?

株式会社ZMP 谷口 恒さん
『RakuRo™』に試乗する谷口さん。

谷口:あえて難しい場所で実証実験を行うことで、その問題を解決しました。

例えば、自動運転の実証実験をする場合、一般的には事故の危険性が低い過疎地で行うことが普通です。しかし、私たちはあえて都心などの人通りが多いところでの実証実験にこだわっています。

日の丸交通さんと自動運転タクシーのサービス実証実験を行った際は、大手町~六本木間で実証実験を行いましたし、電動車椅子の『RakuRo™』も丸の内で実証実験を行いました。

このようなハードルの高い場所で実験を重ねることで、加速度的に自動運転の技術を鍛えることができるようになります。

さらに、日本でトップクラスに人通りが多い六本木や丸の内で実験に成功すれば、他の場所で運用することは容易になるはずです。

実際に、『RakuRo™』の実証実験の様子を見た姫路市長から「これなら姫路の街でも大丈夫だ」と言っていただけて、『RakuRo™』を姫路市で実証していただけることになりました。

株式会社ZMP 谷口 恒さん
谷口さんは姫路出身で、姫路市長との親交が深い。

――とはいえ、自動運転が全国的に普及するにはまだ時間がかかりそうですよね?

谷口:そうですね。社会的には自動運転の普及が求められているのですが、前例がないものを国から認めてもらうことは難しいですね。

例えば、自動運転の宅配ロボットは、まだ公道で走行ができません。そこで政府への提言として、プレスリリースを通して自分の思いの丈を伝えたところ、政府関係者の目に留まり、関係省庁と議論する場に参加できることになりました。

自動運転を全国的に広めていくために大事なことは、誰もが想像できるプロセスをストーリーにして伝えることです。宅配ロボットについては、将来のストーリーとモデル地区の制定を提案することで、政府関係者から賛同をいただけました。こうした共同作業を経て、今年中には公道での実証実験ができる見込みです。

「困っている人をロボットで助けたい」

――「Robot of Everything」の実現も、次第に近づいてきていますね。では、ZMPで自動運転技術に携わっている上平様にお話を伺います。まず、ご入社の経緯を教えてください。

上平さん(以下、敬称略):私は大学でロボット工学を勉強しており、大学院では医療機器について研究をしていました。それは実家で同居していた曾祖母の脚が不自由になってしまったことがきっかけです。その流れで、最初は医療・介護機器メーカーなどへの就職を何となく考えていました。

しかし、心身ともに疲弊していく曾祖母を見て、「移動をもっと自由にできるようにしてあげたい」という思いが強くなり、自動運転技術に興味を持ち始めました。

また、私の実家は農家なので、農業を支えるロボット技術にも関心がありました。農家の多くが人手不足や後継者問題に頭を悩ませている中で、ロボットはそれらを解決する助けになるからです。

こうした身近な課題に包括的に向き合えることから、ZMPを就職先に選びました。

株式会社ZMP 上平倫太郎さん

――谷口さん同様、身近な人が抱えている課題をロボットで解決したいと考えたんですね。ZMPの開発環境を現場目線で見ていかがですか?

上平:弊社にはプログラミングだけでなく、ロボットの知覚や動作計画、制御などの専門家も多数在籍しているので、多方面からアドバイスを受けながら開発を進められます。

まずは自分で試して、ダメなら先輩エンジニアからフィードバックをもらって改善する。こうした好循環があると感じますね。

また、技術的な課題を解決できたことで、先輩社員だけでなくお客さまとも信頼関係を築くことができています。おかげで新しい課題に挑戦する場面でも、お客さまを巻き込んでプロジェクトに取り組めるようになっています。

――周りの支えがあるからこそ、若手エンジニアも成長しやすい環境なんですね。その他にもエンジニアにとって魅力的だと感じるポイントはありますか?

上平:自分の興味関心をそのまま製品作りに結び付けることができるのは、当社の大きな魅力だと考えています。

弊社には「Robot of Everything」のミッションに紐づくことであれば、「これをやってはいけない」という制限はありません。ですから、何らかの社会課題をロボットで解決するという試みであれば、医療、農業、流通など、幅広い業界に対して何にでもチャレンジできます。

株式会社ZMP 上平倫太郎さん

外国籍のエンジニアが6割。お互いを尊重し合いながら働く

――ZMPでは外国籍のエンジニアも数多くいらっしゃいますよね。

上平:当社のエンジニアの約6割は外国籍のエンジニアで、その国籍は30カ国くらいですね。社内コミュニケーションは英語と日本語どちらでも大丈夫ですが、日本語が得意でないメンバーが1人でもいるミーティングは全員英語で議論しています。

社内パーティーをするときでもムスリム向けのハラルフードを用意するなど、多様なバックグラウンドの人を受け入れやすい職場が自然に出来上がっていますね。

また、国籍の面だけでなく、年齢や社歴にもフラットな環境が根付いているのも特徴です。社長室のドアも常に開いているので、いつでも谷口さんに相談できますよ。

株式会社ZMP 上平倫太郎さん

――多様なバックグラウンドを持つエンジニアたちと一緒に働く上で、上平さんがいつも大事にしていることは何ですか?

上平:相手を尊重する意識を常に持ち続けることですね。私たちが取り組んでいるプロジェクトは、決して一人の知識だけでは解決できないものばかりだからです。

ZMPではさまざまなバックグラウンドを持つエンジニアがディスカッションしながら開発することが当たり前なので、自分の専門分野に固執していると、良いものづくりができません。

会社全体で知見を共有しながら新たな知識・スキルを学び、皆が「より良いものをつくろう」というマインドを持ち続ける必要があります。

僕自身は最近プロジェクトリーダーになったのですが、ZMPのエンジニアたちが今後も自由な発想で、ワクワクしながら働いていけるような環境づくりをしていけたらと思っています。

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【この記事の著者】
マスク・ド・アナライズ(@maskedanl
IT業界に突如現れた謎のマスクマン。 現場目線による辛辣かつ鋭い語り口は「イキリデータサイエンティスト」と呼ばれ、AI・データサイエンス分野における啓蒙活動に従事している。東京都メキシコ区在住

取材・文/マスク・ド・アナライズ 写真/野村雄治

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