巨大なレガシー産業との共創。花のサブスク『bloomee』はなぜ10万世帯突破の“業界の革命児“になれたのか
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昨今、レガシーな業界をテクノロジーの力で変えようと奮闘するスタートアップが増えている。2016年6月にスタートしたお花の定期便サービス『bloomee(ブルーミー)』を提供するユーザーライクも、花き業界(※花、植物を扱う業界)に、技術の力でイノベーションを起こした企業の一つだ。
『bloomee』は、全国約200店舗の花屋と提携し、定期的に季節の花が家庭のポストに届くサブスクサービス。2022年1月時点でアクティブユーザーは10万世帯に及び、日本初・日本最大級の「お花のサブスク」として成長を続けている。
この『bloomee』を運営するユーザーライクを立ち上げたのは、同社CEOの武井亮太さん。彼はなぜ、花き業界の改革に目を付けたのか。また、『bloomee』の躍進は、どんな技術によって支えられているのか。
この事業に懸ける想いとこれまでの挑戦について、武井さんと、同社でエンジニアマネージャーを務める朝倉達也さんに聞いた。
「花」は巨大な“レガシー産業”だった
――はじめに、なぜ武井さんは花き業界で起業しようと思ったのでしょうか? 創業の経緯について、教えてください。
武井:僕はもともと、教師になりたかったんですよ。それは「より多くの人に影響を与える仕事をしたい」と思っていたから。しかし大学時代に、社員数5人ほどの小さなスタートアップでインターンを経験したことで、ビジネスが人や社会にもたらす影響力の大きさを実感したんです。
それで、教師として1クラス30人を教えることも面白いけれど、もっと多くの人に自分のつくったサービスを使ってもらうのは、なお一層面白そうだと思うようになって。より多くの人に、より良い体験をしてもらうサービスをつくろうと経営者になることを決めました。
「花」を自分のビジネスで扱おうと思ったのは、前の職場を辞める時に退職祝いで花束をもらったのがきっかけです。それまであまり花をもらう機会ってなかったんですけど、この時、みんなからもらえた花束がすごくうれしかったんですよ。それで、単純に「花っていいな」と思って。
より多くの人に使ってもらうことができ、生活に馴染みやすい。そして性別・年齢関係なく、誰もがもらってうれしい。そんな「花」は、僕が思い描いた「より多くの人により良い体験をしてもらう」を実現できる領域なのではと思いました。
――はじめから「お花のサブスク」というアイデアがあったのでしょうか?
武井:いえ、最初は同じ花でもギフト用のECサービスを手掛けていました。フラワーショップにチャットで花の相談ができるようなサービスだったんですが、これが鳴かず飛ばずで。
その理由を探るためにユーザーヒアリングを繰り返したところ、皆さんが口をそろえて「花は高いから頻繁には買えない。普段の生活に花がないから、プレゼントしようという気持ちにもなりにくい」と言うんです。
そこで「そもそもユーザーさんの普段の生活に、花を馴染ませることから始めなければ」と、より安価に、日常的に花を楽しめるサービスを考えました。それがお花のサブスクサービスの始まりです。
――なるほど。花き業界にスタートアップが参入するのは当時まだ珍しかったと思うのですが、武井さんはどこに勝算を見出していたのでしょうか。
武井:花き業界の市場規模は約1兆円、全国に2万店のフラワーショップがあります。全国のコンビニが5万店舗ですから、意外と大きなマーケットなんですよ。
ところが花き市場は、知れば知るほどアナログなマーケットでした。国内のフラワーショップでは、仕入れた花の3割ほどを廃棄してしまうと言われていますし、その仕入れ・破棄のデータはほとんど蓄積されていません。
そこで僕らが全国のフラワーショップや花を購入する人たちのデータを蓄積・管理していけば、サプライチェーンの根幹を変えるような、市場に大きなインパクトを与える会社になれるのでは、と考えたのです。
そこでまずは前述のECを手掛け、2016年6月にサブスクサービス『bloomee』を立ち上げました。
花は“ナマモノ”。一つとして同じ商品がない難しさ
――2016年のリリース以降、『bloomee』の反響はいかがでしたか。
武井:おかげさまで立ち上げ当初からユーザー数は右肩上がりで、提携するフラワーショップも増え、現在は10万世帯に定期的にお花のブーケを届けられるサービスに成長しました。
「お花のサブスク」というコンセプトもそうですが、これまで見落とされがちだったユーザーさんやフラワーショップのデータを蓄積し、データドリブンでより最適な花を届けられるようしたことも、このサービスがヒットした要因の一つだと考えています。
ユーザーさんの中には私たちの狙いどおり、これまで家に花を飾る文化がなかった人も多く、「bloomeeのおかげで生活が豊かになった」という声もいただきます。
ただ、まだまだ理想としていた「データを活用して、花き市場にイノベーションを起こす」までは道半ばですね。
いろいろなことが試せるようになって、技術やデータの力で市場に爪痕を残せるようになってきたのは、ここ数年のことです。そこはエンジニアの朝倉を中心に、試行錯誤をしてくれています。
――朝倉さんは2019年にジョインされていますね。そもそもなぜ『bloomee』の開発に携わりたいと考えたのでしょうか?
朝倉:僕は前職でも観葉植物のECサイトを手掛けるスタートアップにいたので、花き市場のビジネスにはもともと興味がありました。その中でも当社は「いいサービスづくり」をさらに突き詰めていくフェーズだったので、そこに魅力を感じて入社を決めたんです。
僕自身、それまではフルスタックエンジニアとして技術力の向上を追及してきましたが、次は技術力を武器に「いいサービスをつくる」経験がしたいと考えていたので希望と合っていたんですよ。
現在、当社のエンジニア組織は、僕をいれて数名のまだまだ小さなチームですが、当社ではBizDevやPdM、カスタマーサポートなどのチームと協力し合いながら人の暮らしを豊かにするようないいサービスをつくろうと奮闘しているところです。
――『bloomee』が今後さらに花き業界での影響力を高めていく上では、何が重要になってくると考えていますか?
武井:まずは、先ほどお話ししたデータ活用です。現在は「どの花屋から、誰に、どんな花が届くのか」をデータで管理して、花の生産者やフラワーショップ、花き卸売業などさまざまな人に、ユーザーさんの声や売れ筋データを提供する仕組みを整えています。
朝倉:具体的には、ユーザーライクが提携している200店舗以上のフラワーショップのデータから、どのユーザーさんにどの店舗から、どのような花を届けたかを管理。その中には、仕入れ、ブーケの写真、ユーザーさんからの評価など多様なデータがあります。
また「どのような花か」という項目一つとっても、季節ごとの旬な花もあれば、品種は同じでも長さや開き方が違う花など、とても細かくデータを取得しています。
そして、UXの改善も次なる課題です。例えば、産地や生産者、季節など花のさまざまな要素にあわせてUXを変えていく必要がある。花というサービスは、まさにナマモノなんだと、難しさを感じるところですね。
さらに、お花のパーソナライズにもまだ課題があって、実はユーザーさんが10万世帯を超えた今でも、お届けする花については、半分ほどはまだ手動でセレクトを行っています。
「どの花の組み合わせが、ユーザーさんにどのような印象を与え、どのような感情をもたらしたのか」といった分析結果を取得して、よりパーソナライズされたお花のセレクトができるようにしたいですね。
――データを使ってやるべきこと、やりたいことが山積みですね。
武井:そうですね。今後は『bloomee』がさらにデータドリブンなサービスに発展するように、技術投資をしていこうと考えているところです。
実は僕、起業した当初は自分でプロダクトをつくっていたんですよ。エンジニアが増えたらきっと自分で開発する機会はなくなってしまうから、ゼロからエンジニアリングを学ぶなら今だと思って。
自分の手で開発を手掛けたからこそ、エンジニアリングの重要性も分かったし、開発の大変さも分かりました。今いるエンジニアからしたら「技術負債がたまっちゃうからやめてくれよ」って、感じかもしれないですが(笑)
そこで事業をよりスケールさせるためには、エンジニアリングの力が不可欠であると考えていたので、やっと技術投資を強化するフェーズまでくることができました。
――今後は「やりたかったこと」をどんどん実現していくフェーズだと。
武井:はい。今後はこれまで蓄積してきた会員データを生かして、ユーザーさんごとのカスタマイズや飽きさせない工夫をすることに力を入れたいと考えています。データを用いて、ユーザーさんにより良い体験を提供していきたいですね。
またそういった「データドリブン」かつ「ユーザー起点」でサービスを考えようという動きは、全社で大事にしている価値観でもあるので、そこはブラさずにやっていきたいです。
――「データドリブン」かつ「ユーザー起点」とは、どういうことでしょうか?
武井:目の前のユーザーさんのことを考えなければサービスはグロースしないし、ユーザーさんのことだけを考えてデータに基づいた分析ができていなくてもダメ。サービスをつくる上で、両方を兼ね備えることがもっとも重要だと考えているんです。
「データドリブンかつユーザー起点」を大切にするからこそ、ものごとを決めるときには基本的にチームみんなで議論を行います。そこで「データに基づいたらどうなるか」「それは本当にユーザーさんのためになっているのか」などを話し合うようにしていますね。
朝倉:みんなが同じ価値観でサービス開発を行なっているのは、当社の強みでもあると思います。極端に言ってしまえば、ユーザーさんとデータ、この二つの判断軸でゴールを決められるわけですから。その議論をベースに、チームの方向性や動きを決めていくので、非常にシンプルでいいなと感じています。
「カオス」の中で味わう、エンジニアリングの楽しさ
――今の事業を通じて、どのような未来をつくっていきたいと考えていますか。
武井:『bloomee』を始めた5年半前、花のサブスク市場にはまったく他のプレイヤーがいませんでした。ですから僕たちは業界構造を変えながら、新しい市場をつくることにチャレンジしてきたわけです。
しかしこれからはマーケットリーダーとして、一過性のサービスではなく「次の当たり前」をつくるサービスをつくりたい。そのために『bloomee』をよりグロースさせていきたいと思っています。
そしてゆくゆくはサブスクで扱うものをフルーツやベビー用品なども手掛けたいと思っていて。花以外にも、「一家に一つ以上、僕たちのサブスク商品がある状態」をつくりたいですね。
朝倉:そのためには、まず『bloomee』のサプライチェーン理解が重要だと考えています。生産者などのデータを蓄積し、配送に適した花を研究し尽くす。そうすれば、届けられる花の種類も提携店舗も自然と増えていくと思います。
そのためには、前述したとおりエンジニアリング組織におけるデータの扱い方が重要になってくるので、扱うデータに合わせて新しいシステム開発をしたり、運用オペレーションをつくったりする必要があります。
そんな状況を楽しみながら、「サービスをより良くしたい」と考えるエンジニアの仲間を増やしていきたいですね。
――いまのユーザーライクにジョインすることは、エンジニアにとっても面白いタイミングですね。
朝倉:そう思います。エンジニアリング組織のカルチャーづくりや開発体制の基盤づくり、目標や評価制度の設計まで含めて、イチから自分たちでつくることができます。また、エンジニア組織は各チームの実現したいことを一緒に遂行することも役割の一つなので、各部門と連携しながらミッションを遂行していく面白さもありますね。
加えて言うと、これから入ってくるメンバーとは「良いコードとは何か」を、認識合わせをするところからやりたいくらいです。
サービスがスケールしていくフェーズって、組織の中はめっちゃカオスじゃないですか。その時って、各々のメンバーが他の職域の仕事やサービス全体の目的、背景を意識しながら、良いサービスになるように新しい挑戦を重ねることが重要なんですよね。
だから、今何をする必要があるのか全て自分で考えて意思決定しながら進めていく必要があります。それは大変なことではあるのですが、その分他では味わえない面白さもある。僕はそう思っています。
取材・文/石川香苗子 撮影/赤松洋太
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