ユーザーライクEM×キャリア形成のプロが語る、「伸びるスタートアップ」の条件と“得られるキャリア”の多様性
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スタートアップへの転職を考えているエンジニアの中には、不安定な環境に飛び込むことに不安を感じ、二の足を踏んでいる人も少なくないだろう。
しかし、安定性とは引き換えに、ポテンシャルの高いスタートアップの拡大期に入社できれば、企業がその後“大化け”する瞬間を間近で見られる可能性も。
「お花のサブスク」で知られる『bloomee』を運営し、2022年1月に累計資金調達額40億円超えを果たしたスタートアップ、ユーザーライクにジョインした朝倉達也さんも、短期間で会社が急成長する様子を目にしたエンジニアの一人だ。
「僕が入社した2019年当時、社内にエンジニアは一人しかいなかった。社内一桁目のエンジニアとして、自分の技術で会社を成長させている手触り感がある」と朝倉さんは声を弾ませる。
自身もスタートアップの経験を持つエンジェル投資家であり、スタートアップや上場企業向けに組織人事のコンサルティングを行う河合聡一郎さんも、「ユーザーライクには、伸びるスタートアップで得られるキャリアの条件が、豊富にある」と話す。
その理由とは一体何なのだろうか。今後伸びるポテンシャルを秘めたスタートアップを見極めるポイントと、拡大期のスタートアップで働くことがエンジニアのキャリアに与える影響について聞いた。
注目すべきは「リアルをWebでアップデートする」スタートアップ
――ユーザーライクはこれまでに40億円以上の資金調達を実現し、成長中のスタートアップとして注目を集めています。エンジェル投資家でもある河合さんは、このような「成長ポテンシャルのあるスタートアップ」をどのように見極めているのでしょうか。
河合:以前は「斬新なプロダクトをリリースして、2~3年で急成長する」ようなスタートアップが多かったと思いますが、そうした企業群に加えて、ここ数年で変化が見受けられます。
今は「規模が大きな既存産業」に対して、業界全体としてバリューチェーンも含めて、仕組みを新しくしていくタイプのスタートアップが増えており、伸びている印象ですね。私の出資先やご支援先もそういったタイプが多いです。
業界構造自体を変えなければなりませんから、成果が出るまでに5年、10年かけて成長していくスタートアップへの期待が高まっています。
例えば、製造業の構造を変えようとしているキャディさんは分かりやすい例。そのほか、金融や医療、人材などの伝統的であり巨大な業界に対して、EコマースやSaaSといったビジネスモデルで課題解決に取り組んでいる企業が大きく伸びています。
そうした中で、古くからある花き業界の構造にメスを入れ、新しいサービスを提案しているユーザーライクもその一つですね。
河合:こうした企業群は、リアル産業をテクノロジーで次世代に合わせて変革していると言えます。
ですので、成長する企業に必要なのは、こうした産業理解と言う意味で「顧客理解の深さ」が共通項だなと思います。
――「顧客理解の深さ」ですか?
河合:はい。具体的に言うと、サービスを提供する企業が「リアルな顧客課題」を把握できるかどうかに、サービス成功の可否がかかっているということですね。
ユーザーとなり得る人が、そもそも誰なのか、本当に困っているのは何なのか。課題を解決するためには、本来どういうサービスであるべきなのか。そこを正確にとらえた上で事業を育てていけるスタートアップは、取組む範囲はとても広いですが、成長のポテンシャルが高いと言えます。
顧客を正しく理解するために、データばかりを信じてしまう企業もありますが、リアル産業のビジネスでは、もう少し踏み込む必要があります。
例えば『bloomee』なら、お花を購入するのはどういう人なのか、どういうタイミングで買おうと思っているのか、データには表れない部分まで含めてリアルな顧客の行動を知って初めて、「深い顧客理解に基づいた、リアルな課題」に気付くものだと思うんですよね。
また、お花を買うユーザーだけでなく、お花を生産する農家や、お花を扱う市場・仲卸・物流などの長いバリューチェーンの中でどんな人たちが関わっているのか。それぞれがどういう工程でどういう作業をしていて、各所で何が課題になっているのか。
サービスやプロダクトに関わる人たち全ての課題を正しく、かつ肌感覚をもって理解することが不可欠です。
朝倉:仰る通りですね。そういった課題に対する「実感」がないと、良いWebサービスやプロダクトは作れません。
特にエンジニアは、意識しないと「課題が生まれる場所」と直接関わる機会が少ないですし、机上の空論でプロダクトを作ってしまいがち。リアルな課題を把握しているエンジニアがいなければ、スタートアップのプロダクトはなかなか伸びていかないと思います。
当社ではエンジニアを含めた全メンバーでユーザーヒアリングを行っており、チームによって毎日実施しているところもあります。そこで得た知見を共有することで「リアルなユーザー課題」を把握するようにしていて。そこが『bloomee』がヒットした理由の一つになっていると感じています。
――リアルな顧客の課題を把握してサービス、プロダクトづくりに生かすことに加え、成長するスタートアップの条件として欠かせないものとは何だと思いますか?
河合:さまざまな要素がありますが、あえて言うなら、「組織の根幹にエンジニアリングを据える」という意識を持っている企業は強いですね。特に経営層が「事業の優位性はエンジニアリングに左右される」と認識しているかどうかは、大きいかなと思います。
ユーザーライクの創業者である武井さんも、キャリア的にはエンジニアとしてのご経験があったわけではないですが、創業当初はご自身でプログラミングをされていましたよね。
朝倉:そうなんですよ。武井はエンジニアリングをかなり重視していて、創業当初から「エンジニアの視点から見たプロダクトづくりを理解しておきたい」と考えていたようです。
「お花を届けるサービス」というと、ともすれば、テクノロジーを活用するイメージはあまりないかもしれませんが、実際は当社のサービスにはエンジニアリングが欠かせません。
『bloomee』のサービスを成長させる上では、地道なシステム開発の積み重ねが不可欠。エンジニアの存在がかなり重要なんです。
プロダクト、組織、共通言語…全てを自分たちで「定義する」面白さ
――これから伸びるスタートアップの拡大初期のフェーズに、エンジニアが入社することで得られる経験や醍醐味は何だと思いますか?
河合:分かりやすいところで言うと、未来を見越してさまざまな「定義」の部分で関わることができるのがチャレンジでもありますし、醍醐味や経験になると思います。
例えば、事業成長を見越した上で、開発で使う言語やアーキテクチャの選定、社内で使う言葉や、開発のポリシー、採用の基準など。
プロダクトをつくる際には「ユーザー」や「市場」という概念から考えていきますが、それらは具体的に何を指すのか。どのようなエンジニアを集めて、どんな組織にして、どういった開発ポリシーでシステムを作り上げていくのか。
それらを全て一から自分たちで定義して、試行錯誤しながらつくっていく面白さは、このスケールしていくフェーズならではのものだと思います。
朝倉:スタートアップで事業が成長していくと、当然ながら、さらなる成長のための課題や影響範囲が広くなった状態で品質を維持していくための課題など、一人では解決しきれない課題が高い頻度で訪れます。
それらを解決するために、「一人一人が考えて行動できる組織」をつくっていく必要がありますし、各部署のメンバーとコミュニケーションを取りながら組織を成長させていかなければなりません。
ですから、自分が関わった施策をさらに良くするために何ができるかを考えたり、自分の中で新しい領域に挑戦したりすることに面白さを感じる人にとっては、拡大期のスタートアップで働くことはすごく刺激的だと思いますね。
――朝倉さんはユーザーライクの初期開発メンバーですが、ご自身のキャリアにはどのような良い影響があったと思いますか?
朝倉:私はリアルな顧客課題にしっかり向き合っていくような「良いサービスづくり」を突き詰めたいと思ってユーザーライクにジョインしたので、その目的はしっかり果たせたかなと思います。
前職では、とあるメディアを運営するチームに所属していたのですが、そこの組織でも開発だけではなくサービスを伸ばすために何をしなければいけないかを考えて、マーケティングや、ライティングの勉強もしなければいけない……といった状況にありました。
そうやって自分の領域を広げていくうちに、今後何を突き詰めていきたいかが見えてきて、私の場合は「サービスづくり」によりフォーカスできるようになりたいなと思ったんですよね。
そんな中で、ユーザーライクのサービスづくりに携わりたいと思ったのは、商品の調達から販売までのバリューチェーンが長いので、さらに広い範囲で「良いサービスづくり」をするための経験を積むことができると考えたからでした。
私が入社した2019年頃は、エンジニアがまだ自分も含めて2名しかいない時期で、熱量高く、より良いサービスを皆でつくっていこうとする雰囲気もあって。その熱量の高さは今も変わらず、まさに私が求めていた「サービスづくりを突き詰められる環境」だなと感じています。
「どうすればできるか」を考え続ける環境なら、自ずと成長できる
――数あるスタートアップの中でも、今エンジニアがユーザーライクにジョインすることで得られるものは何だと思いますか。
河合:事業づくりと並行して、先ほどもお伝えしたような、エンジニア組織の拡張を見越したさまざまな定義や、それぞれの意思決定の範囲が広いのが、まずは特徴だと思いますね。
ユーザーさんをはじめ、生産者、物流などの工程で関わる人にまで「どんな価値を提供しようか」と社員一人一人が考えて実現をされています。エンジニアメンバーも、単に「この機能を開発します」というだけでなく、「新しいマーケットや、スタンダードをつくっていく」という気概をもって仕事にチャレンジしているんですよね。
そういう環境で仕事をすることで、事業やシステムだけではない、採用や評価、育成を含めた組織のアーキテクチャを考えて、設計し、実行をする能力も身に付けることができるはずです。
その先にはエンジニアリング力を突き詰めたり、マネジメント側に移ったり、プロダクトづくりによりコミットしたりとキャリアの多様性の機会があります。
朝倉:良くも悪くも、常にアウトプットしていかないといけない環境に身を置くことになるので、必然的にたくましくなりますね(笑)
『bloomee』はサービスも組織も、大きく成長しているフェーズ。そのためエンジニア組織に具体的に求められることも広がって、結果として個人に求められることも変わってきています。
私は最近までプレイヤーとしての面が強く求められることが多かったのですが、組織が成長していく中でマネージャーとして動く必要も出てきました。私自身、マネジメントはこれまで行ったことはなかったものの、特にエンジニアチームの目標設定は良い経験になっていると感じています。
これまでは、わりと定性的な目標設定をすることが多かったのですが、ユーザーライクでは定量的な数値を重視する文化もあるので、エンジニアや開発に関する情報をどう数値化していくか、会社の方向性と紐付けながらどう決めていくかには、とことん向き合いましたね。
答えがないものなので、現在も試行錯誤の真っ最中ですが、経営層や他部署のマネージャーとも近い距離でフィードバックを得られますし、会社全体が挑戦に対して前向きな雰囲気なので、自身の成長にも大きく繋がっていると感じています。
これは他メンバーについても同様で、個人の成長にも繋がるよう仕事の領域を積極的に広げてもらっています。
河合:ユーザーライクは、この人数感にもかからず、これから新規事業もどんどん立ち上げていくフェーズなので、そこにゼロイチで加われる可能性もありますね。
――今後ユーザーライクをさらに拡大していく上で、展望を教えてください。
朝倉:今後もエンジニアの組織をもっと強化していく予定です。スタートアップが長く成長を続けていくためには、エンジニア組織の拡大が不可欠。今は、組織の拡大と強化のために何が必要な要素なのかを洗い出そうとしているところです。
例えば、開発チームで二日間かけて、各チームの役割を言語化したり、それぞれの目標や評価基準を定めたりもしました。
朝倉:そうやって出した私たちエンジニアチームの役割は「各チームの実現したいことを一緒に遂行する」というものです。
これは、ただ単に各チームのオーダーに従って「言われたものを作る」という意味ではなく、社内のさまざまなチームの目標について、エンジニアも一緒になって知恵を絞り、サービス全体の目標実現のためにベストな方策を考えていく組織でありたいということを意味しています。
また、今後開発チームが拡大することに備えて、より効率的に業務を遂行できる体制も整えているところ。プロジェクトのリリース回数を増やすためにd/d/d(※)などの指標をもとに考えたり、権限の委譲や、社内ポータルなどを利用した情報流通の仕組みを整えたりしています。
朝倉:今後さらに『bloomee』のサービスも成長させて、より多くの方に使っていただきたいですし、今後は新規事業やto Bプロダクトの開発にも取り組みたいと考えています。
やりたいことを一つでも多くやるためには、必然的に組織を大きくしていかなければなりません。ですが、その中でもメンバーがより良いサービスづくりへの熱量を保ったまま取り組めるようにしていきたいです。
取材・文/高田秀樹 撮影/赤松洋太
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