法林浩之@jusがお届け!
UNIXエンジニア温故知新UNIXが生まれてから半世紀。脈々とソフトウエアの進化を支えてきた技術は、どのようにして今に至るのか? そこから学べるものとは? 日本UNIXユーザ会「jus」の法林浩之さんが、イベントレポートを中心に「UNIXの今」をお届けします!
法林浩之@jusがお届け!
UNIXエンジニア温故知新UNIXが生まれてから半世紀。脈々とソフトウエアの進化を支えてきた技術は、どのようにして今に至るのか? そこから学べるものとは? 日本UNIXユーザ会「jus」の法林浩之さんが、イベントレポートを中心に「UNIXの今」をお届けします!
今回は、2022年3月に行いましたjus研究会より「平成生まれのためのUNIX&IT歴史講座」の模様をお伝えします。
イベント概要
・タイトル: 平成生まれのためのUNIX&IT歴史講座~番外編~
・講師: 松澤太郎(日本UNIXユーザ会)、古川菜摘(日本UNIXユーザ会)
・日時: 2022年3月12日(土) 16:00-16:45
・会場: オンライン
今回は3月12日(土)に行われたオープンソースカンファレンス2022 Online/Springの中で研究会を行いました。
現在のjus会長である松澤さんが講師となり、1999年から2003年あたりの状況をお伝えする歴史講座を実施。質問役としてjus幹事の古川さんも加わりました。
セッションは、当時の出来事やjusの行事を1年ごとに振り返っていくもの。順に紹介していきます。
Vine LinuxやGnomeの1.0がリリースされ、Linuxデスクトップの基礎を築きましたが、業界的にはまだWindows全盛期。もっともサーバ用OSとしてはLinuxやFreeBSDなどのPC-UNIXがシェアを伸ばしつつありました。
jusの行事からは、FreeBSDのコアチームメンバーであるJordan K.Hubbardさんを迎えての勉強会が紹介されました。
参加者から「LinuxはWindowsを不要にするか」という質問があり、Jordanさんは「マイクロソフトはWindowsだけでなく多くのソフトウエアを開発する巨大企業なので、完全にキャッチアップするのは無理だろう」と回答。
しかし松澤さんはこれについて「デスクトップとしては確かに追いついていないが、Web技術が当時の想像以上に発展したことに加えてスマートフォンなどにUNIX由来のものが広まっており、Windowsである必要性は減ったのではないか」とコメントしました。
各地域でLinuxユーザグループが設立されたり、PlayStation2が発売され、開発環境がLinuxであることが話題になったりしました。
松澤さんもOSSの翻訳を始めたり、埼玉西地区Linux研究会に参加するなど、OSSコミュニティに関わるようになったのがこの頃です。
jusの行事からは、JPCERT/CCの方を講師に招いての総会併設セミナーが紹介され、当時話題になった政府機関Webサイト書き換え事件などが解説されていました。
jusの会報である『/etc/wall』の記事には「標的となるサービスはWebサーバが圧倒的に多く」とありますが、20年経った現在でもそれは変わっていません。その一方で、当時は愉快犯が多い時代だったのが、今は組織的、ビジネス的な犯罪が増えています。
関連して「カッコウはコンピュータに卵を産む」という書籍(1980年代に実際に起きた不正侵入の話)も紹介されました。
松澤さんの思い出として、jusが主催したオープンソースまつりに参加したことが語られていました。
もちろん『/etc/wall』にもレポートが掲載されており、その中から同人サークル「ふみふみキック」という団体が創作していたプログラミング言語の擬人化が紹介されました。近年でも同様の創作を見かけることがありますが、こういう傾向は昔も今も変わらないようです。
この他には、PerlやRubyのコミュニティと一緒に開催したYet Another Ruby/Perl Conference 19101や、IPv6をテーマにした総会併設セミナーなどの行事が紹介されました。
現在のFirefoxの祖先にあたるMozilla 1.0や、LibreOfficeの祖先であるOpenOffice.orgの1.0がリリースされました。また、IT勉強会にMacを持参する人が増えてきたのがこの頃からです。
jusの行事からは、まずIPv6体験ワークショップが紹介されました。IPv6ホストとしての設定からIPv6対応サーバの構築までを、BSD系の実装であるKAMEとLinux系の実装であるUSAGIの両方で実習するという、中身の濃いものでしたね。
それから、第1回の関西オープンフォーラム(通称KOF、当時は「関西オープンソース+フリーウェア」)や、Sendmailの作者であるEric Allmanさんを迎えての勉強会なども紹介されていました。KOFでは、現在は必須ツールと言えるOpenSSHが最新技術のセミナーとして取り上げられていたようです。
Mozilla Foundationが設立され、それまでInternet Explorer一辺倒だったブラウザの世界を変える流れが始まった年です。
jusの行事からは、現在まで続いているLLイベントの第1回であるLL Saturdayが紹介されました。
現在のLLはLearn Languagesの略ですが、設立当初はLightweight Languageの略で、高度なこともライトに実現できるプログラミング言語を指していたのです。その他には、Internet Weekの中で行ったBSD/Linux Day、特に日本語入力のセッションが紹介されました。
松澤さんによる振り返りとして、この年代はLinuxやBSDのデスクトップ環境が急激に発達していった時代であること、jusの行事に濃い話題が多く、当時から参加していたらもっと違う世界に行っていたかもしれないという話がありました。
その一方で、当時議論されていた話題の多くは現在も課題として残っており、20年前から叫ばれてきたLinuxデスクトップ元年はまだ遠いという感想も持ったそうです。
jusの行事だけでなく業界の動きなども資料に取り入れた、内容の濃いセッションでした。さらに詳しく内容を知りたい方は、動画をぜひご覧ください。
法林浩之さん(@hourin)
大阪大学大学院修士課程修了後、1992年、ソニーに入社。社内ネットワークの管理などを担当。同時に、日本UNIX ユーザ会の中心メンバーとして勉強会・イベントの運営に携わった。ソニー退社後、インターネット総合研究所を経て、2008年に独立。現在は、フリーランスエンジニアとしての活動と並行して、多彩なITイベントの企画・運営も行っている
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