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【及川卓也×澤円】Web3、Dao、メタバース…変化の時代を生き抜くエンジニアの条件とは?

働き方

VUCA時代(※)の到来が叫ばれているーー。いつの時代にも「変化」はつきものだが、過去の歴史を振り返ってみても、世の中が変化するスピードはますます速くなっている。

最近では、メタバースやDAO、Web3などの登場で、インターネットの世界は新たなフェーズを迎えている。こうした変化は、今後エンジニアのキャリア形成にどのような影響を与えるのだろうか。

2022年6月21日~25日に開催されたオンラインカンファレンス『ENGINEERキャリアデザインウィーク2022』(ECDW2022)で、クライス&カンパニー顧問の及川卓也さんと、圓窓代表の澤円さんが議論した、これからの時代の“生涯技術屋のキャリア”ついて一部抜粋してお届けしよう。

(※)VUCAとは、V(Volatility:変動性)U(Uncertainty:不確実性)C(Complexity:複雑性)A(Ambiguity:曖昧性)という四つの単語の頭文字を組み合わせた言葉。先行きが不透明で、将来の予測が困難な時代

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株式会社クライス&カンパニー顧問 及川 卓也さん

早稲田大学理工学部卒業、日本DECを経てMicrosoftに転職。Windowsの開発に携わり、その後Googleではエンジニアリングマネジメントに従事。退職後はテクノロジーによる課題解決と価値創造で企業支援やエンジニアリング組織作成支援を行うTably株式会社を設立。また株式会社クライス&カンパニー顧問も勤める

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株式会社圓窓代表取締役 澤 円さん

立教大学経済学部を卒業後、IT関連企業からMicrosoftに転職しITテクノロジー情報発信の役割を担う。マイクロソフトテクノロジーセンター・センター長から業務執行役員を経て、2020年に退社。琉球大学と武蔵野大学の客員教員であり、個人での活動も行う「複業」を実践。そのプレゼンテーション力は高く評価され、数々の法人で顧問やアドバイザーを兼任する

子どもがおもちゃで遊ぶように、新技術に触れてみる

ーーWeb3、DAO、メタバースなど、インターネットの世界は新たなフェーズを迎えていますよね。澤さんは今の状況をどのように見ていますか?

澤:僕はエンジニアといっても、職種としてはITコンサルタントやプリセールスエンジニアとしての仕事がメイン。

どちらかといえばマーケティングやセールスに近い立ち位置なので、これまでのキャリアでは一貫して、技術トレンドやWeb3のようなバズワードと付き合ってきました。

その中で、これらのバズワードがひとり歩きをし、本質が抜け落ちてしまう場面を何度も目にしてきています。ですから、Web3やDAO、メタバースにおいても、「本当に実現したいこと」「本質の部分」を伝えていきたいと思っているんです。

ーー澤さんはこれまで、テクノロジーの変化にどう対応してきたのでしょうか?

澤:気になるものが出てきたときには、必ず自分で触るようにしていますね。自分の目でどういうものかを確かめながら、付き合い方を考えていく感じです。

澤円さん

ーー及川さんはいかがですか? インターネット、テクノロジーの変化をずっと第一線で見てきたと思いますが、どのようにそうした変化に対応してきたのでしょうか。

及川:僕がこれまで変化に対応してここまでやってこられたというのは、あくまで結果論。テクノロジーの世界には生存者バイアスがありますから、僕が取り立ててうまく変化してきたとは思っていません。

ただ、澤さんのおっしゃる通り、変化を乗りこなしていくには「新しい技術に興味を持つのが大事」だとは思いますね、エンジニアならなおさら。

新しいものに抵抗感を持ったり、ましてや否定してしまうのはよくない。

私自身、正直なところWeb3やDao、メタバースをきちんと理解できているわけではありません。でも、新しいものは好きだし、試さなくてはいけないという使命感もあります。

だから、クリプトカレンシー(仮想通貨)も持っているし、OpenSea(仮想通貨の取引所)でNFTを購入したこともある。実際にトライしているわけですね。

ーーWeb3に一種のいかがわしさを感じ、抵抗感を覚える人も一定数はいますよね。及川さんはいかがですか?

及川:もちろん、よく分からない部分はあるし、いずれ「使い物にならない」ものと見なされてしまう可能性もあると感じます。でも、それでも私は、自分が分からないものを否定する人にはなりたくないんですよね。

澤:そう、分からないものを否定するのは簡単なんですよ。だからこそ、「分からないもの」「理解できないもの」に対する自分の姿勢には意識的になった方がいい。

僕は、これからの時代、エンジニアはますます「自分の意思」を持つことが重要だと思っているんですよ。日本のビジネス環境は、決して安泰とは言えません。意思がなければ、流されるままに滝底に落ちることが分かりきっている。

そうならないためには、エンジニアが自分の意思で自分が行く方向を定め、選んでいくこと。新しい技術に対してどのように取り組むか、自分なりの考えを持つことが大切です。

技術はあくまでもツールであって、技術自体が意志をもって発展することはありません。エンジニアが使ったり、カスタマイズしたり、組み合わせたりして初めて、何らかの意図が実現しますから。

及川:それに、変化に巻き込まれるよりも、変化を起こす側にいる方が楽しいでしょう?

せっかく次々に新しい技術が登場する時代に生きているのだから、子どもが新しいおもちゃを次々に手にしていくように、フラットに楽しんでいったらいいのかなと思います。

また、一つ付け加えると、Web3のように新しい概念、テクノロジーが生まれた背景には、それを構想した人々のビジョンや哲学があることも忘れてはいけないと思うんですよね。

及川卓也さん

ーービジョンや哲学ですか?

及川:はい。例えば、Web3の哲学は「非・中央集権化」です。GAFAのようなビッグテック、もしくは政府などの“中央”に権力が集まり、コントロールされるのはもう嫌だと。

そうではなく、個人間で自由にやり取りができる、いわゆるディセントラライゼーション(非・中央集権化)を成し遂げようというのがWeb3の哲学です。

けれどもこれは、日本人が苦手とする分野でもありますよね。日本人は長らく、言われたことに従順であることを良しとする教育を受けてきましたから。

ーー欧米よりも、よりいっそう明確な指示系統や「中央」に匹敵するものを求めてしまいやすい、と。

及川:はい。ですから、フラットなティール組織(リーダーがいなくても、目的のために自己進化する組織)が重要だなんて日本でも提唱されていますが、なかなか実現できていません。

だからこそ、「非・中央集権」の流れを受けて、改めて日本人が自らの社会を見直す流れが起きても良いのかなと思います。

それから、Web3に「いかがわしさ」を感じる人が多いのは、ファイナンス(金融)とひもづいているためであると考えています。そしてこれも、日本人の教育の影響なのかなと。

ーーというと?

及川:日本人はお金について話すのを避ける傾向がありますよね。

分かりやすく言えば、お金にがめついのはよくないとか、お金のことを人に聞くのは失礼だという感覚が、学校や家庭などさまざまな場で刷り込まれている。

だから、投資や資産運用への関心が薄く、「Web3を通じて経済を民主化する」と言われても、遠い世界のことのように感じてしまう人が少なくない。

けれども、事実として資本主義を中心とした世界を動かしているのは経済です。

Web3の背景にある哲学を知り、自分ごととして「民主化とは?」を再考することこそが、エンジニアのみならず今の時代を生きる私たちに突きつけられている課題ではないでしょうか。

「理想の自分」に必要な「アイテム」は何かから考える

ーー変化が激しく将来の見通しが立てづらい時代ですが、そんな中でエンジニアは今後のキャリアをどのように考えていったらよいと思いますか?

及川:まずは、伸ばしたいスキルや触れたい技術などから考えるといいかもしれませんね。そこを突き詰めていった結果、自分らしいキャリアは後からついてくると思うので。

澤:同意します。僕はよく、スキルを「10万円のシャツ」、キャリアを「おしゃれな人」に例えます。

自分が理想としているような「おしゃれな人」になるためには、まずは何か身に付けるアイテムが必要。そこで、10万円のシャツが必要だとします。

ただ、10万円のシャツって高いですよね。でも、ローンを組むなど工夫すれば、なんとか手に入れることはできる。おしゃれな人になるために、シャツを買うことは誰でもできるとも言えます。

澤円さん

澤:だからといって10万円のシャツだけ着ていればおしゃれかというと、それも違う。どんなパンツを合わせるのか、もっと言うと、どんなふうにそのアイテムを使って個性を表現するのか、そこは自分のセンスで考えなければいけない。

自分のワードローブ、つまり手持ちのスキルには何があって、どういうものが似合うのか。それぞれのアイテムはきちんと時代に合っているのか。カジュアルに見せたいのか紳士になりたいのか、かぶき者になりたいのか……。

こんなふうに、自分の持ち物と世の中のトレンドなどを照らし合わせて自分でコーディネートを考えることが「センス」であり、理想のキャリアを実現する道なんだと思うんですよね。

ーーなるほど、分かりやすい例えですね。では、澤さんご自身は、どのようにその“人生のコーディネートセンス”を磨いてこられたのでしょうか?

澤:僕の作戦は「弱者の戦略」です。僕はもともと文系で、とがった技術力は持ち合わせていなかった。ガジェットもテクノロジーも大好きだけど、コンピューターサイエンス的な理解は足りていない。エンジニアとしてはポンコツかもしれません。

でも、僕は自分が「理解していないこと」を理解しています。ソクラテスの言う「無知の知」です。

目の前に新しいテクノロジーがあって、使い方や乗りこなし方がなんとなく分かる。それを使うメリットや、新しい技術を活用した面白いプロジェクトを思いつくことができる。僕のキャリアは、これらを言語化して伝え、世の中に貢献することです。

そして、これらを全部組み合わせてやっている人は少ないので、弱者の戦略がユニークネス(独自性)につながったんです。こうなれば、個人で勝負できる。

先ほどの10万円のシャツに例えれば、自分のワードローブにあるものをいかに組み合わせるかを考えるのが、人よりも少しうまかっただけと言えるかもしれません。

ーーエンジニアのキャリアパスとして、技術のスペシャリストとして生きるか、マネジメントを極めて組織運営のプロになるか、「技術か管理か」の二択で迷う人もいますよね。そういう場合は?

及川:まず、管理職と技術職は二律背反ではありません。エンジニアとして一定以上の能力があり、管理職に興味・関心と素養がある人が管理職になるわけで、どちらかというと包含関係に近いと思います。

それから、管理職になることを嫌がる方は「管理職なんて面白くないんじゃないか」と思っていることが多いのですが、僕からすれば、そんなことはありません。

澤円さん

及川:確かに人には心があり、システムよりも理屈が通用しないから扱いが難しい部分もある。でも、人には、アリストテレスが言ったとおり「1+1=2ではなく、3にも4にも5にもなる」可能性が眠っている。

自分がマネジャーとして組織に働き掛けることで、チーム全体のクリエイティビティーやプロダクティビティーが一気に上がっていく経験は、大変尊いものですよ。

「稼げる自分」は、「変化に強い自分」につながっている

ーー今後も、テクノロジーや社会環境が変化するスピードはますます増していくと思うのですが、そんな中で「変化に強い自分」であるために必要なことって何だと思いますか?

及川:あえて言うなら、経済力を高めることですね。

ーー経済力ですか? それはなぜ?

及川:お金がない状態だとそもそも生きていけないし、不安にもなる。そういう中で人は新しいことにチャレンジしづらくなっていきます。逆に、何かで失敗しても「まぁ大丈夫」と思えるくらいの経済力があれば、新しいことも始めやすいじゃないですか。

だから、貯蓄をして資産を蓄え、さらには資産の運用もするのがおすすめです。その上で、もっとも大切な財産は何よりも「稼げる自分」でいることだと思います。

株の運用もいいけれど、いつの時代でも稼げる人間でいるために、自分自身に投資するのが一番手堅い。株に5万円投資したとして、たとえ10倍になっても50万円です。もとになる資産がなくては、大きな運用もできない。だから、自分が稼ぐことの方がやっぱり大事。

最近ではFIRE、つまり「Financial Independence、Retire Early(経済的に自立し、早期リタイアを実現すること)」という考え方がはやっていますよね。早期リタイアの賛否は置いておくとして、大事なのはFinancial Independence(経済的自立)です。

VUCA時代を乗り越えるにあたり、どこにいっても年収1000万、2000万稼げるエンジニアになっていたら、それこそが一番のセーフティーネットではないでしょうか。

ーーでは、「どこにいっても年収1000万、2000万稼げるエンジニア」になるにはどうすれば?

澤円さん

及川:先ほど、「キャリアアップよりスキルアップだ」と申し上げたとおり、自分の経済的な人材価値を高めるにはふさわしいスキルが必要です。自分のスキルのベンチマークとして、定期的に「今の自分に適切な年収」を考えてみると良いでしょう。

澤:ファイナンスに強くなるのは大事ですよね。心配ごとのない環境にいてこそ、クリエーティビティーも湧いてきますから。

及川:それから、テクニカルスキルだけでなく、人と関わるために必要なスキル、ソフトスキルも高めることです。

たとえエンジニアであっても、よほどの天才でない限り、技術一辺倒では真に優秀とは言えません。コードの向こう側にいるユーザーを理解し、チームメンバーとコラボしながらプロダクトの価値を高めるのがエンジニアの仕事だからです。

逆に言えば、こうしたソフトスキルをしっかり育てておけば、どんなふうに時代が変わろうともちゃんと稼いでいけるエンジニアになれるのではないか、というのが私の意見です。

澤:確かにそうですね。加えて、変化に強いエンジニアになりたいなら、「べき」「難しい」、この二つの言葉を使わないことも大事かなと思います。

ーー単純に、「べき」「難しい」と言わないようにすればいいということですか?

澤:はい。それが、自分の悪い思考のクセを取っ払ってくれると思うので。

例えば、いつも「~~~するべき」という言葉を使っていると、その他の選択肢が「べきではない」と排除されやすくなります。排他的な考え方になってしまうんですね。

それに対して、「私はこうする、こうしたい、これを選ぶ」という考え方にしていくと、変化に強くなれるだけでなく、自分と違う考え方をする人に対しても寛容になれるわけです。

澤円さん

加えて、「難しい」というのも自分の可能性をとざしてしまう言葉です。何か課題が目の前にある時に、「これを解決するのは難しいよね」「この問題は難しいね」などと言ってしまうと、それで終わってしまう。

「難しい」ではなく「どうやったらできるかな」を口癖にするだけで、状況がいい方にどんどん変わっていくと思います。

実際、何かを成すのが難しいことはありますが、せめてそれを口に出すときは「どうやったらできるかな」にする。

こうすることで、自ずとアイデアを出そうとする思考に切り替わりますし、周りで聞いている人から「こういうやり方があるよ」というアドバイスが得られるかもしれません。

こんなふうに、まずは普段使う言葉を意識的に変えてみると、それにつられて思考パターンが変わります。今すぐに実践できるコツですから、ぜひトライしてみてください。

ーー思考パターンが変わると、人生を楽しみやすくなりますよね。他にも、「変化に強い自分」になる方法はありますか?

澤:忙しいときでも、人を助けることを意識するといいと思います。

以前、ある脳科学者が面白い研究結果を発表していました。いわく、自分が忙しい時に他の人の仕事を手伝ったり、助けたりする人ほど、作業効率がいいのだそうです。

他の人の仕事までやるというと、何だか効率が悪い気がしますが、実はそうじゃない。

人を助けると、そのあとで「お返し」として助けてもらいやすくなるし、助けを求めやすい心理状態にもなって、自分が苦手な部分などを人が補ってくれる環境ができていく。

長い目で見て、作業効率が上がるそうなんですよね。

ーーなるほど、使う技術や環境が変わると、どうしても「新しい苦手」が出てくるかもしれない。そういう時に人に助けられやすい人ほど、変化にも強いと。

及川:不得意分野があることや、それに対して人に助けられることを恥じたり恐れたりしないでほしいですね。失敗してボコボコにされても凹まずに、むしろ成長のチャンスと捉えるくらいがいい。

変化に巻き込まれる側に限らず、変化を起こす側にとっても、現代は毎日が未知との遭遇です。ときには失敗もするでしょうし、先人たちから厳しい指摘を受けることもあるでしょう。

特に、最近のIT業界はオンラインやテキストでのやり取りが多いため、単純な指摘でもついきつく感じるものです。でも、それらにいちいちやられていたらメンタルが持ちません(笑)。失敗も指摘も「学びにはつなげるが、次に行く」と割り切る心も必要ですね。

生涯技術屋の共通点は、人を喜ばせる天才?

ーーではここからは、視聴者からいただいた質問にお答えいただきます。まずは、エンジニアとしてセンスを磨く方法についてです。こちらは先ほど、澤さんからアドバイスがありましたが、さらにくわしく教えていただけますか?

澤円

澤:センスを磨く方法は、二つあります。一つは日頃からきちんと自分の考えや取り組みなどをアウトプットすること。発信すれば、必ず何らかのフィードバックが得られます。

賛否どちらであれ、違った視点での解釈を知ることができる。殻に閉じこもっているとどんどん意固地になり、センスが磨かれずに硬直化していきますから、アウトプットとそれに伴うフィードバックの受容は積極的に行ってほしいです。

もう一つは、アウトプットするアイデアがなくても、誰かに対して「ポジティブな」フィードバックをすることです。欠けている部分を見つけるのは簡単ですが、良い点を見つけるのは意外と難しい。

けれども、良い点をうまく見つけて相手に伝えれば、相手のモチベーションが上がり、チームとして向上していく。センスはコミュニケーションの中で磨かれていくものなので、こちらも積極的に取り組んでいただきたいです。

及川:引き出しを増やすのも大切ですよね。過去の経験を切り売りしているだけではやがて枯渇してしまいますから。

呼吸と同じで、アウトプットとインプットは両方がそろって初めて成り立つ行為です。まずはアウトプットするから、インプットがはかどる。

今や社外コミュニティーも活発ですから、ときには会社の垣根を超えて、多様性のあるタッチポイントでアウトプット・インプットをすることがセンスを育てることにつながるはずです。

——次の質問です。「生涯技術屋」として活躍されている人と聞いて、お二人が思いつくのは? 経営、管理の仕事にまわるのではなく、長く現場でコードを書いていらっしゃるような。

澤:お二人とも経営者ですけど、ウルシステムズの漆原(茂)さん、アステリアの平野(洋一郎)さんがパッと浮かびますね。会社経営もしているけれど、今だにコーディングもしているスーパーマンです。

彼らに共通する特徴としては、コミュニケーション力が高く、人を喜ばせる天才という点ですね。

ーー生涯技術屋を貫ける人、その他にも特徴はあると思いますか?

及川:強いて言うなら、「優秀」なことでしょうか。エンジニアとして成長し続け、なおかつ人とうまくコミュニケーションができる。そういう人は、優秀ですからね。

ただ、いくら優秀だったとしても、エンジニアが一人で発揮できる価値は限られています。大企業の管理職ともなれば100人とか500人を束ねて売上を作っている人もいて、そのチームに匹敵する成果を一人のエンジニアがあげることは不可能ですからね。

それでももし、バリバリのインディビジュアルコントリビューターとして今後もやっていこうと考えるなら、その人にしかできない複雑なシステムを作るとか、マネジャーではないけれど若手のエンジニアたちに技術者としていい刺激を与えるとか、業界内でも名の知れた人を目指す心づもりはあった方がいい。

例えば、Ruby開発者のまつもとゆきひろさんは今もコーディングをバリバリやっている、それこそ神のような存在です。

プレッシャーをかけるつもりはありませんが、彼のようになってやる、くらいの野望を抱いて「生涯技術屋」を目指すと、よりいいキャリアにつながっていくのではないでしょうか。

ーー次に、「Web3の時代にPM(プロダクトマネジャー)というポジションは必要とされなくなりますか?」という質問が来ています。

及川卓也さん

及川:Web3的な組織には、いろいろな人が入ってくるのでビジョン共有が大切です。プロジェクトに参加するそれぞれの人の役割を明確にし、トークンで報いる仕組みを設計しなくてはいけません。なのでそこにはやはり、PMが必要だと考えています。

Web3時代のPM“かくあるべき論”は、主に英語圏でいくつも記事が出ています。特にアーリーステージでは、UXリサーチをしてプロトコルの設計もして、チームマネジメントもする……あらゆる役割をこなすような動き方が求められる、と。

ーー指導者やリーダーのいない組織について、澤さんはどう考えますか?

澤:そもそも、Web3的なリーダー不要の組織を夢見てきたのは、現代人だけではありません。1969年の映画『イージーライダー』では、ジャック・ニコルソンが焚き火を囲み、テクノロジーが進化した世界について「戦争も通貨制度もない。指導者もいない。日常の生活が競争なしで満たされるだろう」と語るシーンがあります。

当時のアメリカはベトナム戦争で疲弊していて、若者はみんな絶望していた。でも、そんな現状を照らす希望こそがテクノロジーだったわけです。

「きっとテクノロジーが救ってくれる」「通貨も、指導者もいなくなる。みんながリーダーだ」これって、まさにWeb3の概念じゃないですか。

そして僕たちは今、コロナ禍や不安定な世界情勢が続く中でやはり疲弊している。これって、当時のアメリカのムードに似ていると思う。

目先のキャリア云々ではなく、「人は何のために生きているのか」を考えるステージに来ているのかもしれないですね。人間はもっと幸せに生きられるはずで、それを実現するのはテクノロジーであってほしい。今、そんな希望を感じています。

文/大橋 礼

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