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ゲームを「作る」から「面白くする」の間にある壁を乗り越えるには~CAゲームクリエイター奨学金プログラムレポート【2】

働き方

    小中高生に向けたプログラミング教育が注目を集める中、サイバーエージェントのゲーム事業に携わる子会社11社が所属するSmartphone Games&Entertainment(以下、SGE)事業部とプログラミング教育事業を行うCA Tech Kidsが昨夏より実施している『ゲームクリエイター奨学金プログラム』が一風変わった取り組みとして注目を集めている。

    約半年間、ゲームクリエイターを志す小学生を対象にゲーム開発のスキル(主にUnityでの3Dゲーム開発)やそのアイデア創出、プレゼンスキルなどを無償で教えていくこのプログラムには、世間のIT教育への期待もあってか数多くの応募があった。

    非常に高い倍率をくぐり抜け、2016年の奨学金プログラムに選ばれたのは、麻生俊くん(小6)、七丈直史くん(小6)、高橋温さん(小4)、菅野晄さん(小4)の4名。

    ゲーム開発のスキルを学ぶだけでなく、SGEの持つさまざまなリソース~開発チームが有する豊富な知識や開発環境~に触れながら、アプリリリースまで一連のプロセスを体験するこのプログラムでは、最終的に彼らが「21世紀を生き抜く上で必要となる力=自ら考え、自ら実現する力を身に付けられる」(CA Tech Kids談)ように、さまざまな配慮がなされている。

    ゲームクリエイター奨学金プログラムの奨学生に選ばれた4人と、彼らのメンターを務めているSGE事業統括室CTOの白井英氏

    ゲームクリエイター奨学金プログラムの奨学生に選ばれた4人と、アドバイザーを務めるSGE事業統括室CTOの白井英氏

    その学習の模様は昨年11月に一度弊誌でも紹介しているが(以下リンク参照)、レポート第2弾となる今回の記事では、昨年末に行われたゲーム制作現場の「見学ツアー」と、サイバーエージェント取締役副社長・日高裕介氏への「モックアップお披露目会」の様子を紹介する。

    >> ゲーム開発を通じて学ぶ「21世紀を生き抜く力」って何だ?~CAゲームクリエイター奨学金プログラムレポート【1】

    制作現場ツアーで知った「チームでクオリティを高める」ということ

    師走を前にしたある日の夕方、学校終わりに東京・渋谷へ集まった奨学生たち。普段は会議室で自ら企画したゲームアプリの開発に勤しんでいる彼らは、この日、実際にゲーム開発の現場を見学できるということで昂揚している様子だった。

    サイバーエージェントのゲーム子会社が入居しているオフィスと、イラストレーターや漫画家といったゲームに携わる各種クリエイターが働くオフィスを見学して回った4人は、

    ■ゲームアプリ開発の現場
    ■各種ゲームキャラクターの制作現場
    ■ゲーム内の効果音を作るサウンドクリエイター室
    ■他、マンガアプリ向けの漫画家がいるマンガ制作室

    を一通り垣間見ながら、“先輩たち”の仕事ぶりを学んでいった。

    エンジニアのオフィスを説明する白井氏

    エンジニアのオフィスを説明する白井氏

    参考資料としてたくさんの漫画・イラスト集が格納される本棚

    参考資料としてたくさんの漫画・イラスト集が格納される本棚

    ゲームキャラクターを描くクリエイターの仕事ぶりを見て興味を引かれる子どもたち

    ゲームキャラクターを描くクリエイターの仕事ぶりを見て興味を引かれる子どもたち

    効果音を制作するサウンドクリエイターに即興で音作りのお願いをする場面も

    効果音を制作するサウンドクリエイターに即興で音作りのお願いをする場面も

    それまでは、PCに向かいプログラミングに没頭する時間の多かった彼らにとって、特にキャラクター制作や効果音制作の現場は初めて目にする光景だ。いろんなツールを使ってゲームキャラクターを描いているイラストレーターや、即興でさまざまな効果音を紡ぎ出すサウンドクリエイターの仕事ぶりを見て、

    「一口に『ゲームクリエイター』と言っても、いろんな職業の人たちがいるんだと分かった」(麻生くん)

    「ゲーム制作はたくさんの人が細かく役割分担しながらやっているんだと知った」(菅野さん)

    などと感想を述べていた。

    「自ら考え、自ら実行する力」を養うという本プログラムの目的からすると、この見学ツアーはゲーム開発がチームで行われていることを体感できたという点で、非常に有益な学びとなったようだ。

    プログラミングは独りでも行えるが、何かしらのサービスを世に出すにはたいていの場合誰かと協力し合わなければならない。数多くのクリエイターが力を合わせることで、クオリティの高いゲームができ上がるということを小学生のうちに知ることは、本当の意味での「実行力」とは何かを知る上で貴重な体験になったはずだ。

    ちなみに、社員が家庭用ゲーム機などで遊べるゲームルームや、キャラクターデザインの参考資料としてたくさんの漫画・イラスト集が格納される本棚があったりと、遊び心のあるオフィスを見学したことで、「会社はお堅い場所というイメージがあったけど、こういうオフィスなら働くのが楽しそう」(七丈くん)という声も。

    未来のクリエイター候補が、社会で出て働くことにちょっとでも期待を持ってくれたなら、それだけでも大きな効果があったといえるだろう。

    「とにかくいろんな人に見せて、プレイしてもらうことが大事」

    そして、ゲーム制作現場の見学ツアーを終えた4人は、サイバーエージェント副社長で同社グループのゲーム事業を統括している日高裕介氏への「モックアップお披露目会」に入る。

    会議室で待っていた日高氏を前にして、奨学生たちは少々緊張している様子だったが、自身が企画・プログラムしたゲームアプリをプレゼンしていく。

    奨学生たちが開発したモックアップを見ながら、プレゼンを聞く日高氏(写真奥)

    奨学生たちが開発したモックアップを見ながら、プレゼンを聞く日高氏(写真奥)

    この日モックアップとして披露されたゲームアプリは、よりブラッシュアップされた形で2017年1月14日の『Kids Developer Pitch Winter 2017』(※開催情報は文末にて)で披露される予定だ。興味を持った方はぜひ会場を訪れてほしい。

    驚いたのは、プログラム期間中に奨学生たちのアドバイザーを務めてきたスマホゲーム『ポコロンダンジョンズ』を提供するグレンジ代表取締役の木下慎也氏や、SGE事業統括室CTOの白井英氏によるサポートもあってか、どのアプリも独創性に富んでいたこと。スマホゲームとして人気の「パズルもの」、「モンスターもの」、「タップ等のシンプル操作」といった要素を取り入れつつも、百人一首をテーマにしたゲームなどもありユニークな仕立てとなっていた。

    技術面でも、3Dフィールドを歩き回るような内容のゲームを開発しているなど、小学生とは思えないレベルのものが多かった。この日、4つのモックアップをプレイした日高氏も、それぞれの出来栄えに感嘆していた。

    最後に行われた奨学生4人から日高氏への質問会で、「ゲームクリエイターの年収はどのくらい高いのか?」といった現実的な質問も寄せられる中、同氏はこうメッセージを伝えて締めくくった。

    「ゲーム開発の世界は、誰でもヒットするゲームが作れる可能性があるし、ヒットすればたくさんの人に自分のゲームで遊んでもらえる。たくさんのお金がもらえるという点でも夢がある(笑)。でも、そのためには『面白いモノ』を作れなければダメで。じゃあ、どうすれば面白いモノが作れるようになるか?というと、とにかくいろんな人に見せて、プレイしてもらうことが大事。そこであった反応を見続けることで、何が面白くて、何が面白くないのかが分かるようになっていくと思うよ」

    ゲームを「作ることができる」ようになった後には、「面白くする」ための工夫が必要になる。そして、そのための経験知を得るには、いろんなユーザーの反応を見るのが近道なのだ――。そんな教訓を得た4人の奨学生たちは、プログラムの最後に行われる『Kids Developer Pitch Winter 2017』に向けて、さらに面白さを作り込むきっかけを得たようだった。

    プレゼンを終え、ホッとする奨学生たちとのワンシーン

    プレゼンを終え、ホッとする奨学生たちとのワンシーン

    さて、この『Kids Developer Pitch Winter 2017』が、いよいよ今週1月14日、東京のApple銀座で開催される。当日は4人が作ったゲームアプリのお披露目とともに、これからのゲーム開発で大切なことなどを自由に話し合うパネルディスカッションや、彼らが作ったアプリを実際に体験できるアプリ体験会も催される予定だ。

    今時の小学生たちが、どんな発想でゲームを開発したのかを見てみたいという人は、以下のリンクで詳細情報をチェックしてみては?

    >> 観覧無料! Kids Developer Pitch Winter 2017の開催概要はこちら

    取材・文・撮影/伊藤健吾(編集部)

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