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自己分析に役立つ「キャリア・アンカー」って? IBM戸倉彩さん推薦、VUCA時代でも納得のキャリアを築く方法

働き方

変化の激しい現代。特にIT業界においてはテクノロジーの進歩も早く、次から次へと新たな技術が生まれている。

「このまま今の職場で働き続けても大丈夫だろうか」「どんなキャリアを選択すべきだろうか」と悩むエンジニアは多いだろう。

そんな人に「まずは自分自身を正しく理解することから始めて」とアドバイスを送るのは、長くIT業界でキャリアを築いてきた日本アイ・ビー・エムの戸倉彩さん。

今回は、自身の価値観を明確にするおすすめの方法や、より良いキャリアを築いていくために必要な心構えについて、2022年10月8日(土)に開催された女の転職type主催の転職イベント内の特別セミナーの内容から紹介しよう。

プロフィール画像

日本アイ・ビー・エム
テクノロジー事業本部長 カスタマーサクセス部長
戸倉 彩さん(@ayatokura

2011年11月より日本マイクロソフトにてテクニカルエバンジェリストとしてマイクロソフトの公認キャラクター『クラウディア・窓辺』の「中の人」を担う。18年に日本IBMに入社、21年7月より日本IBM テクノロジー事業本部 第二カスタマーサクセス部長 兼 IBM Federated Developer Advocateを務める。「DevRel エンジニアフレンドリーになるための3C」(翔泳社)共著他

変化の激しいVUCAの時代。本当にやりたい仕事を選ぶためには?

現在は「VUCA(※)」の時代と言われている。

VUCAとは先行きが不透明で将来の予測が困難な状態と定義されており、身近な例では新型コロナウイルスのパンデミックや気候変動が挙げられる。

現代に生きるエンジニアたちは、変化の激しい社会情勢のなかでキャリアを構築しなければならない。

「初めて『VUCA』という単語を知ったときは、私も不安でいっぱいになりました。

ですが同時に、だからこそ乗り越えなければならないという気持ちにもなった。

VUCAの時代をポジティブに捉えると、答えのない問いに対し、柔軟性をもって自ら答えを生み出せる時代になったと言い換えることもできます。

この時代をエンジニアが生き抜くためには、環境の変化に適応し、自分自身もバージョンアップし続けることが大切です」(戸倉さん)

VUCA

自分自身を磨き続けるためには、目指す自分に近付けるようなキャリア選択をする必要がある。では、やりたい仕事を自ら選んでいくためにはどうしたらいいのだろうか。

「重要なのは、自ら情報を取りに行くことです。とはいえ、ただ闇雲に情報収集をすればいいというわけではありません。

自分に必要な情報を正しく把握するためにも、『自分を知る』ことが大前提になります」(戸倉さん)

(※)VUCA=V(Volatility:変動性)、U(Uncertainty:不確実性)、C(Complexity:複雑性)、A(Ambiguity:曖昧性)を合わせた言葉

自分の価値観を知る「キャリア・アンカー」

自分を知る方法はたくさんあるが、戸倉さんが推薦するのは「キャリア・アンカー」だ。

キャリア・アンカーとは、アメリカの心理学者エドガー・H・シャイン博士によって提唱されたキャリア理論の一つ。

個人がキャリアを選択していくうえで大切にしたい軸となる価値観や欲求・能力などを人生のアンカー(=Anchor、錨)として捉え、次の8項目に分類したものだ。

①専門・機能的能力
専門家としての能力を発揮したい。高い技能を身につけることに魅力を感じる

②管理能力
リーダーや管理職としてチームをまとめたり、出世することに充足感を感じる

③自立・独立
あらゆる場面で、自分の裁量で仕事のやり方やペースを柔軟に決められる組織や職種に惹かれる

④保証・安定
安定した仕事や報酬など安定性を最も重視する

⑤創造性
新しいことを生み出すことに楽しみや充足感を覚える

⑥奉仕・社会貢献
自分の能力を発揮できる仕事よりも人の役に立つ仕事に惹かれる

⑦純粋な挑戦
専門を問わず、挑戦が人生のテーマである

⑧ワークライフバランス
家族や社会のニーズとの調和を大切にする

キャリア・アンカーの診断では、20~40項目のシンプルな質問に答えていくことで、自分自身の中での上記8項目の優先順位を知ることができる。

インターネットで公開されている無料診断や、書籍に掲載されている診断を利用することで試すことができるので、ぜひ検索して診断してみていただきたい。

戸倉さん自身、実際に診断を受けてみて「自分が認識していた優先順位と診断結果のギャップに驚いた」という。

キャリア・アンカー

「診断結果を見て、今後のキャリアにおける時間の使い方などを見直すことができました

キャリア・アンカーの診断結果は、専門職と管理職のどちらを目指すか、といったキャリアの選択や、伸ばすべきスキルを検討する際のヒントになるはずです。

特に転職活動をしている方は、自分にとって譲れない条件は何なのか、応募を検討している企業や職業で求められる内容と自分の希望や適性が一致しているかなどを判断する材料になるでしょう」(戸倉さん)

また、誰かと診断結果を共有し、さまざまな角度から意見を聞くのもおすすめだという。

「私は診断結果を社内の同僚と共有し合っています。

オンライン雑談会のような場にこうしたネタをカジュアルに持ち寄ってみて、一人で考えていると深刻になりがちなキャリアについて、みんなで楽しみながら考えているというのもいいですね」(戸倉さん)

人や組織に依存せず、変化を恐れない

先行き不透明な時代。自分なりのキャリアを歩んでいくために必要な心構えについて、戸倉さんは次のように語った。

「少し厳しい言い方になりますが、大切なのは人や組織に100%依存しないことです。

自分でコントロールできない人やモノに依存すると、苦しくなってしまうこともあるかもしれません。シンプルに、自分の人生の主導権は自分にあるのだと考えておきましょう」(戸倉さん)

戸倉彩さん

そのうえで、「キャリア・アンカーの結果もうまく取り入れ、自分の価値観をしっかり認識しながら前進し続けることが大切」と力を込める。

「また、変化し続ける勇気を持つことも重要です。IT業界において活躍している方を見ていると、どんな状況においても臨機応変に対応し、あらゆる物事を楽ししむスキルを持ち合わせています」(戸倉さん)

ただ、「人や組織に依存しない」「変化し続ける勇気を持つ」という心構えをもってしても、不確実な現代社会でキャリアを組み立てていると、どうしても心細くなりがちだ。

「IT業界に飛び込んで20年、辛いこともたくさんあった」と言う戸倉さん。そうした状況の突破法について教えてくれた。

「まず、気の合う仲間と出会うこと。最近は、ネットなどで同じ志をもつ人たちが集まるコミュニティーの活動が活発になっています。

これを機に、社内外どちらでもいいので自分好みのコミュニティーを見つけてみましょう」(戸倉さん)

そうしたコミュニティーでの交流や家族や友人、同僚など、相談できる人を探しておくことで、不安は軽減していくはずだ。

「メンターを見つけて、自分の目指すキャリアはどうすれば実現できるのかアドバイスをもらうのもいいですね。

メンターは仕事上の利害関係のない、忍耐力のある方にお願いするのが望ましいです。最近ではエンジニアのメンターマッチングサービスも登場していますよ」(戸倉さん)

明確な答えのないVUCAの時代には、「自分で答えを出し、自分自身のキャリアに責任を持つことが重要」と戸倉さんは繰り返す。

常に学び続けることが必要となるエンジニアという仕事。「何を学ぶか」「どこで学ぶか」を選択するためにも、まずは自分自身の価値観を知ることから始めてみてはいかがだろうか。キャリア・アンカーなどを活用し、ぜひ納得のいくキャリアを歩むヒントを見つけてほしい。

文/まゆ

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