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コーディング業務が奪われたら…? AIと共存するためにエンジニアに求められるスキルとは【 カミナシ原トリ・10X石川洋資・ばんくし/聴くエンジニアtype Vol.22】
AI技術の進歩に関する相談に対し、「エンジニアに求められる役割」の変化について回答した前回。今回も引き続き、AIをテーマにトークを展開していく。
「AIがコーディングを担うようになった時、エンジニアはどんな知識・スキルを身に付けるべきか」を議題に、カミナシ・原トリさん、10X石川さん、ばんくしさんがそれぞれの考えを語った。
【MC】
M3, inc. Engineering Fellow
河合俊典(ばんくし)さん(@vaaaaanquish)
【Speaker】
株式会社カミナシ 取締役CTO
原トリさん(@toricls)
【Speaker】
株式会社10X Co-Founder, 取締役CTO
石川洋資さん(@_ishkawa)
【今回の相談】
AI技術の普及によって、誰もがコードを書ける時代がやってくると言われていますが、これからのエンジニアの役割はどのように変化すると思いますか?
それによってエンジニアが身に付けるべき知識・スキルはどのように変化すると思いますか?
AIとの共存が必須の世界、エンジニアが身に付けるべきは“AIとの”コミュニケーション力?
河合:前回も同じ相談に回答しましたが、今回は「コーディング業務をAIが担うようになったら」と仮定して、そのときのエンジニアに求められる知識やスキルについてお二方の考えを聞いていきたいと思います。
まずは石川さん、仕事でコードを書くことがなくなったら何をしますか?
石川:もしAIが抽象度の高い要件に対して具体的なコードを生成してくれるようになったら、「AIを使いこなすこと」に従事すると思います。
とは言え、抽象度が高い要件だけではプロダクトやシステムは成り立たないですよね。
例えば、一口に「税金を計算する」と言っても、端数処理や丸め誤差の問題が発生します。AIが生成したコードでそういった問題がきちんと処理されるかどうか、という確認はエンジニアの仕事として今後も残りそうですね。
『GitHub Copilot』が出てきた時、「コードが出てくる! すごいじゃん!」という第一印象だったんですが、直後に「どうしてAIが書き散らかしたコードをきれいにしなきゃいけないんだ」とも感じたんです。
AIに指示を出したり活用したりするタイミングを適切にコントロールできれば、頭を使わなくてもかけるようなコーディングに関してはAIに任せられるようになる。そうすれば、エンジニアとAIでうまく役割分担ができそうな感覚はあります。
ですが、「エンジニアはコーディング禁止」となってしまうのは「うーん……」と思いますね。
前回、ジェネレーティブAIの普及によって生じる変化について、ChatGPTの回答を引用すると「エンジニアとAIが共同で働くことに重点が置かれるようになる」という話が出ましたが、本当にその通りだと思います。
人間がAIにドキュメントで指示を出したり、AIと対話したり、いろいろなかたちで一緒にコーディングをしていくのが理想ですね。
河合:最近競技プログラミングのAtcoderが提供している『Atcoder beginner Contest』によると、AIの実力は水色くらい(※)という結果が出たようなのですが、これは使い手の知識にもよりますよね。
使い手のレーティングが赤だった場合どうなるのか、という話題がTwitterで展開されているのを見て、AIに適切な指示を与えるためには一定量の知識が必要だよな、と思いました。
コードが書けなくても、幅広い言葉を知っていてAIに適切な指示を与えることができる。そういうエンジニアも存在する世界になっていくのかなという気がします。
(※)コーディングのスキルレベルによって、上から順に赤・橙・黄・青・水・緑・茶・灰にレーティングされる
石川:知識の有無というよりも、プロダクトを成立させる上で何に困っているのか、きちんと言語化することが大事になっていくのかもしれないですね。
例えばあるシステムに「なぜか遅い」という問題があるとして、その内容をブレイクダウンして言語化しながらAIにぶつけていけば、いずれ答えにたどり着けるようになる気がします。
その問題をどれだけ理解できるか、どれだけあるべきかたちでシステムに落とし込めるかという部分に関しては、知識やスキルがあった方が圧倒的に早いとは思いますけど。
河合:知識やスキルがあるに越したことはないけど、AIとのコミュニケーション力があれば課題解決はできるかもしれないということですね。
石川:エンジニアではないけど、エンジニアリングの意思決定がプロダクトにどういう影響を及ぼすのかつぶさに聞いてくる人がいますよね。そういう人はAIをうまく活用できそうだなと思います。
河合:AIが生成したコードをあまり理解しないまま何となく実装してしまうと後々問題が発生しそうな気がしますが、人間側にコミュニケーション能力があって、AIがそれに応えられるようになってきたら、AIとの対話だけでモノづくりができる世界がきそうですね。
原:そんな世界がくる前に、「AIはダメだな」と言われるような期間が一度は訪れる気もしますね。
『ChatGPT』を使ってコードを生成してみると、要件・仕様をはっきりと言語化することの重要さを感じています。ですが、これからAIを使ってコードを書こうとする人って、たぶんその辺りに強くないケースが多いと思うんですよ。
なのでおそらく、『ChatGPT』の方が「こんな選択肢がありますが、どれを選択しますか?」と聞いてくれるようになる。でも、いちいち確認しながら進めるのってダルいですよね。それで、「AIはダメだな」と言われるようになる気がするんです。
石川:確かに、揺り戻しみたいなものはきそうですね。
コードやロジック、データというのは、かなり端的なアウトプットですよね。本来は端的なものであるはずなのに、AIを使うことでそのコードが正しいかどうか確認する作業が発生する。その結果、逆にコストが上がってしまうと、最初から練度の高いものを作ったほうが良いよね、ということになりそうです。
一時期、LPを生成してくれるサービスが乱立していたと思うのですが、ユースケースとしては少し限定的でしたよね。コードなしでサイトが作れる時代にはなったけど、フロントエンドエンジニア自体の需要がまったくなくなったわけではないですし。AIに関してもそれに近い変化が起きるかもしれないです。
河合:これまでも全自動でシステムを作るような流れが何度かきていますが、結局エンジニアリングの部分はなくなっていないですもんね。
石川:ただ実際には、僕らが認知できていないところでなくなっているものもあるような気がします。
さっきの例で言うと、サイトの制作者たちがまったく影響を受けていないかというと、たぶん受けている。エンジニアリングの中でも抽象度が高い部分を担当していると「仕事がなくなる、という状況はまだまだ先じゃない?」という所感で話してしまいますが、自分たちとは少し遠いところではAIによる変化が確実に起きているとは思います。
河合:これまでのノーコードって、ある意味抽象度が低いところからコードが生成されるイメージだったのですが、『ChatGPT』や『GitHub Copilot』は抽象度が高いところもサポートできる。そこまで全部をサポートしてくれるものって今までなかったですよね。
加えて、「Transformerの性能は三つの要素の“べき乗則”につながっていて、データやパラメータ数を拡大すればまだまだ精度が伸びる」という研究結果も出ている。
この2点から、『ChatGPT』などは精度の高いモデルがどんどん出てくるだろうと感じていまして。これから先が読めないという意味で、なかなか公で話しづらい話題なんですよね。
原:リモートワークで一緒に仕事をしていた人が「実はAIでした」という未来がきたら面白いですよね。
河合:同僚がAIに変わっていく中でエンジニアとして生き残っていくためにはどんな価値を出せばいいんですかね? 身体的な優位性とか、人間と対話することでしか得られない情報をきちんと処理できるかとか。人の気持ちを理解する知識やスキルになってきたりするのかな。
「まさにこれから」という気がするので、この場では答えが見つからない感じがします。
なので今回は、リスナーに向けて、直近3年くらいで「これをやっておけば良いかも」という意見を聞いてもいいですか?
原:ジェネレーティブAIの「自分なりの上手な使い方」を見つけることが大事だと思います。
加えて、企業の中堅~重要な役職に就いている人たちは、法的なリスクについても真剣に考える期間にするといいですね。直近1~3年くらいでAIを上手に活用する方法を身に付けておけば、その先めちゃくちゃ働きやすくなったり楽しくなったりするだろうなと思います。
石川:僕も原さんと同じで、基本的には「まず使うこと」が大切だと思います。その中で何がAIに任せられて、何が自分がやらなければならない仕事なのかということを認識するのが大事かな、と。
さらに、AIを活用することで生まれた時間を、今後のことを考える時間にあてられたら良いと思いますよ。
6月25日(日)『聴くエンジニアtype』公開収録を赤坂で開催!
ポッドキャストチャンネル『聴くエンジニアtype』初の公開収録を東京赤坂の会場で開催します。MCのばんくしさんをはじめ、澤 円さん、池澤あやかさん、小城 久美子さん、増井 雄一郎さんが、エンジニアから寄せられた仕事・転職・キャリアの悩みに回答。収録後には懇親会や、書籍サイン会も開催予定です!
※公開収録はエンジニアtype主催のテックキャリアカンファレンス『ECDW2023』の中のコンテンツとして開催いたします
【開催場所】
〒107-0052 東京都港区赤坂2-5-1 S-GATE赤坂山王ビル 5階
株式会社キャリアデザインセンター 赤坂山王オフィス
【参加費】
無料
※懇親会は15:30~30分程度の予定です
※懇親会への参加は自由です
【定員】
60名(先着)
【エントリー方法】
以下より詳細をご確認の上、エントリーフォームより必要事項をご記入の上エントリーください。
文/赤池沙希
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