開発×講師の二足のわらじが「技術力に自信がない」エンジニアだった彼女にもたらした激変【Ms.Engineer Mei】
エンジニアと一言で言っても、その業務内容は広い。
マネジメントやITコンサルティングなど、開発業務以外の分野で自分の強みややりたいことを発見する人もいる。
しかし、現場で手を動かす機会が減ると、技術者としてはマイナスな影響が大きいのではないか……そんな不安が頭をよぎり、仕事の幅を広げられずにいる人も多いかもしれない。
そんな人に知ってほしいのが、コーディングブートキャンプ『Ms.Engineer』で講師として活躍するMeiさんのストーリーだ。
現在は、Webサービスやシステム開発業務の傍ら、エンジニアになりたい女性やエンジニアとしてスキルアップしたい女性たちを育成、サポートする立場で働いている。
「講師の仕事を始めてからは開発業務にあてる時間は少なくなってしまったのですが、開発業務一本でやっていた時よりも、今の方がエンジニアとして長く働き続けていけるイメージが湧くようになりました」
そう言って笑顔を見せるMeiさん。彼女が、エンジニアとして長く働き続けていける自信を付けられたのはなぜなのか。「人を育てる」仕事が、Meiさんのエンジニアライフにもたらした影響について聞いた。
※本記事は姉妹媒体『Woman type』の転載です。
「自信のない自分」を変えたくて一念発起。学び直しで開けた「講師」のキャリア
── Meiさんは今、エンジニアリング業務と講師業を兼任されているんですよね?
そうです。女性向けコーディングブートキャンプ『Ms.Engineer』でWebサイトや予約システムをはじめとした社内開発と、『Ms.Engineer(基礎からフルスタック技術まで学習できるプログラム)』の講師業をそれぞれ担当しています。
今はプログラムが新しくなったこともあり、講師業の比重が大きくなっていますが、合間で開発業務を行ったり、プライベートでもアプリ開発を行ったりとエンジニアリングも楽しんでいます。
── Meiさんが『Ms.Engineer』と出会ったきっかけは何だったのでしょうか?
実は私、『Ms.Engineer』の卒業生なんです。
もともとWeb制作会社で働いていたのですが、触れる技術はHTMLとCSSくらいで。
「あなたは何ができるんですか?」と聞かれた時に自信を持って答えられるものが何もないな、エンジニアとしてできることの幅を広げたいなと思ったのが『Ms.Engineer』に通うことにしたきっかけです。
仕事と並行しながらスターターコースを受講して、5カ月後には休職してより実践的なブートキャンプコースへと進学しました。卒業後にはWeb制作会社に復職したのですが、その時に『Ms.Engineer』から「講師をやってみない?」って誘われて。
最初は業務委託で講師業務を手伝っていたんですが、だんだん『Ms.Engineer』の仕事がメインになっていき、Web制作会社を退職することにしました。
── 講師を手伝おうと思ったのはなぜですか?
もともと人に教えることは好きだったんですよね。教育学部出身で、教員免許も持っていて。塾講師なんかもやっていました。
自分が持っている知識や技術を分かりやすく伝えて、学んでいる人が「分かった!」とうれしそうな表情をしたり、どんどん知識を身に付けて成長したりしている姿を見ると、すごく充実感があるんです。
当時は『Ms.Engineer』は卒業したばかりでしたし、学びたての技術を人に教えることに不安はあったんですが、ワクワクの方が大きかった。
私自身、『Ms.Engineer』で学んで、どんどんできることの幅が広がっていく感覚が楽しかったので、この楽しさを伝えたかったんですよね。
エンジニアリング業務に関しては社内システムの開発にも携われますし、プライベートでも技術力を高めていくことはできるので、技術者としてのキャリアとも両立できるかなと思ったので、講師業にもチャレンジすることにしました。
開発に割く時間は減ったけれど、エンジニアとして長く働く自信は増した
── 講師としての経験は、エンジニアの仕事にどんな影響を与えましたか?
講師の仕事はコミュニケーションが中心なので、コミュニケーション力を高められたのはエンジニアの業務においてもプラスになったと思います。
相手が理解しやすいように話すとか、端的に伝えるとか。これにはテクニックが必要なんだなと、教えながら気付きました。
開発業務もチームで行うことが多いので、コミュニケーション力は欠かせません。
Ms.Engineerの社内システムの開発もチーム体制で行っていますが、うまくコミュニケーションを取れるようになったことで、プロジェクトもスムーズに進むようになったのを実感しています。
また、お客さまと円滑なコミュニケーションを取ることも、エンジニアの仕事の一つ。
Web制作会社で働いていた時に、お客さまに対して「もう少し勉強してくれるとありがたいんだけど……」なんて思ってしまうこともあったのですが、今思えばこちらが分かるようにお伝えしなきゃいけなかったんですよね。
講師として働き始めた今だったら、もっとクライアントワークの質も高められると思います。
── たしかに、コミュニケーション力はプレーヤーとしても生かせるスキルですね。一方で、兼業になると必然的にエンジニアリング業務の割合は減ると思いますが、スキルを維持していく不安はありませんでしたか?
たしかに、エンジニアは新しい技術を学び続けるのが大変という話はよく聞くので、プレーヤーとしての業務が減る分、しっかり技術をキャッチアップし続けないといけないなとは思っていました。
でも実際にやってみると、そんなに大変でもないというのが正直な印象です。
── なぜそう思ったのでしょう?
講師の仕事をする中で、技術トレンドは移り変わっていくけれど「基礎は普遍」だと知ったからです。
技術に流行り廃りはあれど、その根底にある技術の仕組み・基本をしっかり理解していれば、新しいものが登場したときの調べ方や情報のキャッチアップの方法が分かるので、今持っている知識をベースに、知識を積み上げていくことができます。
毎回ゼロベースから学ばなければいけないのではなく、学びはしっかり積み重なっていくもの。
この発見は、プレーヤーとしてずっとやっていける自信につながりました。
── 講師の仕事も始めたからこその発見ですね。
まさに。『Ms.Engineer』では、プログラミングを教える上で一つの答えを講師から提示するのではなく、受講生に自分で調べてもらうスタイルを取っています。
どうすればいいか分からないときは、理解を促す質問を投げ掛けて、それをヒントに調べてもらう。
そうすることで調べ方も身に付きますし、技術的な知識を習得していくための“考え方”を知ることができるようになります。
教える立場に立ったことで、この“考え方”への理解をより深められたので、自分自身が新しい技術を学ぶことへの心理的なハードルも下がりましたね。
── それまでは、新しい技術を学ぶハードルは高かったですか?
高かったですね。制作会社で働いていた頃を振り返ると、新しいことに着手したり、新しい言語を学んだりするのが苦手なタイプでした。
例えば、新しくスタートするテレビドラマを見始めるときに、「面白そうだけど、ちゃんと観ようと思うと気合いがいるな」って感じたことないですか? あれと近い感覚です(笑)
ただ今は、基礎を応用しながら学習していくための考え方や習慣が身に付いたので、新しい言語の習得なども積極的に取り組めるようになりました。
── 今はどんな言語を学んでいますか?
スマホアプリの開発で使う新しいプログラミング言語の勉強を始めました。
現在学んでいる言語は、私が普段受講生たちに教えている言語の代替を目的に生まれた言語なので、基本的な考え方は引用しつつ勉強できています。
受講生たちも、新しい勉強を始めるときってすごくパワーがいると思うので、新しい技術に取り組むときのマインドセットの仕方も自分の体験を通して教えられるといいなと思っています。
めぐってきたチャンスに身構えず、挑戦できるエンジニアでいたい
── 他にも、開発も講師業務も「両方やる」からこそ得られたものはありますか?
仕事のやりがいや充実感も増していますね。
エンジニアとしてプロダクトを育てていくだけでなく、人を育てていくことのやりがいは、すごく大きいです。これはエンジニアだけやっていたら、知りえない喜びだったなと。
一般企業でも後輩の育成に携わることはできるかもしれないですが、「エンジニアになりたい」「エンジニアとして成長したい」という強い意志を持って『Ms.Engineer』に集まってくれた女性たちが持つ前向きなエネルギーに触れられるのは講師だからこそ。
彼女たちと一緒に学びの場を共有することで、私自身のモチベーションもすごく上がります。
── Meiさんは今後、どのようなキャリアを築いていきたいですか?
講師業は、必要とされるのであれば続けていきたいと思っていますが、他にやるべきことが見つかったら、新しいことにチャレンジしているかもしれません。
ただ、ずっとエンジニアの仕事は続けたい。これがブレることはないと思いますね。
技術力はこれからの時代を生きていく上で強い武器だし、それを軸に仕事もキャリアもどんどん幅を広げていけるはず。
大切なのは、新しい技術や新しい仕事、めぐってきたチャンスに身構えずにチャレンジし続けること。
この姿勢さえ持ち続けていれば、身に付けた技術力を武器に、やりたいことを実現できるエンジニアでいられるんじゃないかなと思います。
取材・文/光谷麻里(編集部) 写真/ご本人提供
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