エンジニアtypeが運営する音声コンテンツ『聴くエンジニアtype』の内容を書き起こし! さまざまな領域で活躍するエンジニアやCTO、テクノロジーに関わる人々へのインタビューを通じて、エンジニアとして成長していくための秘訣を探っていきます。
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「若い頃は常にイライラしていた」カケハシ椎葉光行の今を作った“焦り”とは【聴くエンジニアtype Vol.45】
聴くエンジニアtype、今回からのゲストは株式会社カケハシのフルスタックエンジニア・椎葉光行(Mitsuyuki.Shiiba)さん。
まずは椎葉さんのキャリアの変遷とそれに伴う心境の変化について、MCのばんくしさんがじっくりヒアリング。「20代のころは常に焦っていた」と話す椎葉さんがリスナーに送るメッセージとは? 自身の成長に悩んでいる若手リスナー必聴の対談となった。
【ゲスト】
株式会社カケハシ フルスタックエンジニア
椎葉光行(Mitsuyuki.Shiiba)さん(@bufferings)
大学時代のアルバイトをきっかけにエンジニアとしてのキャリアをスタート。大手ECサービスの開発リード、組織サポート、CI/CDサービス開発のIndividual Contributorとして従事。2023年4月にカケハシに入社し、現在はフルスタックエンジニアとして新サービスの開発に従事している。 著書に『Jestではじめるテスト入門』(共著・PEAKS)
【MC】
エムスリー株式会社 VPoE
河合俊典(ばんくし)さん(@vaaaaanquish)
Sansan株式会社、Yahoo! JAPAN、エムスリー株式会社の機械学習エンジニア、チームリーダーの経験を経てCADDiにジョイン。AI LabにてTech Leadとしてチーム立ち上げ、マネジメント、MLOpsやチームの環境整備、プロダクト開発を行う。2023年5月よりエムスリー株式会社3代目VPoEに就任。業務の傍ら、趣味開発チームBolder’sの企画、運営、開発者としての参加や、XGBoostやLightGBMなど機械学習関連OSSのRust wrapperメンテナ等の活動を行っている
「プロダクト視点」を育てた楽天時代の経験
ばんくし:もともと椎葉さんとは面識があったのですが、ブログの「40歳を過ぎてもソフトウェアエンジニアを続けてるって話」という記事がとても良かったので、改めてお話ししたいと思いゲストにお迎えしました。まずは簡単に自己紹介をお願いできますか?
椎葉:カケハシという医療系のスタートアップでフルスタックエンジニアとして働いています。大阪の自宅からフルリモート中です。
大学在学中から知り合いの紹介でプログラミングのアルバイトを始めて、その流れで20代のうちは開発の仕事をしながらフラフラしていました。その後、30歳の節目に楽天に入社しまして、新サービスの開発部で開発や運用、ちょこっとだけマネジメントをしてまたエンジニアに戻って……最終的には11年間楽天で過ごしたことになりますね。
40歳を過ぎてからはCircleCIにIndividual Contributorとして入社し、ずっとコーディングを担当していました。が、入社してから1年ほど過ぎたころに突然レイオフされてしまって。そんな時にカケハシから声をかけてもらって、今に至ります。現在は新サービスの立ち上げに関わっているところです。
ばんくし:カケハシへの入社を決めた理由は何だったのですか?
椎葉:1番大きな決め手は、子どもができてからお世話になる機会が増えた医療領域で自分の力を活かして人の役に立てることに魅力を感じたからですね。あとは、新サービスの立ち上げを上から下まで全部見られるのが面白そうだったこと、アジャイル開発前提の会社でどんなことができるか楽しみだったことも理由です。
ばんくし:「自分が興味を持てるプロダクト」という部分が大事だったのですね。
椎葉:せっかくやるんだったら、楽しいと思えるプロダクトが良かったので。楽天のときもCircleCIのときも、「どうしたらユーザーがもっと喜んでくれるか」というところを重視していたのですが、その気持ちは今でも変わっていないです。
ばんくし:ユーザーがハッピーであることが椎葉さんのハッピーにもつながっているんですね。
椎葉:そうですね。カケハシで気に入っているのは、直接ユーザーさんの顔が見えて、その人の困りごとが解決できる点。今は薬局の薬剤師さん向けのサービスを開発しているのですが、ユーザーさんの顔が見えるからこそより良いものにしたいと思いますね。
ばんくし:椎葉さんって、めちゃくちゃエンジニアリングが好きな印象があるので、どちらかというと技術重視なイメージがあって。だから、プロダクトのことも重視されているという話を聞いてちょっと意外でした。
椎葉:確かに、言われてみると20代のころは技術重視だった気がします。そこから30歳で楽天に入って「常にユーザーのことを考えよう」というチームにいたことが、プロダクト重視になったきっかけかもしれないです。
当時のチームはサービスを開発して「リリースしたら終わり」ではなくて、「そこから運用が始まる」という考え方で。「ユーザーさんに使ってもらうためにどう良くしていくか」を常に考えていました。
「やりたくない仕事」でも楽しむ発想転換のコツ
ばんくし:楽天ではマネジャーもしていたとのことですが、マネジャーになったきっかけは何だったんですか?
椎葉:きっかけは当時の上司に「やってみないか?」と声を掛けられたことです。ただ、僕はコードだけ書いていたい人間だったのでマネジメントには興味がなかったんですよね。「マネジャーになっても今と変わらないよ」と言われたのですが、実際にやってみたら採用や評価、組織の話がいろいろ振ってきて。全然やること違うじゃん! って思いました。まあ、あれはあれで面白かったですけどね。
ばんくし:「面白かった」というのは、今振り返ると面白かったという感じですか? それとも当時から面白いと感じながらやっていたんですか?
椎葉:僕は基本的に仕事が辛い」と思うことがないんですよ。目の前にあるものを楽しむタイプなので、マネジャーだった時もそれはそれで楽しんでいたと思います。
ばんくし:新しいことにチャレンジするときに「楽しむこと」ってすごく大切ですよね。
椎葉:そうですね。楽しいともっと先が見たくなるから、もう一歩踏み込んでみようと思うじゃないですか。その結果、どんどん領域が広がっていく。マネジメントをやっていたときも、そんな楽しさがありました。
ばんくし:楽しむことがすごく大切だと思う一方で、自分が想定しない状況に陥ったときに、それをポジティブに捉えるのって難しいことだとも思うんです。そんなときに発想を転換するコツはありますか?
椎葉:仮にやりたくない仕事を任されたとしても、「嫌々やっていたら時間がもったいない」と思うんです。せっかくやるんだったら、楽しんで、うまくやって、さっさと辞めちゃおう……みたいな。だからこそ全力でやって、それが終わったら続けるのか辞めるのかを選ぶ方がいいかな、と。
ばんくし:なるほど。まずは目の前の仕事を片付けて、よりやりたいことを優先するということですね。
椎葉:加えて、嫌々やっていると目の前の仕事がどんどんしんどくなってきてしまうので、「楽しくやっとくか」という気持ちを持つことも意識しています。
ばんくし:椎葉さんのお話を聞いていると、ものごとをめちゃくちゃ長期的に見ていると感じます。何でそんな考え方ができるんですか?
椎葉:あまり高い目標がないからじゃないでしょうか。高い目標があると「これをやりたい」と強い意志が生まれたり、「自分はこんなことをやっている場合じゃない」とイライラしたりするじゃないですか。僕の場合は成し遂げたいことが明確にないので、目の前のことを一生懸命やるとか、一見無駄なことも「こういう時間があっても良いか」と思えるのかもしれないですね。
ばんくし:高い目標がないなんてすごく意外です。この業界で働く中で椎葉さんの名前を聴く機会が多かったので、すごく大きな目標があるんだろうなと勝手に思っていました。
椎葉:あるとしたら、「死ぬまでに良いサービスを作れたら良いな」くらいですかね。
ばんくし:その考えに至ったきっかけはあるんですか?
椎葉:子どもが生まれたことが大きいかもしれないですね。たぶん30代前半くらいまでは今よりもガツガツしてたと思うんです。「もっと早く成長したい」と。
それまでの人生は「自分が主役」という感覚だったんですけど、子どもが生まれてからは僕の中では子どもが主役。子どもを見守りながら緩く過ごすのも良いなという気持ちに変わっていきました。
ばんくし:それはすごく分かります。私も家族や子どもができてからは「子どもが大きくなった時の世界を良くしたい」という風に視点が変わって、長期的な視点を持つようになった感覚があります。
今の自分を作った「20代の頃の焦り」
ばんくし:30代前半まではもっとガツガツしていたということですけど、当時はどんなことをしていたんですか?
椎葉:勉強会によく参加していましたね。当時の職場の人たちには向上心がないように思ってしまって、勉強会で会う人たちと職場の人たちを比べてイライラしていました。「もっと良くできるのに何で努力しないの?」と思ったり、自分よりできる人たちを見て落ち込んだり。「もっとスキルアップしたい」と常に焦っていましたね。
ばんくし:その焦りはどうやって解消していったんですか?
椎葉:解消できなかったんですよ。だから常に焦っていたし、イライラしていました。当時はコードレビューでもかなりトゲトゲしていたんじゃないかな。
ばんくし:そのときの焦りやイライラが今の椎葉さんにつながっているんですね。
椎葉:かなり周りに迷惑をかけたとは思うのですが、そのときに必死で勉強したことは今につながっている感覚がありますね。
結果的に当時の上司にはかなりお世話になって、引っ張り上げてもらいました。だからもし当時の僕みたいなメンバーがいたら、その子が成長できるようにちゃんとサポートしてあげたいです。
ばんくし:まさに今、自分の成長に焦りを感じている人に向けてのアドバイスはありますか?
椎葉:焦りを追い風にしてガンガンいけば良いと思います。ただ、開発には周囲の協力が不可欠なので、周りの人を傷つけないやり方ができるのであれば努力して欲しいという気持ちも半分……と言いつつ、20代のうちならそんなことは気にせずガンガンいっちゃっても良いかなという気もします(笑)
次回も椎葉光行さんをお迎えし、お話を伺います。お楽しみに!
文/赤池沙希
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