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ビッグデータとは? 定義から具体的な活用事例、関連する職種まで詳しく解説!

IT用語集

ビジネスシーンでよく耳にするようになったビッグデータ。膨大な量のデータという認識はあるものの、詳しい定義や特性、具体的にどのように活用できるのかなど、なかなかイメージしにくい方も多いかもしれません。

ビッグデータは企業の競争優位性を確保するために欠かせない役割になりつつあり、エンジニアの仕事にも大きな影響を及ぼします。そこで、本記事ではビッグデータについて基本から詳しく解説したうえで、活用するメリットや実際の事例まで紹介します。ビッグデータに関連する職種についても紹介しますので、ぜひ参考にしてください。

ビッグデータとは

ビッグデータとは、その名前のとおり非常に大規模なデータ群のことを指します。これにはテキストや画像、音声、動画など多種多様なデータが含まれ、人間の力だけで全体を把握することは困難です。しかし近年のテクノロジーの進化により、ビッグデータの収集・処理が可能になったため、その活用方法が急速に進展しています。

ビッグデータの特性を表す五つの「V」

ビッグデータには、明確な定義は存在しません。しかし、次の五つの要素を高いレベルで備えていることが特性とされています。

● Volume(量)
● Variety(多様性)
● Velocity(処理速度)
● Value(価値)
● Veracity(正確さ)

もともとはVolume、Variety、Velocityの3Vで説明されることが多く、「大量で多様性に富み、高速で処理できる」ことがビッグデータの条件とされていました。近年では新たにValue、Veracityも追加され、データの価値や正確性もビッグデータの重要な特性とされています。

ビッグデータの分類

総務省では、ビッグデータを以下の4種類に分類しています。

オープンデータ 国や自治体が公開し、誰でも自由に利用できるデータ
知のデジタル化(産業データ) 企業のノウハウをデジタル化、構造化したデータ
M2Mデータ(産業データ) 生産現場などのIoT機器から収集されるデータ
パーソナルデータ 個人の属性情報や行動履歴、ウェアラブル機器から収集された個人情報を含むデータ

デジタル化の更なる進展やネットワークの高度化、またスマートフォンやセンサー等IoT関連機器の小型化・低コスト化によるIoTの進展により、スマートフォン等を通じた位置情報や行動履歴、インターネットやテレビでの視聴・消費行動等に関する情報、また小型化したセンサー等から得られる膨大なデータ、すなわちビッグデータを効率的に収集・共有できる環境が実現されつつある。特に、近年ビッグデータが注目されているのは、従来のICT分野におけるバーチャル(サイバー空間)なデータから、IoTの進展などを始め、新たなICTにおけるリアルなデータへと、あるいはB to CのみならずB to Bに係るデータへと爆発的に流通するデータ種別へと拡大しているためである。

総務省|平成29年版 情報通信白書|ビッグデータの定義及び範囲

このように、ビッグデータは行政、企業、個人をそれぞれ主体とするものに分けられます。

ビッグデータを構成するデータの形式

また、ビッグデータを構成するデータの形式には、次のような種類があります。

構造化データ 行と列の形式で整理されたデータ。整形されているため、容易にデータの検索・更新ができる。
半構造化データ 部分的に構造を持つデータ。XMLやJSONデータなど。整理すれば構造化データへ変換できる場合もある。
非構造化データ 特定の形式や構造を持たないデータ。テキストや画像、音声、動画など。検索や分析には高度な処理が必要。

ビッグデータが注目される理由

では、なぜ近年ビッグデータが注目されているのでしょうか。その要因を解説します。

データ量の増加

近年、インターネットの普及やモバイルデバイス、IoTの急速な発展により、データ生成量が爆発的に増加しています。また、SNSの投稿や動画配信サービス、オンライン取引など、日常生活やビジネス活動のあらゆる場面で収集できるデータが増えました。

この膨大なデータから、従来の手法では見つけられなかった新しい知見やトレンドを発見する可能性が広がり、ビッグデータを活用する重要性が増しているのです。

マシンパワーの強化

同時に、コンピューターの処理能力が飛躍的に向上したことも要因となっています。大量のデータを迅速に処理・解析するマシンスペックや計算能力が実現されたことにより、さまざまな分野でのビッグデータの活用が期待され、注目を集めています。

政府による環境の整備

政府によってビッグデータの活用を推進する方策が実施され、環境が整備され始めたことも注目される理由となっています。例えば、行政機関が保有するデータを積極的に公開するオープンデータの推進などです。こうした方策により環境が整備され、企業がより多くのデータを活用できるようになっています。

ビッグデータを活用するメリット

ビッグデータを活用することで、次のようなメリットが得られます。

明確に現状を把握できる

ビッグデータを分析することで、従来よりもクリアに企業の現状を把握できるようになります。例えば、顧客の購買パターンを把握するには、次のようなデータが必要です。

● どこを経由して来店(アクセス)したか
● どこに注目しているのか
● どの商品が閲覧・購入されているか

このようなデータを大量に収集・分析することにより、リアルタイムかつ精緻にパターンを把握できます。結果として、マーケティング施策の改善や、ユーザーニーズに合った新商品の開発などが可能になるのです。

高精度な予測が可能になる

過去のデータを大量に分析することで、将来の来客数や需要を高精度に予測できます。例えば、販売データを分析して需要予測を行うことで、在庫管理の最適化や業務の効率化を実現できます。また、機械の故障を事前に予測できれば、適切なタイミングでのメンテナンスを実施することも可能です。

顧客体験の向上につながる

顧客の購買履歴や行動データを分析することで、個々の顧客に最適化されたサービスや商品をレコメンドすることができます。また、顧客からのフィードバックをリアルタイムで分析できれば、迅速な問題解決やサービス改善につながるでしょう。顧客満足度が向上し、リピーターの増加やブランドに対する信頼性向上が期待できます。

ビッグデータの活用事例

次に、実際にビッグデータを活用した企業の事例を見てみましょう。

消費者行動の分析

コーヒー飲料を主力商品とする飲料メーカーのダイドードリンコ株式会社は、自動販売機における商品サンプルの配置の決定にビッグデータを活用しています。

これまでの消費者アンケートに加え、消費者が自動販売機で商品を購入する際に「どこを見て商品を認識しているのか」を表すアイトラッキング・データを分析することで、より精度を高めました。

分析の結果、これまで飲料業界で常識とされていた左上に人気商品を陳列する配列ではなく、左下に注力商品を陳列する配列に。これにより、売上が増加しました。複数のデータを組み合わせることにより、これまでにない知見を得られた事例です。

ダイドードリンコはコーヒー飲料を主力商品とする飲料メーカーである。データを活用することによって自動販売機にて飲料を販売する際の商品サンプルの配置を決定している。その際に、「アイトラッキング・データ」を活用している。アイトラッキング・データとは、被験者が実際の自動販売機にて商品を購入する際にどこを見て、商品を認識しているのかを表すデータである。これまでの消費者アンケート等のデータに加えて、アイトラッキング・データを加えたことにより、消費者行動に関するデータの種類を増やすことができ、分析の効果が上昇した。

総務省|平成27年版 情報通信白書|(3) 国内ビッグデータ活用事例

精緻な製造計画の策定

パンの製造・販売事業者である株式会社アンデルセンは、正確な製造計画の策定のためビッグデータを活用しています。製販一体体制をとる同社は、在庫リスクを抱えず、また売り切れによる機会損失を防ぐことを課題としていました。

そこで、POSシステムからの販売履歴情報と来店客数を関連づけ、商品の売れ行きパターンを予測できるANS(アンデルセンシステム)を導入。従来は店長の経験による推測で商品ごとの製造量を決定していましたが、ANSによってより精緻な製造計画が立てられるようになりました。同時に店長の業務負荷を軽減し、属人性も排除しています。

出典:平成25年版 情報通信白書

発電機の設置場所の解析

デンマークに本社を置き、風力発電機の設計・製造・販売を行うVestas Wind Systems社。同社は顧客である風力発電事業者に対して、最適な風力発電機の設置場所を提案するためにビッグデータを活用しています。

天候や地形、潮の満ち引き、森林地図、衛星写真、気象モデルなどを利用して発電量を予測。さらに設置面積や環境、景観上の影響を考慮したうえで最適な設置場所を解析します。従来も同様の解析を行っていましたが、約3週間を要していました。しかしスーパーコンピューターや並列処理ソフトウェアの導入により、わずか15分で行えるように。

ビッグデータを最新の技術で処理することで業務効率化を実現し、よりタイムリーに的確な提案を行える環境を構築しました。

出典:平成25年版 情報通信白書

ビッグデータを活用する際の注意点

ビッグデータは非常に有益ではあるものの、活用する際には次のポイントに注意する必要があります。

セキュリティー対策をきちんと行う

ビッグデータには個人情報など機密性の高い情報が含まれる場合があるため、取り扱いには注意が必要です。不正アクセスなどによって情報が漏えいしないよう、データの暗号化やアクセス制御などのセキュリティー対策をしっかりと実施しましょう。

目的を明確にする

ビッグデータには非常に多くの情報が含まれるため、目的が曖昧だと期待した効果が得られない可能性があります。まずは何を達成したいのかを明確にし、分析対象となるデータの種類や期間を正しく設定しましょう。

長期的な視点をもつ

ビッグデータの活用は長期的な取り組みになるケースが多いです。データの収集・分析結果をもとにアクションを起こし、その結果からさらに改善していくというPDCAサイクルが必要になります。すぐに効果を得られないからといって頓挫させずに、調整しながら長期的に取り組みましょう。

ビッグデータに関連するエンジニアの職種

ビッグデータへの注目が集まると同時に、ビッグデータを扱える人材の需要も高まっています。ここでは、ビッグデータに関連するエンジニアの職種を紹介します。

データエンジニア

データエンジニアは、ビッグデータを活用するための基盤を構築・運用する職種です。データの収集や調整、管理も担います。大量のデータを扱うには必ずこの基盤が必要になることから、ビッグデータの活用には欠かせない存在です。データベースやSQLの知識、プログラミングスキル、セキュリティーの知識などが求められます。

AIエンジニア

AIエンジニアは、機械学習やディープラーニングの技術を用いて、ビジネス課題を解決するためのシステムやアプリケーションを開発する職種です。AIの学習にはビッグデータが欠かせないため、ビッグデータに深く関係する職種といえます。機械学習やディープラーニングの知識のほか、統計学や数学の知識、プログラミングスキルが求められます。

コンサルタント

コンサルタントは、クライアントに対してビッグデータ活用の戦略的なアドバイスを行う職種です。もしくは、ビッグデータの分析結果をもとにクライアントの課題を解決する提案を行う場合もあります。クライアントに最良の提案をするため、ビッグデータに関する専門知識はもちろん、コミュニケーションスキルやビジネススキルも求められる職種です。

まとめ|ビッグデータを活用して新たな価値を創造しよう

ビッグデータとは、人間の力だけでは処理しきれない非常に大規模なデータ群のことを指します。IoT技術やSNSなどの普及により収集できるデータ量が増加したことや、マシンパワーの増強、政府によるデータ活用の推進などの要因から、ビッグデータの活用が注目を集めています。

ビッグデータを活用すれば、企業は精緻な現状把握や将来予測、顧客満足度の向上などを実現することが可能です。競争優位性を確保するために、ビッグデータの活用は必要不可欠となりつつあります。

ビッグデータの重要性が高まると同時に、ビッグデータを扱える人材の需要も高まっています。とくにデータエンジニアやAIエンジニア、ビッグデータの知識があるコンサルタントなどの将来性は明るいでしょう。少しでも興味のある方は、ぜひ関連するスキルを習得してみてはいかがでしょうか。

文/江副杏菜 編集/エンジニアtype編集部

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