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メタバースとは? 定義の解説やVRとの違い、具体的な活用事例などを詳しく説明

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2021年に旧Facebook社がMeta社へと社名変更を行い、一躍脚光を浴びることになったキーワード「メタバース」。新型コロナウイルスの感染拡大によるテレワークの普及なども追い風となり、メタバースへの注目度は急速に高まりました。

しかし実は、メタバースという概念自体は1990年代に既に存在しており、決して新しいものではありません。

この記事ではなぜメタバースが近年注目を集めているのか、具体的な活用事例や将来性について詳しく解説します。この機会に改めてメタバースについて学び、キャリア選択の一助としてください。

メタバースとは

メタバースとは、「超越」を意味する「Meta」と「世界・宇宙」を意味する「Universe」を組み合わせた造語で、インターネット上の仮想空間のことを指します。メタバースの特徴は、アバターと呼ばれる自分の分身を介して、仮想空間上で現実世界に限りなく近い活動ができることです。

メタバースは最近生まれた概念だと思われがちですが、実は1992年に発表されたニール・スティーブンソンのSF小説『スノウ・クラッシュ』内に登場しています。2003年には世界初のメタバース空間『セカンドライフ』がリリースされました。

メタバースはまだ発展途上の段階にあるため、明確な定義は難しいとされています。人によって解釈が分かれるところではありますが、以下にメタバースの定義として代表的なものを紹介します。

総務省の定めるメタバースの定義(2023年)

総務省では、メタバースを「ユーザー間で“コミュニケーション”が可能な、インターネット等のネットワークを通じてアクセスできる、仮想的なデジタル空間である」とし、以下の性質を備えているとしています。

1.利用目的に応じた臨場感・再現性がある
2.自己投射性・没入感がある
3.(多くの場合リアルタイムに)インタラクティブである
4.誰でもが仮想世界に参加できる(オープン性)等の性質を備えている

総務省 令和5年版の情報通信白書

経済産業省の定めるメタバースの定義(2021年)

投資家マシュー・ポール氏が定めたメタバースの定義(2020年)

・Persistent(永続性)
・Synchronous and live(同期的)
・No cap to concurrent participants(同時接続数が無制限)
・Fully functioning economy(経済性)
・Both digital & physical worlds(デジタル・物理空間での体験の横断性)
・Unprecedented interoperability(相互運用性)
・Wide range of contributors(多様性)

メタバースとXRの違い

XR(クロスリアリティー)とは、VR(仮想現実)、AR(拡張現実)、MR(複合現実)など、仮想空間に入り込むためのツールや技術のことを指します。それぞれの技術を体験するにはVRゴーグルなどの専用デバイスが必要です。

それに対して、メタバースはあくまでも仮想空間のことを指し、専用デバイスがなくてもPCやスマホ、タブレットなどから利用できることがほとんどです。

メタバースが注目される理由

先ほども述べた通り、メタバースという概念自体は1990年代に既に登場しています。それではなぜ近年になってこれほどまでにメタバースが注目されるようになったのでしょうか? その理由を解説します。

VR機器をはじめとするテクノロジーの進歩

メタバースはグラフィックや通信技術などさまざまな領域の技術が複雑に絡み合っています。メタバースを活用したサービスは2000年代ごろから存在はしていましたが、技術的に未熟であり、なかなか普及に至りませんでした。

ところが近年コンピュータグラフィックスが飛躍的に向上し、仮想空間上にリアルな3D空間が作れるようになりました。加えて通信技術の進化によりユーザーの同時接続やスムーズな動作も可能になり、より没入感の高い体験ができるようになっています。さらにVRゴーグルなどのデバイスの低廉化も進み、さらに多くのユーザーが流入したことで、マーケット拡大につながっています。

コロナ禍におけるオンラインコミュニケーションの普及

新型コロナウイルスの感染対策として人同士のリアルな接触が避けられるようになり、オンラインでのコミュニケーションが一気に加速しました。特にテレワークが推奨されるようになったビジネスシーンでは、リアリティーのあるコミュニケーションを実現する手段として、メタバースを利用したバーチャルオフィスなどのサービスが注目を集めるようになりました。

オンラインコミュニケーションの需要が拡大したことをうけ、メタバース市場に参入する企業も続々と増えており、サービスや技術の向上に貢献しています。

NFT市場の拡大

NFT(Non-Fungible Token)とは、ブロックチェーン上での非代替性トークンのことを指し、デジタル上のアイテムに希少性と唯一性を付与することができます。さまざまなデジタル資産がNFT化できるようになったことで、現実とシームレスに連動する経済活動が可能になりました。

メタバース上での経済的な仕組みが整ったことで、企業はもちろん個人にもビジネスの可能性が広がり、さらなる注目を集めているのです。

メタバースのメリット

メタバースを活用するメリットとして、代表例を四つ説明します。

物理的な制約がない

パソコンやスマホ、タブレットなどのデバイスさえあれば、ユーザーは移動することなく仮想空間にアクセスできます。例えば遠方で行われるイベントに参加するには、チケット代に加えて交通費や宿泊代などがかかりますが、仮想空間上のイベントであればチケット代のみで参加が可能です。

サービス提供者にとっても会場の費用などをかけることなく、大規模なイベントを実施できる点はメタバースのメリットの一つです。

年齢やハンディーキャップなどの制約がない

仮想空間ではアバターを介して活動ができるため、これまでは病気や障害、年齢などを理由に楽しめなかった人でも、さまざまなイベントやコンテンツに参加することができます。例えば仮想空間上でサイクリングレースに参加したり、旅行や観光の疑似体験ができたりします。

新たなユーザー体験を提供できる

メタバースによって、ユーザーはこれまで感じたことのない新しい経験ができます。自宅にいながら好きなアーティストのコンサートやアート、トークイベントを至近距離で楽しめたり、実際に店頭で商品を選ぶように買い物体験ができたりします。他にも、異なる時代の暮らしを疑似体験したり、虫の目線になってみたりと、現実では絶対に不可能な体験をすることも可能です。

新たなビジネス創出のチャンス

総務省の「情報通信白書令和4年版」によると、2021年には4兆2,640億円だったメタバース市場は2030年には78兆8,705億円まで拡大すると予想されています。つまり、今後も多くの企業がメタバース市場に参入することが予想されており、それに応じて新しい技術やビジネスも続々と誕生するでしょう。

メタバース市場はまだ黎明期とされており、これから大きな波が訪れることがほぼ確実といえます。このことから、メタバース市場の拡大は企業にとって大きなビジネスチャンスといえるでしょう。

メタバースのデメリット

メタバースにはメリットが多くある一方で、デメリットも存在します。一つずつ見ていきましょう。

依存性が高い

技術の進化により、メタバースの没入感は非常に高く、刺激的な体験が簡単にできるのが特徴です。そのぶん依存性が高く、現実と仮想現実の区別がつかなくなる「ファントムタイムライン症候群」になってしまったり、現実世界での人とのコミュニケーションをおろそかにしてしまったりする危険性が示唆されています。

依存症のリスクを回避するには、プレイ時間を制限するのがもっとも有効です。ブロックツールなどでプレイ時間をコントロールすることが可能ですので、ぜひ活用してみましょう。

犯罪や不正への対策が未熟

メタバース市場はまだ過渡期ということもあり、メタバース内での犯罪や不正行為を明確に取り締まる方法がありません。誹謗中傷やプライバシー、著作権の侵害といったユーザー同士のトラブルや、なりすましや乗っ取り、不正利用などセキュリティー面におけるトラブルへの対策についてはまだまだ課題が多いのが現状です。

デジタル格差の拡大

メタバースによってデジタル格差が拡大していくことが懸念されています。そもそもパソコンやスマホ、タブレットなどのデバイスを保有していない人やデジタルに疎い人はメタバースにアクセスすることができず、人によっては不平等な状況になることもあるでしょう。

またメタバースの登場により、企業間の競争が激化することが予想されます。メタバースに対応する力の有無が企業の生死を分けるといっても過言ではありません。先進国の中でもデジタル化の遅れが深刻が日本にとって、メタバース市場の拡大は向かい風となる可能性があります。

メタバースの活用が期待される分野

現状メタバースは、テレワークを導入する企業やオンラインゲーム時のコミュニケーションツールとして活用されるのがもっともメジャーといえます。

その他、距離的な制約を受けずにリアルな体験ができる特性を活かして、エンターテインメント業界や不動産業界、旅行・観光業界、アパレル業界などでも広く活用されつつあります。

メタバースの活用事例

どのような場面でメタバースが活用されているか、具体的な活用事例をみていきましょう。

バーチャルオフィス

アバターを介して仮想空間上で同僚や上司とコミュニケーションが取れるのがバーチャルオフィスです。コロナ禍におけるテレワーク普及時に広く知られるようになりました。テレワーク時に感じがちな孤独の解消や、勤怠状況の把握のほか、物理的なオフィスを構える必要がないことから起業時のコスト削減などにも役立っています。

ゲーム

任天堂の人気ゲーム『あつまれ どうぶつの森』の世界は「アバターを操作して自由に行動でき、他の参加者と交流できる」「仮想の三次元空間」という条件を満たしているため、総務省や経済産業省が定めるメタバースの定義には当てはまっているといえます。一方で「No cap to concurrent participants(同時接続数が無制限)」や「Unprecedented interoperability(相互運用性)」などは満たしていないため、マシュー・ポール氏の定めたメタバースには当てはまっていません。

『あつまれ どうぶつの森』がメタバースといえるかは議論が分かれるところではありますが、あつまれどうぶつの森がヒットは、ゲームにおけるメタバース活用のきっかけとなったことは間違いないでしょう。

ライブイベント

コロナ禍は感染防止の観点で大型のライブイベントが軒並み中止・延期となったことから、メタバース上でのライブイベントが広く普及しました。メタバース上でのライブイベントは、距離の制限なくユーザーを集客できる点やリアルでは難しい演出ができる点などから、費用・時間的なメリットも大きく各アーティストがさまざまな工夫を凝らして開催しています。

代表的なものとしては、米津玄師さんや星野 源さんがフォートナイトというゲーム上で実施したバーチャルライブがあります。その他リアルなアーティストだけでなく、VtuberやVRChat上で活動するアーティストなどが会した音楽フェス「サンリオバーチャルフェスト」なども話題となりました。

バーチャルショップ

バーチャルショップとは、メタバース上でショッピングを楽しめる仮想店舗を指します。従来のECサイトのように、ただ商品が並んでいるだけでなく、お店の雰囲気や世界観を楽しみながらショッピングができる点や、スタッフと会話しながら商品を吟味できる点などが特徴です。

H&MやGUCCI、伊勢丹新宿など大企業も続々とバーチャルショップに参入しており、今後はメタバース上のショッピングモール「メタバースEC」などが増えていくことも予想されています。

婚活

少子化による人口減対策の一環として、メタバースを活用した婚活イベントを実施する自治体が増えています。もともとはコロナ禍によって出会いが減ってしまった人向けに開発されたサービスでしたが、アバターを介して異性と交流できる斬新性が話題を呼び、今後も広がっていくことが予想されています。

メタバース婚活を実施している自治体としては長野県茅野市や島根県出雲市などが有名です。

区役所での相談・申請手続き

東京都江戸川区は2023年9月、窓口での相談や申請手続きなどができる「メタバース区役所」を開設することを発表しました。現在は一部の課で実証実験を行っており、5年後をめどに全ての課で実施する予定となっています。障害や病気などで来庁するのが難しい人や、引きこもりの人などが同じように行政サービスを受けられることを目標にしています。

そのほか三重県の桑名市でも、大日本印刷と連携したメタバース役所を設置することを発表しています。

メタバースの将来性

先ほども述べたように、メタバース市場は現在黎明期にあります。今後は新しいプラットフォームやサービスの誕生や消失を繰り返しながら、メタバース市場はさらに拡大していくでしょう。

現在はエンターテインメント業界や旅行・観光業界、アパレル業界などB to C領域での活用がメインですが、今後はB to B領域でも活用が進むことが予想されます。

また将来的にはメタバースに関する法令やガイドラインなども整備され、セキュリティ面やモラル面などの安全性も確保されていくため、メタバース参入へのハードルも下がっていくでしょう。

まとめ:メタバース市場は急拡大。味方につけてキャリアの追い風にして

メタバースはユーザーがアバターを介してリアルな体験ができる仮想空間です。物理的制約や年齢・ハンディキャップによる制約を受けることなくゲームや音楽、ショッピングなどを楽しめるため、既に多くの場面で活用が進んでいます。

一方でまだまだ黎明期ともいえるメタバース市場は今後さらに拡大していくことが確実視されており、メタバースに関する技術を身につけることは将来のキャリアに役立つことは間違いありません。ぜひメタバースの動向に注目するとともに、キャリアの選択肢に入れてみてはいかがでしょうか?

文/赤池沙希

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