『カメリオ』のオープン・グロースハック
白ヤギコーポレーション
ビッグデータ解析やプログラミング、物理学から経営学など、あらゆる道を極めた者たちが集うハードコアなエキスパート集団。粗食に耐え、険しい山道も着実に上っていく白ヤギのように、苦難に負けず常に成長していく会社を目指す。2014年2月にローンチしたフォローメディア『カメリオ』をどうやって育てていくか模索中
『カメリオ』のオープン・グロースハック
白ヤギコーポレーション
ビッグデータ解析やプログラミング、物理学から経営学など、あらゆる道を極めた者たちが集うハードコアなエキスパート集団。粗食に耐え、険しい山道も着実に上っていく白ヤギのように、苦難に負けず常に成長していく会社を目指す。2014年2月にローンチしたフォローメディア『カメリオ』をどうやって育てていくか模索中
こんにちは、白ヤギコーポレーションです。われわれの開発しているフォローメディア『カメリオ』は、フォローしたテーマに関する重要なニュース記事やブログを高精度で自動収集してくれる、まったく新しい形の情報収集ツールです。
今年4月から始めた本連載は、非常に競争の激しい「ニュース・情報収集系アプリ」のジャンルで、我々の手掛けるフォローメディア『カメリオ』をどうすればスケールさせることができるのかを、日々試しているグロースハック施策を公開しながら読者と一緒に考えていく企画です。
毎回、『カメリオ』に関するデータを赤裸々に公開しつつ、脳味噌フル回転で考えた施策とその結果を紹介していきます。普通の企業なら絶対に公開しないであろうデータも思い切って公開し、グロースハックのノウハウ共有に一役買おうと思います。
前回の連載では、プロモーション用Webアプリ『シロくも』による急激な新規ユーザーの増加の副作用から、定着率が大きく低下した事をお話しました。
現在も『シロくも』からの流入が大きな割合を占めるカメリオですが、ユーザー層が大きく変わり、初期のアーリーアダプターからより一般ユーザーにシフトしてきています。そのような状態にあって定着率の向上は難しい問題でしたが、継続的なグロースハックの結果、定着率を3.5倍に高めることができました。
定着率向上を当面の目標に活動してきた中で、前回の壊滅的な結果にはチーム一同大きく落胆していましたが、以降の努力が明確な結果につながりました。
では、具体的にどうやってこれを達成できたのかをお話したいと思います。
投資元のインキュベーターであるMOVIDAに、DropBoxから国際製品部部長のデヴィッド・マンとデスクトップ製品部部長のジョッシュ・カプランが訪問すると聞き、お2人にお時間をいただいてサービスの内容やグロースハックについて意見交換をしました。
そこで得られたインプットは
・ サービス初期段階では、ユーザーを増やすことより継続して使ってもらうことだけに注力せよ
…特にこの段階においては、失うものが少ないので、「大いに実験せよ」とのこと。今しかできない、大きなサービスの変更を試し、何がユーザーに対して感度が良いのか把握していけるタイミングだ、とのコメントをいただきました。まさにカメリオが目指してきた方向性の正しさを改めて確認することができました。
・ DAFは現実の定着率を表していない
…毎日使うユーザーの数を増やすことは非常に大切だが、「定着率」を理解する上で、デイリーの利用率を追うこと、実際に定着しているユーザー数との乖離につながる。議論の結果、毎日使っているユーザーよりも3日に一度くらい使っているユーザーを計測した方がいいだろう、とのこと。
今回から、上記2つ目のコメントに学んで、初めにお見せした定着率も今までから少し変更を加え、「7日から28日前までのユーザーが過去3日以内に使ったユーザーの割合」で計算しました。
連載開始以降、定着率の向上のためにさまざまな施策を打ってきましたが、今回の大きな改善につながったポイントのハイライトをお話したいと思います。振り返ってみると当然のことが多い気がしますが、正しい発見とはしばしばそう見えるものです。大きく3つの改善ポイントがありました
1. 定量的な離脱ポイントの特定に基づくUX/UIの向上 – 主に5月後半からの伸びに寄与
2. 流入動線の整流化による、ユーザーの期待値の形成 – 主に5月前半までの伸びに寄与
3. プッシュ通知の強化 – 何度か発生した定着率の落ち込みを防止
3はプッシュ通知を送るサーバに問題があり、定着率の大きな落ち込みを招いてしまった(上記グラフの谷間)、と言うお話なので今回は割愛します。以下1.と2.について詳細に見ていきたいと思います。
カメリオで記事を読むためには、自分が好きなテーマを探す「検索」、カメリオのスタッフがユーザーにお勧めしているテーマから記事を読む「特集」、自分が気に入ってフォローしているテーマから記事を読む「フォロー中テーマ」という3つの行動導線があります。
そのそれぞれにどのようにユーザーがアクセスしたのか、6月頭の時点で定量化したのが下記の図です。
ここで言うxx%というのは、利用開始後3日間でその導線をたどったユーザーの割合です。例えばユーザーの81%が最初の3日間で1度は検索画面を開いていることになります。
前回までの分析で明らかになったように、利用開始3日以内により多くの記事を読んだユーザーは、その後の定着率が高いということでしたが、そもそもそれぞれの導線で記事を読んでいる人は全体の40%しかおらず、使い始めたユーザーの60%の人は記事を1つも読まずに離脱していました。
UI Scopeや、集中的なユーザーテストの実施により、アプリのコンセプトの伝わりにくさが露見しました。特に
● 利用開始前にそもそも何をするアプリかが伝わっていないため、利用開始と同時に何をしていいのか戸惑う
● 利用開始し始めても、なかなか自分でテーマを登録しようとしてもらえない
1つ目の問題に関しては、アプリログイン前に、コンセプトの説明を加えました。フォローメディアカメリオの目的、主要動線であるテーマ登録の使い方、そして後ほども説明するプッシュ通知許可の説明です。
これにより、入った時点でのサービスへの戸惑いを大幅に減らすことができました。
さらに、ログイン後の動線も大きく改良しました。前回追加した「ホットテーマ」ですが、これが自分の登録するテーマとごっちゃになって表示されていたため自分でテーマをフォローしたいと思うユーザーが少なかったのです。
試行錯誤の結果、「特集」(「ホットテーマ」から改名)をマイテーマと分離して表示、検索ボタンのデザインも向上しました。また検索中のオートコンプリートも導入し、テーマ登録までに起こる離脱を最小化しました。
長々と書いてしまいましたが、UX/UI改善による定着率の向上は、実は全体の半分くらいです。残りの半分は、どういう人が、どういう期待をしてアプリをダウンロードするのか? というところに落ちてきます。
カメリオでは、直接的には無関係の『シロくも』というプロモーションツールを使っています。ワードクラウドを作る面白い企画ですが、そもそもアプリを使いたいというユーザーではないため、ダウンロードしても「何これ?」となってしまうユーザーが多いということでした。
以前は作成されたワードクラウドをクリックしてカメリオのLPに飛んでもらっていたのですが、これだと使っている人はなぜそこに連れて来られたのかよく分からないわけです。
そこで、結果ページには大きくカメリオの説明を入れて、アプリに興味をもった人だけが流入するようにしました。
1. 定量的な離脱ポイントの特定に基づくUX/UIの向上は着実に結果を上げ、検索をする人の割合は9ポイント増加(81%→90%)し、検索からフォローする人の割合も5ポイント増えました(49%→54%)。
また、フォローして記事を読む人も9ポイントも増加し(40%→49%)、引き続き上昇傾向です。フォロー中のテーマから読まれる記事の平均数も3.7記事から7.1記事になり、ほぼ倍増したのです。
記事の閲覧数向上にはもう一つ大きな要因がありました。フォローしている記事は、他の導線から読まれる記事よりも、閲覧数が3倍ほど多いということです。さらに、フォローした記事を読んでいるユーザーは、「特集」から登録せずに記事を読むだけのユーザーより定着率が高いのです。
「特集」でのテーマの選択も試行錯誤を繰り返しました。テーマの数を増やすことで、大幅に効果を上げることが出来ましたが、その分手で選ぶ作業が大変になりました。自動化は最初Wikipediaのページビューを使って見ましたが大失敗、その後アプリ内でのフォロー数に基づくアルゴリズムが効果を上げ、現在は半分自動、半分手動での運用を行っています。
実はこれに加え、時の運も少しあったみたいです。カメリオが東洋経済やビジネスマンの間で読まれているブログに掲載されたことで、流入してくるユーザーの「質」が上がったのです。
また、6月、7月と名刺管理アプリとの連携を発表したこともあって、テーマで記事を追うニーズを持ったユーザーの流入がさらに増えたようです。
今回までの改善で大きく定着率の上がったカメリオですが、いまだ離脱や休眠するユーザーが多いのが実情。次回はそういったユーザーをどうやって戻って来させられるのか、にトライしたいと思っていますので、引き続きお楽しみに。
白ヤギコーポレーションでは革新的な情報サービスを提供することで「深く知ることで、生きることを豊かに」の実現を目指しています。
カメリオの面白さに可能性を感じ、開発に携わりたいと思ったエンジニア、デザイナーの方は是非お気軽に白ヤギコーポレーションにご連絡下さい!
【連載:『カメリオ』のオープン・グロースハック】
第1回:アプリ成長のカギ「KPI」を正しく設定するには
第2回:ユーザー定着率を高める「KPIの見直し」と「改善法」について
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