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『艦これ』フィーバーで目からウロコだったこと4つくらい書いてみる【連載:村上福之】

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    日々流れてゆく膨大な情報量の中からおいしいネタを敏感に察知し、ネット界隈を賑わせてくれるWeb業界の異端児・村上福之氏。同氏独自の経験と価値観から、「キャラ立ちエンジニア」の思考回路を紐解いていく。

    艦隊これくしょん』こと『艦これ』が、ネットを賑わしてけっこうな月日が立ちました。

    正直、僕はswfを逆コンパイルして少し解析したくらいしか、遊んでません。しかし、『艦これ』フィーバーはいろいろと目からウロコが出るような「気付き」があったので、適当に書いてみます。適当に。

    【1】ユーザーが増えても別にサーバを増やさなくていいこともある

    ブラウザゲームとして異例のヒットを飛ばす、DMM.com×KADOKAWA GAMESの『艦隊これくしょん』

    ブラウザゲームとして異例のヒットを飛ばす、DMM.com×KADOKAWA GAMESの『艦隊これくしょん

    『艦これ』は、一時期、ユーザーが増え過ぎてサーバが追い付かないというニュースがネット界隈を賑わしました。なかなか新規アカウントを作れなかったり、8月には抽選制になったりしていたようでした。

    【艦これ】新規着任希望者10万人待ち!? ユーザー数推移グラフ更新! 他雜談

    「新規アカウント抽選制」というのは、正直、僕らからすれば、目からウロコですよ。

    今まで、クラウドサーバの営業が、「一気にユーザーが増えてサーバを増やせなかったら、御社にとって大きな機会損失ですよ。機会損失を見逃すなんて、馬鹿なの? 死ぬの?」などと煽っていたのに、『艦これ』は機会損失しまくりでもユーザーが増えています。

    さらに、機会損失がもはやネタになっており、逆にユーザーの飢餓感を煽ったせいで、変にコミュニティが盛り上がったように見えます。

    今まで、ソーシャルゲーム業界は、サーバを必要とする分だけ供給していましたが、それが、いつでも正しいというわけではないのかもしれません。

    いわゆる「ビックリマンチョコ戦略」を思い出させます。

    僕らが子供のころ、ビックリマンチョコというシール付きお菓子が大流行していたのですが、製造元のロッテは、全盛の時代にはあえて「需要予測から微妙に足りない数」しか作らなかったようです。こうすることで、どこの店でもビックリマンチョコは売り切れまくりで、飢餓感を煽り、余計に人気に火がついたという戦略です。

    一方で、あまり課金を煽っていないゲームなので、ユーザーを増やしても、売上にそんなにつながらないから、まったりサーバを増やしているだけなのかもしれません。

    どちらにせよ、今までのように必要なだけサーバを供給するのが正しいかということについては、改めて考えさせられました。

    【2】モバイルゲームからすると、PCゲームの方が集客コストが安い?

    かつてガラケーでは、ソーシャルゲームはSNSの中で招待したりなど、バズらせる機能がありました。しかし、今やネイティブのスマホゲームになって、その様相が変わってきました。

    海外では、『Candy Crush Saga』などがFacebookでバズらせる機能になっています。LINEのゲームも、友だちにハートだのニンジンだのをよこせと言って、バズらせる実装になっています。または、招待コードを貼りまくるという方法くらいです。

    海外でパズドラ並みの人気パズルゲームとなった『Candy Crush Saga』

    海外でパズドラ並みの人気パズルゲームとなった『Candy Crush Saga』

    そういう枠組みでない時は、広告でブーストするしかないという高コスト体質になってしまいました。また、スマホのゲームの広告はどんどん高額化し、チキンレースになっているという非常に面倒くさい構造だなーと思っている今日このごろです。正直、広告にお金を掛けないと飯が食えないって、業界として手垢が付きすぎて面白くないですね。

    一方、PCのコンテンツはTwitterやFacebookやまとめサイトなどでバズる方法がある上に、今やバブル化したモバイルの広告に比べたら、コストが安いです。

    よくよく考えると、PCはモバイルに比べてURLを貼るのが非常に楽なので、バイラルで広まりやすく、本当に面白いコンテンツはPCの方が流行るのかもしれません。お金になるかどうかは別の話ですが。

    そういえば、先日流行った『Cookie Clicker』もPC向けで、どう見てもプロモーションにお金が掛かってないのに、いきなり流行りました(同時にものすごい勢いで飽きられた感も否めませんが)。あれも、4chanなどの掲示板やまとめサイトでバズった記憶があります。中途半端に広告にお金を掛けたスマホゲームよりも、面白くて、話題になれば、PCのほうが広まるように思います。

    そんなわけで、地上げのようにバブル化した、モバイル広告からすると、PCの方が集客コストが安いのかもしれません。

    【3】コンテンツは健全な方がバイラルしやすいよね

    『艦これ』が流行る前のDMMさんといえば、裸の女の子をクリックしまくるソーシャル18禁カードゲームが有名でした。正直、「これぞDMM!!」というゲームでしたし、エロかったですし、むちゃくちゃ広告を貼っていたように思います。

    そんなゲームの後に、『艦これ』みたいに、若干チラリズムありのほぼ全年齢対象みたいなゲームを、広告をあまり貼らずに推してきてびっくりでした。はい、まったく逆を行ってます。

    よくよく考えれば、18禁ゲームは、TwitterやFacebookなどのコミュニティで話題にすることはできませんし、まとめサイトも一歩内容を間違えると運営に消されそうですし、はてブもしにくいですから、バイラルしないですよね。

    【4】儲ける会社と作る会社が分業すると、健康的になるのかも

    角川の社長さんが「『艦これ』儲からない」という発言をして、物議を醸しました。

    「艦これ、ほとんど儲からない」角川歴彦会長が明かす

    この文章からすると、見出しの言葉だけクローズアップされていて誤解を生みそうです。つまり、『艦これ』は、IPとして今後ビジネスになるが、現在のゲームでは儲からない構造のようです。

    ゲームそのものは角川ゲームが作り、IPも角川が保持したまま、DMMさんが開発費を出す代わりに、角川がゲームで得られる利益がかなり少ないか、ほとんどないようなビジネス構造に見えます。

    角川もDMMも体力がありますし、角川もレベニューがもらえないから、ゲーム性がギスギスしてないように見えます。

    これが「DMMはお金を出さないし、開発費は自分でレベニューで稼いでね」というモデルでしたら、もっとゲームは課金でギスギスしていたかもしれません。

    そもそも、DMMのプラットフォームで『艦これ』は出てこなかったのではないかと思います。

    そんなわけで、今までの手垢の付いたモデルに対して、非常に気付きが多い『艦これ』でしたよ。

    >> 村上福之氏の連載一覧はコチラ


    【この記事を書いた人】
    株式会社クレイジーワークス 代表取締役 村上福之さん
    総裁ケータイを中心としたソリューションとシステム開発会社を運営。得意なことは空気を読まない発言。苦手なものは人付き合い。 休日は会う人がいないので、一日ネットをして過ごし、ブログなどで「死にたい」などを連発する優雅でセレブな休日をすごす。
    Twitter:@fukuyuki

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