アイキャッチ

「大事なのは健全な怒りと欲求駆動」DeNA南場智子さんに聞く、スキルが陳腐化しない人の生き方

働き方

    「前例のない時代」なんて言葉はもう聞き飽きた。メディアが騒ぎ立てる「新常識」も、いつか必ず廃れていく。

    世界はいつだって変化しているからだ。

    特にテクノロジーにまつわる産業は、ムーアの法則を例に挙げるまでもなく急速な変化を見せてきた。かつ、2007年に登場したスマートフォンしかり、この分野では既存のビジネスルールを一変させてしまうような「破壊的イノベーション」まで起こるのである。

    近年騒がれているウエアラブル、IoT、ロボティクスetc.の各種ムーブメントも、マーケットが盛り上がった先にはすぐまた次のフェーズが待っているだろう。

    だからこそ、これから就職に臨む学生から現役エンジニアまで、長い社会人人生を過ごしていくであろう多くの若者が知りたいのは、今後も変わり続けるだろうビジネス環境で生きていくための知恵ではないだろうか。

    そこで、家庭の事情で一度CEOを退任したものの、2013年に現場復帰を果たしたディー・エヌ・エーのファウンダー南場智子さんに、「変化の中を生きる」をテーマに話を聞いた。

    ※このコンテンツは、就職学生向け情報誌『就活type』(2014年12月2日発売予定)の巻頭企画「端境期の日本で就職するする君たちへ」からの転載となります。本誌情報は記事末尾にて。

    プロフィール画像

    株式会社ディー・エヌ・エー ファウンダー 取締役
    南場智子さん

    1962年、新潟県生まれ。津田塾大学を卒業後、マッキンゼー・アンド・カンパニー入社。90年、米ハーバードビジネススクールでMBAを取得、96年マッキンゼーでパートナーに就任。99年、マッキンゼーを退社してディー・エヌ・エー(以下、DeNA)を設立、代表取締役社長に就任。2007年には東証一部上を果たす。11年、家庭の事情で、代表取締役社長兼CEOを退任、代表権のない取締役となる(現任)。13年、本格的に現場復帰。昨年、初の自著となる『不格好経営』(日本経済新聞出版社)を出版

    変化を追い続けるフォロワーより、自ら事を成すリーダーたれ

    ビジネスの世界では日々新しいサービスが生まれ、続々とトレンドが移り変わっていきます。でも、そこにいちいち焦りを感じてはいけないと考えています。

    変化に乗り遅れまいとトレンドを追いかけようとすればするほど、フォロワーになってしまうからです。

    私たちは、常に世の中に変化を起こすリーダーでありたいと思って仕事をしてきました。実際モバイル・インターネットの世界で数々の新規サービスを立ち上げてきましたが、今後はネット業界以外の産業にもITを用いた変革が広まっていくでしょう。

    とはいえ、ITに精通していれば変革を創出できるのかといえば、そうではありません。

    テクノロジーによってできることの幅は劇的に広がっても、それは問題解決の手段でしかありません。自分たちの手で大きなうねりを起こしていくには、技術動向を追うよりも欲求ドリブンで物事を考えること、例えば日々の生活で感じる課題について、自分なりに考えることの方が大切です。

    仕事の「起承転結」を繰り返すことで、事を成す基本が磨かれる

    私は今、社内でヘルスケアなど複数の新事業を担当していますが、事業の発想はいつも身近な疑問から生まれています。夫が病気になって以来、「そもそも病気を予防するにはどうすればよかったのか」と真剣に考えるようになりました。

    これは一例に過ぎませんが、こうした日常の気付きを掘り下げ、解決に向けて旗を振るのが、リーダーシップなのだと思っています。

    少子高齢化にしても、財政赤字や環境・エネルギー問題にしても、今の日本は難問が山積みです。こうした問題について「なぜこんなことになっているのか」という健全な怒りを持ち、解決のために動くリーダーが、これほど求められている時代はありません。

    若い人には、社会の抱えるさまざまな課題に目を向けて、問題意識を持ってほしいと思います。

    その上で大切なのは実行すること。考えるだけでなく、いかにスピード感を持って、高いクオリティで実行できるかがカギです。ですから、まずは「事を成す」ための基本を身に付ける必要があります。

    解決したいテーマをどれだけ持っていても、実力が伴わなければ成功の確率は低い。実力を付けるには、チームが設定した目標に向かって、目先の仕事に全力で取り組み、確実に達成するというシンプルなことを繰り返すことが重要です。

    これを千本ノックのように続けていく中で、自分で目標を設定する力も、高度で複雑な課題を解決する力も付いてきますし、周囲の信頼も厚くなります。ただし注意したいのは、千本ノックの中味が、自分自身で「起承転結を回す仕事」であるかどうかです。

    極端な話、数億円単位のビッグプロジェクトで補助的な雑務を担うくらいなら、1人で会社の駐輪場の美化活動に取り組む方が学びは多いと思います。なぜ皆きれいに駐輪しないのか、解決するには何が必要か。そして、誰にどんな働き掛けをすれば直るのか。

    どれだけ小さな問題でも、必要な打ち手を導き出し、結果が出るまでやり遂げる。そうやって仕事の起承転結をひと通りこなしたら、次はもう一回り大きな起承転結を回していくのです。

    その繰り返しで事を成す力を磨いていった先に、リーダーとして人を巻き込みながら、大きなうねりを起こす機会が生まれるのだと思います。

    労働環境はもっと変わる。そこで求められる人材像とは

    2013年に本格的に現場復帰した南場さんが、復帰後に驚いた「変化」とは?

    2013年に本格的に現場復帰した南場さんが、復帰後に驚いた「変化」とは?

    これからは、環境や職場を選ばず結果を出す力が問われるようになっていきます。

    私は昨年仕事に本格復帰した際、エンジニアリングにおけるオープンソースコミュニティの盛り上がりに驚かされました。そこでは、エンジニアが自ら関心を持つプロジェクトを選んで参加し、コミュニティの人たちとコラボレートしながら有益なソフトウエアをたくさん生んでいます。

    この例に及ばず、実力のある人が組織に依存せずに活躍するという流れは止まることはないでしょう。

    DeNAにおいても、今ではリモートワークで働くスタッフも増え、また社外からプロジェクト単位で参加するメンバーも多くなっています。さらに米国企業の中には、マネジャーを置かないフラットな組織づくりを推進する企業も出てきています。

    こうやって労働環境が変わり続ける中で、組織の枠を越えてリーダーシップを取れる人の重要性はますます高まっています。前例がない状況の中であっても結果を出すには、「事を成す」ことの基本があるかないかが大きくモノを言うのです。

    だからこそ皆さんは、まずは仕事の大小を問わず起承転結を任される場に身を置いてほしい。そこで精進すれば、いずれどんな仕事でも、どんな環境でも、「あいつに任せれば大丈夫」と言われる存在になることができるでしょう。

    取材/伊藤健吾(編集部) 文/瀬戸友子 撮影/竹井俊晴

    [su_box_design title=”雑誌『就活type』とは?” text=”2007年に創刊した、就職活動に臨む学生に向けた就職情報誌です。「働くの本質を考える」を媒体コンセプトに、毎年1回の雑誌発刊と関連する就職イベントの開催を行っています。 2014年12月2日(火)発売予定の号では、今回紹介した南場さんのほか、ヤフー宮坂学氏やLINE森川亮氏、ライフネット生命保険の出口治明氏、元アップルジャパン山元賢治氏、ウォンテッドリー仲暁子さんetc.のトップビジネスパーソンへのインタビューのほか、さまざまな職業の312人に「働くことの意義」を聞く一大特集を準備しています。販売は全国主要大学の学生協ほか、大手書店にて(税抜276円)。 その他、就活向けのキャリアセミナー情報は、Webサイト『キャリアビジョンtype』でご覧いただけます。

    Xをフォローしよう

    この記事をシェア

    RELATED関連記事

    RANKING人気記事ランキング

    JOB BOARD編集部オススメ求人特集





    サイトマップ