Vol.325

自分を過小評価してない? 経験不足に悩むエンジニアのための劇的キャリア棚卸し術

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type転職エージェント キャリアアドバイザー 宮﨑果林

IT企業でシステム開発とQAエンジニアを経験。業務知識を活かして人に価値を提供できる仕事をしたいという思いから、『type転職エージェント』へ。エンジニアの気持ちが分かるキャリアアドバイザーとして、転職希望者の目線に合わせたカウンセリングを持ち味とし、多くのエンジニアからの信頼を得ている

転職好景気に乗り遅れる“自信のないエンジニア”の存在

2017年9月に求人倍率は2.36倍を突破し、08年に起こったリーマンショック以降、最も高い数値を記録(出典:厚生労働省『有効求人倍率(季節調整値)』)している。そうした転職市場の変化とともに、これまで競争率の高かった人気企業などにも転職しやすいという話が広まり、今こそ憧れの企業や職種に転職をしようと考えているエンジニアも多い。

「例えばエンジニアたちの間で人気だった社内SE職は、もともと各社で枠が少なかったことに加え、別のSIerで経験を積んだエンジニアたちが目指す、安定の転職先として競争率が高かったんです。でも今は、狭き門の代表格だった社内SEの求人も増えていたり、エンジニアの転職先の選択肢は確実に広がっています。これまでと比べて、目指すキャリアの実現可能性は飛躍的に高まっていると思います」

そう語るのはtype転職エージェントでキャリアアドバイザーとして3年のキャリアを持つ宮﨑果林さん。IT企業でシステム開発とQAエンジニアをしていた彼女は、自身の経験を元に多くの悩めるエンジニアの転職をサポートしてきた。

こうした転職市場の変化を背景に、一部のエンジニアが転職への意欲を見せる一方で、「そうは言っても」と自分のキャリアへの自信のなさから転職に踏み出せずにいるエンジニアも数多くいるという。

「自分の経験やスキルを過小評価してしまい、きっとどこも受からないだろうと想像して転職に踏み出せないでいるエンジニアの方も大勢いらっしゃるんです。特に二次請けや三次請けを行う企業に勤めていたり、テストや運用などの下流工程ばかりを何年も続けていたような方が、そういった思考になることが多い印象があります」

そんなエンジニアたちが前を向いて転職活動をスタートするにはどうすればよいのだろうか。また、転職のプロが考える正しい“キャリアの棚卸し術”とは?

3つの転職不安ケースに見る、ポジティブ転換の法則

宮崎さんによると、転職に不安を抱えるエンジニアからの相談として多いケースは以下の3つだという。

Case1:経験・スキルに一貫性がない

経験・スキルに一貫性がない

「SIerに勤めているエンジニアに特に多い悩みが、担当している案件がコロコロ変わって、経験やスキルに一貫性がないという内容です。

この前も、1年半ほどいろんな場所に転々と常駐している24歳の女性が相談に来ました。今のような働き方を続けたとして、5年後の自分が想像できないと悩んでいらっしゃいましたね」

こういった悩みを持ったエンジニアが相談に訪れた際、まずは求職者がどういったキャリアビジョンを持っているのか確認するという。そして、もし携わる案件の内容や期間を会社が調整することで、本人が望むキャリアビジョンを実現できるようであれば、上長への相談の仕方などについてもアドバイスをすると宮﨑さんは言う。

「現職に不満を抱える人の中には、自分のキャリアについて会社と相談したことがないという方が多いんです。転職で新しい道を探るのもいいですが、今の会社でもっとできることはないのか、それを求職者と一緒に探っていくのも私たちの役目なんです。

例えば現在の仕事内容が自身の思い描くキャリア構築とかけ離れているものであれば、どういったスキルを身に付けるために、どんな案件に携わりたいのかなどを上長と共有できるように、その相談の仕方などもアドバイスします」

一度は転職を視野に入れながらも思い切って上長に相談した結果、案件の種類などを調整してもらうことができ、今の会社に残留しながら理想のキャリアを目指せるようになったというケースも少なくないそうだ。

Case2:下流工程の経験しかない

下流工程の経験しかない

次に多いのが、監視や運用などの下流工程しか経験したことがなく、自分のスキルに自信を持てないエンジニアだという。

もともとは開発エンジニアになりたかったにも関わらず、会社の事業領域や状況によって、サーバーの監視運用しか経験できなかったというようなエンジニアは大勢いる。そして下流工程の経験しかないことを理由に転職をためらうエンジニアに対しては、まずそれまでの経験が無駄ではないということを説明するそうだ。

「上流工程を担当するためには下流工程のことも理解していなければいけません。ですから下流工程の経験を積むことができた今こそ、上流工程にチャレンジするタイミングなんですという説明をします。そうすると求職者の方も前を向けるというか、あとは上がる一方だと転職を前向きに考えられるようになるんですよ」

Case3:規模の小さい案件しか携わったことがない

規模の小さい案件しか携わったことがない

エンジニアが転職を躊躇している3つ目のケースは、携わってきた案件の規模の大きさを気にしているケースだと宮﨑さんは続ける。

会社によっては、規模の小さい案件しか扱っておらず、大型案件の経験を積める機会が少ないケースもある。内心ではもっと大きな案件に携わってスキルアップしたいと考えていても、今までチャンスに恵まれなかったことを理由に一歩を踏み出すことをためらってしまうことも多いそうだ。

「確かに案件の規模によってエンジニアに必要とされるスキルや経験は違います。でも大型案件を扱っている企業が、求職者に必ずしも同等規模の案件の経験を求めているかというと、そうとも限りません。どちらかと言えば、これまで経験はなくとも、なぜこれから大きな規模の案件をやりたいと考えているのか、その理由の方を重視します。

大型案件に携わることで、自分がエンジニアとしてどういった知識や経験を身に付けたいのかをはっきりと面接官に伝えられれば、これまでの経験の不足をカバーできることもありますよ」

いずれのケースでも共通して言えるのは、現職がどんな内容の仕事であったとしても、それが転職において“しない方が良かった”ということはない、ということ。せっかく積むことのできた経験をいかにポジティブな要素に転換できるかが転職成功の鍵になってくるのだと宮﨑さんは語る。

それって当たり前? 普段の行動に隠れたアピールポイントの探し方

転職のプロであるキャリアアドバイザーから見ると、自身の経験に自信を持てずにいるエンジニアでも、必ずアピールできる部分はあり、それまでの経験を3つの視点で整理することであぶり出すことができると宮﨑さんは言う。

宮﨑果林

「携わった案件の規模や業務の内容に関わらず、自身の経験とスキルと経験をしっかりと見つめ直すことができれば、きっと転職はうまくいくはずなんです。

私は必ず、前職でしてきた内容を『実績・取り組み・工夫点』の3つに分けて振り返ってみてくださいと伝えています」

宮﨑さんが言う「実績・取り組み・工夫点」とは、具体的にどういう内容を指すのだろうか。

「まず実績ですが、特に若手の人だと特筆すべき成果なんてないと感じる人も多いと思います。ですが、何も会社から表彰されたとか、業務の進め方を刷新したとか、そういったインパクトの大きいものである必要はないんです。

『マニュアルではこう書いてありましたが、こっちのやり方の方が効率的だと思ったので上長にエスカレーションしました』とか、そういうレベルの話でいいんですよ」

自ら能動的に発信し、何か形として残っているものがあれば、それを実績と呼んでいいと語る宮﨑さん。そして、取り組みや工夫点については以下のように続ける。

「例えばto doリストを作って優先順位の高い順に仕事をするっていうのは取り組みですよね。自分が業務をより円滑に進めるために、自分の意思でto doリストを作成したわけですから。

また、自分で業務のマニュアルを作って、一回教わったことは自分一人でできるようにしたなどは、仕事を進める上での工夫点になります。

業務を忘れないようにto doリストにまとめたり、初めての仕事でメモを取ることってみんなやっていますよね? そうした細かなことの積み上げで、その方の良さを効果的に伝えることができるんです」

宮﨑さんによると実績・取り組み・工夫点の3つは、普段きちんと仕事に向き合いながら働いてる人であれば、ほとんどが何かしらを行っているという。しかしながら、それがアピールポイントになることに気が付かない人は多い。

もし自分の経験やスキルに自信を持てずに転職への一歩を踏み出せないでいるのであれば、再度自身の行動を振り返ってみてはいかがだろうか? もしかしたら、これまで自分では当たり前のことと考えていた行動の中に、思わぬアピールポイントが見つかるかもしれない。

取材・文・撮影/羽田智行(編集部)

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