Vol.623

オイシックスドット大地のフードテックを支える、「アプリ開発×IoT」の“2足のわらじ”エンジニアの挑戦

オイシックスドット大地

有機野菜を中心とした食材宅配サービス『Oisix』は、2017年10月、同業の『大地を守る会』と経営統合を実施。「オイシックスドット大地」の新社名で再スタートを切った。

同社は、新しい本社オフィス(東京都品川区)にキッチンスタジオを開設。12月には、ここで「キッチンハッカソン2017」と題したHackイベントの第1回『Kitchen×Tech』がハンズラボ株式会社との共催で実施された。当日は、注目が続く「食×Tech」=フードテック領域に興味を持つエンジニアたちが集合し、ユニークな作品を生み出した。

そこで、このイベントの仕掛け人であるオイシックスドット大地のエンジニア、篠原弘光氏と、企画運営に携わった小川佐智江氏に話を聞いた。「食」にまつわるハッカソンを実施した意味とは? 新たな一歩を踏み出した同社で、現場エンジニアが今抱くオイシックスドット大地ならではのモノづくりへの思いとは?

オイシックスドット大地株式会社 
システム本部 フロント開発部 アプリ開発セクション
篠原弘光氏1991年生まれ。鹿児島工業高等専門学校を卒業後、大手SIerを経てWeb系ベンチャーでエンジニアとして従事していたが、個人的興味から電子工作にハマり、IoT縛りの勉強会『IoTLT』にも参画。そこでのLTがきっかけとなってオイシックスドット大地へ転職。現在は2017年7月リリースの100%内製Androidアプリ『おいしっくすくらぶアプリ』の開発・運用などを担っている。同社のエンジニアブログも精力的に執筆中。また本業の傍ら、IoTベンチャーのdotstudio,inc.でテクニカルライターを務めるほか、IoTエンジニアとしてインターネットと電子回路をつないだプロトタイプ制作を行い、イベントにも多数登壇

オイシックスドット大地株式会社 人材企画本部 人材企画室 人材スカウトセクション 小川 佐智江氏1988年生まれ。東京農業大学栄養科学科を卒業後、予防医療普及プロジェクトのインターンを経て、業務用食品卸会社へ就職。2015年、日本酒好きが高じて応募した「ミス日本酒(Miss SAKE)」コンテストで優勝し、全国各地、世界10カ国を巡り、日本酒のPR活動を行う。17年1月、オイシックスドット大地に人事として入社。現在は採用広報を中心に担当

オイシックスドット大地、初のハッカソンイベント開催

「きっかけは私も参画しているdotstudio,inc.が開催した『居酒屋×IoT』ハッカソンでの出会いです。同じチームにいたハンズラボの方と意気投合しまして、いつかフードテック系のイベントをやりましょう、と盛り上がったんです」(篠原弘光氏)

篠原氏

ハンズラボは、無数のキッチン用品を扱う東急ハンズから生まれた小売業特化型のITソリューション企業。食材のプロフェッショナル集団であるオイシックスドット大地とコラボをすれば、今までどこにもなかったような化学変化が起きるはず……そんな勢いで両者が自社に持ち帰り、互いに会社を巻き込んでいった結果、実を結んだのがキッチンハッカソン第1回『Kitchen×Tech』の開催だった。意外にも、オイシックスドット大地がハッカソンイベントを企画・主催するのは初の試みだったという。

「初めての取り組みですから、あえてテーマは絞り込まず、『毎日の食生活を豊かにするHack』ということにしました。技術領域も、モバイル、Webアプリ、IoT、AI、ロボティクス、フィンテック……と、なんでもありで。うまくいくかどうか、多少心配していたんですが、非常に面白い結果が出て、私自身も大いに楽しみました」(篠原氏)

キッチンメーカーなどハードウエア寄りのエンジニアをはじめ、デザイナーやディレクター、学生などが参加。総勢20数名が4チームに分かれてアイデアソンからハッカソンを行った結果、生まれたのが以下の4つのテーマだ。

●台所の洗い物が増えてきたらお知らせをしてくれるIoT
●調味料の使いすぎを自動で知らせてくれるトレー型IoT
●料理をしながらでも声やジェスチャーで、レシピ動画を楽々操作できるIoTデバイス
●レシート内容をデータベース化して管理し、食材の買いすぎを抑制するソフトウエア

先進技術を用いれば、一般家庭の台所でも今すぐに新しい機能を活かしていけることを証明する内容に、篠原氏も「途中から自分も参加したくなりました」と笑う。聞けば、オイシックスドット大地に転職するきっかけも、あるイベントでの出会いだったという。

キッチンハッカソン
2017年12月9日・10日に開催されたキッチンハッカソン開発中の様子。4チームが2日間かけて開発した後、各チームからの発表が行われた。結果、レシピ動画のジェスチャーセンサーが最優秀賞となったが、イベント趣旨としては賞を競うよりも参加者全員が交流し、楽しめることを重視した

趣味のIoT試作がフードテック領域へ踏み出すきっかけに

「もともと私はアプリ開発エンジニアとして働いていたんですが、前職時代、個人的興味から電子工作にハマったんです。ちょうどIoTというのがバズワード化し始めていた時期なので、夢中になって学習し、自分なりにいろいろ試作していました」(篠原氏)

そうして生み出した一つが漬け物センサー。浅漬けの漬け汁の塩分濃度を計測し、最適な漬かり具合になると知らせてくれる機能を持たせたIoTだった。このLTをたまたま聞いていたオイシックスドット大地のエンジニアと交流を持ったことをきっかけに、篠原氏は同社へ転職することになった。

「もともと食べることに関するものが大好きだったし、漬け物センサーを面白がって興味を持ってもらえたのは、うれしいご縁でした。ただ、当時はオイシックスという会社でエンジニアをやることに、今ひとつ具体的なイメージが湧かなかったのも事実なんです」(篠原氏)

今さら言うまでもなく、オイシックスドット大地は厳選した有機野菜を皮切りに、良質な食材の宅配EC事業で現在の確固たるポジションを築き上げた企業。当然、インターネットの存在がビジネスモデルの中核を成しているわけだが、これまではテクノロジーのイメージよりも、優良食材を扱うサービスブランドの方が浸透してきた。

しかし、大地を守る会との経営統合決定から社名をオイシックスドット大地に改めた今、同社はフードテック分野での躍進も目指している。エンジニアの活躍できるチャンスを急ピッチで拡大しようという流れの中での篠原氏の入社だった。

おいしっくすくらぶアプリ
篠原氏がメインで開発しているAndroidアプリ『おいしっくすくらぶアプリ』。同社のエンジニアブログにて、アプリ開発の裏側を紹介している

「入社以来、メインのミッションとして携わってきたのは100%内製Androidアプリ『おいしっくすくらぶアプリ』の開発・運用です。もちろん、こうしたメインの事業に直結する部分でもどんどん実績を上げていきたいと思ってはいますけれども、今回のキッチンハッカソンだけでなく、新しい試みをどんどんしていきたいと思っているんです。エンジニアが楽しそうに仕事している組織っていいじゃないですか(笑)。そういう空気をもっともっと盛り上げていきたいんです」(篠原氏)

すると、今回のイベントの運営にも携わった小川佐智江氏もこう語る。

「先日も高島(宏平氏。オイシックスドット大地 代表取締役社長)が篠原に言っていたんですよ。『もっと、俺を困らせるくらいの提案をしてこい』と(笑)。キッチンハッカソンも篠原が自分から発案して持ち込んできてくれた企画ですが、こうした提案が社内の開発部門からどんどん生まれてくる方が健全だし面白いですよね。だから私も全力でバックアップしたいと思っています」(小川氏)

小川氏

人事部門にいる小川氏は、オイシックスドット大地が仕掛ける種々のイベント等の企画・運営へ主体的に携わっていく役割も担っている。ダイレクトな人材採用を目的に、というよりも、まずこの企業の魅力や強みを対外的に広めていくために参画するのだというが、本音の部分としてエンジニア人材の拡充は重要なミッションだという。

「食のECサービスが普及し、当たり前になってきた中、『Oisix』も『大地を守る会』もよりサービス体験や商品体験を高めていく必要があると思っています。例えば買い物体験をより楽しくするためのUX改善であったり、会社としてやりたいことやアイデアはたくさんあるんです。それを最速で実現していくためには、やはりエンジニアチームの強化が至上命題だと思っています。経営統合し、組織が大きくなってプレーヤーが増えている今だからこそ、スピード感はとても大事。だからこそ、さまざまな企画を通してこの会社が持っている技術的な可能性を世の中に発信し、仲間を増やしていきたいんです」(小川氏)

海外視察
2017年11月、篠原氏と同チームの増田氏は『KotlinConf 2017』への参加と、現地のフード関係企業の視察のためサンフランシスコへ。海外のテックカンファレンスの参加や現地視察の希望にも、会社は柔軟に対応してくれるという

「私自身は、“食”という生きている人すべてに関わる領域で何かしらバリューを出すことにとても意義を感じているし、それができたらエンジニアとしてもとても価値あることだなと思ってます。より多くの人が、より良い食生活を楽しめるサービスを提供する、というオイシックスドット大地のビジネスは、成功しても誰も不幸にしない。事業を拡大することに少しも罪悪感を感じることがないって、実はとても大事だなと思うんです」(篠原氏)

「食べる」という場面にテクノロジーを掛け合わせると、どんな楽しいことができるのかを、より多くの人に興味を持ってもらい、一緒に考えてみてほしい。それが篠原氏と小川氏の最も伝えたい思いだ。そして「それならば、こういうこともできるので、やらせてほしい」と声を上げるエンジニアが社内外から現れ、集い、ワクワクするような新しい展開が始まることを期待している。言ってみれば今回のキッチンハッカソンは“はじめの一歩”だ。

「私と同じように、食べることに興味津々なエンジニアって、結構いると思うんですよ。今回のキッチンハッカソンで確信できたんですが、今ある技術を持ち込むだけでも『食』はどんどん面白くなります。フードテックという分野も、オイシックスドット大地という会社も、良い意味でとても未成熟。だからこそ、アイデアでどんどん変えていける場なんですよね。社内でもIoTスキルアップMTGを週に1回のペースで行っているので、これから試行錯誤を重ねて、近い将来きっと社長を困らせるような大胆な提案をしてみせたいと思ってます」(篠原氏)

取材・文/森川直樹 撮影/柴田ひろあき

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