Vol.131

新しいスマホ広告『Kiip』を生み、世界のイノベーター50に選ばれたBrain Wong氏「突然の解雇で人生が変わった」

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新しいスマホ広告『Kiip』を生み、世界のイノベーター50に選ばれたBrain Wong氏「突然の解雇で人生が変わった」

ピンチはチャンスの入り口である。真のアイデアは逆境の中から生まれる。周囲が「ゴミだ」と言うプランこそ、大化けの可能性を秘めている。

成功したIT起業家やVCが半生を語る時、必ず出てくるこれらの知見を、すべて19歳という若さで体得していたシリコンバレーの起業家がいる。

スマホ広告の新しい形である「アチーブメント広告」を開発し、起業から3年後の22歳で米Fast Company誌「The World’s 50 Most Innovative Companies 2013」に選ばれた、Kiip創業者のBrain Wong氏だ。

kiipの公式日本語サイト
kiipの公式日本語サイト

Wong氏の生み出したアチーブメント広告とは、スマホアプリ内に専用のSDKを組込むことで、「何かを達成した瞬間」に広告を配信する仕組みだ。

例えば、ゲームのボスキャラを倒して面をクリアした瞬間や、フィットネスアプリを使って継続的にランニングを続けていると、ミネラルウォーターの無料交換チケットが配信される、といった感じだ。

ユーザーは、ゲームクリアなどの「アチーブメントモーメント」に広告主からクーポンやサービス特典が配信されるため、思わぬ“ご褒美”を受け取ることになる。一般的な広告配信システムよりも効果が高いのは、想像に難くない。

実際、アメリカではP&Gやペプシといった有名ブランドをはじめ、大小さまざまな企業がKiipを利用しており、KiipのSDKを導入して広告を配信するアプリは全世界で1100を超えている。日本でも、ローソンやYahoo! JAPANなどが採用し始めている。

中でも、国内最大手のネット企業であるYahoo! JAPANが今年7月末からKiipの広告配信技術を自社プロモーションに活用する取り組みを行うなど、急速に普及の足がかりを築いているのだ。

革新的なビジネスモデルは「傷心旅行」から生まれた

このYahoo! JAPANとの提携交渉で来日していたWong氏が、起業家育成プログラムを運営する『Open Network Lab』で行ったミートアップイベント「スマートフォン広告の革命児、Brian Wong成功の秘密」で語った半生は、実に興味深い内容だった。

『Open Network Lab』のミートアップで話すWong氏
『Open Network Lab』のミートアップで話すWong氏

タイトルにもあるように、エリートだけが持ち得る成功の秘密を語るかと思いきや、「起業のきっかけは前職をレイオフ(解雇)されたこと」、「Kiipのアイデアをプレゼンしても、最初はどのインキュベーターも入居させてくれなかった」など苦しんだ日々について話し続ける。

しかも、14歳で米コロンビア大学に入学し、18歳で卒業という秀才ながら、「最初のキャリアは11歳のころに始めたWebデザインの仕事。アントレプレナーになろうなんて考えていなかった」と笑いながら明かす。

そんなWong氏がどうしてKiipのような画期的なビジネスアイデアを思い付いたのか。そして、デザイナーから起業家としてどう成長していったのか。別日に行った単独インタビューを紹介しよう。

―― まず、「アチーブメント広告」の構想はどうやって生まれたのか、起業のいきさつを教えてください。

きっかけは、起業する前に働いていた『Digg(米で一世を風靡したソーシャルニュースサイト。2012年にBetaworksが買収)』をレイオフされたことだったんだ。

僕は大学を卒業後、「シリコンバレーで働きたい」とVCなどに売り込みをかけて、Diggでビジネスディベロップメントの仕事をさせてもらえることになっていた。でも、入社から約半年後の2010年6月、DiggがYahoo!に買収されるという話が持ち上がり、所属していたチームごと解雇されてしまったんだ。

僕はカナダ人で、就労ビザもままならない状態だったから、その後東南アジアに旅に出ることにした。そこで、多くの若者がiPhoneのゲームにハマッている様子を見て、アチーブメント広告のプランを閃いたんだよ。

―― もう少し詳しく、アイデアを閃いた時の話を聞かせてください。

なぜ彼らがこんなにハマっているのかを知りたくて、彼らの手元をずっと観察していたんだ。その時に気付いたのは、皆がゲームをクリアするのに必死で、画面の端にある広告は無視されていること。

そんな様子を見ながら、僕は「もしもゲームクリアの“ご褒美”として無料のクーポンなんかが表示されたらどうなるんだろう?」と考えるようになっていた。Diggにいたころ、広告の仕事もやっていたからだろうね。

このアイデアをずっと考え続けていたら、「アチーブメント広告」のプランを閃いて、すぐにシリコンバレーへ戻ったんだよ。

―― WongさんはもともとWebデザイナーだったということですが、Kiipの開発はどのように?

Diggにいた時一緒に働いていたエンジニアのCourtney Guertinに、「すごい広告配信システムを思い付いたから一緒に作らないか?」と声を掛けたんだ。だから開発したのは彼。今はKiipのCTOをやっているよ。

ただ、僕もHTML+CSSでモックアップを作ることはできたから、起業しようと決めてからすぐにデモを作って、ひたすら投資家に売り込んだよ。

今思えば、デザイナーのスキルは投資家へのプレゼン資料を作る時にもすごく役に立った。友だちに頼まれてWebサイトのデザインをやっていた10代前半のころは、起業なんて考えていなかったから、本当に偶然だね。

―― その後、現在のように多くの広告主やアプリ開発者がKiipを利用するようになるまでは順調でしたか?

いや、全然(苦笑)。

起業したてのころに立てた戦略は、まずディベロッパーが導入しやすいSDKを開発し、その後に有名ブランドに広告出稿をお願いし、いろんなアプリに採用してもらう、というものだった。

でも、はじめは誰も興味を持ってくれなかった。当時はオフィスもなかったから、シリコンバレーで名のあるインキュベーターに売り込んで入居させてもらおうと掛け合ったけど、どこも入れてくれなかったよ。

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