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SIのSEもベンチャーのエンジニアも10年後を考えて、リアルで主張する勇気を持とう【連載:TAIMEI】

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    小俣泰明(TAIMEI)

    NTTコミュニケーションズなどの大手ITベンダーでシステム運用やネットワーク構築の技術を磨いた後、面白法人カヤックでディレクターを担当。その後、2009年4月に上場企業の取締役に就任。2012年8月にトライフォートを共同設立、代表取締役Co-Founder/CTOに就任。スマートフォンアプリ・ソーシャル領域に特化した開発・運営を展開している @taimeidrive 

    エンジニアtypeをお読みの皆さん、はじめまして。トライフォートの小俣泰明です。この度、連載を持つことになりました。

    最近、僕はよく考えていることがあります。日本人の技術者ってすごく自分を主張しない人が多いなと。

    主張せずに言われたモノを作るって楽なんですけど、今後のことを考えると変わる必要があると思っています。

    だって今、『oDesk』を使えば5万円でモノは作れる時代になっていて、今後、移民を受け入れるとかのニュースも出ているじゃないですか?

    だから、言われたモノを作るだけではなく、個性を持って仕事に取り組むことのできるエンジニアが増えたらいいなと思って、初回のテーマを設定しました。

    編集担当の川野さんとお話ししながら、日本人エンジニアが前に出ること、世界に通用する日本人エンジニアが生まれるために、僕が必要だと考えていることをお伝えします。

    ただのPCオタクな子どもで、人と話すことも得意じゃなかった僕が「目的」を持って行動したことで、上場企業の取締役を経て、トライフォートを共同創業することができたんだから、皆さんもきっとできるはず!

    初回ということで、今回の文章は川野さんに代筆してもらっています。

    オンラインはオフラインの練習

    ―― PCオタクだったとのことですが、小俣さんはどんな子どもだったのですか?

    本当にただのPCオタクだったよ。MS-DOSとかWindows3.1とか大好きでいじってた。でも、悪ガキグループにも入ってたかな。

    中学校のころはファミコンが大好きで、悪ガキだと知らずに「ファミコンやろうよ!」って声を掛けたりしてたんですよ。そしたら「こいつ、ファミコンやろうとか言ってるキメぇw」って言われるわけ。結果、ファミ男ってあだ名がついたんだよね(笑)。

    正直、人と話すことも得意なタイプではなかったんだけど、やりたいことがファミコンだったから、一緒にやってくれる人を探してたんだよね。今みたいにオンラインでつながれる時代じゃなかったし。それが「目的」で、目についた人に話しかけてた。相手がたまたま悪ガキだったって感じなのかも。

    ―― 今は、オンラインが普及した影響で、楽にコミュニケーションが取れる時代になりました。

    うーん。オンラインって本当に楽なのかなぁ。僕はオンラインゲームけっこうやったし、SNSやチャット、ICQとかいろいろやってきたけど、そうした場でコミュニケーションできる人を探すって、顔が分からない分、発言の内容だけの勝負になる。その点はリアルよりも難しい位置にあるとも言える。だから、オンライン・オフライン難易度の差はさほどないっていうのが僕の考えかな。

    from Lisa Andres オンラインをリアルの練習の場所として考えてみる

    from Lisa Andres オンラインをリアルの練習の場所として考えてみる

    昔はオンラインがないから単純に引きこもりだったけど、今は引きこもってもネットの中で広がれるから逃げ道ができた。それはイイことだと思ってる。ITはリアルを活かすための道具だからね。

    オンラインでコミュニケーションが取れるのであれば、次はリアルでも言いたいことドンドン発言しようよっていうのが、僕の考え。ネットを練習の場としてとらえてみる考え方かな。

    エンジニア以外と話す機会を増やした方がいい

    ―― 今、メディアで取り上げられたり、職場で活躍している方の多くがネットでもリアルでも自己主張している人だと定義すると、小俣さんは自分の意見を主張していくべきだとお考えですか?

    そこは絶対に主張したり、外に出たりすべき。でも、最近良くないなと思うのが、エンジニアだけで集まる会みたいなのが多くなりすぎてることかな。

    自分と似たような人たちとばかりと会っていても、学ぶことよりも、ただその場を楽しむ方が多くなっちゃうから。もっといろんな人とコミュニケーションを取って、新しい発見や知識を吸収した方がいい。職種で区切って集まるのではなくて、全く別の人と会うのが重要かもしれない。

    ―― その考えはいつごろから?

    以前はめっちゃエンジニアの人たちとばっかり一緒にいたんだけど、「目的」があったんだよね。

    from Moyan Brenn 「目的」を持って勉強会に参加することに意味がある

    from Moyan Brenn 「目的」を持って勉強会に参加することに意味がある

    少し話が逸れるけど、僕はプログラミングがやりたかったからオタクになったわけじゃなくて。ゲームが作りたくてプログラミングを書いたのがキッカケ。プログラミングに詳しくなろうと思ったから、エンジニアの人たちとよく会ってたかな。実際、エンジニアと話すのって超楽しいんだけどね(笑)。

    ―― 近年、首都圏では技術勉強会も毎日のように開催されています。そこにも何か目的を持って参加した方がいい?

    うん。それは絶対持った方がいいと思う。

    何かサービスを作る時って2つのプロセスがあると思っていて。1つはテクノロジーが先にある考え方。つまり、技術からこういったサービスが作れるよね?っていう思考。もう1つが、世の中のニーズやシーズを感じ取って作り出す考え方。

    最近思うのが、(1)の技術側からサービスを考えるのって、イマイチなのかなと。

    だって、誰かが作ったプラットフォームのSDKやライブラリ使っている時点で、そのライブラリを作った人たちはサービスを予想しているから。先人の技術者がやりたいと思った作業を代行していることになりがちなんじゃないかと思う。

    一概には言えないけど、技術勉強会で話されている話は前者に意識が傾いてしまう可能性があるので、きちんと目的を持って参加した方がいいと思う。だから、エンジニアが思い付かないようなニーズ・シーズを持っている人たちと会う時間を増やす方が、思いもよらないサービスが生まれる可能性があると思ってる。

    僕が勉強会に参加している時も、8割くらいの人は目的が「有名なエンジニアの話を聞く」になっていた。これじゃ、何かを作りたいと思っていて、その手段として技術を習得するために参加している人と差が出ちゃうよね。

    勉強会やプログラミングは結局手段でしかなくて。目的が存在しないといけない。

    「目的」の見つけ方と成功の意味

    「目的」を持って何かを作るって本当に大事。1つ例を挙げると、前に面接した人が「僕、Webサイト作っています」って言ったの。その人はガンダムの身長とか型番とかのパラメータ表をまとめたサイトを作っていたのね。それで、プログラミングを覚えたと。社会人でプログラミングをやっていた人だったんだけど、その人すごく優秀だったなぁ。

    1度ビジネスという発想をなくして、「目的」を考えてみるのもいいかもしれない。絶対、何かが好きなはずだから。ゲームやSNSだったり、音楽、漫画。世の中には何でもある。

    そう考えると、「プログラミングだけ」を覚え続けたり、練習し続けたりする人って「目的」を立てるのが怖いのかも。自分で何か作って世に出すと批判的な意見も飛んでくるから。「何、そんなモノ作ってんの?」ってdisられちゃう。

    でも、「プログラミングだけ」を覚えている間は怒られないじゃん。そうした感覚が強すぎて「目的」を持つことがイヤになってるんじゃないかな。

    エンジニアって、仕事で「これを作ってください」と言われた方がすごく楽なんだよね。でも、精神的には楽なんだけど、本当のエンジニアとしての価値はないと僕は思ってる。成功もできないのかなと。

    ―― 小俣さんが考える価値や成功とは?

    エンジニアとしての価値は自分で考えたコードを書くこと。もちろんいろんなレイヤーが存在していて、イチから新サービスを作ることだけが成功だとも考えてないけどね。

    例えば、大規模サービスの1つの帳票画面を作るって話だとしても、一つの帳票画面を自分の発想やアイデアを入れてプログラミングをする人と、言われた通り、もしくは言われたものだけそのまま作る人がいる。ここの差って僕は大きいと思ってる。

    でもね、自分のアイデアを入れてみると先輩や上司から「何でそんなもの入れたの?」って怒られちゃうことがある。そういった経験があると、怖くなって言われた通りに動いてしまいがちになるんだと思う。

    ―― なぜ、小俣さんはエンジニアが怖さを克服することや、「目的」を持って動く必要があるとお考えなのですか。

    『oDesk』に仕事を奪われないために

    『oDesk』に仕事を奪われないために

    うーん。数年後の未来を想像してかな。

    今じゃカンボジアの人たちに『oDesk』で依頼すると月5万円くらいで雇えちゃうの。彼らは言われた通りには全然作れる。

    だから、日本人のエンジニアが価値を持つためには、言われた通りに作ることを卒業しなくちゃいけないと僕は思ってる。

    実は、超イケてる自分を知り、行動に移そう

    ―― 日本人エンジニアの今後を考えたときに、否定されることを怖がらずに、一歩踏み出すことが重要?

    うん。これ実際に僕がたくさん会ってるから分かってることなんだけど、自分の殻にこもってプログラミングばっかり勉強している人って、実は超イケてるエンジニアなんだよね。筋肉で例えると、自宅でもジムでも筋トレだけはすごくやっているタイプ。実際はエンジニアとして、メチャクチャ強いんだよね。

    本当に知識を持っていて、キレイなコードが書ける。なのに、自分で認識してないケースが本当に多い。

    今、表に出てる人たちはそうした活動をしている分、学習の時間は絶対に減る。だから、世に出ていないプログラミングオタクは自信を持って、一歩踏み出した方がいいと思うんだよね。

    オレ意外と勝てるじゃん、ってなると思うよ。

    ―― では、そうした人たちが世に出るにはどうすればいいのでしょう?

    今、自分に与えられた仕事の中で、前に出るということが世に出るということかな。機能開発の一部分でもいいから自分のアイデアを入れてみる。そうした積み重ねなんだと思う。

    それを続けるとユーザーや顧客、先輩、上司の要求に対して100%じゃなくて、110%で返せるようになる。

    『100円のコーラを1000円で売る方法』でもあったよね? 言われた通りにやったら採用されずに、言われた話を全く無視して提案したらコストも高いのに採用されたってケース。

    ユーザーや発注者の満足度って、言ったモノをそのまま作ってもゼロなんだよね。言われたモノよりも面白いモノを作ろうとすることが大事なんじゃないかな。

    あなたは自分のコードに名前が書けますか?

    ―― 小俣さんから見て、自由度が高そうなベンチャー企業にも、自分を主張できていない人材は多いと感じていますか?

    ベンチャー企業でもそういう人増えてるよね。ベンチャーでもミスを恐れて言われた通りに作っている人は全然いる。

    会社には「8:2の法則」があるじゃない? 2割の人が新しいモノを生み出しているって話で、それはSIでもベンチャーでも一緒なんだよね。ベンチャーも新しいことに取り組む2割の人と、言われた通りに作る8割の人になっているんだと思うよ。

    ―― 映画やアニメ、音楽などの作品は作った人のクレジットが世に出るのに、システムは世に作った人の名前が出ない。でも、クリエイトしているのは一緒じゃないですか。価値のあるモノを発信しているのは一緒なのに何でだろうと思っていました。

    確かに、不思議だね(笑)。責任転嫁しやすい状況なのかも。

    そういう意味だと、コードに自分の名前を書くことってすごく重要かもしれない。内部プログラミングだと書いた人の名前をコメントで書いたりするのね? そこから始めてみるのがいいかもしれないね。

    バージョン管理のGitとかSVNとかを使えば誰が書いたか分かっちゃうんだけど、更新履歴を追わなくちゃいけない。本当に「これ誰がやったんだよ!」っていう状況にならないと見ないよね。

    見た目ですぐに「これいいじゃん!」ってUIだと分かりやすいんだけど、サーバサイドのような裏側のロジックを作っている人は目に付きにくいよね。

    前に出るために、「タグに自分の名前を入れてみる」のはどうかな。これが最初の一歩なのかもしれない。

    ただし、マイナスに働く可能性もあるから注意が必要かも。今、自分が身を置いている会社がどんな文化なのか? 改めて理解してから一歩を踏み出す必要があるよね。

    例えば、「バグでたぞ!→原因究明!→このコードお前が書いてるじゃん!」という使われ方になってしまったら本当にもったいない。

    実はこれって、サービスを作るマインドになってる文化じゃないんだよね。ただのプログラミングオタクを卒業したいと思ったら、その文化は弊害にしかならない。

    もし、自分を変えてエンジニアとしての価値を上げたいと思ったら、そういった文化の会社なら容赦なく辞めた方がいい。今の場所が言われたモノを作るだけで、楽で居心地が良いから居続けるのも昔は良かったんだけど、さっきも言った通り、時代はどんどん変わってきてる。だから、一歩踏み出してほしいって僕は思うんだよね。

    これを読んで、一歩踏み出す勇気がほしいと思ったら、僕宛にメッセージを送っていただいても全然大丈夫です。日本のソフトウエア産業が世界で通用する状況になることが、僕にとっての最大の「目的」ですので。

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