エンジニアtype×App Ape共同企画「Androidスマホ総研」
激しい競争が繰り広げられる群雄割拠のスマホアプリ市場で、エンジニアやプロデューサーが勝ち残るためのノウハウをお届けする連載。FULLER株式会社が提供するおよそ10数万にのぼるAndroidOS搭載の端末管理アプリ利用者の利用状況をレポーティングするサービス『App Ape』で得られた調査結果から、アプリの企画・開発に役立つノウハウを抽出、提供していく
エンジニアtype×App Ape共同企画「Androidスマホ総研」
激しい競争が繰り広げられる群雄割拠のスマホアプリ市場で、エンジニアやプロデューサーが勝ち残るためのノウハウをお届けする連載。FULLER株式会社が提供するおよそ10数万にのぼるAndroidOS搭載の端末管理アプリ利用者の利用状況をレポーティングするサービス『App Ape』で得られた調査結果から、アプリの企画・開発に役立つノウハウを抽出、提供していく
FULLERが提供しているおよそ10数万にのぼるスマホ端末管理アプリ利用者の利用状況を、レポーティング形式でまとめて提供していく『App Ape』との共同企画。
第2回は、各企業がマーケティングや商品プロモーションを目的にリリースしている「マーケティングアプリ」にフォーカス。ユーザーにインパクトを与える企画の秘けつを探る。
まずは前提条件の共有として、1日に起動するアプリの種類やその回数(※1)などから、スマホアプリユーザーの行動習慣を分析。その上で、人気の企業アプリの利用頻度調査を通じて、マーケティング効果を高める企画のポイントを見ていこう。
※1…アプリの起動に関する数値情報はApp Ape推定によるカウント。
どんなスマホアプリでも当てはまることだが、企業がマーケティング施策としてアプリを企画する際には、特に消費者=ユーザーの属性を把握し、どの層を狙うかを検討する必要があるだろう。
まずは、App Apeによる調査結果から「アプリを多く利用しているユーザー層」を浮き彫りにしていきたい。
1日に起動するアプリの種類数を【性別×年代別】で調べたところ、最も多いのは10代女性で10.05個、その次が10代男性で10.01個。続いて、20代女性(9.95個)、30代女性(9.28個)、20代男性(9.17個)、40代女性(9.05個)という結果に。
男性は女性に比べて起動するアプリの種類が少なく、また男女ともに年代が上がるにつれて減少傾向にある。ユーザーを統計的な属性データだけで切るならば、若年層の女性をターゲットにしたアプリが最も相性が良いと思われる。
次に、1日にアプリを起動する回数を、【性別×年代別】で見てみる。
順位は先ほどの結果とあまり変わらず、最も多いのは10代女性で119.89回、その次が10代男性で119.70回、続いて20代女性(111.50回)となっている。以降で順位に変動が起こり、20代男性(96.06回)、40代女性(91.17回)、30代女性(87.74回)の順となっていた。
男女別に平均起動回数を比較してみると、男性の87.47回と比べて、女性は97.15回と約10回多くアプリを起動していた。この数値からも、女性ユーザーのアクティブな様子が見て取れる。
このような差が出る背景について、『App Ape』のデータアナリスト大野康明氏は「女性は男性以上に、LINE、eメールといったコミュニケーション関連アプリや、Facebook、Twitter、mixiなどのSNSアプリを多く起動しているとのデータが出ている」と話す。
中でも、女性の起動回数=利用頻度が男性より際立って多いものとして、Ameba(男性の3.9倍)、LINEアイラブコーヒー(2.4倍)、LINEバブル(2.3倍)、おさわり探偵 なめこ栽培キット Deluxe(2.3倍)などがあるという。
「人とコミュニケーションを取る、または可愛いキャラクターの簡易ゲームを楽しむという点が、女性が男性よりアプリを使う大きな要因でしょう」と大野氏は続ける。
では、本題である企業のマーケティングアプリに関する調査結果を見ていこう。
電通が発表しているレポート「日本の広告費」で、テレビ・新聞・雑誌・ラジオのマスコミ四媒体広告費で上位に入る6業界は以下の通り。この6業種は、広告宣伝費に多額を投じる傾向があるといえよう。
■ 2012年「マスコミ四媒体広告費」の上位10業種
では、この6業種の「アプリによるマーケティング」については、どんな傾向があるのか。
App Apeが6業種内の小分類ごと(「飲料・嗜好品」ならアルコール飲料/非アルコール飲料/タバコなど)に売上高シェアの高い国内上位10企業を抽出し、それらの企業がリリースしている計1057個のAndroidアプリ(※2)を調査したところ、以下のような傾向が見られた。
■ 化粧品のアプリは「ライフスタイル」カテゴリに多く、商品に関連した補足情報を提供するケースが目立つ。
■ 食品のアプリは「カスタマイズ」カテゴリに多く、商品のキャラクターなどを利用した壁紙やホーム画面の着せ替えアプリが多い。
■ 交通・レジャーのアプリは当然ながら「旅行&地域」カテゴリが中心。目的地までの検索、最新情報の取得、施設の予約などのアプリが多い。
■ 飲料・嗜好品のアプリは「ライフスタイル」カテゴリに多く、商品のシールやポイントなどを集める“キャンペーン応募型”が目立つ。
■ 流通・小売のアプリは「ショッピング」、「ライフスタイル」カテゴリが中心。クーポン配信、ポイントカード機能、商品検索ができるアプリが多め。
総じて、ゲームなどによる間接的なマーケティングを狙ったアプリよりも、O2Oで直接実益に結び付くようなアプリが多いと大野氏。今まで別の広告・宣伝手段で行っていたマーケティングを、そのままアプリで行っている印象が強いという。
ならば、これらのアプリはユーザーにどの程度「支持」されているのか。ユーザーがインストールした企業アプリの利用頻度を調べれば、アプリによるマーケティングや商品プロモーションがうまく機能しているかを推し量れるはずだ。
そこで各業種の企業が出すマーケティングアプリから、Google Play掲載インストール数が10万以上となっている6つの代表的アプリをピックアップし、「アンインストール率」、「月間アクティブ率(1カ月に1度以上アプリを利用した人の割合)」を調べてみると(※3)、こんな結果が出た。
インストール数:10-50万
アンインストール率:33.3%
月間アクティブ率:54.5%
自分の顔写真を、既存のヘアースタイルの画像と合成することで、さまざまなヘアースタイルを試すことができるアプリ。共有機能もついており、お気に入りの画像は友人に見せることができる。Google Playでのレビュー評価は86件、平均レート2.7。
インストール数:10-50万
アンインストール率:4.5%
月間アクティブ率:22.7%
明治ミルクチョコレートで作った手作りチョコレシピが200以上掲載されている。その他にもラッピングのコツやレシピの用語を調べることもできる。レビュー評価は373件、平均レート4.2。
インストール数:10-50万
アンインストール率:13.6%
月間アクティブ率:80.9%
「めざましテレビ」のコンテンツである占いを見たり、番組の感想をつぶやいたり、その日のニュースや天気をチェックすることができる。また、番組キャラクターめざましくんによるアラーム機能もある。レビュー評価は236件、平均レート3.9。
インストール数:10-50万
アンインストール率:13.2%
月間アクティブ率:61.3%
東京ディズニーリゾート30周年記念のカメラアプリ。顔写真を認識し、オリジナルのフレームを付けたりすることができる。編集した写真は各種SNSに共有することもできる。レビュー評価は128件、平均レート3.9。
インストール数:10-50万
アンインストール率:51.6%
月間アクティブ率:64.1
『vitaminwater』のプロモアプリ。カメラで撮った写真を選ぶとそれに合わせてラップが作詞・作曲され、キャラクターが歌ってくれるアプリである。できたラップは保存でき友人と競ったり、シェアしたりできる。レビュー評価は45件、平均レート3.5。
インストール数:100-500万
アンインストール率:1.5%
月間アクティブ率:39.6%
店頭のマシンでポイントを溜めるためのバーコード表示機能や、クーポンやチラシの表示機能がある。レビュー評価は3719件、平均レート3.3。
※2…各企業が開発者としてリリースしているアプリ、開発自体は外部に委ねているがその企業の公式アプリと判断できるアプリを抽出。
※3…インストール数は2013年6月時点でGoogle Playに掲載されていた数値を引用/「アンインストール率」と「月間アクティブ率」はApp Ape調べ。
これら6つの数値を比較すると、アンインストール率の際立って高い2つ(花王『ホメ髪ドレッサー』と日本コカ・コーラ『グラソーCameRap』)は、それぞれ写真を用いてゲーム性を演出するアプリになっており、「ゲームやカメラのように、ほかにもメジャーなアプリが存在するジャンルだと飽きられやすいのでは」(大野氏)と考えられる。
アンインストール率が一ケタ台と低い2つのアプリ(明治『手作りチョコレシピ』とヤマダ電機『YAMADAモバイル』)はユーザーにとっての実用性が高いことからも、面白さや娯楽性だけでユーザーの心をつかむのは難しいといえよう。
ただし、月間アクティブ率を見ると、フジテレビジョン、オリエンタルランド、日本コカ・コーラの3アプリが高い数値に。うち2つがカメラ機能を有している。
そこで改めてアンインストール率の低さを加えて考慮すると、本当の意味で「使われ続けているアプリ」はフジテレビジョンの『めざましアプリ』とオリエンタルランド『ハピネスカム』の2アプリとなる。
「フジの『めざましアプリ』は同社のTV番組と密接に連携しており、実際に番組の放送時間帯に多く起動されているというデータも出ています。また、オリエンタルランドの『ハピネスカム』に関しては、10代~20代女性から根強く支持される“ディズニーブランド”を全面に打ち出したカメラアプリだから人気なのだと考えられます」(大野氏)
これらの比較で見えてくるのは、インストール数が多いアプリの中でも、“一発屋”で終わらずに使われ続ける(特定の機会ごとに使われる)マーケティングアプリは
【1】娯楽性より、実用性を重視
【2】アプリ外でサービス・ブランドとの連携がしっかり取れている
【3】10~20代のユーザーが喜ぶ仕掛けがある
の3つの特徴を持っているといえるだろう。
さらに、大野氏は「長く愛されるマーケティングアプリ」の特徴をこう付け加える。
「上記のような3条件をクリアするのはもちろん重要ですが、長く使われることを考えると、ユーザーレビューなどの評価・口コミを大切にし、そこから得たフィードバックを機能開発に取り入れる努力も必要だと考えられます。コンセプトも大切ですが、それ以上に使い勝手が悪いアプリは、すぐに使われなくなってしまいます」(大野氏)
これからアプリによるマーケティングやプロモーションを企画する担当者は、こうした傾向を踏まえた上で、開発を進めていくことが求められる。
■調査概要:
・出典:広告業界を対象としたスマートフォンアプリの利用動向調査(2013年6月)
・調査内容:通信キャリアごとのAndroid端末利用者の利用動向調査
・調査対象者:FULLER社アプリケーションのパネルユーザー(以下、調査対象者)
・調査方法:調査対象者から取得した以下の情報を利用
[1] デモグラフィック情報(性別、年代)
[2] アプリ利用情報(インストール、アンインストール、起動回数)
・調査期間:2013年4月1日~2013年6月30日
文/岡 徳之(Noriyuki Oka Tokyo)
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