製造業を中心とした採用支援を手掛けるリクルーターズ株式会社・代表で、キャリア関連の著書を多数持つ有名ヘッドハンター小松俊明氏が、各種ニュースの裏側に潜む「技術屋のキャリアへの影響」を深読む。技術関連ニュース以外にも、アナタの未来を左右する情報はこんなにある!
ユニクロ、カヤックが始めた「新しい新卒採用」から、ソーシャル時代の採用を考える
リクルーターズ株式会社 代表取締役
小松俊明氏
住友商事、外資コンサルティング会社を経て独立。エンジニアのキャリア、転職事情に詳しい。『転職の青本』、『役に立つMBA、役に立たないMBA』、『デキる部下は報告しない』ほか著書多数。海外在住12年、国内外で2回の起業を経験した異色の経歴。慶應義塾大学法学部卒業。オールアバウトでは転職のノウハウのガイドを務める。転職活動応援サイトが好評
2013年度の新卒採用について、アパレル大手のユニクロが「大学1年生を採用することも検討する」と発表したニュースは、本コラムの読者の記憶にも新しいに違いない。
大学教育を真っ向から否定しているともとられかねないこのメッセージを見て、今後、企業の採用は変わるかもしれないと感じた。ソーシャルメディアによって社会が急速に変わりつつある時代にあって、これからの採用の方向性について考察を加えてみたい。
大学生の中でも特に文系学生の場合、自分が専攻した専門分野とはまったく無縁の就職先を選ぶものである。
そういうわたしも大学時代は政治学を専攻したが、政治家を志向しなかった。経済学部や法学部出身の友人らも、金融機関やメーカーに就職した。最近の文系学生の間では、ソーシャルビジネスを手掛けるWeb関連企業の人気が高まっているとも聞く。
大学生が自己アピールする内容には仕事の実績が伴っていないため、多少インターンやアルバイトで社会経験をアピールしたところで、おおむね本人の「コミュニケーション能力」と「バイタリティ」、場合によっては「ルックス」で就職先は決まりがちである。
もちろん、それだけが長けていても、頭が悪いというのでは問題があると思ってのことだろうか、大学の偏差値の序列によって就職先が決まりやすいという現実も否めない。
優秀な若手を青田買いする傾向は、より顕著化する可能性も
そうした中で前述のユニクロのメッセージを思い出してみると、大学1年生から応募を認めると言うのだから、要は大学合格の切符を手にしたことに一定の価値を置くのだろう。あとは大学卒業時と同じく、その時点の「コミュニケーション能力」と「バイタリティ」を確認すれば良いということになるだろうか。
つまり、大学教育の4年間を経た後に成長した姿を期待するのではなく、4年間ユニクロのアルバイト社員として働いた方が、よほど教育効果があると言いたいのだろう。
優秀な学生を青田買いすることを目的に、もし多くの企業がこうした採用手法に賛同するようになれば、今後は大学合格の切符を手にしたとたん、企業に就職を決めて大学を中退するという行動に出る学生が増えることも考えられる。
社会に出ても役に立たない学問を学ぶ必要はなく、ましてユートピアとまで揶揄された「遊びとバイト中心の4年間」を過ごすことに意味がないと考える学生、もしくはそれを支持する親が出てきても不思議ではない。偏差値が足りずにやむなく入学した大学、もしくは興味のない学部にしか入れなかった学生は、なおさらその傾向は強いに違いない。
そして、形骸化した就職協定、優秀な学生を青田買いしたい企業、今も続く悲惨な就活の状況を考慮すれば、この動きは今後もっと広がりを見せるかもしれない。
Webプレゼンスに表れるのは、実はコミュニケーション力とバイタリティ
さて、海外に目をやると、実は面白い動きが起きている。企業の社員教育、採用活動をソーシャル化しようという動きである。英国で生まれたブレーブニュータレント社は、入社志願者を企業とソーシャルに結び付けるサービスを提案している。
自分が将来入りたいと思う企業に入る前に、その企業の特定の社員(企業としては従来のリクルーターのような立場の自社社員)をTwitterでフォローできるサービスである。企業としては、志願者と採用前につながることで、いわゆる履歴書や職務経歴書を見るだけではなく、その志願者のWebプレゼンス=ソーシャルメディアをはじめとしたインターネット上での志願者の言動、プレゼンなどを確認ができるし、時間をかけてコミュニケーションを深めることもできる。
Webプレゼンスを見て採用を行うという点では、面白法人カヤックが『節就宣言2013』の一環として行っている「ワンクリック採用(Facebook、github、flickrのアカウントがあればエントリーシート不要で応募できるキャンペーン。2012年2月29日まで)」も、その部類に入るだろう。
自己申告で作られたアピール性が強い職務経歴書で書類選考し、あとは2、3回の面接を経て採用していた従来の手法では、企業も採用の失敗を繰り返してきたわけだ。ソーシャルリクルーティングとも言えるこれらの方法であれば、採用する前に本人を知り、さらに事前に志願者を教育する機会まで得られるというわけである。
つまり、コミュニケーション能力が高く、バイタリティがある人物を、企業が時間をかけて見極めることで、効率的に少数精鋭を採用できるというわけである。
前述のユニクロのケースでも、大学1年生を採用までしなくても、「入社志願者」として大学1年生からソーシャルにつなげておけばいいことになる。もちろん、転職市場でもこれは同じことができるわけで、入社志願者と求人企業の双方にとって、いわゆる採用準備(入社準備)期間はプラスに活用したら良いだろう。
これも、世の中で起きつつあるソーシャルシフトの一端なのかもしれない。
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