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約半年で150万DL突破のスマホゲーム『クラッシュフィーバー』に見る、少人数でヒットを生む開発プロセス

ITニュース

    ユーザーの目が肥えたこともあり、資金面・人的側面の両方で今まで以上に多くの投資が必要になっているネイティブゲームの開発。

    昨年7月にJOGA(Japan Online Game Association – 日本オンラインゲーム協会)がまとめた『JOGAオンラインゲーム市場調査レポート2015』によれば、いまやスマホゲームの開発費は平均で1億円を超えている(参照記事)。

    とはいえ、「少人数の開発体制」でもやり方次第でヒットを生むことができると示す事例はいくつかある。その一つが、ユナイテッドとワンダープラネットが共同事業として開発・運営しているネイティブソーシャルゲーム『クラッシュフィーバー』だ。

    スマホ画面をタップしてパネルを壊し、「連鎖」や「フィーバー」でバトルに勝つというシンプルな操作法がユーザーの興味を引き、2015年7月のリリースから公開3カ月で100万ダウンロードを、約半年の今年1月には150万ダウンロードを突破。開発元のワンダープラネットは、この人気タイトルを当初6~10名の小規模チームで作り上げた(※リリース後は20名規模に人員を増やして運用している)。

    「ウチはベンチャーなので、そもそも多くの人員を割くという選択肢がなかった」と語るのは、同社のプロデューサーである鷲見政明氏。ワンダープラネットは少数精鋭のチームでどのように人気タイトルを生み出したのか。

    ゲーム開発におけるヒットの方程式は「やっぱ、ない」との名言通り、鷲見氏は「面白さを作り込む部分は試行錯誤するしかなかった」と明かす。だが、『クラッシュフィーバー』の開発プロセスを紐解いていくと、特徴的なステップを踏んでいたことが分かった。

    4つのステップを踏んで「面白さ」を作り込んでいく

    (写真左から)ワンダープラネットの取締役CTO村田知常氏、エンジニアの藤澤健治氏、同じくエンジニアの桐島昌吾氏、プロデューサーの鷲見政明氏

    そのステップとは以下の4つだ。

    【1】α版を作成して事業化を検討
    【2】β版で必要最小限のゲーム構成を開発
    【3】β-2版で付加機能を検討・開発
    【4】リリースに向けひたすら不具合を潰していく

    2014年の春ごろから企画し始め、【4】のバグ潰しには約2カ月を要したそうなので、【1】~【3】までを約1年で行った計算になる。

    鷲見氏いわく、β以降は面白さを「確認」するフェーズで、αの時点でいかにコンセプトをブラッシュアップするかが最初のカギだったと言う。

    「クラッシュフィーバーでは、コアターゲットをゲーム好きな20~30代男性に、周辺ターゲットを文化系の学生に設定して、『世界で最も気持ちいい、4人でやれるパズルRPG』にするというコンセプトを決めました」

    ただ、これを企画書に落としたところで実際に「どう面白いのか」を説明できないだろうし、チーム内でもどこが開発の肝になるのかを共有できない。そこで、α版をモックで作って皆で感覚を共有できるようにした。

    ちなみにこの時、社内では別のゲーム企画も同時に進んでおり、α版を試した結果、経営判断で『クラッシュフィーバー』の開発が正式に決まった。同社の取締役CTO村田知常氏によると、「ワンダープラネットでは事業化を検討する際、できるだけα版を基に判断するようにしている」という。

    プロトタイプを試作して良しあしを判断するのは一般的なプロダクト開発でもよくあることだが、その後の長い開発工程をムダにしない意味でも、α版を基に事業化を検討するのは理に適っているだろう。

    ハプニングから学んだ大量アクセスのさばき方

    ユーザー数が大きく伸びたことで得た「学び」も多数あったと話す開発チームの面々

    その後、β版、β-2版とフェーズを区切って開発を進めたのは、ゲーム内の各要素をきちんと作り込むための施策だった。主にフロントエンドの開発を担当していた藤澤健治氏は、「パネルをタップして壊す時の破片の飛び散り方など、細かい部分を試行錯誤しながら作っていた」と話す。

    このフェーズでは、少人数の開発体制がむしろ奏功したという。

    「10人くらいのスモールチームだと、1人1人の意思疎通がしやすい。プランナー、デザイナーとも『相手の顔が見える』状態で作業を進めた方が、作り込んでいく際のスピード感も保てます」(藤澤氏)

    特に『クラッシュフィーバー』の場合、企画~開発段階ではどちらかと言うとユーザーのリテンションを重視した設計をしていたため、βとβ-2における詰め作業がいっそう重要視されていた。

    こうして無事にリリースされた『クラッシュフィーバー』は、開発陣の仕事ぶりもあってか、すぐに好評を博した。実はこの時、想定以上のアクセスがあってサーバがダウンし、少しの間メンテナンスに奔走するというハプニングもあったという。

    「有識者の知見をいただきながら、サーバエンジニアだけでなくアプリエンジニア、つまりクラッシュフィーバーのエンジニアが一丸となって対策をしました。この時の経験・ノウハウは、今も高トラフィックに対する仕組み構築とパフォーマンス改善に活かされています。そして何より、この経験はチーム全体の絆も強めました」(村田氏)

    当時ユーザーとしてプレイしていた桐島昌吾氏は、このメンテナンス時の話を聞き、自身も一緒に開発に携わりたいと思いその後ジョインした。

    「サーバサイドは主にAWSを活用しています。基本構成はNginx+PHP、データベースにMySQLとDynamoDB、キャッシュにRedisです。ごく基本的な構成ですが、ログの取得などメイン処理に関連しない部分はAWSのサービスを活用して非同期で行うなどの工夫をしています。スケールの限界を作らないインフラづくりに取り組んでいます」(桐島氏)

    他にも、まだまだ多いとはいえないチーム人数を考慮して、Gitのブランチ運用やホットデプロイなど開発・運用をしやすくする仕組みづくりも進めているという。

    今年1月29日からは、あの『初音ミク(雪ミク)』とのコラボイベントも実施しており、運用は今まで以上に忙しくなるだろう。これまでの学びの成果が試される。

    取材・文・撮影/伊藤健吾(編集部)

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